準確定申告が不要なケースや還付などの手順を解説
相続人になると準確定申告が必要なことがあるということは聞いたことがあっても、次のような疑問が次々と浮かんでくるでしょう。
- 準確定申告とは普通の確定申告とどう違うのか?
- 誰が準確定申告を行ったらいいのか?
- 準確定申告の期限があるのか?
- どのような場合に準確定申告が必要で、どのような場合に不要なのか?
- 遅れるとどうなるのか?(やらなくてもいい?)
このような疑問を解消して準確定申告の手続きを安心して進められるように、分かりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
[ご注意]
記事は、公開日(2018年10月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
準確定申告とは?
亡くなった方(被相続人)の所得税を計算して申告し納めることを準確定申告といいます。
一般的に良く知られているのは、1月から12月までの一年間の所得に対する所得税を申告して納付する手続きである確定申告ですが、納税者が年の途中で亡くなった場合は、相続人が代わりに準確定申告を行います。
準確定申告は通常の確定申告と期限や方法などで異なる部分がありますので順番に説明していきます。
準確定申告の期限は?
準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行なわなければなりません。通常の確定申告は、収入のあった年の翌年の2月16日~3月15日までの間に申告と納付を行いますので混同しないようにしましょう。
もし、前年分の確定申告をする予定だった被相続人が、確定申告期限の3月15日までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合は、前年分、本年分の両方を準確定申告する必要があります。
期限を過ぎると、延滞税などのペナルティを受ける可能性がありますので、忘れずにおこないまよう。とはいえ、焦って準確定申告をした後に、相続放棄したいと思った場合に認められない可能性がありますので注意しましょう。(ペナルティについては後述します)
誰が準確定申告を行う?
準確定申告は相続人(法定相続人及び包括受遺者)がおこないます。
相続人が複数いる場合は、相続人の代表者が各相続人が連署した確定申告付表や必要書類を税務署へ提出するのが一般的です。
万一、連署ができない場合は、各相続人が個別に税務署に提出することもできますが、その場合は他の相続人等に申告した内容を通知する必要があります。
準確定申告は相続開始から4か月以内と時間的な余裕があまりありません。申告書の作成は税理士に依頼することもできます。費用については、時間と不安と手間を解消するためのコストと考えれば、納得できる方も多いのではないでしょうか。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
誰が納税額を負担する?
納税は、遺言や遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて負担します。決まっていない場合は、法定相続分に応じて各相続人が負担します。
▼包括受遺者について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼
準確定申告が不要なケース
亡くなった人全ての方の分が準確定申告を必要なわけではありません。準確定申告が必要なケースは、確定申告が必要なケースと同様です。つまり、亡くなった方で確定申告が不要な方は準確定申告も不要ということになります。
主に確定申告が必要になるのは以下のような場合です。被相続人がこれら要件に当てはまらなければ申告は不要です。
- 給与所得がある方(収入金額が2,000万円を超える、2か所以上から給料をもらっていた場合など)
- 公的年金等の収入が400万円を超える方
- 退職所得があり「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方
- 給与以外にも所得がある方・・・など
詳細は国税庁の「確定申告が必要な方」でご確認ください。
準確定申告をした方がいいケース
サラリーマンの方は、家を買ったから確定申告をするとか、医療費をたくさん払ったので確定申告すれば税金が戻ってくるというような話を耳にしたことがある方もいるでしょう。
亡くなった方についても同様で、被相続人が給与所得者である場合、次のいずれかに該当するときは、準確定申告をすると還付金が受け取れることがあります。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき
- 一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき
- マイホームに特定の改修工事をしたとき
- 認定住宅の新築等をした場合(認定住宅新築等特別税額控除)
- 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
- 特定支出控除の適用を受けるとき
- 多額の医療費を支出したとき
- 特定の寄附をしたとき
- 上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき
詳細は、国税庁ウェブサイト【確定申告・還付申告】「Q5 所得税及び復興特別所得税の還付申告はどのような場合にできますか。」でご確認ください。
還付金の受け取り方と分け方
税務署からの返金は一旦代表者がまとめて受け取ることもできますが、その場合は、税務署に委任状を提出が必要です(後述)。
還付金の分け方は、遺言や遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて、決まっていない場合は、法定相続分に応じて各相続人に分けます。還付金は相続税の課税対象です。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
準確定申告の期限を過ぎたらどうなる?
ペナルティの意味を持つ税金(罰金)を課せられる
準確定申告をしなかったときに課せられるものに、加算税と延滞税があります。
この2つの違いをざっくりと説明すると加算税とは適切に申告しなかった人に対して加算される罰則的な意味合いの税金で、延滞税とは適切に納付しなかった人に対する利息的な意味合いの税金です。
適切に申告しない場合は、納付も適切に行えていないでしょうから、加算税と延滞税の両方が課せられることになります。
また、申告は適切に行ったものの、納付しなかった場合は、延滞税が課せられることになります。
加算税
加算税には、次の4つの種類があり、それぞれ加算される税率が異なります。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
延滞税
延滞税は、前述の通り、納税が遅れた場合に課せられる利息的な意味合いの税金です。
延滞税は、納付期限の翌日から納付の日まで課せられます。延滞税の計算方法は国税庁ウェブサイトでご確認ください。
準確定申告は理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
準確定申告の申告先と申告書類の提出方法
準確定申告は、納税者である被相続人(亡くなった人)の住所地を管轄する税務署に対して行います。
管轄の税務署を調べるには、国税庁ウェブサイトの「税務署の所在地などを知りたい方」のページを利用するとよいでしょう。
受付時間は平日の8時30分~17時ですが、時間外でも時間外収受箱に投函することによって申告書類の提出が可能です。郵送で提出することもできます。
なお、令和2年分以降の準確定申告は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用することができるようになりました。
次に申告のための必要書類を説明していきます。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
準確定申告の必要書類
準確定申告に必要な書類は次に挙げるもので、基本的には確定申告に必要な書類とほとんど同じです。
- 確定申告書
- 確定申告書付表(相続人が複数いる場合)
- 納付書(納付が必要な場合)
- 委任状(還付金が生じる場合で、かつ、代表者がまとめて還付金を受け取る場合)
- マイナンバー関連書類
- 収入金額等に関する書類
- 所得から差し引かれる金額に関する書類
確定申告書
必ず必要となる書類は、確定申告書です。
税務署でも入手できますが、国税庁のウェブサイトで手引きや申告書をダウンロードすることができます。最新のものを使いましょう。
確定申告書付表
相続人が複数いる場合は、確定申告に必要な書類に加えて、「死亡した者の平成_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」通常は、単に「確定申告書付表」と呼ばれます。)が必要です。
確定申告書付表は上記のリンクからダウンロードして使用することも可能ですが、税務署でももらえます。
2ページ目(裏面)に書き方が記載されているので、参考にするとよいでしょう。
この付表には相続人全員が連署(連なって署名すること)します。
この点、準確定申告の提出書類には、個人番号(マイナンバー)の記載が必要であり、個人番号を他の相続人に知られたくないという人もいるでしょう。
そのような場合は、他の相続人の氏名を付記して各相続人が別々に提出することもできますが、申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。
納付書
納付する税額がある場合は、納付書に記入して、これを提出します。
住所欄、氏名欄ともに、被相続人と相続人の両方を記載します。
電話番号とフリガナは相続人のものを記載します。
納付書は相続人が複数いる場合は、それぞれ別の納付書に自分の負担する金額を記入します。
納付方法について、被相続人が振替納税を登録していた場合でも、準確定申告においては振替納税を利用することはできません。
委任状
前述の還付金を代表相続人がまとめて受け取る場合は、他の相続人の委任状を提出しなければなりません。
委任状には、全国の統一のフォーマットはないようなので、申告先の税務署で用紙を受け取って利用するとよいでしょう。(執筆日調べ)
マイナンバー関連書類
税務署へ提出する申告書や届出書などには個人番号(マイナンバー)の記載が必要です。
マイナンバー関連書類については、マイナンバーカードを持っている人と持っていない人とで必要な書類がことなります。
マイナンバーカードを持っている人
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードの提示か、または写しの添付が必要です。
マイナンバーカードを持っていない人
マイナンバーカードを持っていない場合は、番号確認書類と身元確認書類について、それぞれ提示か写しの添付が必要です。
番号確認書類には次のものがあります。
- 通知カード
- マイナンバーの記載のある住民票
- マイナンバーの記載のある住民票記載事項証明書
身元確認書類には次のものがあります。
- 運転免許証
- 公的医療保険の被保険者証
- 旅券(パスポート)
- 身体障害者手帳
- 在留カード
収入や控除に関する書類
収入や控除に関する書類は、状況によって必要なものが異なります。
詳しくは、国税庁ウェブサイトの「申告書に添付・提示する書類」のページをご参照ください。
なお、控除に関して、次の3点にご注意ください。
- 医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費であり、死亡後に相続人が支払ったものを被相続人の準確定申告において医療費控除の対象に含めることはできません。
- 社会保険料、生命保険料、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額です。
- 配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定(親族関係やその親族等の1年間の合計所得金額の見積り等)は、死亡の日の現況により行います。
まとめ
以上、準確定申告について説明しました。
書類の書き方で不明な点は管轄の税務署でも教えてくれますが、手続きはあくまで相続人がおこないます。
サラリーマンは会社で年末調整をしますので、確定申告をしたことがないという方もいるでしょう。忙しい中、不慣れなうえに、自分以外の人の申告、ましてや期限が定められているとなると頭をかかえたくなってしまうかもしれません。そんなときは、税理士に依頼するのも一つの選択肢として検討してみることをおすすめします。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続