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相続税改正のポイント|平成31年(2019年)速報/平成30年(2018年)の内容

税制とは税に関する制度のことですが、税制改正とは税制を改正することをいいます。 国や地方の財政状況や少子高齢化などの経済・社会の構造変化に応じて、毎年度、税制改正がおこなわれています。 毎年12月に、翌年度の税制改正大綱が公表され、内容が一般にも明らかになります。 しかし、税制改正大綱として公表された内容は、この時点では、まだ確定したものではありません。 税制は法律等で定められているので、税制を改正するためには、その法律等を改正しなければならないのです。 法律を改正するためには、税制改正法案が国会で審議され可決されなければなりません。 4月から新年度になるので、通常、3月中に可決・成立して、4月1日に施行というスケジュールになっています(ただし、経過措置によって4月1日に施行されないものもあります。その場合の施行日は、その税制を定める法律の附則等に定められています。) この記事の執筆時点では、平成31年度(2019年度)税制改正については、税制改正大綱の閣議決定までは済んでいますが、税制改正法案はまだ国会に提出されていない状況です。 したがって、この記事で説明する平成31年度税制改正の内容は正式決定したものではありませんが、相続税対策を実行中の方や検討中の方にとっては、相続に関してどのような改正が予定されているのか、とても気になるところでしょうから、決定の内容ながら速報として説明します。 また、平成30年度(2018年度)税制改正の相続に関する改正点についても併せて簡単にします(こちらは既に確定しています)。 是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年2月27日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

平成31年度税制改正における相続に関する主な改正点

平成31年度税制改正の相続に関する主な改正には次のものがあります。
  • 個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設
  • 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し
  • 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
  • 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
以下、それぞれについて説明します。

個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

個人事業者(個人事業主)の事業用資産に係る納税猶予制度が創設されることによって、法人(中小企業者)を対象としていた事業承継税制の対象範囲が個人事業者にまで広げられます。 事業承継税制とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」といいます。)による都道府県知事認定を受けている非上場会社の株式等を、会社の後継者が、贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です(「事業承継税制とは。要件やメリットとデメリットをわかりやすく説明」参照)。 株式会社の事業承継の場合に相続や贈与の対象となる財産は株式ですが、個人事業者の場合は事業用資産が相続や贈与の対象となります。 この制度によって、納税猶予の対象となる事業用資産は、被相続人(亡くなって財産を残す人)の事業(不動産貸付事業等を除きます。以下同じ。)の用に供されていた土地(面積400㎡までの部分に限ります。)、建物(床面積800㎡までの部分に限ります。)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限ります。)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものです(「特定事業用資産」といいます。)。 この制度によって、納税が猶予される人は、承継計画に記載された後継者であって、円滑化法の規定による認定を受けた人です(相続人の場合は「認定相続人」、受贈者(贈与を受ける人)の場合は「認定受贈者」といいます。)。 承認計画とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画であって、平成31年4月1日から平成36年3月31日までの間に都道府県に提出されたものをいいます。 認定相続人が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が猶予されます。 贈与の場合も同様に贈与税の納税が猶予されますが、贈与の場合は、受贈者が成年者でなければなりません(なお、2022年3月31日までは20歳以上の人が成年者ですが、2022年4月1日以降は成年の基準が18歳に引き下げられます。)。なお、贈与者の死亡時には、特定事業用資産(既に納付した猶予税額に対応する部分を除きます。)をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算しますが、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることができます。 そして、次の場合には、猶予された相続税の全額が免除されます。
  • 認定相続人が、その死亡の時まで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
  • 認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合
  • 認定相続人について破産手続開始の決定があった場合
  • 相続税の申告期限から5年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合
なお、認定相続人が、特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には、猶予税額の全額を、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付しなければなりません(さらに利子税が加わります。)。 ちなみに、この制度は、白色申告者は利用することができず、被相続人と相続人の両方が青色申告者でなければなりません(相続人は相続後に青色申告の手続きをすれば大丈夫です。)。 なお、この制度と、事業用小規模宅地等の特例を併用することはできません(小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」参照)。

特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し

小規模宅地等の特例は前の項目の最後にも出てきましたが、小規模宅地の特例とは、亡くなった人の自宅の土地や、亡くなった人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引にしてくれる制度です。 今回の税制改正法案が成立すると、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除外されます。 なぜ相続開始前3年以内のものの適用を除外するのかというと、相続開始直前に駆け込み的に節税目的で事業用宅地を購入することを予防するためです。 既に、貸付用事業用宅地については、平成30年度税制改正で、相続開始前3年以内のものは適用が除外されていますが、今回、それが特定事業用宅地に拡大されるかたちになります。 なお、当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除きます(つまり、特例の適用を受けることができます)。 この改正は、平成31年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用されます。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用しません。

教育資金の一括贈与非課税措置の見直し

教育資金の一括贈与非課税措置について、受贈者の所得要件設定や使途の見直し等を行う一方、30 歳以上の就学継続には一定の配慮を行い、適用期限を2年延長します(教育資金の一括贈与非課税措置については「教育資金贈与は都度贈与なら元々非課税!制度利用で一括でも非課税に」参照)。 具体的には、次の措置が講じられます。
  1. 信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が 1,000 万円を超える場合には、当該信託等により取得した信託受益権等については、本措置の適用を受けることができないこととする。 ※平成 31 年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用
  2. 教育資金の範囲から、学校等以外の者に支払われる金銭で受贈者が 23 歳に達した日の翌日以後に支払われるもののうち、教育に関する役務提供の対価、スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、これらの役務提供又は指導に係る物品の購入費及び施設の利用料を除外する。ただし、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用は除外しない。 ※平成 31 年7月1日以後に支払われる教育資金について適用
  3. 信託等をした日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(その死亡の日において次のいずれかに該当する場合を除く。①当該受贈者が23歳未満である場合②当該受贈者が学校等に在学している場合③当該受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合)において、受贈者が当該贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等について本措置の適用を受けたことがあるときは、その死亡の日における管理残額(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等の価額に対応する金額)を、当該受贈者が当該贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなす。 ※平成 31 年4月1日以後に贈与者が死亡した場合について適用(ただし、同日前に信託等により取得した信託受益権等の価額は、上記の信託受益権等の価額に含まれない)
  4. 教育資金管理契約の終了事由について、受贈者が 30 歳に達した場合においても、その達した日において上記3の②又は③のいずれかに該当するときは教育資金管理契約は終了しないものとし、その達した日の翌日以後については、その年において上記3の②若しくは③のいずれかに該当する期間がなかった場合におけるその年12月31日又は当該受贈者が40歳に達する日のいずれか早い日に教育資金管理契約が終了するものとする。 ※平成 31 年7月1日以後に受贈者が 30 歳に達する場合について適用

結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し

結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置について、受贈者の所得要件設定を行った上で、適用期限を2年延長します(結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置について「結婚資金の贈与やご祝儀を非課税で受け取れる範囲をわかりやすく説明」参照)。 この改正によって、信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が 1,000 万円を超える場合には、当該信託等により取得した信託受益権等については、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の適用を受けることができなくなります。 なお、この改正は、平成 31 年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用されます。

平成30年度税制改正における相続に関する主な改正点

平成30年度税制の相続に関する主な改正点には次のものがあります。
  • 一般社団法人等に対する課税の見直し
  • 相続税及び贈与税の納税義務の範囲の見直し
以下、それぞれについて説明します。

一般社団法人等に対する課税の見直し

この改正の背景としては、一般社団法人等には株式等のような出資持分がないことを利用して、相続税の負担を回避しようとする動きが近年見受けられるようになったことがあります。 株式会社であれば、法人が保有する財産は株式の評価額に反映され、株主が死亡した場合には株式の相続に対し相続税が課されるのに対し、一般社団法人等については、持分が存在せず、法人が保有する財産が個人の財産に反映されることがありません。 そのため、理事や社員を同族関係者で占めること等により法人を私的に支配し、個人が実質的にその法人の財産を保有していると認められるような場合でも、個人間の財産移転を前提とする相続税においては、半永久的に課税対象にならないことになります。 このような租税回避措置を防止するため、一般社団法人等に対する課税の見直しが行われました。 つまり、これまで言われてきたような一般社団法人等を使った相続税の租税回避措置は通用しなくなりました。 この改正によって、相続税法に以下の条文が追加されました。
第六十六条の二 一般社団法人等の理事である者(当該一般社団法人等の理事でなくなつた日から五年を経過していない者を含む。)が死亡した場合において、当該一般社団法人等が特定一般社団法人等に該当するときは、当該特定一般社団法人等はその死亡した者(以下この条において「被相続人」という。)の相続開始の時における当該特定一般社団法人等の純資産額(その有する財産の価額の合計額からその有する債務の価額の合計額を控除した金額として政令で定める金額をいう。)をその時における当該特定一般社団法人等の同族理事の数に一を加えた数(当該被相続人と同時に死亡した者がある場合において、その死亡した者がその死亡の直前において同族理事である者又は当該特定一般社団法人等の理事でなくなつた日から五年を経過していない者であつて当該被相続人と政令で定める特殊の関係のあるものであるときは、その死亡した者の数を加えるものとする。)で除して計算した金額に相当する金額を当該被相続人から遺贈により取得したものと、当該特定一般社団法人等は個人とそれぞれみなして、当該特定一般社団法人等に相続税を課する。 2 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 一般社団法人等 一般社団法人又は一般財団法人(被相続人の相続開始の時において公益社団法人又は公益財団法人、法人税法第二条第九号の二(定義)に規定する非営利型法人その他の政令で定める一般社団法人又は一般財団法人に該当するものを除く。)をいう。 二 同族理事 一般社団法人等の理事のうち、被相続人又はその配偶者、三親等内の親族その他の当該被相続人と政令で定める特殊の関係のある者をいう。 三 特定一般社団法人等 一般社団法人等であつて次に掲げる要件のいずれかを満たすものをいう。 イ 被相続人の相続開始の直前における当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が二分の一を超えること。 ロ 被相続人の相続の開始前五年以内において当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が二分の一を超える期間の合計が三年以上であること。 3 第一項の規定により特定一般社団法人等に相続税が課される場合には、当該特定一般社団法人等の相続税の額については、政令で定めるところにより、前条第四項において準用する同条第一項又は第二項の規定により当該特定一般社団法人等に課された贈与税及び相続税の税額を控除する。 4 第一項の規定の適用がある場合における第一条の三の規定の適用については、同項の特定一般社団法人等の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。 5 第一項の規定の適用がある場合において、同項の特定一般社団法人等が被相続人に係る相続の開始前三年以内に当該被相続人から贈与により取得した財産の価額については、第十九条第一項の規定は、適用しない。 6 第一項の規定により特定一般社団法人等に相続税が課される場合における第二十七条第一項の規定による申告書の提出期限その他第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
この規定は、2018年4月1日以後の相続について適用されます。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、2021年4月1日以後の当該一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。

非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度(事業承継税制)の見直し

平成30年度税制改正では、事業承継税制のこれまでの措置(一般措置)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設されました。 特例措置と一般措置の制度の主な違いは次の表のとおりです。
  特例措置 一般措置
事前の計画策定等 5年以内の特例承継計画の提出 (2018年4月1日~2023年3月31) 不要
適用期限 10年以内の相続等・贈与 (2018年1月1日~2027年12月31日) なし
対象株数 全株式 (ただし、議決権に制限のない株式に限る) 総株式数の最大3分の2まで (ただし、議決権に制限のない株式に限る)
納税猶予割合 100% 相続等:80%、贈与:100%
後継者の数 3人以内 1人
雇用確保要件 原則として、承継後5年間平均8割の雇用維持が必要だが、要件を満たさなかった理由等を記載した報告書(認定経営革新等支援機関(※1)の意見が記載されているものに限る)を都道府県知事に提出し、その確認を受けることで、引き続き納税が猶予される 承継後5年間平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除 なし(猶予税額を納付)
相続時精算課税の適用(※2) 60歳以上の贈与者から20歳以上の者への贈与 60歳以上の贈与者から20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
(※1)認定経営革新等支援機関とは、中小企業が安心して経営相談等を受けられるように、専門的知識や実務経験が一定レベル以上の者として国が認定した金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等のことで、2018年12月21日認定分までで全国で32,268機関が認定されています。認定経営革新等支援機関の検索は、中小企業庁のこちらのページで行うことができます。 (※2)相続時精算課税とは、贈与を受けたときに、特別控除額(2500万円)及び一定の税率(20%)で贈与税を計算し、贈与者が亡くなったときに相続税で精算する制度のことをいいます。事業承継税制によって贈与税の納税猶予の適用を受けても、認定が取り消された場合、高額の贈与税負担が発生するリスクがありますが、相続時精算課税制度との併用によって、認定が取り消された場合でも、税負担は相続税と同額になります(相続時精算課税について詳しくは「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」参照)。

まとめ

以上、相続税改正について簡単にではありますが、説明しました。 詳しい内容については、相続税に精通した税理士にお尋ねください。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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