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遺言書作成を弁護士に依頼するメリットと流れ、費用の相場

遺言書作成の最も確実な方法は、弁護士に相談・依頼することです。 しかし、弁護士に頼むと費用が高いのではないかと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。 この記事では、遺言書作成を弁護士に依頼するメリット、費用の相場、それから、弁護士に相談してから依頼することを決めて遺言書が完成するまでの一連の流れ等について、わかりやすく丁寧に説明します。 是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2021年4月13日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

まず知っておきたい遺言書の基礎知識

遺言の主な方式には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。 自筆証書遺言とは、遺言者の自筆で書かれていて、公証人が手続きに関与していない遺言のことです。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです。公正証書遺言は、手間や費用がかかりますが、最も確実でおすすめの遺言方式です。 詳しい違いについては、弁護士との初回面談時に説明を受けることができるので、今はよくわからなくても心配ありません。

遺言書作成の弁護士に依頼するメリット

公正証書遺言では、公証人が遺言書を作成してくれるので、弁護士は不要と思われるかもしれませんが、弁護士に依頼すると次のようなメリットがあります。
  • 遺言内容について相談できる
  • 手間を削減できる
  • 遺言執行も併せて依頼できる
これらのそれぞれについて、以下、説明します。

遺言内容について相談できる

遺言者の死後に、相続人らによるトラブルを予防するためには、どのような遺言内容にするかについて、慎重に検討する必要があります。 例えば、遺言内容が遺留分(相続人の最低限の取り分)を侵害する場合は後に相続人間のトラブルを招くことになりかねませんし、寄与分や特別受益を考慮すべきかどうかとか、不動産をそのまま相続させるのか、売却して換価分割するのか、そのまま相続させたうえで不平等にならないように不動産を相続した人が他の相続人に対して代償金を支払うのか等、様々な選択肢を検討し、ベストの遺言内容を決めていかなければなりません。 弁護士には、どのような遺言内容にするのがベストかということも含めて相談することができます。 公証人は、法律の専門家ですが、あくまで第三者として公正・中立に、遺言者が話した内容に基づいて遺言書を作成するのが職務です。そのため、誰にどの財産を相続させるべきか、とか、どのような遺言にすれば相続税が軽減できるか、などといったような遺言の内容について相談をすることは基本的にできません。公証人は、「ベストの遺言書」を提案してくれるわけではなく、あくまで、遺言者の意思を聞いて、その意思に従って、適式な遺言書を作成してくれるにすぎないからです。 この点、司法書士・行政書士も、遺言内容について相談することはできません。遺言内容についての相談業務を、弁護士以外の人が報酬を得る目的で行うと、非弁行為といって、弁護士法に抵触するおそれがあります。司法書士・行政書士が遺言書作成の関してできることは、基本的には、遺言者の意思のとおりに遺言書文案を作成することと、公正証書遺言の手続きの一部を代行することです。

手間を削減できる

公正証書遺言をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を2人も探したりする手間が生じますし、また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。 弁護士に依頼すると、書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで済む場合が多いです。

遺言執行も併せて依頼できる

遺言執行とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行うことです。 遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。 遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになりますが、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。 一方、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、遺言執行者がいた方が確実かつスムーズに手続きを進めることができるでしょう。 また、相続開始後に家庭裁判所に申立をして遺言執行者を選任してもらうこともできますが、やはり、遺言で指名しておいた方が残された方々にとって面倒がないでしょう。 遺言執行者は、弁護士等の専門家ではなくても、相続人や受遺者であっても構わないことになっていますが、通常、相続人や受遺者は、遺言執行に関する知識がないでしょうから、適切な遺言執行ができない可能性もありますし、どうにかできたとしても大きな負担になるでしょうから、遺言作成を依頼した専門家に遺言執行者もまとめて依頼することをお勧めします。

遺言書作成の弁護士費用

遺言書作成の弁護士費用は、弁護士によっても異なりますし、遺産額、遺産の種類、評価額算定の難易度、相続人の数、相続人の人間関係の複雑さ等の事情によっても異なります。

遺言書作成の弁護士費用アンケート結果

日本弁護士連合会(日弁連)が2008年度に実施したアンケート結果にもとづく弁護士費用の目安を紹介します。 これは、次の設例における弁護士費用について、弁護士にアンケートを取ってまとめたものです。

設例

定型的な公正証書遺言を作成したい。資産は、不動産、預金と株券で、評価額の総額は5000万円である。

遺言書作成の弁護士費用

この設例における弁護士費用は、下の表のような分布になっています。 この設例のケースでは、10万円前後から20万円前後がほとんどです。 しかし、遺産に色々な種類の資産があったり、その評価額の算定が難しかったり、相続人の関係が複雑で紛争予防のためには遺産の分け方に知恵を絞らなければならないなどの事情があるときには、弁護士費用も高くなることがあります。

遺言執行者にもなっているときの遺言執行手数料

この設例における遺言執行手数料は、下の表のような分布になっています。 この設例では、40万円前後が4分の1を超えていますが、100万円前後、60万円前後と20万円前後がいずれも20%近くになっています。 遺言執行者の仕事の中味は、遺言の内容によって異なり、遺産の種類や数が多いなど、遺言執行者の仕事が多岐に渡る場合は、弁護士費用も高くなるケースが多いです。 なお、遺言執行の弁護士費用は、遺言の内容にもよりますが、遺言書作成時ではなく、遺言執行完了時に、遺言執行者が遺産から取得する場合が多いです。

日弁連の旧報酬等基準規程

現在は弁護士が料金を自由に設定することができますが、20043月までは、日弁連の報酬等基準規程(旧規程)に定められていました。 現在でも、この旧規程を参考に報酬を決める事務所が多いため、旧規程について説明します。 旧規定の報酬は、まず、遺言書が定型のものか非定型のものによって異なります。 遺言書にはよく使われる特定の型があり、そのような定型の遺言書であれば、概ね1回の打ち合わせのみで作成することができ、弁護士にとっても比較的手間がかからないため、報酬も比較的低廉で10万~20万円です。 非定型の遺言書は、弁護士にとっても、遺言者と複数回の打ち合わせが必要であったり、調べたりする手間がかかるので、報酬は比較的高額になります。 非定型のものであっても基本的な範疇のものは料金体系を示すことができますが(後掲)、特に複雑又は特殊な事情がある場合は、弁護士と遺言者との協議によって金額を定めます。 また、公正証書にする場合は、3万円が加算されます。 まとめると下表の通りです。
定型 10 万円から20万円の範囲内の額
非定型 基本 ※財産の額に応じて右のように変動 300万円以下の場合 20万円
300万円を超え 3000万円以下の場合 1%+17万円
3000万円を超え 3億円以下の場合 0.3%+38万円
3億円を超える場合 0.1%+98万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する。
前掲のアンケートの設例の弁護士費用を、旧規程に従って、計算してみます。 設例で作成する遺言書は、定型のものですから、10万~20万円が基本の弁護士費用となり、そこに、公正証書にする場合の費用3万円が加算され、合計で13万~23万円となります。 このように旧規程にもとづいて計算した場合も、前掲のアンケートと同じくらいの金額になり、このようにして計算した弁護士費用が相場と考えてよいでしょう。

初回相談無料の弁護士が増えている

初回の相談については、無料で受けている弁護士が増えています。 まずは、無料相談を受けてみて、依頼する弁護士を選ぶとよいでしょう。

弁護士に依頼した場合の遺言書作成の流れ

弁護士に依頼した場合の遺言書作成の流れは、概ね次のようになります。
  1. 事務所に電話又はメールで連絡し、面談を予約
  2. 予約した日時に、事務所を訪問し面談、又は、ビデオ会議システム等を利用して自宅等から遠隔で面談
  3. 契約
  4. 2回目の面談、遺言書文案作成
  5. 公正証書遺言の場合は公証役場で遺言書作成、自筆証書遺言の場合は弁護士が作成した文案を基に自筆で遺言書作成
以下、それぞれについて説明します。

1.面談予約

弁護士を選んで面談を予約します。 弁護士選びには、当サイトのこちらのページをご利用ください。選びやすいように、都道府県など検索条件を設定して絞り込むことができるようになっています。 営業時間内であれば電話、営業時間外であればメールフォームから連絡します。 なお、連絡する前の事前準備は不要ですので、気軽に連絡して大丈夫です。 メールフォームで連絡した場合は、事務所の営業時間に折り返しの連絡があるでしょう。 電話がつながったら、当サイトを見て連絡した旨と、遺言書を作成したい旨を伝えましょう。 そうすると、面談の候補日時をいくつかピックアップしてくれるでしょう。 初回面談料が無料かどうかはサイトにも記載されていますが(当サイトの場合)、念のため、電話等でも確認しておきましょう。 コロナ禍以降、ビデオ会議システムを利用した遠隔面談に対応している事務所も増えており、そのような事務所の場合は対面か遠隔かの希望を尋ねられるでしょう。 初回面談までに用意すべき書類等がある場合は、予約時に事務所から指示がありますが、初回面談は書類等の用意は不要な事務所が多いです。

2.初回面談、見積もり

初回面談が無料の場合は、相談料は不要です。 契約に必要な印鑑等の持参物は事前に事務所から指示があります。 面談では、次のような点を尋ねられることが多いです。
  • 遺言書作成の動機
  • 親族関係(誰が相続人になるのか)
  • 財産の状況
面談中又は面談の終わりに見積もりを提示されます。 気になる点がなければ、その場で契約することもできまし、持ち帰って検討することも可能です。 特に急ぐ理由もないのにその場で契約を急かすような弁護士は基本的にはいないはずですが、万が一、そのような弁護士に当たった場合は依頼を避けた方がよいでしょう。

3.契約

依頼する弁護士が決まったら、事務所の指示に従って契約手続きをします(このタイミングで弁護士費用を支払う場合が多いでしょう)。

42回目の面談、遺言書文案の作成

遺言内容を決めるために、詳細な打ち合わせをしたうえ、弁護士の方で遺言書文案を作成します。

5.遺言書作成

公正証書遺言の場合は公証役場で、自筆証書遺言の場合は遺言者が自筆で遺言書を作成します。

まとめ

以上、遺言書作成を弁護士に依頼する前に知っておくべきことについて説明しました。 遺言書作成は弁護士に依頼することで、遺されたご家族が遺産を巡ってトラブルを抱えることを予防することができます。 そのために、当サイトをご活用いただければ幸いです。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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