特別受益の持ち戻し免除の意思表示で持ち戻しを防ぐ方法とは⁉
[ご注意]
記事は、公開日(2019年11月7日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
特別受益の持ち戻しとは?
特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益のことです。 特別受益を受けた相続人がいる場合は、遺産分割における当該相続人の取得分を、特別受益を受けた価額に応じて減らす必要があるので、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分が算定されます。 算式で表すと以下のようになります。 (算式) 【具体的相続分】=(【遺産総額】+【相続人全員の特別受益の総和】)×【当該相続人の法定相続分又は指定相続分】-【当該相続人の特別受益】 このようにして具体的相続分を算定することを特別受益の持ち戻しといいます。特別受益の持ち戻しをして相続分を計算する方法
例えば、被相続人にはAとBの2人の子がいたとします。 そして、Aには1000万円の生前贈与を行っており、また、相続財産の価額は2000万円であったとします。 この場合における特別受益の持戻し後のA、Bそれぞれの相続分は次の式で計算することができます。- Bの相続分:(2000万円+1000万円)× 1/2 - 0円 = 1500万円
- Aの相続分:(2000万円+1000万円)× 1/2 - 1000万円 = 500万円
特別受益の持ち戻しの免除の意思表示
特別受益の持ち戻し免除とは?
被相続人が特別受益の持ち戻しを免除する意思を表示した場合は、持ち戻しは免除されます。 特別受益の持ち戻しの免除とは、特別受益の持ち戻しをさせないことです。 つまり、特別受益の持ち戻しが免除されると、特別受益の価額を相続財産の価額に加えることはありません。 冒頭のAに1000万円の生前贈与を行った例でいうと、Aの相続分が500万円、Bの相続分が1500万円でしたが、持ち戻しが免除されると、相続分はAもBも1000万円ずつになります。持ち戻し免除の意思表示の形式
持ち戻し免除の意思表示の形式に指定はありません。 ですが、遺贈による特別受益の持ち戻しの免除は、同じく遺言によるべきとする見解もあるので、念のため、遺言によって行うべきでしょう。 贈与による特別受益の持ち戻しの免除は、遺言で行う必要はありません。 明示の意思表示は勿論、黙示の意思表示も認められます。 ですが、黙示の意思表示は、しばしば相続人間におけるトラブルを引き起こします。 黙示の意思表示の有無で相続人同士が揉めることがあるのです。 黙示の意思表示が有無については、総合的に判断されますが、次のような事情があれば、意思表示があったと認められやすいでしょう。- 受贈者(贈与を受ける人)により多くの財産を与えようという被相続人の意図がある場合
- 贈与の代わりに被相続人も利益を得ている場合
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住不動産が遺贈や贈与された場合は、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定する
このように、特別受益は持ち戻しがあるのが原則で、持ち戻し免除の意思表示があった場合は、例外として、持ち戻しが免除されることになっています。 しかし、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住不動産(配偶者居住権を含む)が遺贈や贈与された場合は、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定し、持ち戻しを免除しない意思表示があった場合のみ、持ち戻しを行います。 これは、2019年7月1日の法改正によって新たに加わった規定で、それ以前に開始された相続には適用されません。持ち戻し免除の意思表示は撤回できる
被相続人は免除の意思を表示した後でも自由にこれを撤回することができます。持ち戻しの免除があっても遺留分侵害額請求はできる
免除があったとしても贈与や遺贈が遺留分を侵害する場合は、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。 なお、2019年7月1日に法改正があり、遺留分の算定において価額を算入できるのは特別受益に当たる贈与であっても相続開始前10年以内のものに制限されることになりました(改正前に開始された相続には適用されません)。 ▼遺留分侵害額請求について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼ 「遺留分侵害額請求権とは。遺留分減殺請求権との違いは?」をご参照ください。この記事を書いた人
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