弁護士監修記事

遺留分とは?遺言や贈与で持っていかれた相続財産を取り戻す方法を説明

最近では、相続税の節税の観点から生前贈与に注目が集まっています。

さらに、相続のときにもめないようにと遺言を作成しておくことも推奨されています。

しかし、実際に、自分が生前贈与や遺言で不公平な扱いを受ける側になってしまったら納得いかない人も多いのではないでしょうか?

そこで、遺言や贈与で持っていかれた相続財産を取り戻す方法として、遺留分という制度について解説します

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

遺留分とは?

遺留分とは、被相続人(相続される人=財産を残す人)の配偶者や子など一定の範囲の相続人に法律上必ず保障された相続財産の一定割合のことです。

相続人となる人や各相続人の相続分については民法に定められていますが、これは遺言によって変更することができますし、生前贈与や死因贈与によって相続財産が減ってしまったり無くなってしまったりすることもあります。

そのような場合に、被相続人と近しい関係の本来の相続人が、まったく遺産を取得できないとなると、流石に可哀そうな気がしませんか?

そのようなことにならないように、民法では、一定の範囲の相続人に対して、法定相続分の一定割合を遺留分として請求できるようにしているのです。

誰が遺留分を請求できる?

遺留分を請求できるのは、被相続人との関係において、次の4つのいずれかに該当する人です。

  • 配偶者
  • 子の代襲相続人
  • 直系尊属

このうち、配偶者、子、子の代襲相続人については、原則として遺留分が認められますが、直系尊属に遺留分が認められるのは、子や子の代襲相続人がいない場合です。

それぞれについて、説明します。

配偶者

配偶者とは、妻や夫のことです。

婚姻届を提出していない内縁関係の場合は、配偶者とはみなされません

子供のことです。

養子も実子と同様に遺留分をもちます

実親と、養子に出された実子の関係については、養子縁組の種類によって取り扱いが異なります

普通養子縁組の場合は養子は、養親のみならず、実親の相続についても遺留分をもちますが、特別養子縁組の場合の養子は、養親の相続に関して遺留分はありますが、実親の相続に関しては遺留分をもちません。

子の代襲相続人

代襲相続とは、簡単に言うと、祖父母よりも先に親が亡くなったような場合に、祖父母の遺産を孫が相続できるようにするための制度で、「だいしゅうそうぞく」と読みます。

子の代襲相続人は、被相続人との関係でいうと孫に当たります。

代襲相続について、詳しくは「代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識」をご参照ください。

直系尊属

直系尊属とは、親や祖父母等のことです。

直系尊属に遺留分が認められるのは、前述の通り、子や子の代襲相続人がいない場合に限ります(配偶者については、いてもいなくても問題ありません。)。

子や子の代襲相続人がいない場合は、まず親が対象となり、親もいない場合は祖父母が、祖父母もいない場合は曽祖父母が対象となります(そのようなケースは極めて稀でしょう)。

遺留分を主張できるのはどんなとき?

遺留分を主張できるのは、自己の最低限の取り分を侵害されていたときです。

自己の最低限の取り分が侵害されるという事態は、被相続人による次の行為によって起こります。

  • 生前贈与
  • 死因贈与
  • 遺贈

以下、それぞれについて説明します。

生前贈与

生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を贈与することです。「贈与」とは、贈与契約のことで、贈与者と受贈者の合意によって成立します

生前贈与について、詳しくは、「生前贈与で節税効果を最大限に引き出すために知っておくべきこと」をご参照ください。

死因贈与

死因贈与とは、贈与者の死亡によって、効果が生じる贈与契約のことです。贈与契約は生前に行われていますが、実際に贈与を受けることができるのは、贈与者の死亡時です。

死因贈与について、詳しくは、「死因贈与とは?遺贈との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」をご参照ください。

遺贈

遺贈とは、遺言によって、無償で自分の財産を他人に与える処分行為のことです。遺贈を受ける人のことを「受遺者」といいます

遺贈について、詳しくは、「遺贈とは?相続や贈与との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」をご参照ください。

遺留分の計算の基となる法定相続分とは?

相続財産は、遺言や死因贈与がなければ、民法の定めにのっとって分配されます。

民法の定めによって相続人となる人のことを法定相続人といいます

前述の遺留分の主張ができる人は、法定相続人に該当します。

また、民法には、誰が法定相続人となるかだけではなく、それぞれの相続分も定められています

そして、遺留分は、法定相続分を元に計算されます。

ですので、遺留分を計算するためには、まず、法定相続分を計算しなければなりません。

以下では、誰が法定相続人になるかについて説明し、そのうえで法定相続分について説明します。

なお、法定相続人と相続分について、詳しくは、「法定相続人とは?法定相続人の範囲と優先順位、相続割合を図で説明」をご参照ください。

法定相続人

まず、法定相続人について、説明します。

法定相続人となりえるのは、被相続人との関係において次のいずれかに該当する人です。

  • 配偶者
  • 子の代襲相続人(孫、曽孫など)
  • 直系尊属
  • 兄弟姉妹
  • 兄弟姉妹の代襲相続人(甥、姪)

直系尊属が相続人となる場合は、子および子の代襲相続人が存在しないときに限られます。

兄弟姉妹およびその代襲相続人が相続人となる場合は、子、子の代襲相続人および直系尊属が存在しないときに限られます。

なお、兄弟姉妹およびその代襲相続人は、法定相続人となる場合においても、遺留分を主張する権利はありません

法定相続分

続いて法定相続分について説明します。

配偶者と同順位の相続人のみの場合と、配偶者と血族相続人(子、親など)の場合とに分けて説明します。

同順位の相続人のみの場合

配偶者が既に亡くなっており、相続人が同順位の相続人のみの場合は、相続財産を相続人間で案分します

例えば、子が3人いる場合は、3分の1ずつになります。

3人いる子のうちの1人が既に亡くなっており、その子の子が1人いて代襲相続人となる場合も同様に3分の1ずつです。

代襲相続人が複数いる場合は、その代襲相続人間でさらに案分します

配偶者と子及び子の代襲相続人

配偶者と子が相続人の場合には、配偶者が2分の1、子は、残りの2分の1をが相続分となります。

子が複数いる場合は、2分の1の相続分を、子の間で子の人数分で案分します。

配偶者と直系尊属

配偶者と父母が相続人の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1の相続分となります。

父母共に相続人となる場合は、3分の1の相続分を父母で折半します。

配偶者と兄弟姉妹及び兄弟姉妹の代襲相続人

配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の相続分となります。

なお、前述の通り、兄弟姉妹及び兄弟姉妹の代襲相続人は遺留分を主張することはできません。

遺留分の計算方法

遺留分の割合

遺留分の割合は、基本的には法定相続分の2分の1ですが、直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分の3分の1になります

例えば、配偶者と子1人が法定相続人の場合、それぞれの法定相続分は2分の1ずつとなり、遺留分は、法定相続分の2分の1ですから、相続財産の4分の1ずつとなります。

父母が法定相続人の場合は、父母の法定相続分はそれぞれ2分の1ずつとなり、このケースでは遺留分は法定相続分の3分の1ですから、遺留分は相続財産の6分の1ずつとなります。

遺留分、遺留分侵害額、遺留分侵害割合の区別

「遺留分」とは、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の「一定の割合」のことですから、例えば、法定相続分が4分の1だった子の遺留分は8分の1というふうに簡単に計算できます。

しかし、実際に請求できる遺留分を計算するには、この遺留分から、さらに、「遺留分侵害額」と「遺留分侵害割合」を算出する必要があり、計算は複雑になります。これらの概念は分かりにくいので、実際の計算例で説明します。

遺言による遺留分侵害の場合の計算例

例えば、母親が亡くなり、3,000万円の価値のある自宅不動産と300万円の現金の遺産があったけれど、1,500万円の借入も残っていたという事例で考えてみます。

父はすでに死亡しており、母の相続人は子供3人です。

母は、「子供Aに不動産を相続させ、子供Bと子供Cには、現金を150万円ずつ相続させる」という遺言をしていました。AとBは異存ありません。しかし、Cは、遺留分を請求したいと考えています。

そこで、この事例で、CのAに対する請求について説明します。

遺留分を計算する

上記のとおり、子の遺留分は、法定相続分の2分の1です。

この事例のCの法定相続分は、3分の1ですので、遺留分は、その2分の1に当たる「6分の1」です。

まず、母の遺産に対して、Bの遺留分が6分の1ですので、母の遺産を計算します。

遺産総額は、「積極財産(プラスの遺産)+遺贈・贈与された財産-相続債務(借金などマイナスの遺産)」という計算式で算出します。

そうすると、母の遺産は、3,000万円+300万円-1,500万円=1,800万円です。

Cの遺留分は、この遺産に対して、6分の1ですので、「300万円」です。

遺留分侵害額を計算する

遺留分侵害額は、「遺留分額-相続によって得た財産+相続債務分担額」という計算式で算出します。

※法定相続分に応じた相続債務をプラスする理由

借金などの相続債務は、相続開始と同時に、法定相続分どおりに相続することになっています。

母の残した借金1,500万円は、母の死亡と同時に子らがそれぞれ500万円ずつ相続しています。債権者は、A~Cに対して、500万円を支払うように請求できますが、それ以上の金額を請求できません(Aが多額の相続をしたから、Aに「1,500万円全額を支払え」という請求をすることができないということです)。

そうすると、Cは、債権者から500万円を請求されたら、払わなければいけません。そこで、遺留分の計算では、相続債務の分をもらっておく必要があることになります。

この事例でのCの遺留分侵害額は、「遺留分額300万円-相続によって得た財産150万円+相続債務分担額500万円=650万円」となります。

遺留分侵害割合を計算する

遺留分侵害割合は、「遺留分侵害額÷遺留分を侵害する遺贈・贈与」という計算式で算出します。

Aは、3,000万円相当の自宅不動産の遺贈を受けており、この遺贈がCの遺留分を侵害しています。

Cの遺留分侵害割合は、650万円÷3,000万円≒1000分の216です。

そこで、Cは、Aが遺贈された自宅不動産のうち、1000分の216の持ち分をAに請求できることになります。

Cは、不動産の持ち分はいらないから、現金でほしいとAに請求することはできません

Aは、不動産の持ち分を渡すか、現金で渡すかを選択することができます

「すべての財産を相続させる」という遺言がある場合の計算例

上記の事例で、母が、「子供Aにすべての遺産を相続させる」という遺言をしていた場合には、計算方法が変わるので注意が必要です。

「Aにすべての財産を相続させる」という遺言は、借金もすべてAに払わせると考えていたと通常は解釈されます(別の解釈が成り立つような事情がある場合は別です)。

そうすると、相続債務はAが全額支払うので、Cの遺留分侵害額を計算する際には、相続債務をプラスしない扱いとなります

そのため、この場合のCの遺留分侵害額は、300万円-150万円=150万円です。

Bの遺留分侵害割合は、150万円÷3,000万円=100分の5です。

そこで、Bは、Aの選択に従って、不動産の持ち分100分の5か現金150万円のどちらかを受け取ります。

債権者との関係に注意

上でも述べたように、相続債務は、法定相続分どおりに相続します

Aは、遺言により、相続債務1,500万円を全額を負担しなければなりませんが、これは、A、B、Cの間の内部関係にすぎません。

債権者は、Cに法定相続分の500万円を支払えと請求することができますCはこれを拒むことができません

債権者に請求されて、Cが500万円を支払った場合には、Aに対して、「500万円を自分に返還せよ」という請求することになりますこれは、「不当利得返還請求」という請求で、遺留分とは別の請求権という扱いになります

遺留分のための生前贈与の持ち戻しの計算方法

上記の事例は、遺言による遺留分侵害の場合の計算例でした。死因贈与による遺留分侵害も同様の計算をします。

しかし、生前贈与があった場合、すべての生前贈与を上記の計算に当てはめることはできません

下記に当たる生前贈与だけが、遺留分を侵害していると判断され、持ち戻すことができます。

  • 相続開始前1年以内に行われた生前贈与
  • 被相続人の死亡より1年以上前の生前贈与のなかで、特別受益にあたる贈与(婚姻、養子縁組のための贈与、生計の資本のための贈与)のうち、一定の条件をみたす場合
  • 被相続人の死亡より1年以上前の特別受益にはあたらない生前贈与のうち、贈与者と受贈者の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知っていて行った生前贈与

なお、「遺留分権利者に損害を与える」と知っていたかどうかは、贈与当時の親の財産の状況などから判断されます。

遺留分を主張する方法

続いて、遺留分を主張する方法について説明します。

遺留分を主張できる期間

贈与や遺言によって、遺留分を侵害されていた場合には、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったとき」から1年以内に遺留分減殺の意思表示を行う必要があります。

つまり、遺留分を侵害する遺言の存在、贈与の存在を知ったときから1年以内に、遺留分減殺の意思表示をする必要があるということです。

なお、遺留分を侵害する贈与や遺言の存在を知らないままでも、相続開始から10年経つと、遺留分減殺請求権を行使することはできなくなります。

遺留分減殺請求の方法

1年以内に遺留分減殺請求をしたかどうかというのは、非常に重要なことですので、証拠を残すために、内容証明郵便(配達証明付き)によって行うべきです。

1年以内に遺留分減殺請求をしておけば、遺留分減殺の調停や訴訟を行うのは、1年以内でなくてもかまいません。

ただし、この遺留分減殺の意思表示によって生じた法律関係に基づく目的物返還請求権にはさらに、その返還請求権の性質によって個々の時効があることもありますので、注意しましょう

遺留分の放棄

遺留分は放棄することができるのでしょうか?

遺留分を放棄することは、その相続人にとっては、基本的にはメリットはありません

しかし、他の相続人や、思い通りに財産を継承させたい被相続人にとってはメリットがあります

また、放棄する相続人にとっても、代わりに生前贈与を受けられるといった交換条件があれば、メリットがある場合もあるでしょう。

以下では、遺留分の放棄について、被相続人の生前と、被相続人が亡くなった後に分けて説明します。

生前の遺留分放棄

遺留分の放棄

被相続人の生前に相続を放棄することはできませんが、遺留分は放棄することができます。遺留分の放棄とは、生前贈与や遺言によって、自己の最低の取り分を侵害されても、相続開始後に遺留分減殺請求を行うことができなくなるということです。

生前の遺留分放棄の方法

被相続人の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。遺留分放棄の申立は、被相続人となるべき人の住所地を管轄する家庭裁判所で行います

家庭裁判所は、遺留分を放棄するという意思が、本当にその人の自由な意思であって、強要されたものではないかどうかを確認する必要があります。

家庭裁判所は、それだけではなく、当事者間の具体的な事情から、放棄をしたいという理由の客観的な合理性、代償性などを判断して、許可をするかどうかを決めます。

代償性とは、遺留分を放棄する代わりに生前贈与を受けているなど、遺留分を放棄する対価を受けているかどうかということです。すでに対価を受けているのであれば、遺留分をあらかじめ放棄することも合理的であるとみなされるからです。

家庭裁判所が許可をすれば、遺留分を生前放棄したということになります

生前の遺留分放棄の効果

・他の相続人の遺留分は増加しない

相続放棄をすると、他の相続人の相続分が増えます。

しかし、相続人の1人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分が増加することはありません

・「相続人」であることに変わりはない

遺留分を放棄しても、相続を放棄したわけではないので、その人は「相続人」の資格を失うことはありません

そのため、例えば、被相続人が、遺言や贈与を行うことなく死亡した場合には、相続人は、法定相続分に従って、遺産分割をします。このときには、遺留分減殺請求を行う必要はないので、遺留分を放棄した人も、本来の法定相続分をもって、遺産分割に参加できます。

また、「相続人」としての資格を失わないということは、相続債務(借金)があった場合には、借金を法定相続分の割合で相続するということです。借金を相続したくない場合には、相続開始後に相続放棄をする必要があります。

・家庭裁判所は、遺留分の放棄許可を取り消すことができる

家庭裁判所が遺留分放棄の許可の審判をした後、年月の経過等により、申立の前提となった事情が変化し、遺留分の放棄を許可しておくことが、客観的にみて不合理となった場合には、遺留分放棄の許可を受けていても、放棄許可の取り消しを家庭裁判所に申し立てることができます。

家庭裁判所がその申立に理由があると認めれば、遺留分の放棄許可の審判を取り消したり、変更したりすることができます。

また、相続が開始した後に、生前に行われた遺留分放棄の許可を取り消すこともできます

相続開始後の遺留分の放棄

遺留分を侵害する贈与や遺言の存在を知ったときから、1年以内に遺留分減殺請求をしなければ、遺留分を放棄したとみなされることになります。

相続開始後は、遺留分を放棄するために特別な手続きをする必要はありません。

遺留分に関する相談先

遺留分を侵害されている可能性があるという場合には、弁護士に相談しましょう。

その場合には、相続財産、遺言書、生前贈与の額(及び時期や目的)、死因贈与契約書など、遺留分の計算ができる資料を準備しましょう

まとめ

兄弟姉妹及び兄弟姉妹の代襲相続人以外の法定相続人は、遺留分を請求することができます。

遺留分は、生前贈与、死因贈与、遺贈によって侵害されることがあります。

遺留分が侵害されていることが分かったら、1年以内に遺留分減殺請求を行う必要があります。その際には、内容証明郵便(配達証明付き)を利用しましょう。

実際の遺留分侵害額や遺留分侵害割合の計算は複雑ですから、早めに弁護士に相談するべきです

また、これから、遺言書の作成や生前贈与をすることを考えている人は、遺留分を侵害しないように注意する必要があります。

 

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