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葬祭扶助とは?受けられるのは喪主が生活保護受給者の場合だけ?

葬祭扶助制度をご存じでしょうか?

葬祭扶助制度は、生活が苦しくて葬祭を行うことができない方などに対して葬祭費用を扶助する制度です。

この記事では、葬祭扶助制度について分かりやすく説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2020年2月19日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

葬祭扶助とは?葬祭扶助制度について説明

葬祭扶助とは、生活保護制度の一つで、検案、死体の運搬、火葬又は埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものを扶助する保護費であり、親族の葬祭を行うにあたり困窮のため最低限度の生活を維持することができない方に対して支給する場合と、死者の葬祭を行う扶養義務者がないときに民生委員や入所施設の長といった第三者へ支給する場合とがあります。

読み方は「そうさいふじょ」です。

葬祭扶助を申請できる方

葬祭扶助を申請できる方には、前述のとおり、次の2つのパターンがあります。

  • 親族の葬祭を行うにあたり困窮のため最低限度の生活を維持することができない方
  • 民生委員や入所施設の長といった第三者(死者の葬祭を行う扶養義務者がないときに限ります)

以下、条文に基づいて詳しく説明します。

葬祭扶助についての生活保護法の条文

生活保護法18条では、葬祭扶助について、次のように定められています。

1 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。

一 検案

二 死体の運搬

三 火葬又は埋葬

四 納骨その他葬祭のために必要なもの

2 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。

一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。

二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。

困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者

まず、1項では、葬祭扶助の対象を「困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者」と定められています。

生活保護制度は葬祭扶助を含めて全部で8つありますが(他の生活保護は生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助および生業扶助)、そのすべてが葬祭扶助と同じく「困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者」を対象としており、既に、他の生活保護を受給している方は、葬祭扶助についても支給が認められる可能性が高いですが、生活保護の種類によって基準が多少異なるため、必ず認められるとは限りません。

また、喪主が「困窮のため最低限度の生活を維持することができない者」に該当する場合であっても、ほかの親族に「困窮のため最低限度の生活を維持することができない者」に当たらない方がいる場合は、その方に葬祭費用を負担させることを自治体から求められる場合があります。

なお、他の生活保護を受給していなくても、葬祭扶助だけを受給することもできます(これを「単給」といいます)。

受給できるかどうかはケースによるので、生活が苦しくて葬祭費用を捻出することが難しい場合は、遠慮なく役所に相談することをお勧めします。

相談先は、亡くなった方の住所地の市区町村の役所です。

民生委員や入所施設の長といった第三者

2項の規定は、亡くなった方が被保護者(生活保護の受給者)の場合や、亡くなった方の遺留した金品で葬祭を行うに必要な費用を満たすことができない場合で、かつ、亡くなった方の扶養義務者で葬祭を行う方がいない場合において、扶養義務者以外で葬祭を行う方を対象としています。

扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち家庭裁判所が扶養の義務を負わせた人をいいます。

現に扶養をしていなくても構いません。

直系血族とは、親、祖父母、子、孫等のことで、祖父母よりも上の世代や、孫よりも下の世代も含まれます。

扶養義務者で葬祭を行う方がいない場合、家主、入居施設の長、入院していた病院の院長、民生委員、知人、近隣住民等の第三者が葬祭を行う場合があります。

そのような場合に、亡くなった方の遺した金品で葬祭を行うに必要な費用を満たすことができればよいのですが、満たすことができない場合は葬祭扶助の基準額の範囲内で不足額を、また、亡くなった方が被保護者の場合は葬祭扶助の基準額の範囲内で全額の支給を受けることができます。

なお、扶養義務者が存在する場合であっても、扶養義務者は必ず葬祭を行わなければならないわけではありません。

亡くなった方と同居している親族は葬祭を行う義務があると解されていますが、同居していない場合は葬祭を行う義務はなく、自治体等から葬祭を行うように求められた場合にこれを拒否したとしても、死体遺棄罪に問われるようなことはないと解されています。

ちなみに、扶養義務者以外も含めても誰も葬祭を行わない場合は、自治体が葬祭を行わなければならないことになっています。

その場合の費用は自治体の負担になります。

葬祭扶助の場合は、自治体の負担は4分の1で済むため(残りの4分の3は国の負担)、民生委員等が自治体からの依頼を受けて葬祭を行い、葬祭扶助を申請するケースがあることが報じられていますが(朝日新聞デジタル「身寄りない人の葬儀代 運用する自治体と是正求める国」2018年9月27日)、旧厚生省の1963年の通知には「民生委員が市町村等の依頼により行ったときは、葬祭扶助の適用は認められない」とあり、自治体からの葬祭の依頼を受けた方は、依頼を受けるべきかどうか慎重に検討すべきでしょう。

葬祭扶助の給付金額

葬祭扶助給付基準額は、亡くなった方が12歳以上の場合は206,000円以内、12歳未満の場合は164,000円以内と定められています。

基準額の範囲内で、自治体ごとに上限金額が定められており、亡くなった方の住所地の自治体の定めた上限金額の範囲内で実際に葬祭に要した費用が支給されます。

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葬祭扶助に納骨費用は含まれる?他に含まれる費用は?

前掲の生活保護法18条によると、納骨は葬祭扶助の範囲内とされています。

しかし、ここでいう納骨とは、火葬の後に遺骨を骨壺に収骨することを指します。

墓地等へ納骨するための費用は葬祭扶助でまかなうことはできません。

なお、葬祭扶助で行える葬祭は、直葬(お通夜および告別式を行わずに火葬すること)です。

葬祭扶助でまかなえる主な費用には、通常、次のようなものがあります。

  • 棺用布団、仏衣
  • 枕飾り
  • 枕花(お別れ用の花束)
  • ドライアイス
  • 寝台車・霊柩車使用料
  • 安置施設使用料
  • 火葬費用
  • 骨壷・骨箱
  • 自宅飾り
  • 白木位牌

戒名を付けてもらったり、読経等のためのお布施の費用や、供花や花輪の費用などは葬祭扶助では支給されません(最低限の枕花の費用は支給されます)。

葬祭扶助を受けた場合でも香典は受け取れる

葬祭扶助を受けた場合であっても香典を受け取って構いません。

なお、香典は非課税なので贈与税も所得税もかかりませんし、相続税に関しては、そもそも香典は相続財産でもみなし相続財産でもないので当然かかりません。

ちなみに、香典返しの費用は、葬祭扶助でまかなうことはできません。

葬祭扶助の申請方法

葬祭扶助の申請は、葬祭前に行わなければなりません。

申請先は、親族が申請者の場合は、申請者の住所地の市区町村の役所または福祉事務所で、民生委員等の扶養義務者以外の人の場合は、亡くなった方の住所に市区町村の役所または福祉事務所です。

申請には、葬祭扶助申請書が必要です。

申請書の用紙は、市区町村の役所または福祉事務所で入手できるほか、ウェブサイトでダウンロードできる役所や福祉事務所もあります。

フォーマットは都道府県ごとに異なりますので、申請先の都道府県のものを使用してください。

参考までに福井県あわら市の葬祭扶助申請書を紹介しておきます。

上のリンクからダウンロードできます。

なお申請は、葬儀社等に委任することもでき、その場合は、申請者の委任状や印鑑等が必要です。

また葬祭は、葬祭扶助による葬祭に対応している葬儀社に依頼しなければなりません。

葬祭費用は、申請者を介さず、福祉事務所から葬儀社に直接支給されます。

まとめ

以上、葬祭扶助制度について説明しました。

葬祭扶助制度の対象とならない場合でも、埋葬料給付金制度や葬祭費給付金制度の対象となる場合があります。

埋葬料給付金制度は、主に、亡くなった方が社会保険組合に加入していた場合に受けられる制度で、葬祭費給付金制度は、主に、亡くなった方が国民健康保険、国民健康保険組合または後期高齢者医療制度に加入していた場合に受けられる制度です。

詳しくは、それぞれ次の記事をご参照ください。

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この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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