税理士監修記事

贈与税の時効によって免税されるケースと免税されないケース

贈与税には時効があり、申告・納付の期限から一定期間が経過すると、納税の必要がなくなります。

この記事では、贈与税の時効についての知識をわかりやすく説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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贈与税の時効とは?

1月1日から12月31日までの1年間に110万円を超える額の贈与を受けた場合は、贈与税が課されるため、翌年の2月1日から3月15日までの期間に、受贈者(贈与を受けた人)の住所地を管轄する税務署に贈与税を申告して納付しなければなりません(贈与税申告について詳しくは「贈与税の申告ルールをわかりやすく説明!申告しないとどうなる?」参照)。

申告をしなかった場合について、国税通則法25条では、「税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかつた場合には、その調査により、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する。」と定められています。

つまり、申告しない場合は、税務署が税務調査をして、税額を決定することができるのです。

しかし、この決定ができる期限が法律(相続税法36条)で定められていて、この期限を経過した日以降においては、この決定をすることができません。

税務署が贈与税の無申告者に対して税務調査をして税額を決定することができる期限のことを贈与税の時効といいます。

贈与税の時効期間は5年?6年?7年?

税金の時効期間は原則5年ですが(国税通則法70条)、贈与税の時効期間は6年または7年であり(相続税法36条)、他の多くの税金よりも時効期間が長く設定されています。

それでは、どのような場合に6年で、どのような場合に7年なのか説明します。

贈与税の時効期間は、条文上、6年が原則ですが、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合等は7年になります。

贈与を受けたことを認識していながら申告しなかった場合は、偽りその他不正の行為に該当し、時効期間が7年になるでしょう。

もっとも、贈与を受けたことを認識していなかったら、贈与が成立していない可能性が高いので、贈与税の時効期間は、通常は7年と考えて差し支えないでしょう。

条文上は6年が原則となっていますが、実際上は7年が原則というわけです。

贈与税の時効期間の起算日

期間を計算し始める日のことを起算日(きさんび)と言います。

正確に言うと、初日は期間の計算に算入されないので、期間を計算し始める前日が起算日ということになります。

贈与税の時効期間の起算日は、贈与を受けた翌年の3月15日です。

初日は算入しないので、3月16日から時効期間としてカウントされ始めることになります。

例えば、2018年1月1日に受けた贈与に対する贈与税の時効期間の起算日は2019年3月15日で、2019年3月16日から時効期間として算入されます。

時効期間が、6年の場合は2025年3月15日に、7年の場合は2026年3月15日に時効が完成します。

なお、なぜ翌年の3月15日が起算日になっているのかというと、その日が贈与税の申告と納付の期限だからです。

贈与を受けた日が起算日ではないのでご注意ください。

贈与税が時効にならないで相続税がかかる名義預金とは?

贈与税の時効期間が経過しても、簡単には税務署に時効の完成を認めてもらえません。

時効期間が経過しても時効にならないで相続税の対象とされてしまうことがあるのです。

この点について説明する前に、まず、贈与税の申告漏れはどのようにして発覚するかについて説明します。

税務署は口座の出入金を把握することはできても、その原因については調査をしない限り把握できません。

贈与でなければ、当然、贈与税の対象とならないので、税務調査をしなければ贈与税の申告漏れを指摘することはできないのです。

税務署もマンパワーに限りがありますから、一つ一つの入金に対して逐一調査を行うことはできません。

税務調査が高確率で行われるのは、相続税の申告後です。

相続税の申告後に行われる税務調査の際に、被相続人(亡くなった人)からかつて受けた贈与の贈与税の申告漏れが発覚するのです。

贈与を受けてから贈与者が亡くなって税務調査が入るまでの間に、既に時効期間が経過していることもありますが、そのような場合でも、そう簡単には税務署が時効の完成を認めてくれることはありません。

受贈者が時効が完成した贈与財産と主張する財産について、税務署は本当は被相続人の名義預金ではないかとのです。

名義預金とは、形式的な名義人と真の名義人が異なる預金のことです。

例えば、相続人名義の口座に預金されているものの本当は被相続人の所有する財産のことを、被相続人の名義預金といいます。

税務署から名義預金だと主張された場合、次のような事実があると反論がしやすくなるでしょう。

  • 贈与の際に贈与契約書が作成されていること
  • 贈与時以前から通帳、届印、キャッシュカード等が受贈者の管理下にあり、受贈者が自由に引き出すことができる状態であったこと

贈与税の時効の完成が認められた判例

実際に贈与税の時効の完成が認められた静岡地方裁判所平成17年3月30日判決の判例(裁判例)を紹介します。

会社の社長から3人の息子に対する計32億円の送金が、贈与なのか、貸付なのかが争われた事案です。

贈与であれば、税務調査の時点で無申告のまま贈与税の時効期間が経過しており、課税はありません。

貸付であれば、相続財産として相続税の課税対象となります。

受贈者である息子たちは贈与であると主張し、国(国税庁)は貸付であると主張しました。

両者の主張に対してくだった判決は、送金が贈与であることと贈与税の時効の完成を認めるものでした。

贈与と認められた判断のポイントは次の通りです。

  • 社長が息子たちに送金する際に、経理担当者に「出してやれ」と指示したのですが、経理担当者も息子たちも、贈与の意味で捉えていた
  • 社長が返済を求めたことはなく、また、息子たちに返済する資力なく、貸付金とは言えない。
  • 贈与税の申告をしなかったからといって、贈与ではなかったということはできない

住宅等の不動産にも贈与税の時効がある?

金銭に限らず経済的価値のある物の贈与を受けた場合は贈与税がかかります。

住宅等の不動産でも、自動車や宝石等の動産でも贈与税の課税対象となり、課税対象であれば、当然、時効の対象にもなります。

不動産の場合は登記制度があり、所有権移転登記の際には、登記原因の記載と、登記原因情報の添付が求められます。

不動産の贈与を受けて、所有権移転登記をする場合は、登記原因に「贈与」と記載し、登記原因情報として贈与契約書を添付することになります。

このような登記制度があるので、不動産の場合は、税務署は相続税の申告を待たずして贈与があったことを知ることができるのです。

贈与による所有権移転登記があったにもかかわらず、翌年に贈与税の申告がなければ、税務署から指摘を受けることになります。

それでは、不動産の贈与の際に、贈与契約書を作成したものの、所有権移転登記をせずに、贈与税の時効期間が経過してから登記をした場合に、時効の成立は認められるのでしょうか?

贈与があった時を、「贈与契約があった時点」とすれば時効が完成し、「登記をした時点」とすれば時効は完成していないことになります。

この点について、名古屋高等裁判所平成10年12月25日判決では、登記をした時が贈与があった時であるとし、時効の成立を認めませんでした。

登記がされていない以上、受贈者が不動産を自由に活用し収益を得たり、売却したりすることができないからです。

贈与税の時効の成立を主張するには?

贈与税を含めた国税の徴収権の時効については、その援用を要しません。

援用とは、時効による利益を享受するための意思表示のことを言います。

通常、時効の効力を確定的に主張するためには、時効を援用しなければならないのですが、国税の徴収権の時効については、援用することなく、時効期間が満了すると、自動的に時効の効力が発生し、徴収権が消滅します。

したがって、贈与税の時効の成立を主張するのに、援用の手続きは不要です。

手続きは必要ないのですが、税務調査によって税務署から、贈与税の申告漏れを指摘されたり、贈与が成立していないとして相続税の申告漏れを指摘された場合には、贈与税の時効の成立を主張することになります。

しかし、税務署はそう簡単に引き下がってくれません。

多くの場合は、税務訴訟を通じて、贈与税の時効の成立を主張することになります。

税務訴訟は、弁護士と税理士がタッグを組んで臨む難しい裁判です。

贈与税の時効が成立していると思われる場合でも、税務調査を受ける前に、一度、税理士に相談した方が良いでしょう。

税理士に相談しても、税務署にばれて税務調査が入るというようなデメリットはありません。

時効成立が認められなかった場合は、申告漏れから月日が経てば経つほど加算税がかさむことになります。

早めに税理士に相談することをお勧めします。

債務の消滅時効を援用したら贈与税ではなく所得税がかかる

借金等の債務について消滅時効の時効期間が経過して時効の援用をしたら、債務は時効によって消滅します。

時効によって消滅した債務に対しては、贈与税ではなく一時所得として所得税がかかります。

課税時期は、時効を援用した時です。

時効期間が経過した時ではありません。

なお、債権者から債務の免除を受けた場合は、所得税ではなく贈与税の課税対象となります。

まとめ

以上、贈与税の時効について説明しました。

時効が成立しているかどうかは難しい判断なので、自己判断せずに、税理士に相談することを強くお勧めします。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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