換価分割の遺産分割協議書の文例とひな形
「換価分割」とは、不動産や株式などの資産を売却して現金に変えてから、共同相続人で分割する方法です。
換価分割のメリットとしては1円単位で計算できるので、遺産を公平に分けることができます。ほかの分割方法では相続人の間で不公平になってしまう場合があり、それよりはトラブルを防止できると言えるでしょう。
また、換価分割によって資産を換金しておくと相続税の納付もスムーズにできます。
なにかと便利に思える換価分割ですが、もちろんデメリットも…。
また、注意しておきたいのは遺産分割協議書を作成するときです。換価分割の場合、書き方にいくつかのパターンがあります。記載ミスのないよう気を付けましょう。
この記事では、換価分割のときの遺産分割協議書の書き方について解説します。是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年6月17日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
換価分割とは
換価分割とは、遺産を売却して金銭に変えてから相続人同士で分け合う遺産分割の方法です。
遺産を公平に分けたいときや、誰も使用しない不動産が遺産にあるときなどは、売却して現金で分けたほうが良いので、換価分割が利用されます。
換価分割のメリット
トラブルが生じにくい
換価分割は遺産をすべて金銭にしてから分割するため、現物分割や代償分割のように分け方によって不公平が生じることはありません。
不要な遺産を処分できる
故人の不動産が地方にある場合など、相続人の誰も取得したがらない場合は、換価分割をして現金にしたほうが賢明です。
納税資金を調達できる
相続人が相続税を払う財力がない場合でも、換価分割であればその資金が調達できます。
換価分割のデメリット
手間がかかる
換価分割をするためには、相続人全員が集合し不動産の売却手続きを進める必要があります。
不動産会社とのやり取りや売却活動など、売却までに時間がかかることも。
不動産が安くしか売れない場合がある
換価分割する際、相続人としては「早く不動産を売って、現金を分けたい」と思うはずです。しかし、良い相場や買い主を待つことができないと、思っていたよりも安い金額でしか売れない場合があります。
また、売却金を相続税の資金にしたい場合は、より早く売却手続きを進めなければいけません。
所得税がかかる可能性がある
不動産を売却すると、譲渡所得税が発生する可能性があります。譲渡所得税とは、不動産の売却価格から諸費用を引いた利益にかかる税金です。
譲渡所得税がかかると住民税も増額になります。
共有登記か単独登記かによって遺産分割協議書の書き方が異なる
不動産を換価する際、故人の名義のままでは売却できないので、相続人の名義に変更する必要があります。不動産の場合は所有権移転登記と言います。
不動産の登記には、2つの方法があります。
- 換価代金の取得割合に応じた持分で共有登記をする
- 換価代金を取得する相続人の中から換価手続きを行う代表者を一人選び、その人の単独登記をする
どちらの方法を採用するかによって、遺産分割協議書が異なります。しかし、単独登記を選択することが多いようです。
共有登記をしてしまうと、不動産を売却する際などに相続人全員の捺印が必要となり、なにかと手間がかかってしまうからです。
遺産分割協議書の作成に不安があるようなら、行政書士などの専門家に依頼することもできます。
換価分割の遺産分割協議書の記載例
換価分割をしたときの遺産分割協議書の記載例を紹介します。
単独登記した場合
共有登記した場合
遺産分割協議書のひな形
換価分割の旨を遺産分割協議書に書く理由
遺産分割協議書には、換価分割であることを記載したほうが良いでしょう。記載していないと、不動産を売却してその金銭を分配したときに、税務署から贈与とみなされる可能性があるからです。
また、不動産の売却が遅れると固定資産税もかかってきます。固定資産税を誰が支払うか、どのように清算するかなどのトラブルが発生することも。
この記事を書いた人
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