弁護士監修記事

遺言書の正しい書き方とは?思いどおりに財産を承継させるポイントを解説!

近年、遺言書を作成する方は増加傾向にあります。

「終活」という言葉が広く知られるようになったことからもわかるとおり、自分の死と向き合い、自分の死後のことは自分で決めたいと考える方が増えたということでしょう。

しかし、遺言書は、正しく書かなければ効力が認められず、自分の意図したとおりに財産を承継させられないばかりか、相続人間に争いを生じさせてしまうおそれもあります。

そこで今回は、遺言書の要件や遺言書の内容で注意が必要なことなどを解説し、遺言書のサンプルをご紹介します。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

遺言書で何ができる?遺言書の効力とは

そもそも遺言書とは何でしょうか。

遺言書でできることは何でしょうか。

以下で説明します。

遺言書とは

遺言書とは、遺言者が自己の死亡後の財産の分配などを定めておく文書をいいます。

遺言書でできることとは

遺言書に記載される内容は多岐にわたります。

一般的には遺言者の財産の処分についての記載が中心となりますが、それ以外にも、相続人に対し長年の感謝の言葉を述べたり、葬儀の規模や方法等を指定したり、兄弟仲良く母親の面倒を見るようにと記載したりすることもあります。

これらのうち、遺言書に記載することで法的効力が認められるものを、法定遺言事項といいます。

法定遺言事項の代表的なもの

それでは、法定遺言事項について詳しくみていきます。

法定遺言事項は、次の4つに分けられます。

  • 財産の承継・処分に関する行為
  • 相続人に関する行為
  • 身分に関する行為
  • その他

以下、それぞれについて説明します。

財産の承継・処分に関する行為

まずは、財産の承継・処分に関する行為から説明します。

財産の承継・処分に関する行為は、さらに次の4つに分けられます。

  • 相続分の指定
  • 特別受益の持戻免除
  • 分割方法の指定
  • 遺贈

初めて聞く言葉が並んでいて、げんなりさせてしまったかもしれませんが、以下でそれぞれ説明するので、安心してください。

相続分の指定(民法902条。以下、条文の引用はすべて民法)

遺言によって、共同相続人の相続分(相続の割合)を定め、または定めることを第三者に委託することができます。

特別受益の持戻し免除(903条3項)

共同相続人の中に相続人から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組・生計の資本のため贈与を受けたりしたものがいる場合、死亡時に残っていた財産に贈与を受けた価額を合計したものを相続財産とみなすことになっています。これを特別受益の持戻しといいます。

遺言で、特別受益の持戻しを免除(持戻しをしない)することができます。

分割方法の指定(908条)

遺言によって、たとえば、長男に自宅土地建物を、二男に預貯金を取得させるなど、遺産分割の方法を指定することができます。

遺贈(964条)

遺言により、財産の全部または一部を人に譲ることができます。たとえば、相続人にあたらない長男の妻に対して、長年の介護に対する感謝の証として、財産の一部を譲る場合などが考えられます。

相続人に関する行為

相続人に関する行為には、相続人の廃除と廃除の取消しがあります。

相続人の廃除(893条)

相続人の廃除とは、相続人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたときなどに、その相続人から相続権をはく奪する制度をいいます。

相続人の廃除は、生前に家庭裁判所に請求するほか、遺言で行うこともできます。

相続人の廃除の取消し(894条)

被相続人は、いつでも廃除の取り消しをすることができるとされており、遺言でもすることができます。

身分に関する行為

身分に関する行為には、認知と未成年後見人の指定があります。

認知(781条2項)

認知とは、結婚していない男女の子を主に父親が自分の子であると認めることです。

認知することによって、認知された子は遺産を相続できるようになります。

この認知は遺言によってもすることができます。

未成年後見人の指定(839条)

未成年者に対して最後に親権を行う者(父母の一方が死亡している場合や離婚している場合など)は、遺言で未成年後見人を指定することができます。

その他

祭祀承継者の指定(897条)

神仏や祖先を祭るための財産を祭祀財産といい、相続財産とは区別されています。

祭祀承継者は慣習に従って決められますが、遺言で指定があった場合には、その者が祭祀財産を承継します。

遺言執行者の指定(1006条1項)

遺言で、遺言執行者を指定し、または指定を第三者に委託することができます。

遺言執行者とは、遺言者の死亡後に遺言の内容を実現させる手続を行う者をいいます。

遺言書の種類

自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言書には、大きく分けて自筆証書遺言公正証書遺言の2種類があります。

それぞれのメリットとデメリットを理解して、どちらの方式にすべきか検討しましょう。

以下、それぞれについて説明します。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、その名のとおり、遺言者が自ら作成する遺言です。

自分で書くので費用もかからず、いつでも遺言を残すことができますし、遺言の内容を知られることもありません。

ただし、自筆証書遺言の効力が認められるには民法で定められた要件を満たす必要があるため、十分な知識がないとせっかく遺言書を作成しても無効になるおそれがあります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証人が作成する公正証書という公文書でする遺言をいいます。

公証人が作成するため、形式面の不備で無効になるおそれがなく、原本を保管してもらえるので紛失のおそれがないというメリットがありますが、作成に費用がかかることや、であるため、遺言の内容を秘密にしておくことができないというデメリットもあります。

遺言書が無効にならないように知っておくべき自筆証書遺言の要件

公正証書遺言の場合は、公証人が作成してくれるので安心ですが、費用や証人のこともあり、自筆証書遺言を選択する人も多くいます。

自筆証書遺言の場合は、要件を満たさず無効になってしまうことがあるので、そうならないように、以下では、自筆証書遺言の要件について説明します。

なお、自筆証書遺言の要件については、民法が定めています。

以下、どのような要件があるのか確認しましょう。

自書する

全文、日付、氏名の自書が必要

遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自書しなければならないとされています。

したがって、誰かに代筆してもらったり、パソコンなどで全文を作成して氏名だけ自書したりしたようなものは無効とされます。

なお、遺言を記載する紙や筆記用具については特に法律による定めはありません。

一般的なA4用紙や便箋などで構いませんが、破れないように丈夫な紙を選ぶといいでしょう。

筆記用具についても、鉛筆やシャープペンシルなどのように書換え(改ざん)が容易なものを避けさえすれば種類は問われません。

自書が難しい場合はどうすればいい?

遺言の作成を考える方の中には、高齢や病気などで体調がすぐれない方も少なくありません。そのような方の中には、文章を書くことが難しいという方もいらっしゃいます。

ですから、「自書」をあまりに厳しく要求すると、遺言書を作成したくてもできないという事態が頻繁に発生することになりかねません。

この点について、遺言者が妻の添え手による補助を受けて作成した自筆証書遺言の有効性が争われた事案で、最高裁は次のように判断しています。

最判昭和62.10.8

病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、

⑴ 遺言者が証書作成時に自書能力を有し

⑵ 他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、

⑶ 添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないこと

が、筆跡のうえで判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして、有効であると解する。

また、病気などの理由で死亡の危急が迫っている場合には、危急時遺言という特別の方式の遺言をすることができます。

3人以上の証人が立会い、その1人に対して遺言の趣旨を口授することで遺言をすることができます。

押印する

全文、日付、氏名の自書に加えて、押印することが要件とされています。

印鑑は実印でなければならない?

民法上は「押印」と定めるのみで、実印であることは要求されていません

ですから、認め印でも法律上は問題ありません。

ただし、自筆証書遺言の場合、本当に遺言者が作成したものか(偽造されたものではないか)が争われることがあるので、実印が望ましいといえます。

印鑑以外で代用できない?

それでは、印鑑以外のもので「押印」に代えることはできるでしょうか。

2つの最高裁判例を紹介します。

最判平1.2.16

いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らし、押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺することをもって足りる。

最判平28.6.3

我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難く、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさない

花押とは、署名の代わりに用いられる記号・符号のことで、名前の一字やその他の漢字をくずしたサインのようなものです。

たとえば、戦国時代や江戸時代の大名が部下に口授して手紙を書かせ、最後に自身が花押だけを書くということが行われていました。

最高裁は、「我が国の慣行ないし法意識」から、指印と花押とで異なる結論を出したのです。

指印はOKで、花押はNGということです。

遺言書を封筒に入れて封印する

法律上の要件ではありませんが、改ざんを防ぐため、封筒に入れて封印するのが望ましいといえます。

遺言書の書き方のポイント

事前に準備すべきこと

まず、遺言書を作成する前に、相続人と相続財産を正確に把握することが必要です。

どのような遺言を残すべきかを考えるには、だれが相続人になり、法定相続分はどのような割合になるか(遺言がなければどのような相続がなされるか)を正確に理解しておく必要があります。

また、せっかく遺言書を作成しても、遺言書に記載のない相続財産があると、その処理について相続人間で争いになる可能性があるため、相続財産の記載もれがないように注意することも必要になるのです。

遺言書の内容で気をつけるべきこと

次に、遺言書の記載内容で注意が必要な点を紹介します。

具体的・正確に記載する

遺言書の内容は、具体的かつ正確に記載する必要があります。

法定遺言事項は遺言どおりの効力が認められると言っても、遺言の記載内容があいまいであったり、不正確であったりするため、遺言の内容が特定できないのでは意味がありません。

不動産なら登記簿謄本に基づいて所在、地番、地目、地積(建物の場合は所在、家屋番号、種類、構造、床面積)を、預貯金の場合は金融機関名、支店名、種類、口座番号、口座名義を正確に記載することが必要です。

予備的遺言を検討する

予備的遺言とは、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合に備えた遺言のことです。

特定の相続人に全部または主要な財産を相続させるという内容の遺言をすることは珍しくありません。たとえば、自宅土地建物以外にめぼしい財産がない場合に「長男に自宅土地建物を相続させる」といった遺言をする場合などです。

このような場合、もし長男が遺言者より先に死亡したとすると、遺言の効力はどうなるでしょうか。

遺言者には長男以外に子がいて、長男にも子がいる場合、「長男が相続するはずだったのであるから、長男の相続人に相続させるべきだ」という考え方もありますし、「長男が死亡した以上は、遺言者の他の相続人に相続させるべきだ」という考え方も成り立つでしょう。

この問題については、次のような最高裁判例があります。

最判平23.2.22

「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

この判例によって、相続させる者とされた推定相続人が、被相続人(遺言者)の死亡以前に死亡した場合は、特段の事情がない限り、遺言の効力が生じないことになります。

したがって、推定相続人が死亡した場合に誰に財産を取得させるかについて希望がある場合には、予備的遺言をすることが望ましいと言えます。

遺留分に配慮する

兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。

遺留分とは、最低限保障された相続の割合のことで、遺言によっても奪うことができないものです。

遺留分を侵害するような遺言をした場合、遺留分を侵害された相続人は、受遺者・受贈者に対して侵害された額を請求することができます。これを遺留分減殺請求といいます。

たとえば、相続人が子2人だけである場合に、全ての相続財産を子の1人に相続させるという遺言をした場合、他の子の遺留分を侵害することになります。

このような場合、遺言者の死亡後、相続人間で遺留分についての争いが発生するおそれがあるのです。

そのような争いを避けるための方策として、次のようなものが考えられます。

遺留分に相当する財産を相続させる

上の例でいえば、他の子に遺留分に相当する額を相続させ、それ以外の財産をもう一人の子に相続させるという遺言をすることで、遺言者の死亡後に争いが生じるのを防ぐことができます。

なぜそのような遺言をするのかを説明する

遺留分を侵害した場合でも、侵害された相続人が遺留分減殺請求をしなければ、結果的に遺言どおりの結果を実現することができます。

そこで、遺言の中で、遺留分を侵害する遺言をする理由を説明し、遺留分減殺請求をしないように求めるということが考えられます。

法定遺言事項以外は書いてはいけない?付言事項を書くべきか?

遺言には、法定遺言事項以外のことを書くこともできます。

これを付言事項と言います。

付言事項は法的な効力はありませんが、遺言者が遺言をした真意を知る材料になりますし、付言事項の内容や遺言者と相続人の人間関係次第では、法的効力がなくても相続人が守ることを期待できる場合もあるので、書く意義は十分にあります。

付言事項には、次のようなものがあります。

葬儀の方法等についての指定

特定の宗教による葬儀の希望、葬儀をしないあるいはできる限り簡素なものにするなど、葬儀の方法等について指定するものです。

特定の人の面倒を見るように依頼するもの

遺言者が子らに対し、子らが協力して遺言者の妻の面倒を見るようにと依頼したり、子の1人に対して、他の子の面倒を見るようにと依頼したりする場合があります。

特定の人への感謝や遺言をする理由を述べるもの

妻に長年の内助の功を感謝する言葉を述べるなどの場合です。

また、さきほど述べた遺留分との関係で、特定の相続人の貢献が大きいことからその者に全ての財産を譲ることにしたので、他の相続人は遺留分減殺請求をしないようにというように、遺言をした動機など遺言者の真情を述べることもあります。

遺言執行者の指定は必要?

まず、以下の遺言には、遺言執行者が必要になります。

  • 認知
  • 相続人の廃除
  • 相続人の廃除の取消

このような場合、遺言執行者の指定がないときは、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。

遺言執行者の指定がないと、選任までに時間がかかってしまいますし、どのような人が選任されるのか遺言者が関与することはできません。

ですから、上記の遺言をする場合には、最初から遺言書で信頼できる人を遺言執行者に指定しておくといいでしょう。

それ以外の遺言については、遺言執行者は必須ではありません。

受遺者や相続人だけで名義変更等の手続ができると思われる場合にはあえて指定しなくてもいいでしょうし、高齢の配偶者に全財産を譲るというように、受遺者だけでは難しいと予想される場合には、あらかじめ信頼できる人を指定しておくといいでしょう。

遺言書の例

それでは、遺言書の具体例を紹介します。

これまで紹介してきた内容をできるだけ盛り込むため、以下のような事例を想定して作成しました。

【事例】

遺言者の法定相続人は、妻乙と長男丙、長女丁の3人である。

遺言者は会社(非上場)経営者であるが、高齢のため現在は長男丙が事実上経営を任されている。

長女丁には、これまで結婚資金のほか、マイホームの購入資金等の援助をしてきた。

遺言者は、経営の安定のため、保有する自分の会社の株式を全て長男丙に譲りたいと考えている。

それ以外の財産については、長女丁にはこれまで十分な生前贈与をしてきたので、最低限の財産のみを相続させ、それ以外は妻乙の長年の内助の功に報いるため、妻に残したいと考えている。

遺言書のサンプルのダウンロード

遺言書作成後の注意点

遺言書があることを信頼できる人に伝える

せっかく遺言書を作っても、相続人がそのことを知らずに遺産分割協議をしてしまっては意味がありません。

公正証書遺言の場合、原本が公証役場に保管されているため、遺言があるかどうか相続人にとって不明であるときは、公証役場に問い合わせれば公正証書遺言の有無を確認することができます。

これに対して、自筆証書遺言にはそのような手段はありません。

ですから、自筆証書遺言を作成した後は、信頼でき、かつ、相続人のことも知っている人に、遺言を作成したことを伝えるようにしましょう。

自筆証書遺言の場合、紛失のおそれもあるので、場合によっては遺言書を預かってもらうことも選択肢のひとつです。

遺言書を開封するとどうなる?

公正証書遺言以外の遺言は、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。

封をされている遺言書は、家庭裁判所で相続人立会いのもとでされることになっています。

ただし、家庭裁判所の検認手続は、遺言書の現状を保存し、その後の改ざんや破棄を防ぐためのもので、遺言が有効か無効かを判断するものではありません。

また、前述のとおり、封をすることは自筆証書遺言の要件ではありません。

したがって、自筆証書遺言を勝手に開封しても、遺言が無効になるわけではありません

ただし、無断で遺言書を開封することは行政罰(5万円以下の過料)の対象とされています(民法1005)。

実際に過料が課せられることはほとんどないようですが、注意が必要です。

また、すでに無断で開封してしまった場合も、急いで検認の申立てをして遺言書の現状を保存し、その後の改ざん、破棄はできないようにしておく必要があります。

遺言書を訂正したいときはどうすればいい?

遺言書を作成した後に、相続人との人間関係の変化などの事情が変わることはしばしばあります。

作成した遺言書をなかったことにしたい、あるいは訂正したいと思う場合もあるでしょう。

まず、遺言をなかったことにしたい場合、自筆証書遺言であれば破棄すればそれで足ります。

遺言書の訂正については、次の2つの方法が考えられます。

遺言書の変更

元の遺言書に加除その他の変更を加える方法です。

しかし、この方法は、「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」とされており、厳格な方式が定められています。

また、封印をしていた場合にはいったん開封し、所定の方式で変更を加え、新たな封筒に封印する必要があります。

遺言の撤回

既存の遺言書に変更を加える以外に、新たな遺言によって、前の遺言の全部または一部を撤回することができます。

はっきりと撤回すると記載しなくても、複数の遺言がある場合において、前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023)。

遺言書についての相談先

弁護士

遺言に限らず、法律問題についてのお悩みは、法律の専門家である弁護士に相談するのが最善といえます。

弁護士であれば、遺言書の形式面から具体的な内容に至るまで、遺言についてのあらゆる疑問に答えてくれるでしょう。

弁護士に相談したいが費用が心配だという方もいらっしゃると思いますが、最近では初回相談無料という事務所もあります。

司法書士

司法書士は登記に関する専門家で、登記に関しては弁護士以上の知識を持っています。

相続財産に不動産がある場合には、司法書士に相談してもいいでしょう。

ただし、遺言書の作成の場面では、登記について高度な知識は必要ないことがほとんどですので、実際のメリットとしては弁護士と比べると費用が安い傾向にあるということが大きいでしょう。

税理士

相続財産の額や相続人の人数次第では、相続税の申告が必要になる場合があります。

自分が考えている遺言の内容に税務上の問題がないか、より節税できる方法がないか知りたい場合には、税理士に相談するといいでしょう。

ただし、税理士は税務の専門家であり、法律問題の専門家ではないので、遺言書の文案の作成まではしてくれないかもしれません。

その場合には、別途、弁護士等への相談が必要になります。税理士が親交のある弁護士を紹介してくれることもあるでしょう。

その他

その他に、各自治体が開催する弁護士や税理士による市民向けの無料相談、弁護士会が行う法律相談、法テラス(日本司法支援センター)が行う法律相談(一定の資力要件あり)などがあります。

遺言書作成にかかる費用

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合、ほとんど費用はかかりません。

紙や封筒のほか、筆記用具のインクやのりを消耗する程度です。

もちろん、専門家の有料相談を受けた場合は、別途相談料がかかります。

公正証書遺言の場合

必要書類の取得にかかる費用

公正証書遺言をする場合、公証人が本人確認、相続関係の確認、財産関係の確認を行います。

そのため、印鑑証明書、戸籍謄本、住民票、相続財産に不動産がある場合には登記簿謄本が必要になります。

いずれも1通あたり数百円で取得することができます(郵送で取り寄せる場合には、往復の郵便代や小為替の手数料が別途必要になります)。

公証人に支払う費用

公正証書遺言を作成する場合、公証人に手数料を支払う必要があります。

公証人の手数料は、公証人手数料令という法令で以下のように定められており、どの公証役場に依頼しても同じです。

証書の作成
目的の価額 手数料
100万円まで 5000円
200万円まで 7000円
500万円まで 1万1000円
1000万円まで 1万7000円
3000万円まで 2万3000円
5000万円まで 2万9000円
1億円まで 4万3000円
3億円まで 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
10億円まで 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円超 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
具体的計算方法

相続人または受遺者ごとにその財産の価額から上の基準によって手数料を算出し、手数料を合計して遺言全体の手数料とします。

ただし、遺言書の場合、全体の財産が1億円以下のときは、1万1000円を加算することになっています。

また、高齢や病気などのために交渉役場に行けない方のために、役場外執務という制度があり、自宅や病院、施設まで公証人に出向いてもらうことも可能ですが、上記の加えて次のような費用がかかります。

日当 2万円(4時間以内1万円)
交通費 実費額
病床執務手数料 手数料の2分の1加算

専門家に依頼した場合の費用

弁護士のような専門家に公正証書の作成のサポートを依頼することがあります。

依頼を受けた弁護士は、戸籍等の必要書類の取り寄せをし、依頼者の希望する遺言の内容を聴き取って遺言書の案を作って公証人と折衝し、依頼者と公証役場まで同行して証人として公正証書の作成に立ち会い、場合によっては遺言執行者になります。

このようなサポートを受けるには、費用を支払う必要があります。

弁護士費用は、現在は自由化されており、弁護士と依頼者の協議で決めることになっていますが、以前は日本弁護士連合会の統一基準がありました。

参考に、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準(以下「旧報酬基準」といいます。)から、遺言作成に関する手数料の基準を紹介します。

定型 10万円~20万円の範囲内の額
非定型の基本 経済的な利益の額が300万円以下の場合 20万円
300万円を超え3000万円以下の場合 1%+17万円
3000万円を超え3億円以下の場合 0.3%+38万円
3億円を超える場合 0.1%+98万円
非定型で特に複雑又は特殊な事情がある場合 協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する

たとえば、定型の遺言書を公正証書で作成するサポートを依頼した場合、13~23万円(消費税は別)ということになります。

旧報酬基準は廃止されましたが、現在も一応の目安にはなるので参考にしてください。

まとめ

自筆証書遺言について、書き方のポイントを中心に網羅的に解説しました。

本稿が、自筆証書遺言の作成を検討されている方の参考になれば幸いです。

本稿をお読みいただいたうえでさらに疑問のある方は、遺言に詳しい弁護士に相談することを検討するといいでしょう。

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