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相続放棄の範囲はどこまで続く?孫、直系尊属、親戚も手続が必要?

相続が発生した際に誰が相続人になるかは、民法で定められています。

相続放棄をすると、次の相続順位の人に相続権が移ります。

亡くなった人が借金等で債務超過であった場合は、相続放棄をしないと、債務を相続して悲惨な目にあってしまいます。

自分が相続放棄をすることによって、誰に相続権が移るのか、そして、その人も相続放棄をした場合はどうなるのか?親戚関係のどこまで相続放棄しなければならないのか、気になる方も多いでしょう。

この記事では、相続人の範囲と相続順位のルールについて説明したうえで、相続放棄がどこまで続くかという点について説明します。

また、相続人全員で相続放棄をする際に手続きをスムーズに進めるポイントや、相続放棄をした遺産の管理義務、全員が相続放棄をした場合の遺産の行き先についても併せて説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2020年7月14日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

法定相続人の範囲と相続順位

相続放棄の範囲はどこまで続くか?という質問に答える前に、まず、法定相続人の範囲と相続順位について説明します。

法定相続人とは、民法で規定された相続する権利を持つ人をいいます。

法定相続人は、配偶者と血族相続人に分けられます。

配偶者は必ず相続人になる

被相続人が亡くなった時に配偶者が存在していれば必ず法定相続人となります。

なお、内縁の妻や内縁の夫、離婚した元妻や元夫は、配偶者ではないので、法定相続人にはなりません。

血族相続人には優先順位がある

血族相続人には下表の通り優先順位があり、先順位の血族相続人が存在しない場合(または全員が相続放棄をした場合)でなければ、後順位の血族相続人には相続権が回ってきません。

相続順位被相続人との関係代襲相続
第一順位あり(再代襲もあり)
第ニ順位直系尊属(最も親等の近い者)
第三順位兄弟姉妹あり(再代襲はなし)

これを図にすると、次のようになります。

なお、血族には、生物学上の血縁関係がある自然血族のほかに、養親子のように法律上の血族である法定血族もあり、法定血族も自然血族と同様に相続権をもつことができます。

また、配偶者の血族(舅・姑など)や、血族の配偶者(嫁など)のように、婚姻関係によって成り立つ姻族は、血族ではないので、相続権はありません。

以下、相続順位ごとに詳しく説明します。

第一順位:子

被相続人(亡くなって財産を残す人)の子は、第一順位の相続人です。

養子、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間の子)、離婚後に疎遠になった子も、被相続人の子ですから、すべて相続人となります。

また、被相続人の実子で、外に養子に出た子も相続人になります。

ただし、養子縁組には、実親との親子関係を断つ特別養子縁組というものがあり、外に特別養子縁組に出た子は実親の遺産の相続人となることはできません。

なお、胎児については、胎児の状態で既に相続する権利をもっているのですが、出生しなければ、権利を行使することはできません。つまり、流産や死産の場合は相続人となることはできません。

また、被相続人の子が相続開始以前(被相続人の死亡前)に死亡したり、欠格事由(遺言書の偽造等の不正。詳しくは「相続欠格とは?相続欠格事由とは?判例に基づいてわかりやすく説明」参照)や廃除(被相続人への虐待等の著しい非行。詳しくは「相続廃除の意味とは?排除は誤字!推定相続人の廃除で遺留分をなくす」参照)によって相続権を失ったりした場合、相続人に代わって「相続人の子」が相続人となります。これを代襲相続といいます。

例えば、被相続人が亡くなる前に被相続人の子Aが死亡した場合に、Aに代わってAの子Bが法定相続人になります。

さらに、Bも被相続人よりも先に死亡している場合は、Bの子が法定相続人になります。これを再代襲相続といいます。

子、孫といった直系卑属については、理論的には代襲相続が無限に続くことになります。

なお、相続放棄した人の子は代襲相続人となることはできません。

代襲相続について詳しくは「代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識」をご参照ください。

第二順位:直系尊属

第一順位の血族相続人(子及びその代襲者)がいない場合、直系尊属(父母や祖父母のように直通する系統の親族で前の世代の人)がいれば、直系尊属が相続人になります。

親等の異なる直系尊属がいる場合は、親等が小さい人だけが相続人となります。

親等とは、親戚関係の法的な遠近を表す単位のことです(詳しくは「親等とは?誰でもわかる親等の簡単な数え方と一目瞭然の親等一覧図」参照)。

父母は一親等で、祖父母は二親等なので、父母と祖父母が健在の場合は、父母だけが相続人になります。

第三順位:兄弟姉妹

第一順位の血族相続人(子及びその代襲者)も、第二順位の血族相続人(直系尊属)もいない場合、被相続人の兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が死亡、欠格または廃除によって相続権を失った場合には、兄弟姉妹の子が代襲して相続人になりますが、兄弟姉妹の子も相続権を失った場合には、その子(兄弟姉妹の孫)は相続人にはなりません。

兄弟姉妹の再代襲相続は認められないということです。

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相続放棄の範囲はどこまで続く?

前置きが長くなりましたが、本題の説明に移ります。

上記の説明の繰り返しになる部分もありますが、相続放棄に主眼をおいて、なるべくわかりやすく説明します。

配偶者が相続放棄をしても、誰かに相続権が移ることはありません。

子供(及びその代襲者)の全員が相続放棄をすると、父母の少なくともいずれかが存命なら父母に相続権が移ります(子供が相続放棄をしても、その子供である被相続人の孫には相続権は移りません(相続放棄による代襲は生じない))。

父母が相続放棄をすると(又は、父母とその上の世代が全員亡くなっている場合)、祖父母やその上の世代の誰かが存命の場合はその人に相続権が移ります。

祖父母や上の世代の全員が亡くなっているか又は相続放棄をした場合は、兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子供(被相続人の甥及び姪))に相続権が移ります。

兄弟姉妹(及びその代襲者)の全員が相続放棄をしても、これ以上、親戚には相続権は移りません。

よって、相続放棄が続く範囲は、兄弟姉妹(及びその代襲者である甥・姪)まで、ということになります。

質問の多い孫については、上記のとおり、孫の親(被相続人の子供)が相続放棄をしても相続権は回ってこないため、相続放棄の手続きは不要です。既に親が亡くなっている場合等で孫が代襲相続人の場合は、相続放棄の手続きが必要です。

相続人全員で同じ専門家に手続きを依頼すると費用の節約になり手間も省ける

同順位の相続人と配偶者相続人は、同時に相続放棄をすることができますが、異なる順位の相続人は同時に申述の手続きをすることはできません。

先順位の相続人の放棄が受理されてからでなければ、後順位の相続人は申述の申立てができません。

なお、相続放棄の申述には戸籍謄本等の書類が必要ですが、複数の相続人が相続放棄する場合は、共通する書類は1部で構いません(先順位の相続人が提出済みの書類は、後順位の相続人が申述する際には提出不要です)。

また、相続放棄の申述を弁護士や司法書士に依頼する場合は、複数の相続人(相続順位が異なっていても構いません)で同じ専門家に依頼すると、一人当たりの代行費用が安く済むことが多いので、お勧めです。

相続放棄の申述については「相続放棄手続きを自分で簡単に済ませて費用を節約するための全知識」をご参照ください。

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相続放棄をした場合は他の相続人らに連絡した方がよい

亡くなった方に借金があった場合、先順位の相続人が相続放棄すると、次の順位の相続人に借金の請求が行く可能性がありますが、次順位の相続人は、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知らない可能性もあるので、先順位の相続人は、自分の相続放棄が家庭裁判所に受理されたときは、次順位の相続人に相続放棄をした旨を伝えておいた方がよいでしょう。

連絡することは義務ではありませんが、突然、借金の取り立てが来ると驚くでしょうから、円滑に全員が相続放棄を進めるためには、連絡をしておいた方がよいでしょう。

親戚関係が疎遠になっていると、このような連絡が負担に感じられることもあるでしょう。

専門家に相続放棄の手続きを依頼すると、次順位の相続人への連絡も代行してもらえることが多いです。

相続人全員が相続放棄をしたら誰が遺産を管理する?

民法940条には「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています。

つまり、相続放棄をしたからといって直ちに相続財産の管理義務を免れるわけではありません。

次順位の相続人が管理を始めることができるまでは、その財産の管理を継続しなければならないのです。

そして、相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産管理人が選任され、相続財産管理人が相続財産の管理を始めたら、相続人による相続財産の管理義務がなくなります。

相続財産管理人について詳しくは「相続財産管理人を選任すべきケースほか相続財産管理人に関する全知識」をご参照ください。

相続人全員が相続放棄をしたら誰が遺産を取得する?

相続人全員が相続放棄をした場合は、次の優先順で遺産を取得します。

  1. 債権者
  2. 受遺者(遺言によって財産をもらい受ける人)
  3. 特別縁故者
  4. 遺産の共有者 ※共有している遺産のみ対象

特別縁故者とは、次のいずれかに当てはまる人のことをいいます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

特別縁故者について詳しくは「特別縁故者として財産分与を受けるために絶対に知っておくべき9のこと」をご参照ください。

なお、相続人全員が相続放棄をした場合の手続きの流れは、次のように進められます(なお、元から相続人がいない場合も同様です)。

  1. 利害関係人等が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。
  2. 家庭裁判所が必要があると判断したときは相続財産管理人が選任されます。
  3. 家庭裁判所が相続財産管理人が選任されたことを知らせるために公告を行います。
  4. 2か月後、相続財産管理人が相続債権者と受遺者に対して請求を申し出るべき旨を2か月以上の期間を定めて官報に公告します。
  5. さらに上記の公告期間経過後、家庭裁判所は、財産管理人の申立てによって、相続人を探すために、6か月以上の期間を定めて公告を行います。
  6. 期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。
    ※通常は、申立て前に既に相続人調査を行い、相続人がいないことを確認したうえで、申立てを行っているでしょうから、この期間に相続人が現れることは、ほとんどありません。
  7. 特別縁故者がいる場合は、特別縁故者は、相続人を探すための公告期間満了後3か月以内に、財産分与の申立てを行います。
  8. 必要に応じて、相続財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、相続財産を換価します。
  9. 相続財産管理人は、債権者や受遺者への支払いをしたり、特別縁故者に相続財産を分与するための手続きを行います。
  10. 財産が残った場合は、残余財産を国庫に返納します。

配偶者に遺産を譲りたい場合は相続放棄ではなく相続分の譲渡を

被相続人の子供が被相続人が配偶者に遺産を譲りたくて相続放棄をしようとすることがありますが、これには注意が必要です。

なぜなら、子供全員が相続放棄をすると、後順位の相続人に相続権が移り、後順位の相続人が相続放棄をせずに、意図したとおりに配偶者が全遺産を相続できないことがあるためです。

相続順位の異なる相続人が同時に相続放棄の手続きをすることはできません。先順位の相続放棄が受理されてからでなければ、後順位の相続人の相続放棄の申立てはできないのです。

したがって、相続順位の相続人間で相続放棄することを約束し、まずは先順位の相続人が相続放棄したしても、後順位の相続人が相続放棄をしないこともあり得ます。

配偶者に遺産を譲りたい場合は、相続放棄ではなく、相続分の譲渡をするとよいでしょう。

相続分の譲渡なら、後順位の相続人に相続権が移ることはありません。

また、相続放棄のような手続きが不要で、その旨の遺産分割協議書を作成するか、相続分譲渡証明書を作成するだけで事足ります。

相続分の譲渡については「相続分の譲渡によって面倒な手続きなく遺産争いから解放される方法」を、遺産分割協議書の作成方法については「相続人の一人が単独で全て相続する場合の遺産分割協議書の書式」を、相続分譲渡証明書については「相続分譲渡証明書の書式・効力・危険性について弁護士が説明!」をそれぞれご参照ください。

相続分の譲渡について不明な点は弁護士に相談するとよいでしょう。

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まとめ

以上、相続放棄はどこまで続くか等について説明しました。

相続放棄の手続きには期限がありますが、つつがなく相続人全員が相続放棄をして、借金から解放されるためには、手続きを弁護士や司法書士に依頼するとよいでしょう。

全員で相続放棄をする場合は、一人当たりの手続き代行費用が、格段に安くなることもあります。

当サイトでも相続放棄に精通した弁護士や司法書士を掲載しています。

下からお住いの都道府県を選んで、リンク先のページから専門家に相談してみるとよいでしょう。

相続放棄でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
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