弁護士監修記事

公正証書遺言の効力に関する全知識!遺留分侵害、認知症、有効期間

公正証書遺言の効力は、自筆証書遺言とは違うのでしょうか?

この記事では、公正証書遺言の効力に関する知識について、弁護士がわかりやすく丁寧に説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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公正証書遺言は無効になりにくく、意図したとおりの効果を生じさせやすい

遺言の主な方式には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

自筆証書遺言は、次のような場合に、無効となります。

  • 自書でない箇所がある
  • 日付がない
  • 署名がない
  • 押印がない

この点、公正証書遺言は、元裁判官や元検察官といった法律の専門家である公証人が作成するため、遺言者が自書する必要はありませんし、形式不備によって無効となることもほぼありません。

また、自筆証書遺言では、形式要件をクリアしても、表現が曖昧な場合等、遺言者が意図したとおりの効果が生じないこともありますが、公正証書遺言の場合は、公証人が作成するため、そのようなリスクも避けることができます。

公正証書遺言でも無効になる場合がある

しかし、公正証書遺言であっても、次のような場合には無効となります。

  • 遺言作成時に遺言者に遺言能力がなかった
  • 証人としての要件を満たす人が証人となっていなかった
  • 詐欺や脅迫等によって遺言者の真意に基づかない遺言内容となった

以下、それぞれについて説明します。

遺言作成時に遺言者に遺言能力がなかった

遺言能力とは、有効な遺言をするための能力、言い換えると、遺言内容を理解し判断する能力のことです。

次のようなケースでは、遺言能力はないものとされます。

  • 15歳未満の場合
  • 認知症等で意思能力がない場合

遺言をすることができるのは、15歳以上の人です。

15歳未満の人がした遺言は、親権者等の法定代理人が同意の有無にかかわらず無効です。

15歳以上であれば、未成年であっても、法定代理人の同意なく遺言をすることができます。

公正証書遺言の手続時に公証人が遺言者の本人確認書類によって遺言者の年齢を確認するため、15歳未満の人が公正証書遺言をして、それが後から無効になるということは、まずないでしょう。

可能性としてあり得るのは、遺言者が遺言時に認知症等で意思能力がなかったというケースです。

意思能力とは、自己の行為の結果を判断することのできる能力であり、意思能力があるといえるには、一般的には7~10歳程度の知力があれば足りるとされますが、あくまで当該行為者について個別具体的に判断されます。

一般的な意思能力の説明としては以上の通りですが、遺言は普段の買い物等よりも複雑な法律行為ですし、前述の通り15歳以上でなければできないので、7歳~10歳程度の知力では遺言能力がないとされ、無効となる可能性があります。

公証人は遺言者の遺言能力に疑いがあるときは、本人の判断能力が十分に備わっているかを確認するために質疑応答などを行ったりしますが、必ずしも遺言書の作成を拒否するわけではありません。

よって、公正証書遺言であっても、後に遺言能力が否定されることがあるのです。

それでは、具体的に、どの程度の認知症から遺言が無効になってしまうのでしょうか。

この点、成年被後見人(精神上の障害により事理を弁識する能力(自己の行為の結果を判断することのできる能力)を欠く常況にあって後見開始の審判を受けた人のこと。詳しくは「成年後見人とは?成年後見制度のデメリット、家族信託という選択肢も」参照)については、遺言をするための具体的な要件が民法に定められています。

第973条  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、基本的には遺言はできませんが、一時的に事理弁識能力を回復した時は遺言をすることができます。

ただし、二人以上の医師に、事理を弁識する能力を欠く状態になかったことを証明してもらわなければなりません。

協力してくれる医師が都合よく見つからないこともあって、成年被後年人が遺言をすることは簡単ではありません。

それでは、成年被後見人ではない認知症の人の場合はどうでしょうか。

認知症の人がした遺言が有効かどうかは、主に次の要素から判断されます。

  • 遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
  • 遺言内容それ自体の複雑性
  • 遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

以下、それぞれについて説明します。

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度は、次の観点から考察されます。

  • 精神医学的観点
  • 行動観察的観点

以下、それぞれについて説明します。

認知症患者の遺言能力の有無を精神医学的観点から判断する指標として、長谷川式スケールの点数が重視されています。

長谷川式スケールでは、点数に応じて、下表の通り、簡易的な診断をすることができます。

20点以上異常なし
16~19点認知症の疑いあり
11~15点中程度の認知症
5~10点やや高度の認知症
4点以下高度の認知症

大まかな目安として15点以下の場合は遺言能力に疑いが生じ、10点以下の場合は遺言能力がないとする見解もありますが、遺言能力の有無の判断は精神医学的観点のみから行われるものではなく、裁判例でも4点で遺言が有効となったものから、15点で無効となったものまで様々です。

長谷川式スケールによる診断の際は、名古屋市医師会の作成のシートが見やすく説明も丁寧なのでお勧めです。

次に、行動観察的観点についてですが、行動観察観点からは、医療記録、看護記録、介護記録や、それらの作成者等の供述等から知ることができる遺言者の当時の行動等によって遺言能力の有無が判断されます。

遺言内容それ自体の複雑性

障害の程度が大きくても遺言内容が単純であれば遺言能力が認められやすくなりますし、反対に、障害の程度が小さくても遺言内容が複雑であれば遺言能力は認められにくくなります。

遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

例えば、親族や同居人を差し置いて、親戚関係も、深い付き合いもない人に全財産を遺贈(遺言によって財産を贈ること)しているようなケースでは、このような遺言をする動機や理由がなく、遺言に至る経緯も不自然であるので、遺言能力があったことに疑問が生じるでしょう。

証人としての要件を満たす人が証人となっていなかった

公正証書遺言では証人が2人必要であり、次のいずれかに該当する人は、証人となることができません。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

1の未成年者は、20歳未満の人のことです。

202241日以降は、法改正によって成年年齢が引き下げられ、18歳未満の人が未成年者となります

2の推定相続人とは、その時点において、最優先順位の相続権(代襲相続権を含みます。)を持っている人のことです。

つまり、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。

なお、遺言書作成時に推定相続人でなければ、遺言書の作成後に、結果的に推定相続人になったとしても問題ないとされます。

また、受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。

配偶者とは、ご存知の通り、妻や夫のことです。

直系血族とは、親子関係でつながる人のことで、祖父母、父母、子、孫などが、これに当たります。

例えば、Aさんの妻Bさんと、Aさんの子Cさんが、Aさんの財産の推定相続人であったところ、Aさんは、愛人Dさんに遺贈(遺言によって財産を与えるいこと)する旨の公正証書遺言を作成したとします。

その場合、Bさん、Cさん、Dさん、それから3人の配偶者と直系血族は、Aさんの遺言の証人になることはできません。

3の公証人とは、事実の存否や、契約や法律行為の適法性等について、証明したり認証したりする公務員のことです。

公証人は公正証書遺言の存在や内容を証明する手続を行いますが、同じく公正証書遺言の存在や内容を証明する証人が、公証人と関係があることが許されるのであれば、公証人とは別に証人を求める意義が乏しくなってしまいます。

したがって、証人は、公証人と関係のある人(配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人)ではいけません。

このような、証人となることができない人が証人となっていた場合、遺言は無効になります。

詐欺や脅迫等によって遺言者の真意に基づかない遺言内容となった

詐欺や脅迫等によってさせた遺言は無効となります。

また、詐欺や脅迫によって、遺言の撤回・取消・変更が妨げられた場合も無効となります。

ただし、遺言者の死後に、詐欺や脅迫があったことを証明することは、よほど明白な証拠が残されていない限り難しいでしょう。

遺留分を侵害する内容の遺言でも効力がある

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人(亡くなった人)の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことで、被相続人の生前の贈与又は遺贈(遺言によって財産を取得させること)によっても奪われることのないものです。

つまり、遺言の形式は関係なく、遺言の形式が自筆証書遺言であっても公正証書遺言であっても、遺贈によって遺留分を侵害された場合は、遺留分権利者はその侵害額を受遺者(遺贈によって財産をもらい受けた人)等に請求することができます。

遺留分が遺言よりも優先されるとはいえ、遺留分を侵害する遺言が無効になるわけではありません。

遺留分を侵害された人は、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害額請求することができます。

つまり、遺言自体は有効であって遺言の内容に沿って遺産が承継され、遺留分侵害額請求があれば、侵害額を弁済することになります。

なお、遺留分は権利なので、遺留分侵害額を請求しなければならないわけではありません。

請求するかしないかは、遺留分権利者の自由です。

合意があれば遺言内容に従わなくてもよい

遺言によって、すべての相続財産の処分(受取先)が指定されている場合は、遺産分割の必要はありませんが、その場合でも、相続人と受遺者全員の同意がある場合は、遺言の指定と異なる遺産分割を行うことが可能です。

遺言書の効力に期間制限はない

遺言書に効力がある期間はいつからいつまでですかと質問を受けることがありますが、期間制限はありません。

大昔に作成した遺言書でも、それよりも新しい遺言書が見つからなければ、効力を有します。

なお、新しい遺言書が見つかった場合でも、古い遺言書の内容を取り消したり変更したり、古い遺言書と矛盾する内容の記載がなければ、古い遺言書も効力を有します。

また、遺産分割後に遺言書が見つかった場合でも、遺言書は効力を有します。

遺言の効力が時効によって消滅するようなことはないのです。

よって、相続人の誰かが遺産分割の無効を主張すれば、基本的には、遺産分割は無効となり、遺言に沿って遺産分割をやり直すことになります。

ただし、遺産分割から長い年月が経った後に遺言書が見つかった場合は、既に財産が相続人の元に残っていなかったりして、再分配が難しくなることもあります。

そのような場合は、どうすべきかについては、弁護士に相談することをお勧めします。

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なお、遺言書があっても、前述の通り、相続人全員の同意があれば、遺言の指定と異なる遺産分割をすることができるので、全員が同意すれば、そのまま遺産分割を有効としても構いません。

また、遺言書の存在を元から知っていた人や、遺言書が見つからなかったことについて重大な過失がある人による遺産分割の無効を主張は認められない可能性があります。

まとめ

以上、公正証書遺言の効力について説明しました。

公正証書遺言の効力について当事者間で争いや疑問がある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

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