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任意後見制度・任意後見契約とは。法定後見との違いを一覧表で解説!

自分や自分の親が、将来、認知症になるかどうかなどということは誰にもわかりません。

しかし、認知症は誰にでも起こり得るリスクです。

認知症になると心配なのが、財産の管です。

任意後見制度を利用すると、万一、認知症になってしまった場合の備えをすることができます。

判断能力が低下した場合の財産管理のための制度には、法定後見制度もあります。

この記事では、任意後見制度と法定後見制度の違いを理解して、ご自身の状況にあった制度を活用するために必要な知識をわかりやすくお届けします。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年3月11日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

任意後見制度・任意後見契約とは?

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分になると、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。

また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。

そこで、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、認知症等で判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおきます。

そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督のもと、本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。

この制度のことを任意後見制度というのです。

(画像出典:法務省民事局「成年後見制度 成年後見登記」)

任意後見人には誰がなる?親族?資格は必要?任意後見人になれる人

任意後見人には、任意後見契約の委任者と契約した受任者がなります。

任意後見受任者は、任意後見監督人が選任された時に、任意後見人になります。

誰と契約するかは委任者が自由に決めることができます(もちろん受任者の同意は必要ですが)。

親族でも構いませんし、資格は必要ありません。

ただし、次のいずれかに該当する人は、任意後見人にはなりません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
  • 破産者
  • 行方の知れない者
  • 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
  • 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

このいずれかに該当する人を受任者として任意後見契約を結んでも、任意後見監督人が選任されず、任意後見人となることはできないのです。

任意後見人に取消権はある?任意後見人の権限

任意後見人に取消権はありません。

つまり、本人がした契約などの法律行為を任意後見人が取消すことはできないということです。

また、任意後見人には同意権もありません。

つまり、本人は、任意後見人の同意がなくても、自由に、契約などの法律行為ができます。

なお、同意権とは、本人のする法律行為に同意をし、同意がない場合は取消すことができる権利のことをいいます。本人からの諸々の相談に同意をする権利ではありません(相談には自由に応じて構いません)。

同意権と取消権がないということは、本人が自由に法律行為ができるというメリットがある反面、本人が財産を失うような法律行為をしてしまった場合に財産を保護することができないというデメリットがあり、この点が、任意後見制度の特徴でもあり、問題点でもあるといえるでしょう。

また、任意後見人がもつ権限は代理権です。

任意後見人は、本人を代理して法律行為をする権限をもちます。

任意後見人の代理権の範囲は、任意後見契約で定めます。

なお、代理権を設定すべき事としては、例えば、介護施設の入居契約等のようなことが想定されます。

任意後見契約の効力発生時期

任意後見契約は、家庭裁判所が「任意後見監督人選任の審判」をしたときから、その効力が生じます。

任意後見と法定後見の違い

成年後見制度には、任意後見制度のほかにも法定後見制度があります。

法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じた制度を利用できるようになっています。

任意後見と法定後見の「後見」「保佐」「補助」との違いは、下表のとおりです。

任意後見 法定後見
後見 保佐 補助
前提となる手続き 公正証書で作成された任意後見契約の登記 なし なし なし
効力を生じる時 任意後見監督人が選任された時 後見開始の審判がされた時 保佐開始の審判がされた時 補助開始の審判がされた時
対象者 判断能力が不十分な状況にある人 判断能力が欠けていることが通常の状態の人 判断能力が著しく不十分な人 判断能力が不十分な人
本人の同意 必要 ※意思表示できないときは不要 不要 不要 ※保佐人に代理権を与える場合は必要 必要
後見人等の選任者 本人 家庭裁判所 家庭裁判所 家庭裁判所
後見人等の同意が必要な行為 (同意権の範囲) なし 同意の有無にかかわらず本人は法律行為ができない(後見人が取消すことができる) ※日常生活に関する行為はできる(同意不要) 民法13条1項所定の行為(借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築など) ※家庭裁判所の審判により、民法13条1項所定の行為以外についても、同意が必要な行為の対象とすることができる 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 ※民法13条委項所定の行為の一部
後見人等による取消しが可能な行為 (後見人に等に与えられる取消権の範囲) なし 日常生活に関する行為以外の行為 同上 同上
後見人等による代理が可能な行為 (後見人等に与えられる代理権の範囲) 任意後見契約によって定めた行為 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 同左
制度を利用した場合の資格などの制限 なし 医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失うなど 同左 なし

特筆すべき違いとしては、次の点が挙げられます。

  • 任意後見では後見人を自分で選べる
  • 任意後見では後見人に同意権・取消権を与えることができない
  • 任意後見では後見人の代理権の範囲を本人と後見人の間の契約で決めることができる
  • 任意後見では十分な判断能力があるうちに内容(後見人を誰にするか、どの程度の代理権を与えるか等)を決めることができる

任意後見と財産管理委任の違い

財産管理委任契約とは、民法上の委任契約に基づき、自身の財産の管理やその他の生活上の事務の全部又は一部について、代理権を与える人を選び具体的な管理内容を決めて委任するもので、任意代理契約とも呼ばれます。

任意後見契約のように財産のすべての管理を委任する必要はありません。

判断能力の低下がない場合でも利用できます。

裁判所等への申立て等の必要はなく、当事者間で合意すれば効力が発生します。

なお、任意後見と財産管理委任は、併用することができます。

本人に十分な判断能力があるうちは財産管理を委任して、判断能力が不十分な状態になると任意後見に移行するような任意後見契約を結ぶことができます。

これを移行型の任意後見契約といいますが、詳しくは後述します。

任意後見契約の利用形態(将来型、移行型、即効型)

任意後見契約には、利用形態として次の 3 種類があります。

将来型将来判断能力が低下したときに任意後見を開始するもの
移行型判断能力がある時に任意後見契約とは別に任意の財産管理契約(任意代理契約)を結び、財産管理等の事務を委託しておき、判断能力が低下した後は任意後見に移行し任意後見監督人の監督の下で財産管理等の事務を行うもの
即効型任意後見契約を結び、すぐに任意後見監督人選任の申立てをして、任意後見制度をスタートさせるもの
※軽度の認知症・知的障害・精神障害があっても意思能力があれば任意後見契約は可能

任意後見人の報酬の相場

任意後見人に報酬を支払うかどうかは、本人と任意後見受任者との話し合いで決めます。

一般的には、任意後見人を、第三者に依頼した場合には、報酬を支払うのが普通ですが、親族が引き受けた場合には、無報酬の場合が多いでしょう。

特に任意後見人が本人の推定相続人(相続人になると推定される人)の場合は、本人の財産はいずれは任意後見人のものになる可能性の高く、これを保護することは任意後見人自身のためにもなるため、無報酬で引き受けてもメリットがあるという考え方もできるでしょう。

法定後見の後見人の報酬は家庭裁判所が決めますが、任意後見人の報酬についても、法定後見の後見人の報酬を目安にしてもよいでしょう。

法定後見の後見人の報酬の目安は、東京家庭裁判所等が作成している成年後見人等の報酬額のめやすに掲載されています。

これによると、法定後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬は、管理財産額が1000万円未満の場合は月額2万円、1000万円~5000万円までは月額3万円~4万円、5000万円を超えると月額5万円~6万円となっています。

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任意後見契約の必要書類

任意後見契約公正証書を作成するための必要書類は次のとおりです。

本人についての書類
  • 印鑑登録証明書
  • 戸籍謄本
  • 住民票
任意後見受任者についての書類
  • 印鑑登録証明書
  • 住民票

いずれも発行後3か月以内のものに限ります。

任意後見に登記は必要?任意後見登記事項証明書とは?

任意後見契約は、公証人の嘱託により、法務局で登記されることになります(本人や任意後見受任者が登記手続きする必要はありません)。

この登記をすれば、任意後見人は、法務局から、任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した登記事項証明書の交付を受けて、自己の代理権を証明することができますし、取引の相手方も、任意後見人から、その登記事項証明書を見せてもらうことにより、安心して本人との取引を行うことができることになります。

登記事項証明書は、任意後見監督人選任の申立て時にも必要です。

なお、登記される事項は、下記のとおりです。

任意後見監督人の選任前
  • 本人
  • 任意後見受任者
  • 代理権の範囲
任意後見監督人の選任後
  • 本人
  • 任意後見人
  • 任意後見監督人
  • 代理権の範囲

任意後見契約の費用

任意後見契約書は公正証書にしなければなりません。

任意後見契約公正証書の作成にかかる費用は、次のとおりです。

公証役場の手数料1契約につき1万1000円
※証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円を加算
法務局に納める印紙代2,600円
法務局への登記嘱託料1,400円
書留郵便料約540円
正本謄本の作成手数料1枚250円×枚数

任意後見契約と併せて、通常の委任契約をも締結する場合には、その委任契約について、さらに上記の「公証役場の手数料」が必要になり、委任契約が有償のときは、その額が増額される場合があります。

また、受任者が複数になると(共同してのみ権限を行使できる場合は別として)、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えることになります。

任意後見監督人とは?選任申立ての方法は?

任意後見監督人とは、任意後見人の後見事務を監督する人のことです。

任意後見監督人は、本人や配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者の申立てに基づき、家庭裁判所の審判により選任されます。

任意後見監督人の選任申立てについては、裁判所ウェブサイトの「任意後見監督人選任」のページをご参照ください。

任意後見監督人は、本人の親族等ではなく、第三者(弁護士,司法書士,社会福祉士,税理士等の専門職や法律,福祉に関わる法人など)が選ばれることが多くなっています。任意後見受任者本人や。その近い親族(任意後見受任者の配偶者。直系血族及び兄弟姉妹)は任意後見監督人にはなれません。また、本人に対して訴訟をし、又はした者、破産者で復権していない者等も同様です。

なお、任意後見監督人にも報酬が必要で、報酬の額は家庭裁判所が決めます。

報酬のめやすは、管理財産額が5000万円以下では月額1万円~2万円、5000万円を超えると月額2万5000円~3万円とされています。

任意後見契約の解除

任意後見の開始前(任意後見監督人の選任前)は、本人又は任意後見受任者は、いつでも公証人の認証を受けた書面によって契約を解除することができます。

任意後見の開始後(任意後見監督人の選任後)は本人又は任意後見受任者は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て解除することができます。

任意後見契約を解除により終了させた場合、任意後見契約終了の登記申請をする必要があります。

任意後見人の解任

任意後見人に、次のいずれからの事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができます。

  • 不正な行為
  • 著しい不行跡(「ふぎょうせき」。行いがよくないこと)
  • その他その任務に適しない事由

まとめ

以上、任意後見制度について説明しました。

任意後見契約は公証役場で作成してくれますが、公証役場では、どのような契約内容にするかや、そもそも任意後見制度を利用すべきかといった相談には基本的には応じてくれません。

任意後見制度を含め、将来の財産管理について弁護士に相談しながら、どの制度を利用するか、また、任意後見制度を利用する場合に、どのような契約内容にするか決めていくとよいでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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