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公正証書遺言が無効になるなんて!?知っておくべき全知識を完全解説

ご存じでしょうか。公正証書遺言でも無効になることがあるのです。 「公証役場まで行って、証人のお願いもして、費用もかけてがんばって作っていたのに…。」周りで見守っていた遺族も切ない気持ちになってしまうでしょう。 そのようなことにならないように、遺言書が無効にならないための知識をつけておきましょう。 この記事では、そのようなケースについてわかりやすく丁寧に説明します。是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年12月12日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

公正証書遺言が無効となるケース

公正証書遺言であっても、次のような場合には無効となります。
  • 遺言作成時に遺言者に遺言能力がなかった
  • 証人としての要件を満たす人が証人となっていなかった
  • 詐欺や脅迫等によって遺言者の真意に基づかない遺言内容となった
以下、それぞれについて説明します。

遺言作成時に遺言者に遺言能力がなかった

遺言能力とは、有効な遺言をするための能力、言い換えると、遺言内容を理解し判断する能力のことです。 次のようなケースでは、遺言能力はないものとされます。
  • 15歳未満の場合
  • 認知症等で意思能力がない場合

遺言能力:15歳未満の場合

遺言をすることができるのは、15歳以上の人です。 15歳未満の人がした遺言は、親権者等の法定代理人が同意の有無にかかわらず無効です。 15歳以上であれば、未成年であっても、法定代理人の同意なく遺言をすることができます。 公正証書遺言の手続時に公証人が遺言者の本人確認書類によって遺言者の年齢を確認するため、15歳未満の人が公正証書遺言をして、それが後から無効になるということは、まずないでしょう。

遺言能力:認知症等で意思能力がない場合

可能性としてあり得るのは、遺言者が遺言時に認知症等で意思能力がなかったというケースです。 意思能力とは、自己の行為の結果を判断することのできる能力であり、意思能力があるといえるには、一般的には710歳程度の知力があれば足りるとされますが、あくまで当該行為者について個別具体的に判断されます。 一般的な意思能力の説明としては以上の通りですが、遺言は普段の買い物等よりも複雑な法律行為ですし、前述の通り15歳以上でなければできないので、7歳~10歳程度の知力では遺言能力がないとされ無効となる可能性があります。 公証人は遺言者の遺言能力に疑いがあるときは、本人の判断能力が十分に備わっているかを確認するために質疑応答などを行ったりしますが、必ずしも遺言書の作成を拒否するわけではありません。 よって、公正証書遺言であっても、後に遺言能力が否定されることがあるのです。 それでは、具体的に、どの程度の認知症から遺言が無効になってしまうのでしょうか。この点については、遺言をするための具体的な要件が民法に定められています。
第973条  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。 2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、基本的には遺言はできませんが、この事理弁識能力を一時的に回復した時は遺言をすることができます。 ただし、二人以上の医師に、事理を弁識する能力を欠く状態になかったことを証明してもらわなければなりません。協力してくれる医師が都合よく見つからないこともあって、成年被後年人が遺言をすることは簡単ではありません。 それでは、成年被後見人ではない認知症の人の場合はどうでしょうか。 認知症の人がした遺言が有効かどうかは、主に次の要素から判断されます。
  • 遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
  • 遺言内容それ自体の複雑性
  • 遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯
以下、それぞれについて説明します。

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度は、次の観点から考察されます。
  • 精神医学的観点
  • 行動観察的観点
以下、それぞれについて説明します。 認知症患者の遺言能力の有無を精神医学的観点から判断する指標として、長谷川式スケールの点数が重視されています。 長谷川式スケールでは、点数に応じて、下表の通り、簡易的な診断をすることができます。
20点以上 異常なし
16~19点 認知症の疑いあり
11~15点 中程度の認知症
5~10点 やや高度の認知症
4点以下 高度の認知症
大まかな目安として15点以下の場合は遺言能力に疑いが生じ、10点以下の場合は遺言能力がないとする見解もありますが、遺言能力の有無の判断は精神医学的観点のみから行われるものではなく、裁判例でも4点で遺言が有効となったものから、15点で無効となったものまで様々です。 次に、行動観察的観点についてですが、行動観察観点からは、医療記録、看護記録、介護記録や、それらの作成者等の供述等から知ることができる遺言者の当時の行動等によって遺言能力の有無が判断されます。

遺言内容それ自体の複雑性

障害の程度が大きくても遺言内容が単純であれば遺言能力が認められやすくなりますし、反対に、障害の程度が小さくても遺言内容が複雑であれば遺言能力は認められにくくなります。

遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

例えば、親族や同居人を差し置いて、親戚関係も、深い付き合いもない人に全財産を遺贈(遺言によって財産を贈ること)しているようなケースでは、このような遺言をする動機や理由がなく、遺言に至る経緯も不自然であるので、遺言能力があったことに疑問が生じるでしょう。

証人としての要件を満たす人が証人となっていなかった

遺産相続のトラブル事例 公正証書遺言では証人が2人必要であり、次のいずれかに該当する人は、証人となることができません。
  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

1.未成年者

未成年者は、20歳未満の人のことです。 202241日以降は、法改正によって成年年齢が引き下げられ、18歳未満の人が未成年者となります。

2.推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

推定相続人とは、その時点において、最優先順位の相続権(代襲相続権を含みます。)を持っている人のことです。 つまり、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。なお、遺言書作成時に推定相続人でなければ、遺言書の作成後に、結果的に推定相続人になったとしても問題ないとされます。 また、受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。 配偶者とは、ご存知の通り、妻や夫のことです。 直系血族とは、親子関係でつながる人のことで、祖父母、父母、子、孫などが、これに当たります。 例えば、Aさんの妻Bさんと、Aさんの子Cさんが、Aさんの財産の推定相続人であったところ、Aさんは、愛人Dさんに遺贈(遺言によって財産を与えるいこと)する旨の公正証書遺言を作成したとします。その場合、Bさん、Cさん、Dさん、それから3人の配偶者と直系血族は、Aさんの遺言の証人になることはできません。

3.公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

公証人とは、事実の存否や、契約や法律行為の適法性等について、証明したり認証したりする公務員のことです。 公証人は公正証書遺言の存在や内容を証明する手続を行いますが、同じく公正証書遺言の存在や内容を証明する証人が、公証人と関係がある人であることが許されるのであれば、公証人とは別に証人を求める意義が乏しくなってしまいます。 したがって、証人は、公証人と関係のある人(配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人)ではいけません。このような証人となることができない人が証人となっていた場合、遺言は無効になります。 いずれにせよ、遺言は正しく書き、正しく遺さなければ意味がありません。遺言の作成に迷ったりわからなことがある方は、専門の士業に相談することをおすすめします。

詐欺や脅迫等によって遺言者の真意に基づかない遺言内容となった

詐欺や脅迫等によってさせた遺言は無効となります。また、詐欺や脅迫によって、遺言の撤回・取消・変更が妨げられた場合も無効となります。 ただし、遺言者の死後に、詐欺や脅迫があったことを証明することは、よほど明白な証拠が残されていない限り難しいでしょう。

無効を主張する場合や無効を主張された場合

以上、説明したとおり、公正証書遺言であっても、無効となるケースはあります。しかしながら、話し合いによって、受遺者が無効を認めることもあまり期待できず、そうすると、訴訟で無効を争うことになります。このような場合は弁護士に相談することになります。

まとめ

以上、公正証書遺言について説明しました。せっかく遺言書を作成するのなら、きちんと効力のあるものを作りたいものです。 遺言書についての疑問は気軽に専門家に相談してみましょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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