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遺言書で遺言執行者を指定することは、よいアイディアです。
遺言執行者は、弁護士等の専門家と推定相続人(相続開始後に相続人となる人)のどちらを指定すべきでしょうか?
この記事では、遺言執行者に弁護士を指定するメリットと費用・報酬の相場について説明します。
また、遺言で執行者が指定されていない場合において家庭裁判所に遺言執行者選任申立を行う場合に、申立人は遺言執行者の候補者を立てることができますが、この候補者は、弁護士等の専門家と相続人のどちらがよいでしょうか?
この点についても併せて説明します。是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2021年5月13日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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遺言執行者に弁護士を指定するメリット
遺言執行者に弁護士を指定するメリットとして、次の
5つが挙げられます。
- 相続人が相続手続きの手間から解放される。
- 相続手続きがスムーズに進むため、相続人が遺産を早期に取得できる。
- 相続人が精神的な負担から解放される。
- 遺言執行の障害に対して法的手段等を用いて解決できる。
- 遺言書作成と併せて依頼する場合は、より一層スムーズ。
以下、それぞれの点について説明します。
相続人が相続手続きの手間から解放される
遺言執行者がいない場合は、相続人が協力して相続手続きを進めなければなりません。また、相続人を遺言執行者にすることもできますが、いずれにせよ、
一般の方が弁護士等の専門家に依頼せずに相続手続きを完了させることは、多大なる労力と膨大な時間を要します。
遺言執行者は、就任してから業務の完了までに概ね次のような業務を行わなければなりません。
- 戸籍等の証明書を収集し、相続人を調査します
- 遺言執行者に就任したことを相続人と受遺者全員に通知します
- 相続財産を調査します
- 財産目録を作成します
- 預貯金の解約の手続きを行います
- 売却して分配する財産については換価手続きを行います
- 有価証券等の財産の名義変更手続きを行います
- 不動産の所有権移転登記を行います
- 遺言執行の妨害をしている者がいる場合においてはこれを排除します(訴訟が必要になることも)
- 相続人と受遺者全員に完了報告を行います
このように、遺言執行者の業務は多岐に渡ります。
金融機関や法務局の窓口は平日の日中しか空いていないため、仕事を休んで対応しなければならないことも生じえます。
弁護士に遺言執行を依頼すれば、相続人は、このような手間から解放されます。
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相続手続きがスムーズに完了でき、相続人が遺産を早期に取得できる
前述のとおり、遺言執行者がいない場合は相続人が協力して相続手続きを進めなければなりませんが、相続人の中に協力しない人や忙しくて協力したくてもできない人がいると、いつまで経っても相続手続きが終わりません。
相続人を遺言執行者にした場合も、一般の方では、要領を得ず、手続き完了までに長い期間を要してしまうことも少なくありません。
遺言執行の経験が豊富な弁護士であれば、相続手続きをスムーズに完了させることができ、結果として、相続人が遺産を早期に取得できることにつながります。
早期に遺産を取得したい場合は、弁護士を遺言執行者に指定した方がよいでしょう。
相続人が精神的な負担から解放される
相続人が遺言執行者となった場合は、次のようなトラブルが生じることがあります。
- 遺言執行者に指定されなかった相続人が、そのことを不満に感じトラブルに
- 他の相続人から遺言執行者が遺産の一部をこっそり自分のものにしたのではないかと疑われトラブルに
- 遺言執行者は精一杯取り組んでいるものの不慣れなため長期間を要し、他の相続人から手続きが遅いとトラブルに
- 遺言執行者が自分で手続きができず、結局、自腹で弁護士に依頼することになり、こんなことなら始めから弁護士を遺言執行者に指定していればと後悔
このようなトラブルに見舞われると、遺言執行者となった相続人には多大な精神的負担がかかりますが、弁護士を遺言執行者にすると、相続人はこのような負担から解放されます。
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遺言執行の障害に対して法的手段等を用いて解決できる
弁護士は、遺言執行に何らかの障害が生じた場合に、障害となっている相手方と交渉したり、
裁判等の法的手段を用いて障害を取り除き遺言執行を実現することができます。
遺言書作成と併せて依頼する場合は、より一層スムーズ
弁護士は、遺言書文案作成についても最適な専門家です。
遺言者が遺言書文案作成を弁護士に依頼する際に、
遺言執行者についても併せて依頼するとスムーズでしょう。
近親者が亡くなると遺族は様々な手続きに追われて多忙になりますから、自分たちで遺言執行をするのは勿論のこと、遺言執行者を依頼する弁護士を探すことさえも手間に感じるかもしれません。
この点、遺言書文案作成を依頼した弁護士を遺言執行者に指定しておけば、遺族の負担を減らすことができます。
また、弁護士は遺言書文案を作成する際に、財産目録等の資料を作成しますから、
同じ弁護士が遺言執行を担当すれば、よりスムーズに進めることができるでしょう。
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遺言執行の弁護士費用・報酬
遺言執行者の報酬は、遺言書に記載がある場合はその金額に、遺言書に記載がない場合は相続人と協議して決めたり、家庭裁判所に決めてもらうことができます。
低廉な金額を勝手に遺言書に記載しても辞任されてしまうでしょうから、
遺言執行者に指定する弁護士に報酬額を確認したうえで、遺言書に記載しましょう。
なお、遺言執行の弁護士費用は、遺言の内容にもよりますが、遺言書作成時ではなく、遺言執行完了時に、遺言執行者が遺産から取得する場合が多いでしょう。
報酬の相場を知る上で次の
2つが参考になるので、紹介します。
- アンケート結果にもとづく弁護士費用の目安
- 日弁連の旧報酬等基準規程
アンケート結果にもとづく弁護士費用の目安
2008年
11月に日本弁護士連合会(日弁連)が全国の弁護士に実施した以下の設例における報酬についてのアンケートの結果が参考になると思われるので、紹介します。
設例:資産は、不動産、預金と株券で、評価額の総額は5000万円 |
アンケート結果は下の表のとおりです。
報酬額 |
回答数 |
割合 |
20万円前後 |
173 |
18.3% |
40万円前後 |
256 |
27.1% |
60万円前後 |
175 |
18.6% |
80万円前後 |
77 |
8.2% |
100万円前後 |
185 |
19.6% |
120万円前後 |
20 |
2.1% |
その他 |
57 |
6.0% |
合計 |
943 |
100.0% |
円グラフにすると以下のようになります。
この設例では、
40万円前後が
4分の
1を超えていますが、
100万円前後、
60万円前後と
20万円前後がいずれも
20%近くになっており、ばらつきがあることが分かります。
なお、上の報酬額はあくまで、この設例におけるものです。
遺言執行者の仕事の中味は遺言内容によって異なるため、自ずと弁護士報酬も遺言内容によって異なります。
日弁連の旧報酬等基準規程
現在は弁護士が料金表を自由に設定することができますが、
2004年
3月までは、日弁連の報酬等基準規程(旧規程)に則って報酬額を計算しなければなりませんでした。
現在でも、この旧規程を参考に報酬を決める事務所が多いため、旧規程について説明します。
旧規程では、
遺言執行の弁護士報酬額は下の表のとおり定められていました。
内容 |
報酬額 |
遺言執行 |
基本 |
遺産が300万円以下 |
30万円 |
遺産が300万円超3000万円以下 |
2%+24万円 |
遺産が3000万円超3億円以下 |
1%+54万円 |
遺産が3億円超 |
0.5%+204万円 |
特に複雑又は特殊な事情がある場合 |
弁護士と依頼者との協議により定める額 |
遺言執行に裁判手続を要する場合 |
遺言執行手数料とは別に、裁判手続きに要する弁護士報酬が必要となる |
「報酬額」欄の「
%」は、遺産額に対する割合です。
先ほどのアンケートの設例を、旧規程に当てはめて報酬額を計算してみます。
遺産額は
5000万円ですから、上の表の「
3000万円超
3億円以下」に該当し、「
5000万円×
1%+
54万円=
104万円」が報酬額になります。
先ほどのアンケートの結果は、旧規程よりも大分良心的な料金設定をしていることが分かります。
遺言執行における弁護士と司法書士の違い
遺言執行者は、司法書士に依頼することもできます。
弁護士と司法書士には、どのような違いがあるのでしょうか?
以下、説明します。
弁護士は法的な対応がとれる
遺言執行に何らかの障害が生じた場合、障害となっている相手方と交渉したり、裁判等の法的手段を用いて障害を取り除き遺言執行を実現する必要がありますが、そのような
交渉や裁判等の法的手段を行うにあたっては弁護士の方が適しているでしょう。
登記は司法書士の方が慣れているが、弁護士でも問題ない
一方、登記については、一般に、司法書士の方が弁護士のよりも慣れているという違いもあります。
登記手続きに慣れている弁護士も中にはいるでしょうが、
登記手続きについては司法書士に依頼した方がスムーズに進められる場合が多いでしょう。
もっとも、弁護士が遺言執行者となった場合、登記だけ提携する司法書士に依頼するということも出来るため、遺産の中に不動産が含まれる場合であっても、弁護士を遺言執行者に選任することに問題はありません。
費用には大きな違いはない
司法書士の方が費用が安いイメージがあるかもしれませんが、
遺言執行については、両者の間に大きな違いは見られないようです。
遺言執行者の費用について詳しくは「
遺言執行者の報酬の決め方と相場|弁護士・司法書士・行政書士」をご参照ください。
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遺言執行の弁護士の選び方
遺言執行者に指定する弁護士はどのように選べばよいでしょうか?
遺言文案作成と併せて依頼する場合、依頼してから遺言執行が行われる(遺言者が亡くなる)までに長い年月が経過していることも少なくありません。
弁護士の方が先に亡くなることや、弁護士を引退していることもあるでしょう。
そのような場合は、結局、相続人が共同で遺言執行したり、遺言執行者選任申立を行うことになります。
このようなことにならないように、
若い弁護士か弁護士法人に依頼すると比較的安心でしょう。
若い弁護士なら遺言者が亡くなった時に現役で弁護士をやっている可能性が高いですし、弁護士法人なら遺言文案作成に当たった弁護士が亡くなったり引退していたとしても法人が存続していれば遺言執行については別の弁護士が対応してくれます。
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まとめ
以上、遺言執行者に弁護士を指定するメリットと費用・報酬の相場等について説明しました。
当サイトでも遺言執行に対応している弁護士を掲載しています。
また、遺言執行については、以下の記事もご参照ください。