弁護士監修記事
遺族厚生年金とは?いつまでもらえる?金額の計算方法と請求手続き

生計を共にしていた家族が亡くなった場合、その亡くなった人がサラリーマンだったなら、遺族は、遺族厚生年金をもらえる可能性があります。
この記事では、遺族厚生年金の受給資格・支給要件や、金額の計算方法等についてわかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者等が亡くなった後に、一定の要件を満たす遺族が受け取ることができる年金のことです。
受給資格・支給要件
遺族厚生年金の受給資格について、死亡した人に関する要件と、遺族に関する要件をそれぞれ説明します。
死亡した人に関する要件
まず、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が、次のいずれかの要件を満たしていなければなりません。
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
- 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
※ここでいう初診日とは、死亡の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた人をいいます(転医があった場合でも、初めて医師等の診療を受けた日が初診日となります)。 - 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給権者であった人(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限られます。)が死亡したとき
- 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人が死亡したとき
共済組合等に加入したことのある人の年金は、上記の4の場合は、日本年金機構と共済組合等のそれぞれから遺族厚生年金が支払われます。上記の1~3の場合は、日本年金機構または共済組合等のいずれか一か所からまとめて支払われます。
上記の1、2の場合は、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上であることが必要です。
なお、死亡日が2026年3月末日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
遺族に関する要件
遺族厚生年金は、「死亡した人によって生計を維持された人」でなければ受け取ることができません。
「死亡した人によって生計を維持された人」とは、死亡当時、死亡した人と生計を同一にしていた人で、原則として、年収850万円未満の人が該当しますが、死亡当時に年収850万円以上であっても、概ね5年以内に年収が850万円未満となると認められる事由(退職・廃業など)がある人は、遺族厚生年金を受け取ることができます。
そのうえで、遺族基礎年金を受け取ることができる遺族に該当するかどうかは、簡易的に、下のフローチャートに沿って確かめることができます。
(出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 平成30年度版」)
このフローチャートで「該当しません」になった場合は、遺族厚生年金の受給資格はありません。
しかし、
「該当します」になってからといって、確実に受給資格があるとはいえません。
受給資格があるかどうかは、詳細な要件を満たさなければなりません。
以下、その要件について説明します。
遺族厚生年金を受け取ることができる遺族は、死亡当時、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人が対象で、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。
(出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 平成30年度版」)
夫、父母、祖父母が遺族厚生年金を受給するためには、死亡当時55歳以上でなければなりません。
なお、受給開始は60歳です。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳以前でも遺族厚生年金を併せて受け取ることができます。
子と孫が遺族厚生年金を受け取るためには、次の1と2のいずれかを満たし、かつ、3も同時に満たしていなければなりません。
- 死亡当時、18歳になった年度の3月31日までの間にあること
※死亡当時に胎児であった子も出生以降に対象となります。 - 20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること
- 婚姻していないこと
「子のある妻」「子のある55歳以上の夫」「子のない妻」「子のない55歳以上の夫」の「子」についても、上の要件を満たしている「子」を指します(つまり、婚姻している子のある妻は「子のない妻」になります)。
また、30歳未満の子のない妻は5年間の有期給付となります。
金額の計算方法
遺族厚生年金の金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
老齢厚生年金とは、公的年金制度のひとつで、厚生年金に加入していて受給要件を満たした人が、原則65歳に達してから老齢基礎年金に上乗せしてもらえる年金のことです。
老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分とがあり、報酬比例部分とは、年金額が厚生年金保険加入期間中の報酬及び加入期間に基づいて計算される部分です。
老齢厚生年金の報酬比例部分は、平成15年3月以前の加入期間におけるもの(A)と、平成15年4月以降の加入期間におけるもの(B)とを足し算して計算します。
Aは、次の計算式で求めることができます。
A:平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数
A式中の「平均標準報酬月額」は、平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額です。
標準報酬月額とは、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもののことです。
亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合(前述の死亡した人に関する要件の4に該当する場合)は、A式中の7.125/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、7.125/1000~9.5/1000となります。
Bは、次の計算式で求めることができます。
B:平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
Bの式中の「平均標準報酬月額」は、平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。
標準賞与額とは、税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた金額です(1か月あたり150万円が上限)。
亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合(前述の死亡した人に関する要件の4に該当する場合)は、B式中の5.481/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、5.481/1000~7.308/1000となります。
なお、前述の死亡した人に関する要件の1~3に該当する場合は、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
いつまでもらえる?
次のいずれかに該当するようになった場合は、遺族厚生年金を受け取る権利がなくなります。
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(事実婚を含む)
- 直系血族および直系姻族以外の方の養子となったとき
- 離縁によって死亡した方との親族関係がなくなったとき
- 子・孫の場合、18歳になった年度の3月31日に達したとき(障害の状態にある場合には20歳になったとき)
- 子・孫の場合、18歳になった年度の3月31日後20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態に該当しなくなったとき
- 父母・孫・祖父母の場合、死亡した人の死亡当時胎児だった子が生まれたとき
また、遺族基礎年金を受けている子が、祖父母などの直系血族または直系姻族の養子となり、子と養父母が生計を同じくしているときは、受給権は消滅しませんが、支給が停止されます(その状態が解消された時以降に受給することができます)。
遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入中の人等が亡くなった場合に、亡くなった人によって生計を維持されていた一定の要件を満たす遺族が受け取ることのできる年金のことです。
遺族基礎年金は、遺族厚生年金とは、受給要件も金額も受給期間も異なる別の制度です。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、要件さえ満たせば、両方とも受給することができます。
遺族基礎年金について詳しくは「遺族基礎年金とは?金額は?遺族厚生年金との違いは?両方もらえる?」をご参照ください。
請求手続き
遺族基礎年金の手続きについて説明します。
必要書類
年金請求書
住所地の市区町村役場、またはお近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口にも備え付けてあります。
以下のリンクからダウンロードして印刷して利用しても構いません。
必ず必要な書類
年金手帳 | 提出できないときは、その理由書が必要 |
---|---|
戸籍謄本(記載事項証明書) | 死亡者との続柄および請求者の氏名・生年月日の確認 受給権発生日以降で提出日から6ヶ月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票の写し (マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 死亡者との生計維持関係確認のため |
死亡者の住民票の除票 (マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類 (マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 生計維持認定のため 所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票 等 |
子の収入が確認できる書類 (マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 義務教育終了前は不要 高等学校等在学中の場合は在学証明書または学生証 等 |
市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書 | 死亡の事実(原因)および死亡年月日確認のため |
受取先金融機関の通帳等(本人名義) | カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカード(写しも可)等 ※請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付不要。また、インターネット銀行での年金の受け取りについては、「年金Q&A インターネット銀行で年金の受け取りはできますか。」をご参照ください。 |
印鑑 | 認印可 |
死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類
第三者行為事故状況届 | 所定の様式あり |
---|---|
交通事故証明または事故が確認できる書類 | 事故証明がとれない場合は、事故内容がわかる新聞の写しなど |
確認書 | 所定の様式あり |
被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類 | 源泉徴収票、健康保険証の写し、学生証の写しなど |
損害賠償金の算定書 | すでに決定済の場合。示談書等受領額がわかるもの |
その他 状況によって必要な書類
年金証書 | 他の公的年金から年金を受けているとき |
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合算対象期間が確認できる書類 | 詳細は下記を参照してください |
年金の請求は、預貯金通帳のコピーの添付でも手続きができるようになりました。
また、年金請求のためにご用意いただいた住民票等を年金請求以外で利用される場合は、お客様に住民票等の原本をお返しします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 国民年金に任意加入しなかった期間のある人は、それぞれ次の書類が必要です。
- 配偶者が国民年金以外の公的年金制度の被保険者または組合員であった期間のある人は、配偶者が組合員または被保険者であったことを証する書類
- 配偶者が国民年金以外の公的年金制度または恩給法等による老齢(退職)年金を受けることができた期間のある人は、配偶者が年金を受けることができたことを証する書類の写し
- 本人が国民年金以外の公的年金制度または恩給法等による遺族年金等をうけることができた期間のある人は、本人が当該年金等を受けることができたことを証する書類の写し
- その他、海外在住の期間等があったときは、このことを証する書類
請求書の提出先
提出先は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。
まとめ
以上、遺族厚生年金について説明しました。
家族が亡くなると、年金関係に限らず、様々な相続手続きが必要となることが多いです。
行政書士、司法書士といった専門家にまとめて依頼することで、手間が省けますし、申請漏れで損することもなくなります。
一度、相談してみるとよいでしょう。