遺産相続で孫に財産を譲るための重要ポイント全解説!
[ご注意]
記事は、公開日(2018年12月25日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
遺産相続で孫に権利がある場合
孫には祖父母の遺産を相続する権利がある場合とない場合とがあります。 次の場合には、孫に祖父母の遺産を相続する権利がある可能性があります。- 孫が代襲相続人となる場合
- 孫と養子縁組をした場合
孫が代襲相続人となる場合
誰に遺産を相続する権利があるのかは、民法に定められたルールによって決まります。 まず、被相続人(亡くなった人)に配偶者(妻や夫)がいる場合、配偶者は必ず遺産相続の権利をもちます。 そして、被相続人に子がいる場合は、子も必ず遺産相続の権利をもちます。 子が先に亡くなっている場合等に、先に亡くなった子に子(亡くなった人の孫)がいる場合は、孫が遺産相続の権利をもちます。 このように本来の相続するべき人に代わって相続することを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といい、代襲相続によって相続人となった人のことを「代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)」(または「代襲者(だいしゅうしゃ)」)と言います。 また、代襲される人(例えば、被相続人よりも先に亡くなった被相続人の子)のことを被代襲者(ひだいしゅうしゃ)と言います。 なお、被代襲者が離婚しているかどうかは関係ありません。被代襲者が離婚していても代襲相続は生じます。 例えば、被相続人(女)の息子AとBが結婚してCが生まれた後、AとBが離婚して、CはBに引き取られ、以降、AとCは疎遠になったとします。そして、長い年月が経過し、Aが亡くなり、被相続人も亡くなったとします。 このように両親が離婚して長年交流がなく関係が希薄化していた場合であっても、そのような事情に関係なく代襲相続することができます。 そして、代襲相続が生じるのは被代襲者が亡くなったときだけではありません。代襲相続は、次の場合に生じます。- 被代襲者が被相続人よりも先に亡くなった場合
- 被代襲者が推定相続人の廃除を受けた場合
- 被代襲者が相続欠格事由に該当する場合
孫と養子縁組をした場合
被相続人が生前に孫と養子縁組をしていた場合、その孫は被相続人の養子となり、実子と同様の相続権をもちます。 したがって、養子となった孫は、代襲相続によらずとも(被相続人の実子である実親が亡くなっていなくても)、相続する権利をもちます。遺産相続における孫の取り分の割合
孫が遺産を相続することができるケースについて説明しましたが、孫は、どのくらいの割合で遺産をもらえるのでしょうか? 孫の取り分について、代襲相続人の場合と養子の場合に分けて説明します。孫が代襲相続人の場合の取り分の割合
孫が代襲相続人の場合の取り分の割合について説明します。 孫が代襲相続人となる場合は、孫の父または母である被相続人の子の立場を代襲するので、まず、子の取り分割合について理解しなければなりません。 被相続人の子は、被相続人に配偶者がいる場合(生きている場合)は、配偶者と子は半分ずつ相続します。 子が複数いる場合は、子の取り分の中で、按分します。 配偶者がいない場合は、遺産のすべてを子が相続します。 子が複数いる場合は、按分します。 そして、代襲相続の場合は、被代襲者の取り分を代襲相続人で按分します。 例えば、相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつとなります。 そして、子の内の1人が被相続人よりも先に亡くなっていて、孫2人が代襲相続し、被代襲者の取り分である4分の1を代襲相続人2人で按分するので、孫の取り分は8分の1ずつとなります。孫が養子の場合の取り分の割合
養子の場合も実子と同じ割合の取り分になります。 例えば、相続人が実子Aと実子Bと養子C(Aの実子)の場合、ABCの取り分は、それぞれ3分の1ずつになります。 また、Aが被相続人よりも先に亡くなっていた場合は、CはAの代襲相続人としての取り分と、被相続人の子としての取り分を併せ持つことになり、Bが3分の1、Cが3分の2の取り分となります。遺言があれば孫が遺産を取得できる
孫が代襲相続人や養子ではなく、民法で定められた相続人(法定相続人)ではない場合に孫に遺産を取得させるにはどうすればよいのでしょうか? また、代襲相続人や養子の場合に、民法で定められた取り分割合(法定相続分)よりも多くの財産を取得させるにはどうすればよいのでしょうか? 以下、それぞれについて説明します。孫が法定相続人でない場合に孫に遺産を取得させる方法
孫が代襲相続人や養子でなくても、遺言によれば孫に遺産を取得させることができます。 例えば、長男の長男である孫に全財産を取得させたい場合は、次のような遺言書を作成します(なお、この記事で紹介する遺言書は一例であって、この通りに書かなければならないというものではありません。)。
遺言書 遺言者○○○○は、長男○○○○の長男○○○○(昭和○年○月〇日生)に、全財産を遺贈する。 平成〇年〇月〇日 ○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号 ○○ ○○ 印 |
遺言書 遺言者○○○○は、長男○○○○の長男○○○○(昭和○年○月〇日生)に遺言者の有する財産の3分の2を、長男○○○〇の二男○○○○(昭和○年○月〇日生)に遺言者の有する財産の3分の1を、それぞれ遺贈する。 平成〇年〇月〇日 ○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号 ○○ ○○ 印 |
遺言書 遺言者○○○○は次の通り遺言する。 第1条 遺言者は、長男○○○○の長男○○○○(昭和○年○月〇日生)に次の財産を遺贈する。 (1)土地 所 在 ○○市○○町○○丁目 地 番 ○番○ 地 目 宅地 地 積 ○○○.○○平方メートル (2)建物 所 在 ○○市○○町○○丁目○○番地○○ 家屋番号 ○○番○○ 種 類 居宅 構 造 ○○造○階建 床面積 1階 ○○.○○平方メートル 2階 ○○.○○平方メートル (3)預金債権 〇〇銀行〇〇支店扱い 口座種別 普通預金 口座番号 〇〇〇〇〇〇 口座名義 ○○○○ 第2条 遺言者は、長男○○○〇の二男○○○○(昭和○年○月〇日生)に、本遺言書作成時に遺言者が有するその余の財産および本遺言書作成後に遺言者が取得した財産を遺贈する。 平成〇年〇月〇日 ○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号 ○○ ○○ 印 |
孫が法定相続人の場合に法定相続分よりも多くの財産を取得させる方法
相続人ごとの取り分の割合については、民法に定められています。 しかし、これも遺言によって遺言者が自由に指定することができます。 前述のように、割合を指定することもできますし、特定の財産を特定の相続人に相続させることができます。 なお、法定相続人ではない人に遺産を取得させる場合は、前述の通り、遺言書に「遺贈する」と書きますが、法定相続人に取得させる場合は、「相続させる」でも「遺贈する」でもどちらでも構いませんが、「相続させる」と書くことをお勧めします。 「相続させる」と「遺贈する」に違いが生じるのは、遺言によって承継される財産に不動産が含まれている場合のみです。 「相続させる」には、次のようなメリットがあります。- 不動産登記がスムーズ
- 登記がなくても相続債権者に対抗できる
- 借地権や借家権について賃貸人の承諾が不要
孫に財産を取得させたいなら生前贈与という選択肢もある
孫に財産を取得させたいなら生前贈与という選択肢もあります。 孫に生前贈与するメリットには次の2つがあります。- 節税になる可能性がある
- 孫が必要としている財産を生前に早期に移転できる
基礎控除後の課税価格 | 20歳未満 | 20歳以上 | ||
---|---|---|---|---|
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | - | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
-
- 1000万円-110万円=890万円
- 20歳未満の場合:890万円×40%-125万円=231万円
- 20歳以上の場合:890万円×30%-90万円=177万円
孫が遺産相続したときにかかる税金
孫に限らずですが、遺産相続したときには、相続税がかかります。 遺贈や死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与)を受けたときも同様に相続税がかかります。 生前贈与の場合でも、相続時精算課税を選択した場合の2500万円までの贈与や、相続開始前3年以内の贈与には相続税がかかります。これら以外のケースの生前贈与については贈与税がかかります。 なお、相続税には基礎控除があります。まとめ
相続をとりまく法律や税金はとても複雑です。 理想的なかたちで孫に財産を残せるように、専門家に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。この記事を書いた人
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