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遺言公正証書とは。費用、必要書類、証人、効力、見本、謄本請求

遺言公正証書(公正証書遺言)の書き方、承認、費用

遺言書を作成しても書き方のミスや抜け漏れなどにより、無効になる場合があります。もしくは相続人に見つけてもらえないことも…。

そのようなことを防ぐには、遺言書を公正証書にしておくと安心です。公正証書にした遺言書を「公正証書遺言」と言います。

公正証書遺言だと無効になる恐れは少なく、また公証役場で保管されるため書き換えられることもありません。

一方、公正証書遺言のデメリットとしては費用がかかること、証人が必要なことなどが挙げられます。ほかの遺言書の方式と合わせて、違いを理解しておきましょう。

今回は遺言公正証書の手続きや費用、メリット・デメリットなど詳しく解説します。遺言書の作成を検討している人は是非、参考にしてください。

遺言公正証書とは?

遺言公正証書」とは、遺言を公正証書にしたもののことをいいます。

また、公正証書にした遺言のことを「公正証書遺言」といいます。

公正証書とは、私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。

公証人とは、法務大臣に任命された公正証書の作成人で、多くの場合、元裁判官や元検察官が公証人を務めています。

公証役場は全国に300ヶ所近くあり、一つの県に複数設置されています。

遺言には数種類の方式がありますが、主に利用されているのは、自筆証書遺言(遺言者が自分で作成する遺言)と公正証書遺言です。

自筆証書遺言の場合は、法律に定められた方式に従っていないため無効となったり、遺言内容が自分に不利であるとみた相続人によって破棄、隠匿される等の危険があるほか、家庭裁判所の検認という手続きが必要とされます。

これに対して、公正証書による遺言は、公平かつ中立な第三者である公証人が法定の方式に従って作成するものであり、以上のような心配や危険性はなく、自筆証書による遺言よりもはるかに安全・確実であり、家庭裁判所の検認の手続きも不要です。

いずれにせよ、遺言は正しく書き、正しく遺さなければ意味がありません。遺言の作成に迷ったりわからなことがある方は、専門の士業に相談することをおすすめします。

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遺言公正証書のメリットとデメリット

自筆証書遺言と比べた遺言公正証書のメリットとデメリットについて説明します。

遺言公正証書のメリット

遺言公正証書には、次のようなメリットがあります。

  • 無効になるおそれが基本的にない
  • 遺言書を紛失するおそれがない
  • 遺言書を偽造されるおそれがない
  • 検認が不要
  • 文字を書けなくても作成できる

以下、それぞれについて説明します。

無効になるおそれが基本的にない

自筆証書遺言は、遺言書に日付がなかったり、自筆で書かずにパソコンで作成したりしただけで無効になってしまう、というように、法律上その様式が厳しく定められているため、ちょっとした誤りで無効になってしまう可能性があります。

これに対し、遺言公正証書は、法律の専門家である公証人が作成するので、作成方法を誤ったために無効になってしまうという可能性は限りなく低いといえます。

また、自筆証書遺言は、遺言者がその遺言を作成した時点で認知症を発症していたような場合、作成時に十分な意思能力がなかったとして後で無効になってしまう可能性がありますが、遺言公正証書の場合は、公証人が遺言者と直接会って話をして、意思能力があるかどうかについても判断をしながら作成するので、後から意思能力がなかったという理由で無効になってしまうこともほとんどないといえます。

遺言書を紛失するおそれがない

遺言公正証書の原本は、作成後、公証役場において保管されます。

そのため自筆証書遺言と異なり、紛失してしまうリスクがありませんし、誰かに無断で書き換えられてしまうというリスクもありません。

遺言書を偽造されるおそれがない

遺言公正証書は、公証役場でしか作成することができず、公証人は、遺言公正証書の作成時に、必ず本人確認を行います。

そのため、自筆証書遺言と異なり、本人の名を語って勝手に遺言書が偽造されてしまうということはあり得ません。

検認が不要

自筆証書遺言は、遺言者が法務局における保管制度を利用していない限り、遺言者の死亡後、家庭裁判所において遺言書を開封して中身を確認するという「検認」手続きが必要になります。

検認手続きにおいては、家庭裁判所から相続人全員に出頭を求める通知がなされ、相続人、裁判官立ち会いのもとで遺言書が開封されます(必ずしも相続人全員が出頭しなければならないわけではありません)。

しかし、遺言公正証書においては、そもそも検認手続き自体が必要なく、すぐに遺言の内容に従って相続を開始することができます。

文字を書けなくても作成できる

自筆証書遺言は、遺言に添付する財産目録を除いて、必ず「自筆」で作成する必要があり、パソコン等で作成することができません。

そのため、何らかの理由で文字が書けない場合には、自筆証書遺言を作成することができません。

これに対し、遺言公正証書は、口頭で公証人に内容を告げるだけでよいので、文字が書けない場合でも遺言書を作成することができます(言語・聴覚機能に障害がある方の場合でも、手話や筆談によって内容を伝えることが可能です)。

遺言公正証書のデメリット

一方、遺言公正証書には、次のようなデメリットがあります。

  • 費用がかかる
  • 証人が必要

以下、それぞれについて説明します。

費用がかかる

遺言公正証書の作成にかかる費用には、次の4があります。

  • 必要書類の交付手数料
  • 作成手数料
  • 遺言書正謄本の交付手数料
  • 証人手数料
  • 専門家報酬

以下、それぞれについて説明します。

必要書類の交付手数料

公正証書遺言の申請に必要な書類の中には、所や法務局で交付を受けなければならないものがあります。

その交付手数料は下の表のとおりです。

証明書の種類交付手数料交付期間
印鑑登録証明書1通300円市区町村
戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書1通450円
・遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍
・推定相続人の戸籍
・直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍
・兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍
市区町村
住民票1通300円
※相続人以外の受遺者ごとに必要
※相続人以外の受遺者がいない場合は不要
市区町村
登記簿謄本・登記事項証明書・書面請求:1通600円
・オンライン請求・送付:1通500円
・オンライン請求・窓口交付:1通480円※遺言書に明記される不動産ごと及び受遺者となる法人ごとに必要
※財産に不動産を含まず、受遺者に法人がいない場合は不要
法務局
固定資産評価証明書1通350円~400円(市区町村ごとに異なる)
※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要
市区町村
作成手数料

遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として算定します。

評価は、不動産の場合は直近の固定資産評価額(借地の場合は路線価と借地権割合で算出)、預貯金は現在の残高、株式その他の有価証券や出資金はその価額によります。

目的価額が算定不能な場合の手数料は11,000円とします。

各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。

例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、43,000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6,000万円、長男に4,000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は43,000円、長男の手数料は29,000円となり、その合計額は72,000円となります。

ただし、遺言加算といって、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、11,000円を加算すると規定しているので、72,000円に11,000円を加算した83,000円が手数料となります。

祭祀の主宰者の指定がある場合は、11,000円を目的価額による基本手数料に加算します。

遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。

この他に、旅費(実費)、日当(12万円、4時間まで1万円)が必要になります。

作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。

遺言書正謄本の交付手数料

遺言公正証書を作成すると、原本、正本及び謄本が各1部交付されますが、交付手数料が、遺言書の枚数×500かかります(遺言書の枚数が縦書きで4枚又は横書きで3枚を超える場合は、超えた枚数×250円を加算)。

証人手数料

遺言公正証書を作成するには、証人2人以上の立会いが必要です。

証人を自分で手配する場合はこの手数料は不要です。謝礼については遺言者と証人との間で自由に取り決めて構いません。

公証役場で証人の紹介を受けた場合、証人1人につき6,000円程度の手数料が必要です。

謝礼の金額は、公証役場によって異なります。

小岩公証役場の例を紹介します。

原則証人1名につき6,000円
夫婦で同時に遺言する場合証人1名につき9,000円(夫婦2名分)
出張の場合証人1名につき9,000円(旅費込み)

以上は証人1名分ですので、2名を依頼すると、この倍額になります。

証人の手数料は、証人に直接支払います。

なお、専門家に遺言書の作成を依頼する場合は、通常、専門家やその事務員が証人も引き受けてくれます。

別途の報酬が必要かどうかやその料金設定については専門家ごとに異なりますが、次の3つのパターンがあるようです。

  • 2人分の証人立会い料が基本料金に含まれている
  • 1人分の証人立会い料が基本料金に含まれていて、2人の証人の立会いを依頼する場合は追加料金が必要
  • 証人立会い料が基本料金に含まれていない

証人立会いが別途料金の場合の料金の相場は、証人1人につき1万円前後のようです。

専門家報酬

遺言公正証書の文案の作成を専門家に依頼する場合は報酬が必要です。

専門家報酬については後述します。

証人が必要

遺言公正証書を作成するには、遺言者と公証人以外に、証人を2人以上用意しなければなりません。

遺言公正証書の証人になるために特別な資格は必要ありませんが、次の人は証人になることはできません(証人になることができない事由のことを証人欠格事由と言います)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

1の未成年者は、ご存知の通り20歳未満の人のことです。

2の推定相続人とは、その時点において、最優先順位の相続権(代襲相続権を含みます。)を持っている人のことです。

つまり、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。

なお、遺言書作成時に推定相続人でなければ、遺言書の作成後に、結果的に推定相続人になったとしても問題ないとされます。

また、受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。

配偶者とは、ご存知の通り、妻や夫のことです。

直系血族とは、親子関係でつながる人のことで、祖父母、父母、子、孫などが、これに当たります。

例えば、Aさんの妻Bさんと、Aさんの子Cさんが、Aさんの財産の推定相続人であったところ、Aさんは、愛人Dさんに遺贈(遺言によって財産を与えること)する旨の遺言公正証書を作成したとします。

その場合、Bさん、Cさん、Dさん、それから3人の配偶者と直系血族は、Aさんの遺言の証人になることはできません。

3について、証人は、公証人と関係のある人(配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人)ではいけません。

これらに該当しなければ、誰でも証人とすることができます。

例えば、目が不自由な方でも読み聞かせによって、公証人の筆記の正確性を確認することができれば、証人となることができます。

少し遠い関係の身内(欠格事由に該当しない)や、友人に証人になってもらうことが比較的多いように思われますが、証人になってくれる人がいない場合や、身内や友人に遺言を作成したことを知られたくない場合は、弁護士等の専門家やその事務所スタッフに証人になってもらうことも可能です。

専門家に依頼すると、遺言書の内容を決めるところから、遺言書の作成まで一貫したサポートを受けることができます。

なお、遺言書の作成を専門家に依頼せず、かつ、証人になってくれそうな人がいない場合等は、公証役場で証人になってくれる人の紹介を受けることができる場合があります。

証人の役割には、次の3があります。

  • 遺言者の同一性の確認(人違いではないか)
  • 遺言者の精神状態の確認(精神状態は正常か、自分の意思で遺言内容を口述しているか)
  • 公証人の筆記の正確性の承認(公証人によって筆記された内容は、遺言者が口述した内容と相違ないか)

証人は、以上の点を確認して間違えがなければ、遺言書に署名と押印をします。

もし、これらの点に問題があったにもかかわらず、証人が故意や過失によってこれを見逃して署名と押印した場合は、そのために、損害を被った人(例えば、遺言のために相続分が減った法定相続人等)から、その損害の賠償を請求される可能性があります。

この請求権は、被害者もしくはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、又は、不法行為の時(問題のある遺言を承認した時)から20年間は消滅しないので、忘れた頃に請求される可能性もあります。

また、証人は、相続開始後、法定相続人や受遺者等の利害関係人間で、遺言の有効性が争われて、訴訟に発展することがありますが、遺言に立ち会った証人は、遺言無効確認訴訟(または遺言有効確認訴訟)においても、証人として裁判所に出頭して証言を求められることがあります。

証言の拒絶に正当な理由がない限り、証言を拒絶することは認められず、正当な理由なく出頭しない場合は、10万円以下の罰金または拘留に処せられることがありますし、裁判所は勾引(強制的に連行すること)して出頭させることもできます。

このように、証人には責任が生じるので、知人に無理を言って依頼するよりも、専門家に依頼したり、公証役場からの紹介を受けた方が、変に気を遣うこともなく、よいかもしれませんね。

おススメは遺言公正証書

遺言公正証書のデメリットとして、費用がかかることと、証人が必要なことを挙げましたが、証人は公証役場において有償で紹介を受けることもできるので、実質的なデメリットとしては、費用面に集約されます。

費用にしてもそれほど高額なわけではありませんから、遺言公正証書がやはりおススメです。

なお、法改正によって、2020710日の施行日以降は、自筆証書遺言の法務局での保管制度が施行され、保管時に形式不備のチェックがあるため、この制度を利用することで自筆証書遺言のデメリット(遺言公正証書のメリット)は緩和されるでしょう(詳しくは「遺言書を法務局で保管する制度について弁護士がわかりやすく説明」参照)。

いずれにせよ、改正法の施行までは、遺言公正証書がおススメです。

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遺言公正証書の作成方法

遺言公正証書は、次のような流れで作成します。

  1. 遺言内容を決める
  2. 証人を用意する
  3. 必要書類を収集する
  4. 公証役場で遺言書を作成する

以下、それぞれについて説明します。

遺言内容を決める

遺言公正証書の作成をする際は、まず、誰にどの財産を相続させるかということを決める必要があります。

遺産を相続させる方法には、特定の財産を指定して相続させる方法(特定遺贈といいます)と、遺産のうちの割合(例えば遺産の3分の1)を指定して相続させる方法(包括遺贈)とがあり、それによって遺言書の書き方も変わってきます。

また、誰にどの財産を相続させるかということを決めるには、相続人間の公平や、相続税、遺留分や特別受益等様々な要素を考慮しながら決める必要があると思います。

ただ、どのような遺言の内容にするべきか、という点については公証人には相談できないので、自分自身で事前に検討しておくか、弁護士等の専門家にあらかじめ相談しておくことが大切です。

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証人を用意する

遺言公正証書を作成する際には、第三者2名に証人として立ち会ってもらう必要があることから、あらかじめ証人を選んでおく必要があります。

必要書類を収集する

遺言公正証書の作成には、主に次の書類が必要です。

  • 遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書に加え、運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ。)
  • 遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書、及び推定相続人の戸籍謄本(直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍が必要となり、兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍が必要となります。)
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書(法人登記簿謄本又は登記事項証明書))
  • 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書(遺言書の中に個別の不動産を明記しない場合(例えば、「全ての不動産を妻に相続させる。」などとする場合)には、登記事項証明書の提出は不要となります。)
  • 証人予定者のお名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの
  • 証人の本人確認資料(保険証などの顔写真付きでない資料でも構いません)

公証役場で遺言書を作成する

遺言書の内容が決まり、必要書類の準備もできたら、証人と共に公証役場を訪れ、遺言の内容を公証人に伝えて、遺言公正証書を作成してもらいます

遺言公正証書の作成は公証役場が開庁している時間に行われます。

公証役場の開庁時間は、平日の午前9時から午後5時までです。

所要時間は30分から1時間程度です。

遺言公正証書作成の際には事前の予約が必要になりますので、開庁時間内で事前に予約を取りましょう。

通常、公証人との打ち合わせは25回ほどおこなうことになりますが、証人を連れて行くのは、最後の1回(実際に遺言書を作成する際)だけで構いません。

なお、遺言公正証書の作成を専門家に依頼した場合は、遺言者本人が公証役場に行くのも1回だけで構いません。

遺言公正証書の作成を専門家に依頼するメリット

遺言の文面は公証人が作成してくれるのに、費用をかけてまで文案の作成を専門家に依頼する必要はないように思えるかもしれませんが、文案の作成を専門家に依頼することには主に次のようなメリットがあります。

  • 遺言内容についての相談ができる
  • 手間を削減できる
  • 遺言執行者になってもらえる

以下、それぞれについて説明します。

遺言内容についての相談ができる

遺言公正証書では、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、その内容通りに、公証人が遺言書を作成します。

公証人は遺言内容をどうするかについての相談には応じてくれません。

遺言内容いかんによっては、相続人や受遺者の間でトラブルになるおそれがあり、また、税金も変わってくるため、遺言内容は重要です。

遺言内容についての相談ができる専門家は、基本的には弁護士です(税金対策のために遺言内容を相談したい場合は税理士が対象)。

司法書士や行政書士は、遺言者が決めた遺言内容に沿って遺言書を作成することはできますが、遺言内容を考えるところから依頼することは、弁護士法に反する可能性があり、基本的にはできません。

手間を削減できる

それでは、遺言公正証書の場合は、司法書士や行政書士に依頼する意味はまったくないのかというと、そういうわけではありません。

手間が削減できるというメリットがあります。

遺言公正証書をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を探したりする手間が生じますし、また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。

専門家に依頼すると、書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで十分です。

遺言執行者になってもらえる

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。

そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。

遺言執行者は、必ずしも指定しなければならないわけではありません。

遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになります。また、相続開始後に裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。

しかし、相続手続きの知識のない相続人や受遺者自らが、遺言の内容を実現する手続きを進めることや遺言執行者の選任を申し立てることは煩雑で大変です。

遺言執行者がいない場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。

その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。

また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。

ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が、手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。

遺言執行者は、専門家ではなくても、相続人や受遺者であっても構いません。

しかし、通常、相続人や受遺者は、遺言執行に関する知識がないでしょうから、適切な遺言執行ができない可能性もありますし、どうにかできたとしても大きな負担になるでしょう。

遺言作成を依頼した専門家に遺言執行者もまとめて依頼するのがスムーズでしょう。

専門家報酬

遺言公正証書の文案の作成を専門家に依頼する場合は報酬が必要です。

主に次の専門家が遺言書作成サービスを提供しています。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士

専門家への報酬は一律で決まっているわけではなく、一人ひとり異なります。

以下、それぞれの専門家の報酬について説明します。

遺言公正証書文案作成の弁護士報酬

20043月までは、弁護士報酬は、報酬規程で決められていました。

20044月からは報酬規程が廃止され、各弁護士が自由に報酬を決めることができるようになりましたが、現在でも旧規定を参考に報酬を決める弁護士も多いため、参考のため、遺言書作成についての旧規定を紹介します。

旧規定の報酬は、まず、遺言書が定型のものか非定型のものによって異なります。

遺言書にはよく使われる特定の型があり、そのような定型の遺言書であれば、概ね1回の打ち合わせのみで作成することができ、弁護士にとっても比較的手間がかからないため、報酬も比較的低廉で10万~20万円です。

非定型の遺言書は、弁護士にとっても、遺言者と複数回の打ち合わせが必要であったり、調べたりする手間がかかるので、報酬は比較的高額になります。

非定型のものであっても基本的な範疇のものは料金体系を示すことができますが(後掲)、特に複雑又は特殊な事情がある場合は、弁護士と遺言者との協議によって金額を定めます。

また、公正証書にする場合は、3万円が加算されます。

まとめると下表の通りです。

定型 10 万円から20万円の範囲内の額
非定型 基本 ※財産の額に応じて右のように変動 300万円以下の場合 20万円
300万円を超え 3000万円以下の場合 1%+17万円
3000万円を超え 3億円以下の場合 0.3%+38万円
3億円を超える場合 0.1%+98万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する。

遺言公正証書文案作成の司法書士報酬

司法書士については、弁護士のような報酬規程が過去にもないため、実際の事務所の料金体系を紹介します。

司法書士事務所Aの報酬体系

業務内容 説明 報酬
  • 遺言公正証書案文作成
  • 親族関係説明図作成
  • 戸籍謄本、登記事項証明書等の必要書類の取寄せ
  • 公証人との打ち合わせ
  • 遺言書の保管
3,000万円以下の部分 35,000円
3,000万円を超え

5,000万円以下の部分

40,000円
5,000万円を超え

1億円以下の部分

50,000円
1億円を超え

3億円以下の部分

60,000円
3億円を超える部分 80,000円
証人立会 1名につき 10,000円

※印紙、証紙等の実費は含みません。                                                                               

※遺言者の自宅へ出張する場合、旅費・日当が別途かかります

司法書士事務所Bの報酬体系

相談無料
遺言公正証書文案作成40,000円
遺言証人
※自分で用意する場合は不要
20,000円
戸籍収集1通 1,000円
※実費別途
登記事項証明書
(不動産がある場合)
1通 500円
※実費別途

司法書士事務所Cの報酬体系

基本報酬として、79,800円ですが、証人の立会いや、必要書類の収集についての報酬は含まれていません。

また、遺言の目的である財産が1億円を超える場合または遺言内容が複雑な場合などは別途見積もりがなされます。

司法書士事務所Dの報酬体系

遺言公正証書案文作成財産額1億円以内… 50,000円
1億円を超えるもの(1億円ごとに右記金額を加算)…10,000円
証人立会料1名につき…10,000円
遺言公正証書保管料1年につき…10,000円

上記費用のほか、書類の授受等を郵送処理等で行う場合、若干の通信費等がかかります。

遺言公正証書文案作成の行政書士報酬

行政書士についても、弁護士のような報酬規程が過去にもないため、実際の事務所の料金体系を紹介します。

行政書士事務所Aの報酬体系

行政書士事務所Aの報酬は、一律84,000円となっていて、次の業務が含まれます。

  • ご相談・出張相談・お見積り
  • 遺言内容のヒアリング
  • 相続人調査
  • 財産調査
  • 公証人との打ち合わせ
  • 遺言書文案の作成
  • 証人2人の手配

ただし、戸籍取り寄せ、財産調査に実費は別途必要です。

行政書士事務所Bの報酬体系

行政書士事務所Bの報酬は、基本料金98,000円となっています。

このほか、遺言の保管を依頼する場合は、1年につき10,000円がかかります。

遺言証人1人の立会い料の追加料金はありませんが、証人を2人依頼する場合は、10,000円の追加料金が必要です。

また、証明書類収集のための実費と、そのための出張が必要な場合の出張費は別途かかります。

相談料は無料です。

また、夫婦(内縁を含む)や親子2名以上で依頼する場合は、2人目以降の基本料金が半額になります。

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遺言公正証書がある場合の遺言執行

遺言公正証書の原本は公証役場で保管され、遺言者には遺言公正証書の正本と謄本が交付されます。

正本と謄本のどちらも、原本と同じ内容が記載されており、遺言執行の手続きに利用することができます。

正本・謄本は、利害関係を有する者又はその代理人が、当該公正証書の原本を保管する公証役場に赴き、請求することによって取得することもできます。

そして、201941日からは、遺言公正証書等の原本を保管する公証役場が遠隔地である場合には、最寄りの公証役場で手続きをすることによって、当該公正証書の正本・謄本を郵送で請求することができるようになりました。詳しい手続きは、最寄りの公証役場で確認してください。

遺言公正証書の見本

「法務省法制審議会民法(相続関係)部会」作成の遺言公正証書の見本を紹介します。

自筆証書遺言及び公正証書遺言の作成例

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