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【生前贈与で節税】贈与税の計算や非課税制度についても徹底解説

生前贈与の計算や非課税制度について徹底解説
生前贈与は節税に効果的、というのは知られていますが、具体的にどうすれば良いかはあまり知られていません。 もっとも知られているのは「年間110万円の基礎控除があるから贈与税がかからない(暦年課税方式)」でしょうか。実は、それ以外にも生前贈与で節税できる方法があるんです。 例えば「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」では婚姻期間が20年を超えた夫婦間で、かつ要件を満たせば最大2,000万円まで控除することができます。 一方、贈与する財産によっては生前贈与が節税にならないときもあります。生前贈与で最大限節税をするためには、十分な制度の知識や正確な評価額の計算が必要です。 この記事では、生前贈与について詳しく解説するとともに、生前贈与で節税にならない場合についても解説していきます。是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年11月29日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

生前贈与に関係する税金

生前贈与に関係がある税金には、次のものが挙げられます。
  • 贈与税
  • 相続税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 所得税・復興特別所得税・住民税
以下、それぞれについて説明します。

贈与税

生前贈与には、通常、贈与税がかかります。贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。 贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。 それぞれの方式に基礎控除額があり、基礎控除額までの贈与については贈与税が非課税になります。

暦年課税

贈与税の申告時に相続時精算課税を選択しない限りは、暦年課税方式が適用されます。 暦年課税方式では、贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。 ただし、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は110万円で変わりありません。 例えば、同じ年に、父と母からそれぞれ100万円の贈与を受けた場合、100万円+100万円-110万円=90万円となり、90万円に対して贈与税がかかります。 贈与税額は、計算方法を理解しなくても、贈与税計算シミュレーションツール(贈与税計算機)を利用することで、簡単に算出することができます。以下のリンクからご利用ください。

暦年課税方式の計算方法

基礎控除の後の金額のことを「課税価格」といいますが、贈与税の税額は、次の算式で求めることができます。
課税価格×税率-控除額=贈与税額
暦年課税方式による贈与税の税率は、特例贈与財産と一般贈与財産とで異なり、特例贈与財産の方が税率が低く設定されています。 特例贈与財産とは、直系尊属(親や祖父母等)から、贈与を受けた年の11日時点で20歳以上の直系卑属(子や孫等)への贈与財産のことで、一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない財産のことです。 一般贈与財産用の税率(一般税率)の速算表は次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
特例贈与財産用の税率(特例税率)の速算表は次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

事例

贈与税の計算方法を説明します。 例えば、30歳のAさんが、ある年の1年間に父母や祖父母といった直系尊属から受けた贈与の総額が1,000万円であったとします。 Aさんは、どの贈与者からの贈与についても暦年課税を選択したとします。 1,000万円から暦年課税の基礎控除額110万円を控除すると、「1,000万円-110万円=890万円」となります。 贈与を受けた年の11日時点で20歳以上の人が直系尊属から贈与された財産は特例贈与財産に該当するので、特例税率の速算表に沿って贈与税額を計算します。 890万円は、「600万円超1,000万以下」に該当するので、税率30%と控除額90万円を適用します。 そうすると、890万円×30%90万円=177万円」が贈与税額となります。

事例2

Aさんは、ある年の1年間に、直系尊属から600万円、直系尊属以外の人から400万円、合計1,000万円の贈与を受けたとします。 この場合は、特例贈与財産と一般贈与財産の両方があることになります。 その場合は、次の手順で計算します。
  1. すべての財産を「一般税率」で計算した税額に占める「一般贈与財産」の割合に応じた税額を計算します。
  2. すべての財産を「特例税率」で計算した税額に占める「特例贈与財産」割合に応じた税額を計算します。
  3. 1で算出した税額と、2で算出した税額を合計して、贈与税額を計算します。
12はどちらを先に計算しても構いません。 上記の事例をこの計算手順に当てはめて計算してみましょう。 まず、1の税額を計算します。最初に、すべての財産を一般税率で計算します。 基礎控除後の課税価格890万円(=1,000万円-110万円)を一般税率の速算表に当てはめると、600万円超1,000万円以下の行を見ればよいので、税率が40%で、控除額が125万円であることが分かります。 そうすると、すべての財産を一般税率で計算した税額は、「890万円×40%125万円=231万円」となります。 そして、この231万円に占める一般贈与財産の割合に応じた税額を計算します。 Aさんがその年に贈与を受けた1,000万円のうち、一般贈与財産は、直系尊属以外の人から受けた400万円なので、1の税額は、「231万円×400万円/1,000万円=924千円」となります。 続いて、2の税額も同様に計算すると、「177万円×600万円/1,000万円=1062千円」となります(177万円は、特例税率の速算表に沿って「890万円×30%90万円=177万円」と計算できます)。 3に進んで、Aさんがその年に納めるべき贈与税額は、「924千円+1062千円=1986千円」となります。

相続時精算課税

相続時精算課税制度とは、親や祖父母から贈与された財産の価額が、2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。この説明だけだと大変お得な制度に思えます。 しかし、贈与税はかかりませんが、相続時には、この制度により取得した贈与財産とその他の相続財産とを合わせた遺産総額に相続税が課税されるので、注意が必要です。 相続時には、他の遺産と合算して、相続税の対象となるのです。 「相続時精算課税制度」は、その名の通り、「相続時」に「精算」して「課税」する「制度」なので、当然といえば当然ですね。 なお、2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税が課せられます。 つまり、1億円の不動産の贈与の際に、相続時精算課税制度を利用することはできますが、7,500万円については贈与税を支払わなければなりません。 (1億円-2,500万円=7,500万円)✕20%=1,500万円の贈与税が課されます。 ただし、課された贈与税は、贈与者が亡くなった時の相続税から控除され、贈与税額が相続税額を上回る場合は、差額の還付を受けることができます。 なお、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与は、その年以降すべて相続時精算課税となり、暦年課税の110万円の非課税枠を利用することはできなくなるため、選択しない方が税金が安く済むケースも多いので、注意が必要です。 相続時精算課税の適用を受けたい場合は、贈与税の申告時に、税務署に、相続時精算課税選択届出書等の必要書類を提出しておこないます。

相続税

次の2つの場合では、生前贈与によって取得した財産に、贈与税ではなく、相続税がかかります。
  • 相続開始前3年以内の生前贈与
  • 相続時精算課税を選択した生前贈与
相続時精算課税については説明済みなので、ここでは、相続開始前3年以内の生前贈与について説明します。 相続又は遺贈により財産を取得した者に対して、亡くなる前の3年間に行われた贈与は、相続税の計算に足し戻されるため、相続税が課されます。
  • このときに足し戻す額は、基礎控除後の課税価格ではなく、基礎控除前の贈与財産の価額です。なお、既に贈与税を支払っている場合は、相続税も課されることとなり、贈与税と相続税の二重課税となってしまいます。そこで、相続税の税額から既に支払った贈与税の税額を差し引いた額を相続税として納めればよいこととなっています。ただし、贈与税として支払った金額が、課されるべき相続税よりも大きかったとしても、差額の贈与税は還付されません。なお、相続開始前3年以内に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。
  • 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
相続税の手続きは理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。

不動産取得税

生前贈与によって不動産を取得した場合は、不動産取得税がかかります。不動産取得税の税額の基本的な計算方法は、以下の通りです。
課税標準×4%
しかし、2021331日までに取得した土地と住宅については、税率が3%になります。

課税標準

課税標準は、原則は、固定資産税評価額と同額ですが、2021331日までに取得した宅地については、課税標準が「固定資産税評価額の2分の1」になります。 つまり、2021331日までに取得した宅地の不動産取得税は、固定資産税評価額の1.5%になります。 固定資産税評価額は、市町村役場(東京23区は都税事務所)で管理している固定資産課税台帳に記載されています。 マンションの場合は、通常、敷地権が付いているので、区分建物(専有部分)にかかる税額と敷地権にかかる税額を合計します。 敷地権の固定資産税評価額は、敷地全体の固定資産税評価額に敷地権の割合(共有持分)を掛け算して計算します。 敷地権の割合も固定資産課税台帳に記載されています。 なお、マンションの敷地も、宅地なので、課税標準が固定資産税評価額の2分の1になります。 また、不動産取得税には、自宅用の不動産の場合等、様々な軽減措置があるので、不動産の贈与を受ける場合は、各都道府県の税金に関する問い合わせ窓口で確認するとよいでしょう(不動産取得税は国税ではないので、税務署では答えられません。)。 東京都の場合は、東京都主税局ウェブサイトの「軽減制度」ページを参考にしてください。

登録免許税

登録免許税は不動産の登記等に対して課税される税金です。贈与の場合は、固定資産税評価額の2%が課税されます。

所得税・復興特別所得税・住民税

譲渡所得には、原則として、所得税、復興特別所得税及び住民税がかかります。 譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます(ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはならず、事業所得等になります。) 個人への贈与の場合、譲渡所得は生じませんが、個人が法人に贈与した場合は、時価で譲渡したものとみなすこととされており、譲渡所得が生じることがあります。 この場合、譲渡所得が生じるのは、贈与を受けた法人ではなく、贈与した個人です。 なお、贈与を受けた人が個人の場合でも、将来、その贈与を受けた財産を譲渡した際には譲渡所得が生じることがあります。 譲渡所得の金額は、次の算式で求めることができます。
収入金額 - (取得費 + 譲渡費用- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
ここでは、特に、土地や建物についての例を元に、譲渡所得について説明します

収入金額

収入金額は、土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭の額です。

取得費

取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。

課税譲渡取得金額

贈与によって取得した財産の課税譲渡所得金額は、贈与者がその財産を取得した際の取得費を用いて計算します。 取得費が分からない場合などには、取得費を売った金額の5%相当額とすることができますが、この場合には、贈与を受けた人が支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。 なお、建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

譲渡費用

譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。 修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

特別控除額

特別控除額は、次のようになっています。
  • 収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・5,000万円
  • マイホームを譲渡した場合 ・・・3,000万円
  • 特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・2,000万円
  • 特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・1,500万円
  • 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円 ※長期譲渡所得の場合に限ります。
  • 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・800万円
特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。

譲渡所得税の税率

不動産に対する譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得とで異なります。 長期譲渡所得の場合は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、短期譲渡所得の場合は39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)です。 不動産を売った年の11日現在で、その不動産の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。 例えば、30年前に1,000万円で取得した不動産を3,000万円で譲渡しその譲渡費用が100万円だった場合は、長期譲渡所得なので税率は20.315%となり、譲渡所得税額は、「3,000万円-(1,000万円+100万円)×20.315%3859850円」となります(特別控除がない場合)。 長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかについては、贈与者の所有期間と、贈与を受けた人の所有期間を通算して判定されます。

生前贈与は相続税対策に活用できる

生前贈与を効果的に活用することによって、相続税対策を行うことができます。 生前贈与が相続税対策になる仕組みには、次のものがあります。
  • 暦年贈与によって年間110万円以内の基礎控除を適用できる
  • 小分けにして暦年贈与することによって、税率を抑えられる
  • 「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」を適用できることがある
  • 贈与対象の不動産から得られる収益がある場合や、不動産の値上がりが予想される場合は、早めの贈与が相続税対策になる
  • 世代を飛ばして孫に贈与することができる
  • 教育資金贈与の非課税制度で1,500万円を非課税で一括贈与する
  • 住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を利用する
以下、それぞれの点について説明します。

暦年贈与によって年間110万円以内の基礎控除を適用できる

暦年課税方式では、贈与税は、一人の人が11日から1231日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。暦年課税方式による贈与のことを暦年贈与といいます。 不動産の場合は、評価額が110万円を超えることが多いと思われますが、その場合でも、持分を分けて贈与することによって、1年間当たりの贈与額を110万円以下に抑えることができます。 例えば、評価額が2,200万円の不動産であれば、20分の1ずつの持分を毎年贈与することで、贈与税がかからなくなります。 しかし、贈与契約書を毎年作成して贈与しても、贈与による持分の変動を毎年登記しなければ、贈与の成立を税務署に認めてもらうことは難しいでしょう。 贈与の成立が認められなければ、贈与したつもりの土地の所有権は元の所有者の元に留まったままであり、相続が開始されれば相続税の対象となってしまいます。 かといって、毎年贈与契約書を作成して持分変動を登記するとなると、司法書士報酬・登記費用等それなりの費用と手間がかかります。 税理士に相談のうえ、検討するとよいでしょう。

小分けにして暦年贈与することによって、税率を抑えられる

贈与税は、相続税よりもベースとなる税率が高いので、一見、生前贈与の方が不利に思えます。 しかし、生前贈与の場合は、小分けにして暦年贈与することによって、税率を抑えることができます。 贈与税・相続税は、課税価格が小さいと税率も低くなり、課税価格が大きいと税率も高くなるという累進課税になっています。したがって、小分けにして贈与することによって税率を抑えることができるのです この点、相続は小分けにすることはできないので、生前贈与が有利な点といえます。続税と贈与税の税率は下表の通りです。
相続税:法定相続分に応ずる取得金額 贈与税:基礎控除後の課税価格 相続税 贈与税
一般贈与財産 特例贈与財産
税率 控除額 税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10% 10%
200万円超 300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円超 400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
400万円超 600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
600万円超 1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,000万円超 1,500万円以下 15% 50万円 45% 175万円 40% 190万円
1,500万円超 3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
3,000万円超 4,500万円以下 20% 200万円 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 5,000万円以下 55% 640万円
5,000万円超 1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1,700万円
2億円超 3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
特例贈与財産とは、贈与を受けた年の11日時点で20歳以上の直系卑属(子や孫等)への贈与された財産のことをいい、一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない贈与財産のことをいいます。

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」を適用できることがある

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」とは、婚姻期間が20年を超えた夫婦の間で、「居住用不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与が行われた場合で、贈与を受けた年の翌年315日までに贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した 居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることが認められた場合に基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。 土地が一つしかない場合は、この制度を利用することによって、「小規模宅地等の特例」を適用するための土地がなくなってしまいます(一つの土地の持分を分けても構いません)。

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」とは、330㎡までの宅地の評価額を8割減できる大変お得な特例です。

配偶者の税額軽減

配偶者には、「配偶者の税額軽減」(「相続税の配偶者控除」とも呼ばれます。)という制度があり、配偶者の遺産取得額から、配偶者の法定相続分か16000万円のいずれか大きい方の金額を差し引いて、残った金額にのみ相続税がかかる決まりになっています。 差し引く金額の方が大きい場合は、課税されません。つまり、法定相続分の範囲内なら、配偶者は相続税が課されることはないのです。 法定相続分を超えて遺産を取得した場合にのみ、相続税が課される可能性が生じますが、それでも16000万円までは課税されないので、ほとんどの家庭では配偶者はまったく課税されないということになります。 したがって、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を駆使しても相続税がかかるような場合でなければ(少なくとも、配偶者が法定相続分を超えて遺産を取得し、かつ、その額が16千万円以上であることが必要)、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」を適用する税金面でのメリットはないといえます。

贈与対象の土地から得られる収益がある場合や、土地の値上がりが予想される場合は、早めの贈与が相続税対策になる

相続税対策の基本は、なるべく税金がかからないかたちで、上の世代から下の世代に財産を引き継ぐことです。 贈与対象の土地に賃貸収入が生じている場合等は、土地を生前贈与することによって、贈与時以降の賃貸収入が、贈与税や相続税がかからずに、下の世代のものになるというメリットがあります。 相続による場合は、土地の賃貸収入の貯えが、相続税の課税対象となります。 また、値上がりが予想される場合も相続税対策になります。評価額が低い時に贈与すると、贈与税額も低くなるためです。

世代を飛ばして孫に贈与することができる

遺産は一般に上の世代から下の世代に引き継がれていきます。そして、引き継がれるごとに相続税または贈与税が課せられます。 そこで、一世代飛ばして、祖父母世代から孫世代に一気に引き継ぐことによって、一世代分の相続税・贈与税を節税することができます。(ただし、相続等により代襲相続権の無い孫が財産を取得した場合には、相続税の2割加算の適用があります。

教育資金贈与の非課税制度で1,500万円を非課税で一括贈与する

教育資金贈与の非課税制度を利用すると、直系卑属(子、孫、曾孫など)に対して教育資金として1,500万円を非課税で一括贈与することができます。 もっとも、必要な都度、直系尊属(親や祖父母など)から教育費の贈与を受ける場合は、この制度を利用しなくても非課税です。 この制度の肝は、将来の教育資金を一括で贈与しても非課税となることです。教育費用が必要なタイミングで都度贈与しようと思っていても、亡くなった後は、その先は非課税で贈与することはできず、相続税の課税対象に組み込まれてしまいます。 この点、この制度を利用すると、生前に教育資金を非課税で一括贈与することができます。ただし、教育以外の用途に使用した分や、受贈者(贈与を受けた人)が30歳になった時までに使い切らなかった分には贈与税がかかります。

住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を利用する

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」とは、父母や祖父母等の直系尊属から、自分が住むための家の新築、取得、増改築等(そのための土地の取得も含まれます)のためのお金を贈与された場合で、一定の要件を満たすときに、法律で定められた非課税限度額まで、贈与税を非課税にするという制度です。 非課税限度額は、家屋の種類(省エネ等住宅かどうか)、契約締結日、消費税率によって異なります。 なお、契約締結日とは、家屋を建築するための請負契約等の契約締結日のことです。贈与契約の締結日ではありません。 また、省エネ等住宅というのは、省エネ等基準に適合することを証明された住宅のことです(省エネ等基準について詳しくはこちら)。 この特例と贈与税の基礎控除(年間110万円)は併用できるので、特例の非課税限度額+110万円の贈与をその年に非課税で受けることができます。
契約締結日 省エネ等住宅 省エネ等住宅以外の住宅
2016年1月1日~2019年9月30日 1,200万円 700万円
2019年10月1日~2020年3月31日 3,000万円 2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,500万円 1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,200万円 700万円
住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適用を受けるにあたって気を付けなければならないのは、「小規模宅地等の特例」の適用を受けられなくなることがあるということです。 「小規模宅地等の特例」が適用できるのは、配偶者、同居の親族、家を持っていない親族のいずれかですが、配偶者以外は、 「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適用を受けて自宅を取得すると、原則として「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができなくなります。 小規模宅地等の特例とどちらが得になるかは慎重に判断すべきですが、多くの場合は、小規模宅地等の特例の適用を受けた方が得になることが多いでしょう。

生前贈与で税金や費用が余計にかかることがある

相続税対策として生前贈与したのに、税金や費用が余計にかかることがあります。 不動産の生前贈与を検討する際は、例えば、次のような点に注意しましょう。
  • 不動産取得税がかかり、登録免許税が高くなる
  • 維持費がかかる場合や不動産の値下がりが予想される場合は相続税対策と逆行する
  • 取得費加算の特例が受けられない
  • 持分を小分けにして贈与する場合は手間と費用がかさむ
  • 贈与税は相続税よりもベースとなる税率が高い
  • 「小規模宅地等の特例」が適用されなくなることがある
下の3点については前の項目で説明したので、ここでは、上の3点について説明します。

不動産取得税がかかり、登録免許税が高くなる

不動産取得税と登録免許税の割り増し分以上に節税メリットがなければ、生前贈与を相続税対策として利用する意味はないといえます。 以下、不動産取得税と登録免許税について説明します。

不動産取得税

不動産取得税は、相続によって取得した場合は課税されませんが、贈与によって取得した場合は課税されます。

登録免許税

登録免許税は、贈与の場合は、固定資産税評価額の2%が課税されます。 相続の場合は0.4%なので、登録免許税も不動産取得税と同様、贈与の場合は不利になります。 さらに、相続の場合は、登録免許税が免除されることもあります。詳しくは関連記事をご覧ください。

維持費がかかる場合や不動産の値下がりが予想される場合は相続税対策と逆行する

相続税対策の基本は、なるべく税金がかからないかたちで、上の世代から下の世代に財産を引き継ぐことです。 不動産には固定資産税や管理費といった維持費がかかります。 生前贈与がなければ、土地の維持費は上の世代が負担し、その分、相続財産を減らせることになりますが、生前贈与があると、以降は、維持費を下の世代が負担することになるので、相続税対策の考え方と逆行します。 また、贈与後相続までの間に不動産が値下がりした場合は、値下がりしてから相続すれば、その分、課税価格が下がるので、よかったということになりかねません。

取得費加算の特例が受けられない

相続後、一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができますが、贈与の場合はこれがありません。 この点は、相続に比べて贈与が不利な点です。譲渡する予定がある場合はご注意ください。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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