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株の相続税評価額の調べ方や相続税の計算方法と相続税対策について

株式の相続税が0円になる可能性も
株式の相続にあたって、いくつかの節税対策があるのをご存知でしょうか? あなたの相続税も想定より減らせるかもしれません。 例えば、中小企業であれば「事業継承税制」の特例の適用により、相続税が0円になる可能性があります。これは見逃せないポイントです。 ですが安心してはいけません。0円にするには要件を満たす必要があります。そして、その他の方法も活用しつつ、できる限り相続税を抑えましょう。 この記事では、株の相続税の計算や節税対策について詳しく解説します。 株式を相続した、予定のある方などは是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年3月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

株の相続税の計算方法

相続した財産は株も含めて相続税の課税対象となります。 相続税は、亡くなった人の全遺産に対してまとめて計算されます。 株は株というように財産ごとに分けて計算されるわけではありません。 相続税の計算方法については「相続税の計算方法を流れに沿ってステップごとにわかりやすく説明!」をご参照ください。

株の相続税評価額の算定方法

各相続財産の価額が分からなければ相続税額を計算することはできません。 相続税の計算には、相続税評価額を用います。 株の相続税評価額の評価方法は、上場株式と非上場株式とで異なります。

上場株式の相続税評価額の調べ方

上場株式の評価は、原則として終値(おわりね)によって行います。 終値とは、大引け(おおびけ。その日の最後の取引)でついた株価のことです。 次の4つのうち、最も低い株価で評価します。
  • 相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値 ※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
  • 相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
  • 相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
  • 相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均
これらの終値(および終値の平均)は、被相続人が取引を行っていた証券会社の発行する残高証明書の参考資料で確認することができます。

非上場株式の相続税評価額の算定方法

非上場株式の評価方法は、経営権を支配する場合と支配しない場合によって異なります。

経営権を支配する場合

経営権を支配する場合は、さらに会社の規模によって異なります。 大会社の場合は、類似業種比準方式といって、事業内容が類似する複数の上場会社の株価の平均値等の各種数値を基準に計算されます。 小会社の場合は、純資産価額方式といって、相続開始日に会社を清算したと仮定して株主一人当たりの分配額で計算されます。 具体的には、会社の総資産や負債を、原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債等の金額を差し引いた残りの金額により評価します。 中会社の場合は、併用方式といって、類似業種比準方式で計算した株価と純資産価額方式で計算した株価を一定割合で折衷して計算します。 会社規模が大会社に近づくほど類似業比準価額方式で算定する割合が大きくなります(純資産価額方式で算定する割合が小さくなります)

経営権を支配しない場合

経営権を支配しない場合は、配当還元方式といって、次の式で計算されます。 (1株当たりの年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円) 実際のケースに当てはめてどの方式を適用すべかといった判断や、各方式による具体的な計算方式については、相続税に精通した税理士にご相談ください。

相続した株を売却すると税金はどうなる?

株式を売却して現金化すると譲渡所得が生じることがあります。 譲渡所得には所得税等の税金がかかります。 上場株式を源泉徴収ありの特定口座で売却した場合は確定申告の必要はありませんが、上場株式を一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却した場合や、非上場株式を相対取引で売却した場合等に譲渡所得が生じたときは確定申告を行う必要があります。 譲渡所得は次の式で計算することができます。 株式を売却した金額-(取得費(株式の取得に要した金額)+売却に要した手数料等の経費) 株式を取得した金額というのは、被相続人が取得した金額のことです。 譲渡所得には、20.315%の税金がかかります(内訳:所得税15%、住民税5%、特別復興所得税0.315%)。 なお、株式を相続した際に相続税を納付している場合は、相続税と所得税等の二重課税になってしまうように思われます。 この点、二重課税にならないように特例が設けられています。 相続によって取得した株式を相続開始の翌日から3年10か月以内に売却した場合には、譲渡所得の計算時に、相続税額のうち一定の金額を取得費に加算することができます(その分、譲渡所得が低くなります)。 この特例について詳しくは、国税庁ウェブサイトの「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」のページをご参照ください。

株の相続税対策

株の相続税対策について、自社株の承継時の相続税対策と、上場株式の相続税対策に分けて、それぞれ説明します。 また、自社株の承継時の相続税対策については、事業承継税制による対策と、事業承継税制以外の対策に分けてそれぞれ説明します。

事業承継税制による相続税対策

事業承継税制は、文字通り、事業承継の際に適用される制度です。 したがって、自社株以外の株や、自社株であっても相続人が会社の後継者でない場合等は、適用を受けることができません。 事業承継税制の適用を受けるためのその他の要件としては、対象となる株の発行会社が中小企業者に該当すること等があります。 事業承継税制の適用を受けることで、相続人(または贈与を受けた人)は相続税(または贈与税)の納税が猶予されます。 なお、事業承継税制には特例措置と一般措置がありますが、一般措置の場合に相続税の納税が猶予されるのは、相続により取得した事業承継対象株式の80%に留まりますが、特例措置の場合は全額の納税が猶予されます(贈与税については一般措置でも全額の納税が猶予されます)。 納税が猶予された相続税や贈与税は、一定の条件を満たすと、納税が免除されます。 そのための条件は、相続税と贈与税とで異なります。 納税が猶予された贈与税は、主に次のいずれかに該当する場合に、納税が免除されます。
  • 先代経営者が亡くなった場合
  • 後継者が亡くなった場合
  • 後継者から、さらに次の後継者に、事業承継税制の提供を受ける贈与をした場合
納税が猶予された相続税は、主に次のいずれかに該当する場合に、納税が免除されます。
  • 後継者が亡くなった場合
  • 後継者から、さらに次の後継者に、事業承継税制の提供を受ける贈与をした場合
このように、事業承継税制によって納税が免除されれば、税負担がまったくなく、次の世代に株を承継することができます。 事業承継税制について詳しくは「事業承継税制とは。要件やメリットとデメリットをわかりやすく説明」をご参照ください。

事業承継税制以外の相続税対策

中小企業者に該当しない場合や後継候補者が15歳未満の場合等、事業承継税制の適用要件を満たすことができない場合もあるでしょう。 その場合には次の2種類の対策が考えられます。 ひとつは、株の相続税評価額が低く算定されるようにする対策で、もうひとつは相続する株を減らす方法です。

相続税評価額が低く算定されるようにする対策

まず、株の相続税評価額が低く算定されるようにする対策から説明します。 会社の株価が低く評価されれば、相続税対策となりますが、非上場株式の評価方法には、会社規模に応じて純資産価額方式と類似業種比準価額方式(および、これらの併用方式)があること前述のとおりです。 純資産価額方式の株価が低く評価されるためには次のような対策が考えられます。
  • 不動産等の時価よりも相続税評価が低いものに投資する
  • 役員退職金を支給する
  • 株式数を増やす
類似業種比準価額方式の株価が低く評価されるための対策は、主に次の3つに大別されます。
  • 配当金を引き下げることによる対策
  • 利益金額を引き下げることによる対策
  • 簿価純資産を引き下げることによる対策
これらの具体策については、多岐に渡るので、事業承継時の相続税対策に精通した税理士に確認するとよいでしょう。 また、会社規模を変更することによって評価額が下がることもあります。 中会社では、株の相続税評価額を併用方式によって算定しますが、併用方式では、会社規模が大会社に近づくほど類似業比準価額方式で算定する割合が大きくなります(純資産価額方式で算定する割合が小さくなります)。 純資産価額が類似業種価額を上回っている場合には、会社規模を大きくして類似業種価額によって算定される割合を大きくすることにより評価額を低くすることができます。

相続する株を減らす対策

相続する株を減らすためには、相続人以外の人に株を譲渡すればよいのですが、株が外部に流出すると、経営安定性を損なうこともありえます。 そこで、経営安定性を損なわずに、相続する株を減らすには、安定株主に譲渡する必要があります。 そのための方策のひとつとして、従業員持株会が考えられます。 従業員持株会を活用した相続税対策について詳しくは、事業承継時の相続税対策に精通した税理士に相談するとよいでしょう。

上場株式の相続税対策

上場株式の相続税評価額は、前述のとおり、次の4つのうち、最も低い株価で評価します。
  • 相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値 ※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
  • 相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
  • 相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
  • 相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均
底値の時に相続が開始されれば評価額が低くなりますが、相続開始時期をコントロールすることは現実的ではありません。 しかし、贈与であれば、贈与時期をコントロールすることができます。 贈与には、贈与税が課税されますが(ただし、相続開始前3年以内の贈与は贈与税ではなく相続税の対象となります)、贈与税の算定の基礎となる株の価額も、相続税のときと同様、次の4つのうち、最も低い株価で評価します。
  • 贈与日の終値 ※贈与日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
  • 贈与日の当月のすべての営業日の終値の平均
  • 贈与日の前月のすべての営業日の終値の平均
  • 贈与日の前々月のすべての営業日の終値の平均
ここ2、3か月以内に大きく高騰した株は、贈与すると節税になることがあります(ただし、相続開始時までに値が戻ってしまっていたら節税にはなりません)。 また、贈与の場合は、小分けにして暦年贈与(毎年贈与すること)することによって、税率を抑えることができます。 贈与税や相続税は、課税価格が小さいと税率も低くなり、課税価格が大きいと税率も高くなるという累進課税になっています。 したがって、小分けにして贈与することによって税率を抑えることができるのです(贈与税については「贈与税がかからない方法や贈与税の計算方法等の贈与税に関する全知識」参照)。

まとめ

以上、株にかかる相続税について説明しました。 株の相続に関する記事「株式を相続する前に知っておくべき株式相続の流れをわかりやすく説明」も必要に応じてご参照ください。 また、相続税対策については、簡単に概略だけ触れましたが、株に関する相続税対策は、考えられる対策が多岐に渡り、実施方法も複雑です。 詳しくは相続税対策に精通した税理士にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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