弁護士監修記事

遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す方法と遺留分減殺請求の排斥方法

亡くなった親が残した遺言によって遺産がまったくもらえないとか、全財産が贈与済みで一切遺産がないとかで、遺産をまったく取得できなかったら、がっかりしますよね。

この記事では、そのような場合に財産を取り戻す「遺留分減殺請求」の方法と、反対に、遺留分減殺請求を受けた場合の対処法について説明します。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

遺留分減殺請求とは?

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人(亡くなった人)の贈与や遺贈によっても奪われることのないものです。

そして、遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された人が、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害の限度で贈与や遺贈された財産の返還を請求することです。

例えば、被相続人が亡くなって妻と子が相続人だったとします。

その場合に、全財産を妻に相続させる旨の遺言が残されていたり全財産が妻に生前贈与されている場合は、子は一切の財産を相続できないことになりかねません。

しかし、まったく相続できないとかわいそうなので、被相続人と近しい間柄の一定の相続人には、相続財産の一定の割合を取得することが保障されているのです。

その保障を実現するための手段が遺留分減殺請求です。

遺留分減殺請求をできる可能性のある人

遺留分減殺請求の権利は、すべての相続人に認められているわけではありません。

認められているのは、被相続人の妻、子(および、その代襲相続人)、直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母等のこと)です。

兄弟姉妹(および、その代襲相続人)は、遺留分減殺請求を行うことができません。

なお、代襲相続人とは、本来相続人になるはずであった人が被相続人よりも先に亡くなっていたり、相続欠格や相続人の廃除によって相続権を失った場合に、その人の代わりに相続人となる子のことです(詳しくは「代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識」参照)。

遺留分減殺請求ができない場合

相続欠格事由に当たる場合や、推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき人)の廃除を受けた場合は、遺留分減殺請求をすることはできません。

これらの場合は、相続人ではなくなるので、遺留分権利者でもなくなり、遺留分減殺請求ができません(詳しくは後述)。

なお、元々相続人でない場合や、相続人であっても遺留分の侵害がない場合も、当然ですが、遺留分減殺請求ができません。

また、相続放棄、相続分の放棄や譲渡をしたことによって、相続できなくなった場合は、遺留分減殺請求はできません。

遺留分減殺請求の対象となる贈与

遺贈はすべて遺留分減殺請求の対象となりますが、贈与については、すべてが遺留分減殺請求の対象となるわけではありません。

遺留分減殺請求の対象とすることができるのは、次の4つのいずれかに当たる贈与です。

  • 相続開始前1年以内になされた贈与
  • 当事者双方(贈与者と受贈者)が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与
  • 不相当な対価による有償行為
  • 相続人への特別受益に当たる贈与

以下、それぞれについて説明します。

相続開始前1年以内になされた贈与

相続は、通常は、被相続人の死亡によって開始されます。

したがって、相続開始前1年以内というのは、通常は、被相続人の死亡前1年以内を指します。

なお、受贈者が相続人であるかどうかは問われません。

つまり、相続人でない人が贈与を受けた場合も該当します。

当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与

1年以上前になされた贈与であっても、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与は、遺留分減殺請求の対象とすることができます。

当事者双方とは、贈与者と受贈者のことです。

遺留分権利者とは、遺留分減殺請求をする権利のある人(前述)のことです。

「遺留分権利者に損害を与えることを知って」とは、簡単に言うと、「遺留分を侵害することを知って」いることです。

遺留分権利者に損害を与えようという意思があったかどうかは問われません。

遺留分権利者に損害を与えることを知っていたかどうかは、具体的には、次のような点から総合的に判断されます。

  • 贈与時における贈与者の全財産に占める贈与財産の割合
  • 贈与時の贈与者の年齢や健康状態
  • 贈与後に贈与者の財産が増える可能性

なお、遺留分権利者に損害を与えることを知っていたことの証明は、遺留分権利者が行わなければなりません。

証明方法については、相続問題に詳しい弁護士に相談した方がよいでしょう。

不相当な対価による有償行為

不相当な対価による有償行為とは、贈与ではなく、譲渡の対価は支払っているものの、その対価が、譲渡された物の価値と釣り合っていない場合のことをいいます。

例えば、被相続人が所有する実勢価格1億円の土地を1000万円で売ってもらったような場合です。

この場合は、差額の9000万円の贈与を受けたものとみなして、遺留分減殺請求の対象とすることができる可能性があります。

ただし、この場合も当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていたことが条件になります(譲渡時期が相続開始の1年内であっても必要)。

相続人への特別受益に当たる贈与

相続人への特別受益に当たる贈与も遺留分減殺請求の対象となる可能性が高いです。

特別受益とは、相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことをいいます。

すべての贈与が特別受益になるわけではなく、次のいずれかに当たる場合にのみ特別受益になります。

  • 婚姻のための贈与
  • 養子縁組のための贈与
  • 生計の資本のための贈与

特別受益について詳しくは「特別受益とは?特別受益によって相続分を減らされないための全知識」をご参照ください。

特別受益に当たる贈与の場合は、1年以内の贈与であれば通常の贈与と同様に遺留分減殺請求の対象となりますし、また、1年以上前の贈与であっても遺留分減殺請求の対象となりえます。

1年以上前になされた特別受益に当たる贈与が遺留分減殺請求の対象となるかについては法律で明確に定められているわけではありませんが、判例(裁判所の判断)で、特段の事情がない限り、遺留分減殺請求の対象となることが示されているので、認められる可能性は高いと思われます。

もっとも、「特段の事情がない限り」という条件が付いており、特段の事情に当たるとして、遺留分減殺請求の対象とすることが認められない可能性もあります。

「特段の事情」には、どのような事情が含まれるのかが明確ではなく、認められるかどうかの判断が難しいため、この点を主張する場合や主張された場合は、弁護士に相談した方がよいでしょう。なお、遺留分減殺請求の対象となるのは、相続人への特別受益に当たる贈与なので、受贈者が相続放棄をして相続人でなくなった場合は、遺留分減殺請求の対象でなくなる可能性があります(相続放棄について詳しくは「相続放棄によって借金を相続しないようにする方法と相続放棄の注意点」参照)。

ただし、相続放棄をしても遺留分減殺請求が認められるケースもあるため、この点についても、弁護士に相談することをお勧めします。

遺留分の計算方法

遺留分の計算は、「遺留分算定の基礎となる財産の金額×遺留分の割合」で計算することができます。

遺留分算定の基礎となる財産の金額は、次の計算式で算出されます。

「相続開始時の相続財産」+「贈与した財産の価額」―「相続債務」

遺留分の計算について詳しくは「遺留分が高くなるように計算する方法と低くなるように計算する方法」をご参照ください。

遺留分減殺の請求先の優先順位

遺留分を侵害する遺贈や贈与が複数人に対して行われた場合には、その中の誰にでも請求できるわけではありません。

まず、遺贈に対して減殺します。

複数人に対して遺贈があった場合は、価額の割合に応じて減殺します。

例えば、ある人が亡くなって、その人の法定相続人が妻と長男と二男の3人であったとします。

相続財産の額は1億円で、6000万円を妻に、4000万円を長男に相続させるという遺言があったとします。

二男の法定相続分は、1億円×1/2×1/2=2500万円で、この場合の遺留分は法定相続分の2分の1なので、2500万円×1/2=1250万円となります。

二男は、被相続人の妻(二男の母)と長男(二男の兄)に対して遺留分減殺請求を行うことができますが、その割合は、妻(母)に対しては、6000万円÷1億円=3/5、長男(兄)に対しては、4000万円÷1億円=2/5となります。

遺留分は、先ほど計算した通り、1250万円なので、遺留分減殺請求の金額は、妻(母)に対しては、1250万円×3/5=750万円、長男(兄)に対しては、1250万円×2/5=500万円となります。

ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。

例えば、遺言で、長男への減殺請求を優先する旨の記載があれば、二男は、長男(兄)に対して1250万円全額の減殺を請求することになります。

遺贈を減殺してもなお不足がある場合は、贈与に対して減殺します。

複数の贈与があった場合は、後の贈与から減殺して、不足がある場合は順次前の贈与に対して減殺します。

例えば、侵害された遺留分が1000万円であったとします。

そして、次の遺贈と贈与が遺留分を侵害していたとします。

  • Aさん:遺贈100万円
  • Bさん:生前贈与(2018年)1000万円
  • Cさん:生前贈与(2017年)6900万円

※かっこ書きは贈与の年

まず遺贈から減殺するので、遺留分権利者がAさんに遺贈を受けた全額である100万円を請求できることが確定します。

本件の遺留分は1000万円なので、1000万円-100万円=900万円が足りません。

遺贈を減殺しても足りない分は、贈与から減殺します。

BさんとCさんが贈与を受けていますが、後の贈与から順番に減殺するので、Bさんから先に減殺します。

Bさんの受けた贈与は1000万円であり、残りの遺留分である900万円以上あるので、遺留分権利者は900万円全額をBさんに請求することができます。

これで、遺留分全額の減殺が済んだので、Cさんには請求することができません。

たとえ、Aさん、Bさんが無資力になっていたとしても、Cさんには請求することができません。

遺留分減殺請求の期限

遺留分減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始と減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。

相続は、通常、被相続人の死亡によって開始されるので、相続の開始を知った時とは、通常、被相続人の死亡を知った時です。

また、被相続人の死亡を知っていても、減殺すべき贈与や遺贈があったことを知らなければ、減殺請求ができないので、減殺すべき遺贈や贈与があったことを知るまでは、時効の針はスタートしません。

つまり、「相続の開始(≒被相続人の死亡)」と「減殺すべき贈与や遺贈があったこと」の両方を知った時に時効の針がスタートし、その時から1年間が遺留分減殺を請求できる期間です。

しかし、そうすると、遺留分権利者が相続の開始や減殺すべき贈与や遺贈があったこと知らなければ、永久に時効が成立しないことになってしまいますが、そうならないように、遺留分権利者が相続の開始や減殺すべき贈与や遺贈があったことを知らなくても、相続開始の時から10年が経過すれば、時効が成立し、以降は遺留分減殺請求をできないことになっています。

なお、時効の進行を止めるためには、遺留分減殺を請求しなければなりません。

遺留分減殺請求は口頭でもできますが、口頭では請求した証拠が残らないので、確実に証拠を残すためには配達証明付き内容証明郵便で請求するのがよいでしょう(後述)。

遺留分減殺請求で揉めやすいポイントと対処法

遺留分減殺請求を巡っては、次のような点が争点となりやすい傾向があります。

  • 遺産隠しや遺産の使い込みが疑われる
  • 減殺すべき贈与があったかどうか、特別受益があったかどうか
  • 評価額(不動産、非上場株式、動産など)に開きがある
  • 相続欠格事由に当たるかどうか、推定相続人の廃除の原因があるかどうか
  • 遺留分減殺の合意はできたが、返還・弁償されない

以上の争点について、それぞれどのような対策が考えられるか、以下、説明します。

遺産隠しや遺産の使い込みが疑われる

法定相続人が複数いるにもかかわらず、遺言により遺産のすべてを一人が取得することは珍しいことでありません。

その場合に遺言執行者が選任されていなければ、受遺者が遺産の管理をすることになります。

受遺者は遺留分減殺を請求されることがありますが、受遺者にとっては、遺産が少ない方が遺留分も少なくなり、有利です。

したがって、受遺者が遺産を隠したり、遺産の調査に協力しないことがあります。

ひどいケースでは使い込んでいる場合もあります。

そのような場合でも、遺留分権利者は法定相続人としての立場で、相続財産の調査を行うことができます。

相続財産について詳しくは、「相続財産とは何?相続の対象となる財産と相続税の対象となる財産」をご参照ください。

また、遺産隠しや使い込みを知らずに、遺留分減殺の合意書を取り交わしてしまった場合は、合意の意思表示の錯誤無効や詐欺取消しを主張することができると考えられます。

なお、遺産隠しや使い込みをすると罪に問われる可能性もあるため、請求される側の人は、素直に遺産についての情報を開示した方がよいでしょう。

減殺すべき贈与があったかどうか、特別受益があったかどうか

前述の通り、遺留分は、「遺留分算定の基礎となる財産の価額×遺留分の割合」で計算されるため、遺留分算定の基礎となる財産の価額が高額になれば遺留分も高くなります。

生前贈与があった場合に、その贈与が遺留分減殺請求の対象となるかどうかによって、遺留分の価額も変わってくるのです。

遺留分権利者は減殺すべき贈与に当たることを主張し、他方、受贈者は減殺すべき贈与に当たらないことを主張し、協議が調わないことがよくあります。

減殺すべき贈与があったことを認めさせるには、生前贈与があり、かつ、その贈与が減殺すべき贈与に当たることを証明しなければなりません。

生前贈与があったことを証明するためには、次のようなものを調べるとよいでしょう。

  • 被相続人の預貯金の取引推移の一覧表
  • 被相続人の家計簿や手帳
  • 被相続人がお金を貸した借用書や念書

預貯金の取引推移の一覧表は、被相続人の口座がある金融機関に申請します。

また、被相続人がお金を貸していた場合、債務を免除してもらっていたら、贈与とみなして遺留分算定の基礎とすることができます。

また、被相続人がお金を貸したまま亡くなった場合は、金銭債権が遺産に含まれることになり、これも遺留分算定の基礎とすることができます。

評価額(不動産、非上場株式、動産)に開きがある

相続財産の評価で揉めることもよくあることです。

不動産は不動産鑑定士に、非上場株式は公認会計士か税理士に鑑定を依頼するとよいでしょう。

双方が別々に鑑定を依頼すると、鑑定料も倍かかりますし、鑑定結果に開きが生じた場合に、せっかく鑑定したのに、争いが収束しないこともありえます。

合意形成のためには、鑑定を依頼する専門家を双方の合意の下で選び、鑑定結果に従うことを合意のうえで、鑑定を依頼するとよいでしょう。

相続欠格事由に当たるかどうか、推定相続人の廃除の原因があるかどうか

相続欠格事由に当たる場合は、欠格者として相続人となることはできず、遺留分減殺請求もできません。

ですから、遺留分減殺を請求された人は、請求者が相続欠格事由に当たる場合は、減殺を免れることができます。

相続欠格者になるのは次のいずれかに当たる場合です。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続欠格事由に当たることを本人が認めている場合は、争いが再燃することがないように、欠格者であることの証明書を作成すると良いでしょう。

反対の立場からいうと、欠格者であることの証明書に署名、押印すると、欠格者として相続人であると主張することが難しくなるので、応じるかどうかは慎重に判断すべきです。

本人が認めていなくても、欠格事由に当たることが訴訟で認定され、その判決が確定した場合は、欠格者からの減殺に応じる必要はありません。

また、推定相続人の廃除を受けた場合も、相続人ではなくなり、遺留分減殺請求をすることはできません。

推定相続人の廃除の原因には、次のものがあります。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他の著しい非行

これらのいずれかに当たる場合は、推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。

推定相続人の廃除を請求するには、次の2つの方法があります。

  • 被相続人が生前に請求する
  • 被相続人が遺言で廃除する意思を表示する

つまり、被相続人以外の人の意思で廃除を請求することはできません。

被相続人は、遺留分すらも渡したくない推定相続人がいる場合に、廃除を請求します。

なお、遺言で廃除の意思が表示された場合は、遺言執行者が家庭裁判所に請求します。

この場合、遺言執行者は必須です。

遺言執行者の選任は遺言で行うことができますが、遺言で行われていない場合は、家庭裁判所に選任を申し立てることができます。

遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」をご参照ください。

なお、一度廃除がなされた場合であっても、被相続人は廃除の取消を請求することもできます。

廃除の取消についても同様に、被相続人が家庭裁判所に請求するか、遺言で廃除の取消の意思を表示する方法によって行います。

遺言で廃除の取消が表示された場合は、やはり遺言執行者が家庭裁判所に廃除の取消を申し立てます。

以上、相続欠格と推定相続人の廃除について説明しましたが、欠格者や廃除された人に子がいる場合は、その子が欠格者や廃除された人が元々持っていた相続権を代襲相続し、遺留分減殺請求を行うことができます。

遺留分減殺の合意はできたが、返還・弁償されない

合意はしたが返還・弁償されないということになるべくならないように、履行が遅滞し場合の損害賠償についても、合意書に定めておくとよいでしょう。

なお、合意書を公正証書にしておくことで、履行がされない場合に強制執行をすることができます(金銭の支払いに限ります。)。

公正証書でない合意書の場合は、裁判で勝訴しなければ強制執行をすることはできません。

遺留分減殺請求の流れ

遺留分減殺請求は、次のような流れで行います。

  • 相続人の調査
  • 遺言の確認
  • 遺留分減殺請求の対象となる財産の調査
  • 遺留分の計算
  • 遺留分減殺請求(相手方への通知)
  • 協議
  • 和解書(合意書)の取り交わし
  • (協議不成立の場合)遺留分減殺による物件返還調停
  • (調停不成立の場合)訴訟

以下、それぞれについて説明します。

相続人の調査

まず、相続人の調査を行います。

相続人を確定しなければ、自分に遺留分があるのかどうかや、相続財産に対していくらの割合の遺留分があるのかについても確定させることはできません。

相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を収集することによって行います。

まず、被相続人の最終住所地の市区町村の役場で、本籍地の記載のある住民票の交付を申請し、被相続人の本籍地を調べます。

一つの役場で全部の戸籍謄本が揃わないことも多いので、その場合は、以前に戸籍があった市区町村の役場で申請します。

戸籍謄本を確認すれば、その前に戸籍をおいていた市区町村を知ることができます。

遺言の確認

遺言の有無、ある場合は、その内容を確認します。

遺言の有無や内容を確認することは、侵害された遺留分の金額や遺留分減殺の請求先を確定させるうえで必要です。

遺留分減殺請求の対象となる財産の調査

遺留分減殺請求の金額を計算するためには、被相続人の財産の調査が必要です。

積極財産(プラスの財産)や、消極財産(マイナスの財産。借金等)、それから、生前贈与された財産で遺留分の対象となるものについても調査します。

財産調査に支障がある場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

遺留分の計算

遺留分の計算は、「遺留分算定の基礎となる財産の金額×遺留分の割合」で計算することができます。

遺留分の計算について詳しくは「遺留分が高くなるように計算する方法と低くなるように計算する方法」をご参照ください。

遺留分減殺請求(相手方への通知)

遺留分減殺請求は、方式に決まりはなく、口頭でも構いませんし、メールやファクシミリでも構いません。

相手方との関係が悪くなければ、まずは口頭で打診するのも悪くないでしょう。

しかし、前述の通り、遺留分減殺請求には時効があるため、時効の進行を確実に止めるには、配達証明付き内容証明郵便を送っておいた方がよいでしょう。

遺留分減殺請求通知書の文例を下記します。

遺留分減殺請求通知書

 

被相続人○○○○(平成〇年〇月〇日死亡)の相続につき、通知人は相続財産の〇分の1の遺留分を有するところ、平成〇年〇月〇日付遺言書による被通知人の受遺分が、通知人の遺留分を侵害しており、通知人は、被通知人に対し、本書面をもって、遺留分減殺を請求します。

 

平成〇年〇月〇日(作成日日付)

 

通知人 ○○○○(自分の氏名)

○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号(自分の住所)

 

被通知人 ○○○○(相手方氏名)殿

○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号(相手方住所)

また、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者にも遺留分減殺を請求することを伝えておいたほうがよいでしょう。

協議

請求をしても、相手方がすんなりと減殺に応じないことがあります。

そのような場合には、相手方との協議を行います。

協議の方式は決められていないので、直接会っても構いませんし、電話でも、メールや手紙の遣り取りでも構いません。

合意書(和解書)の取り交わし

合意書(「和解書」という名称でも構いません。)を取り交わすことは、必須ではありませんが、後で、争いが再燃しないように、取り交わしておいた方がよいでしょう。

合意はしたが返還・弁償されないということになるべくならないように、履行が遅滞し場合の損害賠償についても、合意書に定めておくとよいでしょう。

なお、合意書を公正証書にしておくことで、履行がされない場合に強制執行をすることができます(金銭の支払いに限ります。)。

公正証書でない合意書の場合は、裁判で勝訴しなければ強制執行をすることはできません。

合意書の作成については、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

(協議不成立の場合)遺留分減殺による物件返還調停

協議が調わない場合は、調停を申立てることができます。

調停について詳しくは、裁判所ウェブサイトの「遺留分減殺による物件返還請求調停」のページをご参照ください。

(調停不成立の場合)訴訟

調停が不成立の場合は、訴訟を提起することができます。

家事調停の中には調停が不成立になると自動的に審判に移行するものがありますが、遺留分減殺による物件返還調停の場合は、審判には移行しません。

また、遺留分減殺請求は、調停を経ずに最初から訴訟を提起することもできます。

遺留分減殺請求の弁護士報酬

遺留分減殺請求や、請求を受けた場合の対応を弁護士に依頼することもできます。

弁護士に依頼することによって、有利な条件を勝ち取れる可能性が高まり、また、相手方と遣り取りする時間、労力、ストレスから解放されます。

遺留分減殺請求の弁護士報酬は、事務所によって異なりますし、事案ごとも異なります。

弁護士報酬は、遺留分減殺請求によって得られた経済的利益や事案の難易度や煩雑さに応じて報酬金額が増減します。

ご参考までに、相続財産が預貯金のみで経済的利益を計算し易くて、かつ、出張費用等がかからない場合の報酬の一例をご紹介します。

多くのケースでは下表に示したものよりも費用がかかるものとして(いわば最低料金のようなものとして)、ご参考にしていただければ幸いです。

 

【請求する場合】

着手金 20万円
成功報酬 取得額が3000万円以下 25万円+取得額の8%
取得額が3000万円超 145万円+取得額の4%
調停費用(調停になった場合) 5万円
訴訟費用(訴訟になった場合) 5万円

【請求された場合】

着手金 50万円
成功報酬 50万円
調停費用(調停になった場合) 5万円
訴訟費用(訴訟になった場合) 5万円

なお、弁護士を選ぶ際に料金だけを基準にしないようにしましょう。

弁護士の力量によって獲得できる条件は異なります。

報酬が相場よりも高かったとしとしても、その差以上に好条件を獲得できることも珍しくはないので、遺留分減殺請求の経験で、信頼のできる弁護士を選ぶことが重要です。

まとめ

以上、遺留分減殺請求について説明しました。

遺留分を巡って揉めている場合は、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

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