税理士監修記事
準確定申告が不要なケースとは?必要書類の書き方もわかりやすく説明

相続人になると準確定申告が必要なことがあるということは聞いたことがあっても、次のような疑問が次々と浮かんできて、どうしてよいのか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。
- 準確定申告とは何か?
- 誰が準確定申告を行うのか?
- 相続人全員で行うのか?代表者が行ってもよいのか?
- どのような場合に準確定申告が必要で、どのような場合に不要なのか?
- 準確定申告による税金の相続人間の負担割合はどのようにして決めるのか?
- どのような場合に還付金を受け取れるのか?
- 還付金を代表者がまとめて受け取るにはどうすればよいのか?委任状の書き方は?
- 準確定申告の期限はいつか?
- 遅れるとどうなるのか?
- どのような書類が必要なのか?
- 必要書類の書き方は?
- マイナンバーは必要か?
- 相続人が支払った医療費は控除されるのか?
このような疑問を解消して準確定申告の手続きを安心して進められるように、分かりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
準確定申告とは?
準確定申告とは、納税者が亡くなった年の確定申告のことです。
確定申告とは、一年間の所得(儲け)に対する所得税と復興特別所得税の税額を申告して納付する手続きです。
納税者が亡くなった場合は、自分で確定申告を行うことができないので、相続人が代わりに確定申告を行います。
この確定申告のことを準確定申告といいます。
誰が準確定申告を行う?
準確定申告は納税者の相続人および包括受遺者(以下、単に「相続人」といいます。なお、包括受遺者について詳しくは「受遺者とは?遺贈や相続にかかわる全ての人が知るべき受遺者の全知識」参照。)が行わなければなりません。
相続人が複数いる場合は、通常は、各相続人が連署した準確定申告書や必要書類を代表者が税務署へ提出することになります。
納税については、遺言や遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて、決まっていない場合は、法定相続分に応じて、各相続人が負担します。
準確定申告が不要なケース
亡くなった人の全員に準確定申告が必要なわけではありません。
準確定申告が必要なケースは、確定申告が必要なケースと同様です。
具体的には、次の①~④のいずれかに該当する場合は、準確定申告が必要です。
①給与所得がある方 大部分の方は、年末調整により所得税等が精算されるため、申告は不要です。 | 次の計算において残額があり、さらにⅠからⅥのいずれかに該当する (計算) 1. 各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。 2. 課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。 3. 所得税額から、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額を差し引きます。 I. 給与の収入金額が2,000万円を超える II. 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える III. 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える ※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。 IV. 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払を受けた V. 給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた VI. 在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている |
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②公的年金等に係る雑所得のみの方 | 公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある ※ 公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合には、申告は必要ありません。 |
③退職所得がある方 | 外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある ※ 退職金などの支払者に『退職所得の受給に関する申告書』を提出した場合、一般的に、退職所得に係る所得税等は源泉徴収により課税が済むことになりますので、退職所得の申告は不要になります。 |
④①から③以外の方 | 次の計算において残額がある (計算) 1. 各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。 2. 課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。 3. 所得税額から、配当控除額を差し引きます。 ※ 公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときには、所得税等の確定申告は必要ありません。 |
※上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等との損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けようとする方などは、1から4に当てはまらない方であっても確定申告が必要です。
(出典:国税庁ウェブサイト)
上表の①~④のいずれにも当てはまらない場合は、準確定申告は不要です。
準確定申告をすると還付金が受け取れるケース
被相続人が給与所得者である場合において、次のいずれかに該当するときは、準確定申告をすると還付金が受け取れることがあります。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき
- 一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき
- マイホームに特定の改修工事をしたとき
- 認定住宅の新築等をした場合(認定住宅新築等特別税額控除)
- 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
- 特定支出控除の適用を受けるとき
- 多額の医療費を支出したとき
- 特定の寄附をしたとき
- 上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき
還付金は、遺言や遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて、決まっていない場合は、法定相続分に応じて、各相続人が受け取れます。
代表者がまとめて受け取ることもできます。
代表者がまとめて受け取る場合は、税務署に委任状を提出しなければなりません(後述)。
なお、準確定申告が不要なケースで還付金を受け取るために申告する場合は、後述の申告期限内でなくても構いません。
しかし、還付金は相続税の課税対象となるため、相続税の期限(相続開始を知った時から10か月以内)に間に合うように準確定申告を済ませましょう。
準確定申告の期限
通常の確定申告は、翌年の2月16日~3月15日までの間に申告と納付を行いますが、準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行なわなければなりません。
なお、確定申告をしなければならない被相続人が、翌年の1月1日から確定申告期限の翌年3月15日までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合は、前年分、本年分とも相続開始日の翌日から4か月以内が期限となります。
準確定申告の期限を過ぎるとどうなる?
準確定申告の期限を過ぎると、余計に税金がかかってしまったり、刑事罰を受ける可能性があります。
余計に課せられる税金
余計にかかる税金には、加算税と延滞税があります。
この2つの違いをざっくりと説明すると、加算税とは適切に申告しなかった人に対して加算される罰則的な意味合いの税金で、延滞税とは適切に納付しなかった人に対する利息的な意味合いの税金です。
適切に申告しない場合は、納付も適切に行えていないでしょうから、加算税と延滞税の両方が課せられることになります。
また、申告は適切に行ったものの、納付しなかった場合は、延滞税が課せられることになります。
加算税
加算税には、次の4つの種類があり、それぞれ加算される税率が異なります。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
延滞税
延滞税は、前述の通り、納税が遅れた場合に課せられる利息的な意味合いの税金です。
延滞税は、納付期限の翌日から納付の日まで課せられます。
税率は、納付期限から2か月以内とそれ以降とで異なり、また、世の中の金利とも連動して変動します。
世の中の金利が高い場合は特定基準割合も高く、世の中の金利が低い場合は特定基準割合も低くなります。
上限値でいうと、納付期限から2か月以内が7.3%、それ以降が14.6%です。
しかし、2018年現在は、世の中の金利が低いので、延滞税の税率も上限値よりも低くなっていて、2か月以内が2.6%、それ以降が8.9%となっています。
刑事罰が科せられる可能性もある
準確定申告の申告書をその提出期限までに提出しないことにより所得税を免れた者は、前述の重加算税や延滞税が課せられるだけでなく、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処し、またはこれを併科(懲役と罰金の両方を科す)されるおそれがあります。
準確定申告の申告先と申告書類の提出方法
準確定申告は、納税者である被相続人(亡くなった人)の住所地を管轄する税務署に対して行います。
管轄の税務署を調べるには、国税庁ウェブサイトの「税務署の所在地などを知りたい方」のページを利用するとよいでしょう。
受付時間は平日の8時30分~17時ですが、時間外でも時間外収受箱に投函することによって申告書類の提出が可能です。
また、郵送で提出することもできます。
なお、準確定申告は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用することはできません。
また、確定申告書作成コーナーの利用もできないため、手書きで作成しなければなりません。
準確定申告の必要書類
準確定申告に必要な書類は、基本的には確定申告に必要な書類とほとんど同じです。
主に次の書類が必要です。
- 確定申告書
- 確定申告書付表(相続人が複数いる場合)
- 納付書(納付が必要な場合)
- 委任状(還付金が生じる場合で、かつ、代表者がまとめて還付金を受け取る場合)
- マイナンバー関連書類
- 収入金額等に関する書類
- 所得から差し引かれる金額に関する書類
確定申告書
必ず必要となる書類は、確定申告書のみです。
確定申告書には、申告できる所得の種類に制限がある確定申告書Aと制限がない確定申告書Bがあります。相続人が1人の場合は、確定申告書に必要事項を記載すれば、付表(後述)の提出を省略することができます。
確定申告書の記入用紙は税務署でもらうことができますが、以下のリンクからダウンロードし、印刷して利用しても構いません。
それぞれの記入方法については、以下の記載例を参考にしてください。
記載方法をより詳しく知りたい場合は、以下の手引きを参考にしてください。
確定申告書付表
相続人が複数いる場合は、確定申告に必要な書類に加えて、「死亡した者の平成_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」(通常は、単に「確定申告書付表」と呼ばれます。)が必要です。
確定申告書付表は上記のリンクからダウンロードして使用することも可能ですが、税務署でももらえます。
2ページ目(裏面)に書き方が記載されているので、参考にするとよいでしょう。
この付表には相続人全員が連署(連なって署名すること)します。
この点、準確定申告の提出書類には、個人番号(マイナンバー)の記載が必要であり、個人番号を他の相続人に知られたくないという人もいるでしょう。
そのような場合は、他の相続人の氏名を付記して各相続人が別々に提出することもできます。
この場合、申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。
なお、エクセル等のパソコンで打ち込める書式のものはありませんので、手書きで作成しなければなりません。
納付書
納付する税額がある場合は、納付書に記入して、これを提出します。
住所欄、氏名欄ともに、被相続人と相続人の両方を記載します。
電話番号とフリガナは相続人のものを記載します。
納付書は相続人が複数いる場合は、それぞれ別の納付書に自分の負担する金額を記入します。
なお、100円未満は切り捨てます。
納付方法について、被相続人が振替納税を登録していた場合でも、準確定申告においては振替納税を利用することはできません。
また、準確定申告では電子納税も利用することはできません。
現金かクレジットカードでのみ可能です。
クレジットカード納税は、国税庁長官が指定した納付受託者であるトヨタファイナンス株式会社の国税クレジットカードお支払いサイトから手続きすることができます。
委任状
前述の還付金を代表相続人がまとめて受け取る場合は、他の相続人の委任状を提出しなければなりません。
委任状には、全国の統一のフォーマットはないようなので、申告先の税務署で用紙を受け取って利用するとよいでしょう。
大阪国税局と沖縄国税事務所では、ウェブサイトで用紙をダウンロードできるようになっています。
申告先の税務署がそれぞれの管轄地域にある人は、以下のリンクからご利用ください。
また、それぞれの記載要領は以下のリンクからご確認ください。
マイナンバー関連書類
マイナンバー関連書類については、マイナンバーカードを持っている人と持っていない人とで必要な書類がことなります。
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードの提示か、または写しの添付が必要です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、番号確認書類と身元確認書類について、それぞれ提示か写しの添付が必要です。
番号確認書類には次のものがあります。
- 通知カード
- マイナンバーの記載のある住民票
- マイナンバーの記載のある住民票記載事項証明書
身元確認書類には次のものがあります。
- 運転免許証
- 公的医療保険の被保険者証
- 旅券(パスポート)
- 身体障害者手帳
- 在留カード
収入や控除に関する書類
収入や控除に関する書類は、状況によって必要なものが異なります。
詳しくは、国税庁ウェブサイトの「申告書に添付・提示する書類」のページをご参照ください。
なお、控除に関して、次の3点にご注意ください。
- 医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費であり、死亡後に相続人が支払ったものを被相続人の準確定申告において医療費控除の対象に含めることはできません。
- 社会保険料、生命保険料、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額です。
- 配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定(親族関係やその親族等の1年間の合計所得金額の見積り等)は、死亡の日の現況により行います。
まとめ
以上、準確定申告について説明しました。
不明な点は、管轄の税務署か税理士に相談するとよいでしょう。
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