弁護士監修記事

遺言書の書き方をケースに応じた9つの例文でわかりやすく簡単に説明

遺言書なんて、生きているうちに自分が死んだ後のことを話すのは縁起が悪い、と考えられてきましたが、「終活」の普及とともに、むしろ、自分が死んだ後どうして欲しいかということをきちんと表明しておいた方がよいと考えられる方も増えてきており、生前に遺言書の作成を検討される方も増えてきたと思います。

ただ、遺言書の書き方には法律上細かいルールや注意しなければならない点がたくさんあります

良かれと思って遺言書を作成したのに、かえって無用な争いを生んでしまうことの無いよう、遺言書の書き方や種類、文例等、遺言書の作成を検討する際に知っておいて欲しい点についてまとめました。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

遺言書の種類

遺言書には大別すると、次の4つの種類に分けられます。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 特別方式遺言

以下、それぞれについて説明します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、その名称のとおり、自分で作成した遺言書のことです。

自筆証書遺言は、誰でもすぐに作成できますが、様式が厳格に定められており、様式を少しでも誤ると無効になってしまうというおそれや、紛失・偽造・変造といったリスクがあります

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場において、公証人に作成してもらい、公証役場で保管してもらう遺言書のことです。

自筆証書遺言と異なり、公証人に作成してもらうことから、様式を誤ってしまって無効になることはありませんし、偽造のおそれもありません。さらに、公証役場で保管してもらうことから、紛失や変造のおそれもありません。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を公証役場に持参し、「その方が書いた遺言書が存在すること」の証明を付けてもらった遺言のことです。

証明を付してもらった後は、遺言者が自分で遺言書を保管するか、誰かに保管を依頼することになります。

公証人による証明があるので、その遺言書を遺言者本人が間違いなく書いたということが証明できるという点が自筆証書遺言よりも優れているといえます。

特別方式遺言

特別方式遺言は、病気や災害等で死んでしまうかもしれないという緊急の状況にいる場合や、伝染病で隔離されている、船舶で航海中であるといった事情のため、正式な遺言書を作成することが困難な場合に、緊急的な措置として一時的に作成される遺言です。

あくまで一時的なものなので、遺言者が通常の方式で遺言ができる状況に戻ってから6か月間生存した場合には、特別方式遺言の効力はなくなってしまいます

自筆証書遺言の書き方

自筆証書遺言の文例

自筆証書遺言の様式については様々なルールがありますが、内容については、何をどのように書くかは遺言者の自由です。

ただ、自由に書いてよいと言われても、どのように書けば良いのかわからない方もおられると思いますので、遺言書における主なケースについて、簡単な文例を紹介します。

(この文例は、通常はそのままご使用いただけますが、作成される方の財産等の状況によっては一部変更した上で使用する必要がある場合もあるのでご注意ください)

不動産を相続させたい場合

車などの動産を相続させたい場合

株券などの有価証券を相続させたい場合

遺言執行者を指定したい場合

祭祀承継者を指定したい場合

相続人以外の者に財産を相続(遺贈)させたい場合

割合を指定して相続(包括遺贈)させたい場合

付言事項がある場合

予備的遺言(相続人が先に亡くなったときの考慮)について

遺言書が無効にならないための5つのポイント

必ず自筆で記載する

自筆証書遺言は、必ず「全文」を「自筆」で書く必要があります

最近では、文章を作成するときは、パソコンで作成することがほとんどになりましたが、パソコンで作成した遺言書は、仮に本人の署名や押印があっても無効になります。

遺言書本文を全部自筆し、添付する財産目録だけパソコンで作成したという事例においても、遺言書が無効と判断された裁判例もあるので注意が必要です。

必ず署名・押印する

自筆証書遺言には、遺言者が、必ず、氏名を自書した上で、押印をしなければなりません

また、署名をするのは、必ず遺言者1名のみとされており、夫婦二人で共同で遺言をするということはできないので、注意が必要です。

なお、押印は実印でなくてもよく、また、拇印でも良いのですが、拇印だと遺言者本人のものかどうかわからなくなる可能性があるので、避けた方がよいでしょう。

必ず日付を記載する。

自筆証書遺言には、必ず作成日を記載しなければなりません。

そして、この日付も「自書」しなければならないので、スタンプ等を利用すると無効になってしまいます。

また、「平成〇〇年〇月吉日」というような書き方も、作成日が特定できず、無効となってしまうので、必ず、年月日をきちんと記載することが大切です。

訂正の方法に気を付ける

自筆証書遺言の記載内容を訂正する場合もそのやり方が厳格に決められています。

必ず、訂正した場所に押印をして正しい文字を記載した上で、どこをどのように訂正したのかを余白等に記載してその場所に署名しなければなりません。

具体的には、訂正したい箇所に二重線等を引き、二重線の上に押印し、その横に正しい文字を記載します

そして、遺言書の末尾などに、「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記して署名をする、ということになります。

このように、訂正方法もかなり厳格なので、万が一、遺言書を訂正したいときは、できる限り始めから書き直した方がよいでしょう(訂正前のものは無用な混乱を避けるため必ず破棄するようにしましょう)。

2枚以上になったら契印をし、封筒などにいれて封印する

遺言書が2枚以上にわたった場合には、ホッチキス等で綴り、契印をするようにしましょう。

契印とは、二枚以上の書類がある場合に、それらが一式の書類で、順番に違いないこと(抜き取られていたり、足されたり、順番が入れ替わったりしていないこと)を証明するために、複数のページ(例えば1枚目と2枚目)に渡って印影が残るように押す印鑑のことです。

契印は遺言書が有効となるための必須の条件ではありませんが、偽造や変造を防ぐためには大切なことです。

同様に、遺言書を作成したら、封筒などに入れて封印をして保管するようにしましょう。

これも、封印しなかったからといって無効になるわけではないのですが、偽造や変造を防止するためには重要なポイントです(仮に偽造・変造されなかった場合でも、偽造や変造を疑われないためという意味において、契印や封印をしておくことが大切です)。

遺言書で相続人が困らないための3つのポイント

意思を明確に記載する

遺言書の内容は、遺言者が亡くなった後に他人が読んで明確に意味がわかるように記載する必要があります。

記載の内容が曖昧であったり、誤記があったりした場合、遺言書を開封したときには、遺言者は既に亡くなっているので、その意味を遺言者本人に確認することはできません。

裁判例においては、「遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈する」と判断されており、遺言書の内容に曖昧な部分や不明確な部分があっても、それだけで無効になるわけではありませんが、相続人間に無用なトラブルを生む可能性があるので、曖昧な表記等には気を付ける必要があります

遺留分に配慮する

兄弟姉妹以外の相続人には、遺言によっても奪われない最低限度の相続分として、法律上、遺留分(法定相続分の2分の1。親などの直系尊属のみが相続人の場合はその法定相続分の3分の1)が認められています。

この遺留分を侵害する遺言(遺留分を有する相続人に遺留分を下回る財産しか相続させない遺言)も法律上有効ですが、遺留分を侵害された相続人は、相続開始後、他の相続人に対して、遺留分減殺請求をすることができます

そのため、遺言によって遺留分を侵害してしまうと、遺言者の死後、相続人の間で揉め事が起きてしまう可能性があるので、その点に注意して遺言書を作成することが大事です。

遺留分について詳しくは「遺留分とは?遺言や贈与で持っていかれた相続財産を取り戻す方法を説明」をご参照ください。

遺言執行者を選任しておく

相続財産の中に不動産がある場合、遺言者が死亡した後、不動産の名義(登記)を遺言者から相続人(受遺者)に変更する必要があります。

この場合、不動産を相続させる者が1名であっても、名義変更(所有権移転登記)の手続きの際に、相続人全員の協力が必要となります。

このような実際の相続の場面における相続人の煩雑さを回避する方法として、遺言の中で遺言執行者を選任するという方法があります。

言執行者は、相続が開始した後(遺言者が死亡した後)、遺言書の内容に従って相続させるために必要な手続きを単独で行う権限を有しているので、種々の手続きに万が一、相続人の協力が得られないような場合であっても手続きを行うことができるというメリットがあります

遺言執行者は、相続人のうちの一人を選任しても構いません。

ただ、名義の変更等は専門的な知識を要するので、弁護士や司法書士に依頼する場合も多いです。

遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」をご参照ください。

遺言書を撤回したときには

ある方について遺言書が2通以上存在する場合で、その2通の内容が抵触する場合には、作成日付が後のほうの遺言書の内容が有効になります。

つまり、一度遺言書を作成した後でも、その内容と異なる遺言書を作成すれば、以前の遺言書の内容を撤回することができるということになります。

ただ、後の遺言書で撤回されるのは、前の遺言書のうち、あくまで内容が抵触する部分だけであって、抵触しない部分は効力を有したままということになります。

ネット上でも、遺言書を2通作成すると前の遺言書が全て撤回されるかのような記載がなされている場合もあり、勘違いされている方もおられるので注意が必要です。

自筆証書遺言で必要な検認とは

自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、そのままの状態では、その遺言書に従って被相続人の預金を引き出したり、土地や預金口座などの遺産(相続財産)の名義を変更したりすることはできません。

その前に家庭裁判所での検認という手続きが必要になります

まず、遺言書を発見した相続人または遺言書を保管していた人が家庭裁判所に検認の申し立てを行います。

そうすると裁判所から法定相続人全員に検認期日の通知が届くので、その期日に家庭裁判所に出頭し、裁判官や他の相続人の立ち合いのもとで、遺言書を開封して内容を確認します(既に開封されている場合は、内容の確認のみとなります)。

そして、検認が終了すると、家庭裁判所が遺言書に検認済の書類を付けてくれます(事前に検認済証明書の申請が必要です)。

この状態になってはじめて、遺言の内容に従って遺産の名義を変更すること等が可能になるのです。

なお、検認期日の通知は法定相続人全員に届きますが、申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは各人の判断に任されているため、必ずしも相続人全員が期日に出頭する必要はありません。

自筆証書遺言の保管制度について

上記の検認制度に代わる制度として、自筆証書遺言の保管制度が平成30年の法改正(法務局における遺言書の保管等に関する法律)によって創られました。

実際の制度が開始するのは、政令によって法律の施行日が決まってからとなりますが、この制度は、遺言者が、自筆証書遺言を作成した後、指定の法務局に遺言書を持参し、保管を申請したときには、遺言者の死亡後、家庭裁判所での検認を経る必要がなくなるというものです。

作成されてからずっと法務局で保管されるため、偽造・変造のおそれがないことから、自筆証書遺言であっても検認の手続きが必要ないとされたのです。

なお、相続人としては、遺言者の死亡後、自分が相続人となっている遺言書が法務局に保管されているかどうかの照会や、自分が相続人となっている場合の遺言書の閲覧請求等によって遺言書の有無や内容を確認できることになっています。

公正証書遺言の書き方

公正証書遺言は、遺言書に記載する内容(誰にどの遺産を相続させるか等)を決めた後、公証役場に赴いてその内容を公証人に伝えることで、公証人に遺言書を作成してもらうことができます

公正証書の書き方や作成に要する費用等については「公正証書遺言で最も確実かつ誰でも簡単に遺言をする方法を丁寧に解説」をご覧ください。

秘密証書遺言の書き方

秘密証書遺言は、自分で遺言書を作成し、署名・押印した上で、その遺言書を封筒に入れ、遺言書に押印した印と同じ印で封印します

そして、その封筒を公証役場に持参し、公証人に、「その遺言書が遺言者によって書かれたものである」ということを封筒に記載してもらうという方法で作成します。

なお、この際、証人2名が必要で、証人も封筒に署名・押印します。

秘密証書遺言の場合の封筒に入れる遺言書は、必ずしも自筆証書遺言の要件を満たしていなくても(例えばパソコンで作成していたり、作成日が記載されていなかったりしても)無効とはなりません。ただし、訂正の方法が間違っていたり、様式に不備がある場合には秘密証書遺言も無効となる場合がありますので、ご注意ください。

特別証書遺言の書き方

特別証書遺言は、通常の遺言書を作成することができない状況下で作成されるものであるため、その時の状況によって作成方法が多少異なります。

病気等で死期が差し迫っている場合には、証人3人以上の立会のもと、証人の一人に遺言者が口頭で遺言の内容を伝え、証人がこれを記載する方法で作成します(一般臨終時遺言)。

伝染病で隔離されている場合には、警察官1人および証人1人以上の立会のもと遺言者本人が遺言書を作成します(一般隔絶地遺言)。

船舶中にいる場合には、船長または事務員1人および証人2人以上の立会のもと遺言者本人が遺言書を作成します(船舶隔絶地遺言)。

なお、船舶中で死期が差し迫っている場合は、証人2人以上の立会のもと、口頭で行うこともできます(難船臨終遺言)。

「遺贈する」と「相続させる」の違い

遺言には、「○○を○○に遺贈する。」と書くこともあれば、「○○を○○に相続させる。」と書くこともあります。

「遺贈する」と「相続させる」の違いについて説明します。

まず、遺言によって財産を承継する人が法定相続人(法律の定めに則ると相続人となる人)でない場合は、「相続させる」ことはできず、「遺贈する」ことしかできません(法定相続人について詳しくは「法定相続人とは?法定相続人の範囲と優先順位、相続割合を図で説明」をご参照ください。)。

遺言によって財産を承継する人が法定相続人である場合は、「相続させる」ことも「遺贈する」こともできますが、「相続させる」と書くことをお勧めします。

「相続させる」と「遺贈する」に違いが生じるのは、遺言によって承継される財産に不動産が含まれている場合のみです。

「相続させる」には、次のようなメリットがあります。

  • 不動産登記がスムーズ
  • 登記がなくても相続債権者に対抗できる
  • 借地権や借家権について賃貸人の承諾が不要

なお、かつては、「相続させる」の場合は、農地取得について農業委員会や知事の許可が不要というメリットがありましたが、この点は、「農地法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)」(平成24年12月14日付け法務省民二第3486号)によって、「遺贈する」の場合も不要となりました。

以下、それぞれについて説明します。

不動産登記が単独でできる

不動産登記の際に、「相続させる」の場合は、遺言で指定された相続人が単独で登記することができますが、「遺贈する」の場合は相続人全員の協力が必要です(遺言執行者がいる場合は、「遺贈する」の場合でも遺言執行者と受遺者だけで登記でき、相続人の協力は不要)。

登記がなくても相続債権者に対抗できる

「遺贈する」の場合は、登記を具備しなければ、相続債権者(被相続人(亡くなって財産を残す人)の債権者)に対して権利を主張できませんが、「相続させる」の場合は、登記前でも相続債権者に対して権利を主張することができます。

借地権や借家権について賃貸人の承諾が不要

「遺贈する」の場合は、借地権や借家権の遺贈を受けるのに、賃貸人の承諾が必要ですが、「相続させる」の場合は不要です。

相続させる旨の遺言のデメリット

相続させる旨の遺言にもまったくデメリットがないわけではありません。

相続させる旨の遺言をした場合に、受遺者が遺言の利益を放棄して本来的な相続分のみを相続したい場合に、受遺者の意思表示だけでは、これを行えない可能性があります(詳しくは後述)。

遺贈する旨の遺言であれば、受遺者は、自らの意思表示のみによって遺言の利益を放棄することができます。

遺言書の書き方について専門家に相談したいときには

遺言書は、遺言者が亡くなった後の財産の行く末について意思表示をすることができる大事な書面です。

また、財産の行く末だけでなく、家族の在り方等、遺族に対して伝えたいメッセージを残すことのできる書面でもあります。

ただ、一口に遺言書といっても、その形式も様々ですし、作成方法も形式によって異なります。

形式によってメリット・デメリットもあります。

そこで、自分が遺言を残すならどの方法によればよいのか迷われた場合には、せっかく相続人のためを思って残した遺言書が無効になってしまうようなことの無いよう、それぞれの遺言書の法的な効力や作成方法、そのメリット・デメリットに詳しい専門家(遺言書は法的な文書なので、専門家の中でも弁護士に相談をするのが最も適している場合といえます)に相談されるとよいでしょう

まとめ

遺産は、被相続人が、人生の長い時間をかけて築いてきた財産ですから、その行く末については、なるべく被相続人の意向が尊重されるべきですし、その意向を最も端的に表しているのが遺言書です。

遺言書には、財産の分け方はもちろん、自分のお葬式をどのようにして欲しいかとか、遺族にどのように生きて行って欲しいかといった遺族への最後のメッセージも記すことができます。

あなたの死後、遺族が相続で揉め事を起こさないように、そしてあなたの最後のメッセージを遺族に伝えるために、「縁起が悪い」などといわずに、積極的に遺言書の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

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