税理士監修記事

教育資金贈与信託によって非課税で一括贈与する方法と銀行の選び方

教育資金を非課税で一括贈与するためには、信託銀行が提供する教育資金贈与信託サービスを契約する等の方法があります。

この記事では、教育資金贈与信託によって非課税で一括贈与する方法と、非課税の措置の改正点、教育資金贈与信託の銀行選びのポイント等について説明します。

是非、参考にしてください。

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記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
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教育資金贈与信託とは?

教育資金贈与信託とは、 2013年度の税制改正で創設された「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」に基づき新たに開発された信託で、祖父母等が孫等の教育資金として信託銀行等に金銭を信託した場合に、1500万円を限度として贈与税が非課税になる信託のことをいいます。

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を受けられるのは教育資金贈与信託をした場合だけでない

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用対象は、教育資金贈与信託の受益権を取得した場合のほか、直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合、または、教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合も該当します。

わかりやすくいうと、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用を受けられるケースには、次の3つがあるということです。

  1. 祖父母等が、信託銀行等に教育資金を信託して(教育資金贈与信託)、孫等がその受益者となるケース
  2. 祖父母等から贈与された教育資金を、孫等が銀行等に預入をするケース
  3. 祖父母等から贈与された教育資金で、孫等が証券会社で有価証券を購入するケース

もっとも、教育資金管理契約を行っている証券会社はあまりないので、1か2のみが現実的な選択肢になるでしょう。

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の改正と延長

なお、記事執筆日時点(2019年1月)の「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、2019年3月31日までに受益権を取得した信託等を対象としていますが、制度を改正した上で適用期限を2年延長することが2018年12月21日に閣議決定されました(平成31年度税制改正の大綱)。

税制改正法案が国会で可決されれば、2019年4月1日以降に、改正された「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が施行されます。

2019年3月31日までの制度の内容については、「教育資金贈与は都度贈与なら元々非課税!制度利用で一括でも非課税に」をご参照ください。

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の平成31年度税制改正による改正点

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、平成31年度税制改正法案が国会で可決されれば、次の措置を講じた上、適用期限が2年延長されます。

  1. 信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が 1,000 万円を超える場合には、当該信託等により取得した信託受益権等については、本措置の適用を受けることができないこととする。
    ※平成 31 年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用
  2. 教育資金の範囲から、学校等以外の者に支払われる金銭で受贈者が 23 歳に達した日の翌日以後に支払われるもののうち、教育に関する役務提供の対価、スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、これらの役務提供又は指導に係る物品の購入費及び施設の利用料を除外する。ただし、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用は除外しない。
    ※平成 31 年7月1日以後に支払われる教育資金について適用
  3. 信託等をした日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(その死亡の日において次のいずれかに該当する場合を除く。①当該受贈者が23歳未満である場合②当該受贈者が学校等に在学している場合③当該受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合)において、受贈者が当該贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等について本措置の適用を受けたことがあるときは、その死亡の日における管理残額(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等の価額に対応する金額)を、当該受贈者が当該贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなす。
    ※平成 31 年4月1日以後に贈与者が死亡した場合について適用(ただし、同日前に信託等により取得した信託受益権等の価額は、上記の信託受益権等の価額に含まれない)
  4. 教育資金管理契約の終了事由について、受贈者が 30 歳に達した場合においても、その達した日において上記3の②又は③のいずれかに該当するときは教育資金管理契約は終了しないものとし、その達した日の翌日以後については、その年において上記3の②若しくは③のいずれかに該当する期間がなかった場合におけるその年12月31日又は当該受贈者が40歳に達する日のいずれか早い日に教育資金管理契約が終了するものとする。
    ※平成 31 年7月1日以後に受贈者が 30 歳に達する場合について適用

教育資金管理契約を締結する信託銀行の選び方

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用を受けるためには、前述のとおり、贈与者である祖父母等が信託銀行と、または、受贈者である孫等が銀行と、教育資金管理契約を締結しなければなりません。

教育資金管理契約の内容は銀行ごとに異なるため、銀行選びが重要です。

一旦契約すると、解約して別の銀行と契約することは基本的にはできません。

やり直しできないので、初めの銀行選びが重要なのです。

信託銀行と銀行の違い

まず、信託銀行にするか、信託銀行ではない銀行にするかを決めなければなりません(このほか、法制度しては証券会社もありえますが、教育資金管理サービスを提供している証券会社がほとんどないため除外します)。

信託銀行の場合は贈与者である祖父母等が、銀行の場合は受贈者である孫等が契約者となります。

なお、銀行が信託商品の販売を代理する場合があり、その場合は、銀行の窓口で契約手続きをしますが、契約の相手方は信託銀行になります(例えば、三菱UFJ銀行は、記事執筆時点で、教育資金贈与に関する独自商品はなく、三菱UFJ信託銀行の教育資金贈与信託の代理販売をしています)。

また、信託銀行の場合は金銭信託というかたちで運用され、銀行の場合は普通預金として預入するかたちになります。

金銭信託とは、信託される財産が金銭であり、預かった資金を手形割引や有価証券で運用し、収益を運用委託者に金銭で配分する信託商品のことをいいます。

信託商品の基本的なしくみは、運用によって収益が上がれば受益者に還元され、損失が生じた場合は元本割れのリスクがあるというものです。

つまり、預貯金よりもリスクがあるが、大きいリターンが期待できるというわけです。

しかし、教育資金贈与信託の場合は、通常、元本割れのリスクがないように設定されており、その代わりにリターンも預貯金とほとんど変わらない程度になっています。

ほとんどの信託銀行では教育資金贈与信託に元本保証が付けられており、元本保証がある信託銀行を選択すれば、元本割れのリスクはありません。

また、万一、信託銀行が破綻した場合でも、預貯金と同様に預金保険の対象となるので、1000万円までの元本は補償されます。

一方、この記事の執筆日時点の予定配当率は、三井住友信託銀行で0.01%となっており、これは、三井住友銀行の定期預金の金利と同じです。

つまり、教育資金管理契約の申込先について、リスクやリターンの点では、信託銀行でも銀行でも大差はないと考えて差し支えないでしょう。

教育資金管理契約を締結する信託銀行選びのポイント

教育資金管理契約を締結する銀行選びのポイントとして次のような点が挙げられます。

  • アプリや郵送で払出請求できるか
  • 支払前請求が選択できるか
  • 信託銀行等から教育機関に直接振り込みができるか
  • 手数料がかかるか

以下、それぞれの点について説明します。

アプリや郵送で払出請求できるか

信託銀行等から教育資金の払出しを受ける際に、インターネット(アプリ等)や郵送による払出請求ができる信託銀行等と、来店しなければ払出請求ができない信託銀行等があります。

また、信託銀行は都市銀行等に比べて店舗数が少ないため、来店しなければならない信託銀行と契約する場合は、来店しやすい場所に店舗がないと不便です。

支払前請求が選択できるか

必要な教育資金を口座から引き出す方法として、支払前請求と支払後請求の2つの方式があります。

支払前請求では、教育資金の支払先を信託銀行等に申告して払い出しを受け、教育機関に支払います。払い出しと支払いは同じ年になされなければなりません。したがって、年明け早々に支払わなければならない場合など、支払前請求を受けることが難しいケースがありえます。また、教育機関に支払った翌年の3月15日(信託が終了する年においては信託終了日の翌月末)までにその領収書を提出します。1年分まとめての提出で構いません。

支払後請求では、教育機関に支払った後、その領収書を信託銀行等に提出して、その分の払い出しを受けます。支払日から1年以内に領収書を提出しなければなりません。

支払後請求では教育機関への支払いを一時的に立替えるようなかたちになるため、まとまった金額を一度に支払わなければならないときには支払前請求が選択できると便利でしょう。

しかし、支払前請求にすべての金融機関が対応しているわけではないので注意が必要です。

信託銀行等から教育機関に直接振込ができるか

信託銀行等から教育機関に対して直接振込んでもらえる方が、振込の手間がかかりません。

手数料がかかるか

信託銀行等の多くは、教育資金贈与信託に関して管理手数料等を設定していませんが、中には、基本手数料や払出手数料が必要な信託銀行等もあります。

なお、払出の際に別の金融機関の口座に振込をする場合は振込手数料がかかりますが、この点については、どの信託銀行等でも同様の用です。

信託銀行等ごとの教育資金管理契約の内容の比較

主要な信託銀行等ごとの教育資金管理契約のサービス内容について、各信託銀行等で取り扱いが異なり、また、利便性の面で重要な点を、下の表にまとめました(記事執筆時点の情報であり、サービス内容が変更される可能性があります)。

種別 銀行名 サービス名 支払前請求(請求書払い)の可否と払出方法 払出請求方法
信託 三井住友信託銀行 孫への想い 〇(教育機関への直接振込) 郵送(支払後請求の場合のみ可)、来店
預金 三井住友銀行 まなぶ想い × アプリ、来店
信託 三菱UFJ信託銀行 まごよろこぶ 〇(孫等への払出) インターネット、郵送、来店
信託の代理販売 三菱UFJ銀行 三菱UFJ信託銀行「まごよろこぶ」の代理販売 同上
信託 みずほ信託銀行 学びの贈りもの 〇(教育機関への直接振込) 来店
信託の代理販売 みずほ銀行 みずほ信託銀行「学びの贈りもの」の代理販売 同上
信託 りそな銀行 きょういく信託 × インターネット、来店
信託の代理販売 埼玉りそな銀行 りそな銀行「きょういく信託」の代理販売 同上
預金 横浜銀行(※) 教育預金 〇(教育機関への直接振込、孫等への払出) 来店

※横浜銀行は、朝日信託の教育資金贈与信託の代理販売もしていますが、上の内容は、横浜銀行自身が提供するサービスについてのものです。

なお、この表にない全国規模の金融機関には、ゆうちょ銀行とJAバンクがありますが、ゆうちょ銀行は教育資金管理契約に関するサービスを提供しておらず、JAバンクは都道府県ごとに取り扱いが異なるため、表から外しました。

また、地方銀行等でも取り扱っていがあるところもあるので、お住いの地域の地方銀行についても確認してみるとよいでしょう。ただし、全国区の信託銀行に比べて、アプリ対応等の利便性の点では劣る傾向があるようです。

なお、手数料については、上の表の各行はすべて無料です(払出時の振込手数料は必要な場合があります)。

支払前請求ができて、しかも、インターネットで払出請求ができるのは、三菱UFJ信託銀行のみなので、払出時の利便性については三菱UFJ銀行が秀でているといえるでしょう。

まとめ

以上、教育資金贈与信託について説明しました。

祖父母から孫のような扶養義務者間の教育資金の贈与は、必要な都度贈与するのであれば、元々非課税です。

教育資金贈与信託のメリットは一括贈与なのに非課税という点にありますが、なぜ一括贈与がよいかというと、生前に一括贈与しておけば、その分は相続税の課税対象とならないからです。

相続税は、遺産総額が基礎控除額以下に留まる場合は、申告も納付も不要ですので、このような対策が必要なケースは、遺産総額が相続税の基礎控除額を上回る場合のみです。

相続税対策は、必要性を吟味して実施しなければ、不要な対策のために手間を取られることになりかねません。

相続税対策を検討する際は、相続税対策に精通した税理士に、一度、相談してみることをお勧めします。

無料相談に応じている税理士もいますし、相談したからといって依頼しなければならないわけでもありません。

気軽に相談してみるとよいでしょう。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
お近くの遺産相続の専門家を検索できます。都道府県を選んでください。
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