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遺産分割調停の弁護士費用の相場と払えない場合の対処法

遺産分割調停を弁護士に依頼する際に気になるのが、「費用がいくらかかるのか」ということではないでしょうか? この記事では、遺産分割調停の弁護士費用の相場や、弁護士費用が払えない場合の対処法、弁護士に依頼するメリット、遺産分割調停に強い弁護士の選び方等について、わかりやすく丁寧に説明します。 是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2021年4月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

遺産分割調停の弁護士費用の相場

遺産分割調停の弁護士費用は、○○円と決まっているわけではありません。 事務所によっても違いますし、遺産等の状況によっても異なります。 しかし、ある程度の相場というものは存在するので、以下で説明していきます。

遺産分割請求事件の一般的な弁護士費用の仕組み

弁護士費用には、主に、着手金と報酬金(成功報酬)があります。

着手金

着手金は、弁護士に事件を依頼した段階で支払うものです。 遺産分割調停・審判がどのような結果になっても返還されません。 「○○円」というように固定報酬が設定されている場合と、「取得を希望する遺産額の○%」というように設定されている場合があります。 また、「取得を希望する遺産額の○%。ただし、争いがない部分については、3分の1の額とする。」というように設定されているケースもあります。 調停から審判に移行したり、即時抗告(審判に対する不服申立)をした場合やされた場合は、着手金の積み増しが必要になることがあります。

報酬金(成功報酬)

報酬金は、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で支払うものです。 ここでいうところの「成功」には一部成功も含まれます。 つまり、望み通りの遺産を取得できたわけではないものの、何らかの遺産を取得できた場合は、通常、報酬金の支払いが生じます。 相手方の主張からの積み増しが得られなかった場合に、報酬金の対象となるかは、事務所によって異なります。 報酬金は、「取得できた遺産額の○%」というように設定されている場合や、「取得できた遺産額の○%。ただし、争いがない部分については、3分の1の額とする。」というように設定されている場合があります。 また、調停から審判に移行した場合は、報酬金の割合が上がるように設定されていることがあります。

アンケート結果にもとづく弁護士費用の目安

日本弁護士連合会(日弁連)が2008年度に実施したアンケート結果にもとづく弁護士費用の目安を紹介します。 これは、次の設例における弁護士費用について、弁護士にアンケートを取ってまとめたものです。

設例

被相続人は、自宅不動産、山林、株券、預金など総額1億円の遺産を残した。遺言書はなく相続人は妻と子どもの2人の合計3人である。遺産の範囲に争いはないが、遺産分割協議がまとまらなかったので、妻の依頼を受けて遺産分割の調停申立をした。その結果、妻は5000万円相当の法定相続分にしたがった遺産を取得し、妻の納得する分割となった。

着手金

報酬金

この設例では、着手金30万~50万円、報酬金100円前後が多い

この設例では、着手金は30万円前後から50万円前後で4分の3近くを占めいています。報酬金は、100万円前後を中心として60万円前後から220万円前後で多くを占めています。

日弁連の旧報酬等基準規程

現在は、前述のとおり、各弁護士が弁護士費用を自由に設定することができますが、20043月までは、日弁連の報酬等基準規程(旧規程)に定められていました。 現在でも、この旧規程を参考に報酬を決める事務所が多いため、旧規程について説明します。 旧規程の弁護士費用は、下の表にもとづいて計算されます。
経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下 8% ※ただし最低10万円 16%
300万円超3000万円以下 5%+9万円 10%+18万円
3000万円超3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
3億円超 2%+369万円 4%+738万円
表中の「%」は、経済的利益の額に対する割合です。 経済的利益の額は、遺産分割請求事件であれば、取得した遺産の時価相当額となりますが、分割の対象となる財産の範囲又は相続分についての争いのない部分については、相続分の時価の3 分の1の額となります。 また、審判に移行することなく協議又は調停で決着した場合は、上表によって算定された額の3分の2程度の額になる場合があります。 前掲の設例のケースにおいて、旧規程にもとづき、弁護士費用を計算すると、以下のようになります。 まず、経済的利益の額は5000万円ですから、上の表の「経済的利益の額」が「3000万円超3億円以下」の欄を確認します。そうすると、着手金が「3%+69万円」、報酬金が「6%+138万円」となり、着手金は「5000万円×3%+69万円=219万円」、報酬金は「5000万円×6%138万円=438万円」となります。 しかし、この設例では、遺産の範囲については争いがありませんので、その他に相続分について争いが無かった場合には、経済的利益は相続分の時価の3 分の1の額となります。この場合には、「5000万円÷316666667円」が経済的利益の額となります。そして、上の表の「経済的利益の額」が「300万円を超え3000万円以下の場合」の欄を確認することになります。そうすると、着手金が「5%+9万円」、報酬金が「10%+18万円」となり、着手金は「16666667円×5%+9万円≒923333円」、報酬金は「16666667円×10%+18万円≒1846666円」となります。 さらに、この設例では、審判に移行することなく、調停で決着しているので、3分の2程度の額になる場合があります。そうすると、着手金は「923333円×23615555円」、報酬金は「1846666円×231231111円」となります。 このように旧規程にもとづいて計算した場合も、前掲のアンケートと同じくらいの金額になり、このようにして計算した弁護士費用が相場と考えてよいでしょう。

初回相談無料の弁護士が増えている

初回の相談については、無料で受けている弁護士が増えています。 まずは、無料相談を受けてみて、依頼する弁護士を選ぶとよいでしょう。

弁護士費用が払えない場合はどうする?

弁護士費用は、前述のとおり、着手金と成功報酬に分かれていることが多いです。 成功報酬は、後払いなので、相続して遺産をもらい受けてから、もらい受けた遺産を原資に支払うことができます。 着手金は前払いなので、手持ちがないと支払うことができません。 着手金が払えない場合の対処法として、次の2つが考えられます。
  • 弁護士に分割払い又は後払いでお願いできないか相談する
  • 法テラスを利用する
事情を伝えれば、着手金の分割払いや後払いに応じてくれる弁護士はいると思われますので、初回の相談時に併せて相談してみるとよいでしょう。 着手金の分割払いや後払いに応じてくれる弁護士がどうしても見つからない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用を検討するとよいでしょう。 法テラスを利用すると、月額5,00010,000円程度の分割払いにすることができますが、収入や資産が多い方は利用できません。利用基準については、法テラスのウェブサイトのこちらのページでご確認ください。 また、法テラスの利用には、次のような注意点もあるので、よく考えて利用するかどうかを決めるとよいでしょう。
  • 審査が通るまでに約2週間かかる
  • 弁護士を自由に選べない
  • 経験の浅い弁護士が多い

遺産分割調停で弁護士を立てるメリット

遺産分割調停で弁護士を立てることは、次のような点において、費用以上のメリットが期待できます。
  • 有利な条件で決着できる可能性が高くなる
  • 遺産の全容を正確に把握できる
  • 感情的な対立を避けられる
  • 調停期日を欠席できる
  • 精神的な負担が緩和される
  • 調停申立の手続きや書類の作成・収集も委任できる
  • 相続手続きも併せて依頼できる
以下、それぞれの点について説明します。

有利な条件で決着できる可能性が高くなる

遺産分割調停の代理を弁護士に依頼することで、調停を有利に進めることができ、自分が希望する内容で調停を成立させられる可能性が高まります。 弁護士は法律と交渉事のプロフェッショナルです。 弁護士が代理人になることで、相手方が無茶な主張をしている場合は、冷静に法的根拠を基にこれを退けることができ、依頼者の希望する内容で調停を成立させられるように、例えば、次のような観点から交渉に当たります。
  • 相手方が法定相続分以上の財産を取得しようとしていないか。
  • 各財産の評価は適切か。依頼者の有利になるように(依頼者が取得予定の財産がなるべく低くなり、相手方の取得予定の財産がなるべく高くなるように)評価する余地はないか。
  • 現物分割以外の分割方法(換価分割・代償分割)によって依頼者の希望を実現することはできないか。
  • 依頼者の寄与分を主張することはできないか。相手方が寄与分を主張している場合、これを退けることはできないか。
  • 相手方に特別受益があることを主張することはできないか。相手方が依頼者に特別受益があることを主張している場合、これを退けることはできないか。
このような観点から法定根拠を示して説得力のある主張を行うことは一般の方には難しいものです。

感情的な対立を避けられる

遺産分割を巡って相続人間で揉める背景に感情的な対立があるケースがあります。 弁護士に依頼すると、余計に相手方を刺激するのではないかと心配される方もいますが、経験豊富な弁護士であれば、相手方の感情に配慮しつつ、冷静に法的根拠に基づき主張を展開することができるため、感情的な対立を和らげ、調停の成立に導くことが可能です。 もっとも、そのためには、遺産分割及び人生経験等の豊富な弁護士に依頼した方がよいですし、依頼前の面談時に弁護士の人となりについても見定める必要があるでしょう。

遺産の全容を正確に把握できる

弁護士は、相続人本人では情報を収集することが難しい場合であっても、弁護士会を通じて、金融機関や行政機関等に対して、亡くなった人の財産についての情報開示を求めることができる場合があります。 これを「弁護士会照会」又は「23条照会」といいますが、この照会等による遺産の調査によって、一部の相続人が隠していた遺産や誰も気づいていなかった遺産の存在が明らかになり、遺産の全容を把握することができる場合があります。 なお、弁護士会照会によって情報開示を受けられる財産には次のようなものがあります。
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 自動車
不動産については、弁護士会照会ではなく、名寄帳を用いて調査することが多いです。 名寄帳は、弁護士でなくても閲覧・取得することができますが、弁護士にまとめて依頼した方が手間がかからないでしょう。

調停期日を欠席できる

調停期日は、平日の日中に開かれます。 1回あたり12時間を要し、20回以上かかることもあり、調停に出席するだけでも大きな負担となるでしょう。 この点、弁護士に依頼した場合は、弁護士が出席してくれるので、本人は不利益なく欠席することができます。ただし、場合によってはご本人の出席が必要となる場合もあります。

精神的な負担が緩和される

相続問題が激化すると、精神的な負担が大きくなり、そのせいで体調をくずしたり、仕事や私生活に支障が生じることがあります。 弁護士に相談・依頼することで、精神的な負担が緩和されることは大きなメリットといえるでしょう。

調停申立の手続きや書類の作成・収集も委任できる

遺産分割調停の申立手続の際に、書類の作成や収集が必要になりますが、弁護士に依頼すると、このような手続きも併せて依頼できるので、手間がかかりません。

相続手続きも併せて依頼できる

遺産分割調停が成立した後、実際に遺産を取得するためには、名義変更等の手続きが必要になりますが、この手続きについても弁護士に依頼することができます。

遺産分割調停に強い弁護士の選び方

遺産分割調停に強い弁護士に選び方のポイントとして、次のような点が挙げられます。
  • 相続問題に精通していることが客観的に判断できる
  • コミュニケーションがとりやすい、信頼できる、熱意が感じられる
  • 費用が不合理に高くない
以下、それぞれの点について説明します。

相続問題に精通していることが客観的に判断できる

弁護士の事務所のウェブサイトに「相続問題に強い」、「相続問題に詳しい」等の表示があることがあります。 このような表示があることによって、その事務所が、相続問題の受任に関心が高いことはわかりますが、自己アピールだけでは、本当に相続問題に精通しているのかはわかりません。 その判断のためには、客観的な指標が必要です。 この点、判断の指標の一つとして、次の点が挙げられます。
  • 相続に関する弁護士向けの著書出版、論文執筆やセミナー講師等の実績がある
  • 相続に関する有名な裁判例の担当実績がある
  • 弁護士になってから一定程度の年数を経て相続事件等の受任件数が多い
  • 費用体系が明確
以下、それぞれの点について説明します。

相続に関する弁護士向けの著書やセミナー講師の実績がある

一般の方向けの著書やセミナーは、一般的な弁護士の知識があれば可能ですが、弁護士向けの書籍やセミナーについては、その問題に精通していなければ難しいでしょうから、指標となりえます。 ただし、流通していない書籍の執筆実績を広告目的で掲げているケースもあるので、書名や出版社名で検索する等の裏取りは必要です。 例えば、書名で検索してもほとんど情報が出てこなかったり(Amazonのような大きなサイトで取り扱いがない、東京都立図書館のような大きな図書館に蔵書がない等)、出版社名で検索してもサイトが存在せず、出版社の住所が事務所と同じ住所になっているケースもあります。

相続に関する有名な裁判例の担当実績がある

弁護士向けの専門誌に掲載されるような有名な相続関連の裁判例を担当している弁護士は、相続問題に精通している可能性が高いでしょう。解決事例をウェブサイトに掲載している事務所もありますが、これも判断材料の一つにはなりえますが、うがった見方をすれば、解決事例は創作可能です。この点、判決日や裁判所名が記載された裁判例であれば、創作はできないので、確かな指標となります。 また、サイト上の「相続の解決実績○○件」というような記載があるケースもありますが、これも判断材料の一つにはなりえますが、やはり、件数の裏取りが不可能であり、この件数が多ければ信頼できるとは言い切れません。 実績については確認が難しい向きもあり、また、弁護士としてのキャリアが一定年数以上あれば、相続についてもある程度の経験を積んでいるでしょうから、実績の詳細にはこだわらずに、他の点を重視するというのでもよいでしょう。

弁護士になってから一定程度の年数を経て相続事件等の受任件数が多い

ある程度の弁護士実績年数や多くの(数件程度ではない)相続事件の受任件数をこなしているというキャリアは相続に精通しているという客観的な指標の目安になるのではないかと思われます。

費用体系が明確

相続問題の経験があまりない場合、この分野の料金表が用意されていないことがあります。

コミュニケーションがとりやすい、信頼できる、熱意が感じられる

相続問題でより良い結果を得るためには、コミュニケーションがとりやすく、信頼でき、熱意が感じられる弁護士に依頼することが重要です。 無料相談に応じている弁護士もいるので、依頼前の面談時に、この3点から弁護士を評価してみてください。 インターネット等の情報を基にある程度絞り込んだ上で、複数の弁護士の話を聞き比較してみるのもよいでしょう。 相談したからといって、依頼しなければならないわけでないので、まずは気軽に電話してみるとよいでしょう。 ポイントとしては、親身になってあなたの話に耳を傾けてくれるか、説明がわかりやすいか、質問に丁寧に答えてくれるか、費用についても事前に明確にしてくれるか、契約を急かさないか、なるべく良い結果が得られるように努めようとする姿勢が感じられるか等が挙げられます。 ただし、相談時間には限りがあるため、相談者の話が脱線してしまったときは、貴重な相談時間を無駄にしないため、弁護士が軌道修正を促すことがあります。このような軌道修正は必要なことなので、これをもって、「話を最後まで聞いてくれないから、この弁護士は駄目だ!」と決めつけるのは早計でしょう。

費用が不合理に高くない

費用については、前述のとおり、費用体系が明確で存在していて、質問に丁寧に回答してくれる弁護士が望ましいでしょう。 また、不合理に高額な事務所は避けた方がよいでしょう。 安ければよいというわけではありませんが、相場よりも高いのであれば、納得のいく説明が得られるとよいでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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