弁護士監修記事

負担付贈与を使ってよいケースと他の手段を強くおすすめするケース

負担付贈与には使ってもよいケースと、使うと大損してしまうケースがあります。

この記事では、読んだ方が、自分のケースに当てはめて、負担付贈与を使うべきかどうかを判断することができるように、分かりやすく説明します。

また、負担付贈与が損する場合に、負担付贈与の代わりに何を使えばよいか?という点についても説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

負担付贈与とは?

負担付贈与とは、受贈者(贈与を受ける人)が贈与を受ける見返りとして一定の債務を負担する贈与契約で、「ふたんつきぞうよ」と読みます。

負担付贈与の例

例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 住宅を贈与する見返りに、残りの住宅ローンの返済を負担
  • 財産を贈与する見返りに、介護やペットの飼育を負担
  • 土地を贈与する見返りに、その土地の一部の無償貸与を負担

以上のケースは、いずれも負担によって利益を得るのが贈与者ですが、第三者に向けられた負担でも構いません。

例えば、贈与者が受贈者に対して、贈与の見返りに、第三者(贈与者の配偶者等)に対する介護を求めるようなケースです。

負担付贈与契約はいつ成立する?

負担付贈与契約は、贈与者と受贈者の意思の合致によって成立します。

お互いが「○○を贈与する見返りに××を負担する」ということに合意すれば成立するのです。

贈与者が勝手に思っているだけでは成立しません。

受贈者の承諾が必要です。

このことは、負担付贈与に限らず、贈与契約全般についても同様です。

なお、負担付贈与と似たものに負担付遺贈(詳しくは後述)という方法もあります。

遺贈とは、遺言により財産を渡すことで、負担付遺贈の場合は、受遺者(遺贈を受ける人)の承諾は不要で、その代わりに受遺者は遺贈を放棄することができます。

ちなみに、贈与契約の成立に、契約書は不要で、口頭でも成立します

もっとも、後々トラブルにならないように契約書に残しておくことをお勧めします

また、トラブル予防という観点でいうと、他の相続人に負担付贈与契約の内容を知らせておくことも重要です。

なお、遺贈は、法定の形式にのっとった書面によって行わなければならないため、この点も遺贈とは異なる点です。

負担付贈与契約を解除することはできる?

負担付贈与契約を締結した後に、贈与はしたけど、負担の方が一向に実行されないというのでは、贈与者がかわいそうですね。

このようなケースで贈与者は契約を解除して贈与した物を取り返すことができるのでしょうか?

受贈者が債務を履行する前であれば、解除することができます

例えば、住宅の贈与を受ける代わりに住宅ローンを負担するという契約の場合は、受贈者が住宅ローンの返済を開始する前であれば、贈与者は契約を解除することができます。

もっとも、履行後でも、お互いの合意があれば、解除が可能な場合もあります。

負担付贈与で贈与した物に欠陥があったら?

負担付贈与で贈与した物件が欠陥住宅であった場合は、贈与者はどのような責任を負うのでしょうか?

売買契約の場合は、買主は、契約の解除のほか、損害の賠償を請求することができます

一方、贈与契約の場合は、贈与者は原則として責任を負いません

責任を負うのは、贈与者が欠陥を知っていたにもかかわらず、これを受贈者に伝えなかった場合だけです。

次に、損害賠償の範囲についても、売買と贈与では違いがあります。

売買の場合は、受贈者が欠陥を知らなかったために被った損害だけでなく、欠陥がなかったら受贈者が受けられた利益も含まれますが、贈与の場合は後者は含まれません

どういうことかというと、例えば、住宅に雨漏りがするという欠陥があって、そのことを売主は知っていたけど買主に伝えていなかった場合に、雨漏りによって家具がだめになってしまったという損害と、欠陥住宅だということで住宅自体の資産価値が下がったという損害が生じえます。

このような場合に、売買の場合は両方の損害について賠償を請求することが可能ですが、贈与の場合は前者の損害についての賠償のみしか認められないことが多いです。。

それでは、負担付贈与の場合は、どうでしょうか?

負担付贈与は負担があるとはいえ、対価として同等ではなく、軽い負担のことが多いです。

いわば、贈与と売買の間のようなイメージですね。

ですので、損害賠償についても、贈与と売買の間のような結論になります。

負担付贈与では、負担の限度においてのみ損害賠償義務を負います

例えば、3000万円の住宅の贈与を受ける見返りに、残債務1000万円の住宅ローンを肩代わりした場合は、贈与者が損害賠償責任を負うのは最大1000万円で、それを超えて損害賠償を負うことはありません。

負担付贈与にはどんな税金がかかる?

負担付贈与には、どのような税金がかかるのでしょうか?

以下、説明します。

贈与税

負担付贈与には、贈与税がかかります。

負担付贈与の贈与税額は次の式で計算することができます。

(贈与を受けた財産の価額 - 負担すべき債務の額 - 基礎控除110万円)× 贈与税率 - 控除額

例えば、親から3000万円の住宅の贈与を受けて、負担した住宅ローンの残債務の額が1000万円だった場合の贈与税額は、次のように計算できます。

(3000万円-1000万円-110万円)×45%-265万円=585万5千円

ここで、贈与を受けた財産の価額をどのように評価するかについて、特に不動産の場合に問題となりますが、この点については、通常の取引価額によって評価することになっています。

通常の取引価額とは、要するに、時価、市場価格ということです。

一方、負担付贈与でない贈与や相続の場合は、相続税評価額によって評価されます

相続税評価額は、時価の8割程度といわれています。

ですので、時価で計算しなければならない負担付贈与は、税金面では損するケースが多いでしょう。

相続時精算課税制度も利用できる

負担付贈与の場合も、通常の贈与と同様に、相続時精算課税を選択することができます。

相続時精算課税は、贈与価額2500万円までは、贈与税がかからずに、その分、相続時に相続税を課す制度です。

相続税の場合は、基礎控除額が最低でも3600万円はあるので、課税遺産総額が相続税の基礎控除額以下であれば、相続時精算課税を選択することによって、非課税で贈与を受けることが可能です。

相続時精算課税制度について、詳しくは、「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。

譲渡所得が生じた場合は所得税・住民税がかかる

負担付贈与で行った財産の取得費等よりも、負担債務の価額の方が大きい場合は、贈与者は、その差額分の譲渡所得があったことになるので、その譲渡所得に対して、所得税や住民税が課せられます

消費税はかからない

消費税は事業者について課される税なので、事業者でない人が負担付贈与で贈与しても消費税は課されません

この点は、売買についても同じです。

負担付贈与でも税金が高くならないケース

負担付贈与は、生前贈与で早めに財産を渡してあげたいが、一定の負担をしてほしいという場合に便利な方法です。

しかし、贈与する物が不動産の場合は、評価額の算出方法の違いから、通常の生前贈与に比べて、贈与税が高くなるケースが多いというデメリットがあります

けれども、贈与税が高くならないケースもあります。

次の2つの場合です。

  • 贈与する物が不動産ではない場合
  • 贈与価額と負担債務の価額が同じくらいの場合

以下、それぞれについて説明します。

贈与する物が不動産ではない場合

不動産を負担付贈与すると、財産評価の方法が変わります。

通常の贈与の場合は、相続税評価額で評価するのですが、負担付贈与の場合は時価で評価されるようになります。

不動産の相続税評価額は時価の8割程度なので、この評価額の差が、負担付贈与に課される贈与税額が高くなる原因です。

この点、不動産以外の物の場合は、相続税評価額で評価します

ですので、通常の贈与の場合と、税額が変わりません。

贈与する物が不動産以外の場合は、負担付贈与の税制面のデメリットはなく、この点に関して利用を躊躇する理由にはなりません。

贈与価額と負担債務の価額が同じくらいの場合

負担付贈与の贈与税は、贈与価額から負担債務の価額を差し引き、さらに基礎控除額110万円を差し引いた額に対して課されます

基礎控除後の金額がゼロになれば、つまり、贈与価額が負担債務の価額よりも小さいか、大きい場合であってもその差額が110万円以内の場合は、贈与税は課されません。

住宅ローンを組んでまだ間もない場合は、贈与不動産の価額と住宅ローンの返済残高が同じくらいになることはよくあることです。

ですので、このような場合は、負担付贈与をすることによる税制面での不利益はありません。

なお、反対に負担債務価額の方が高い場合は、前述の通り、贈与者に譲渡所得が生じ、課税されるので注意しましょう

負担付贈与と売買との違いは?

負担付贈与の負担が、金銭的なものの場合、売買と変わらないような気がしませんか?

家を贈与する代わりに、住宅ローンの残債務を負担するという場合、家を住宅ローンの残債務分の価額で売買したことと同じではないかというわけです。

高齢の両親に代わって、子が自宅と住宅ローンを引き継ぐ時に、負担付贈与とすると贈与税が発生するので、住宅ローンの残債務の金額で売買しようという事もあるでしょう。

法的には贈与と売買は異なりますが、細かいことはさておき、このような場合には生じる効果としてはほぼ同じとなるケースがあります

ですが、気をつけて頂きたい注意点もあります。

次の2点です。

  • 売買価額が時価よりも著しく低い場合、贈与税が課せられることがある
  • 融資の受けやすさ

以下、それぞれについて説明します。

売買価額が時価よりも著しく低い場合、贈与税が課せられることがある

まず、贈与税の点から説明します。

負担付贈与では、前述の通り、贈与財産の時価から負担債務の価額を差し引いた金額に対して贈与税が課せられます。

売買の場合も、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額を贈与により取得したものとみなされ、贈与税が課せられます。

つまり、売買価格が著しく低い場合は、売買の場合でも贈与税が課せられるということです。

したがって、住宅ローンの残債務の金額で家を売買したとしても、住宅の時価と売買価格(=住宅ローンの残債務)の差に対して贈与税が課せられてしまうと負担付贈与をしたのを同じこととなってしまいます。

しかし、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合であっても、譲り受けた人が資力を喪失して債務を弁済する(住宅ローンの支払)ことが困難であるような場合等には、贈与により取得したものとはみなされません。

この辺りは、難しい判断になるでしょうから、不動産の親族間売買については、贈与税に精通した税理士に相談するとよいでしょう

融資の受けやすさ

先ほどは税制面の説明をしましたが、親族間売買は融資が受けにくくなる可能性があります

親から子へ住宅ローンの引き継ぎをしたくても、子に融資してくれる金融機関が見つからない場合は、負担付贈与や相続時精算課税制度を選択せざるをえないケースもあるでしょう。

制度を選択する場合は、どの制度が税金が安くなるかだけではなく、融資の受けやすさについても留意するとよいでしょう。

負担付死因贈与とは?

少し話が変わりますが、負担付贈与には、負担付死因贈与というものもあります。

死因贈与とは、贈与者が亡くなった時に実行される贈与のことです。

負担付贈与では、贈与がいつ行わるのかを当事者が自由に決めることができますが、贈与が行われる時を贈与者の死亡時に設定した負担付贈与のことを負担付死因贈与とよぶのです。

負担付死因贈与の場合も、負担付贈与と同様に贈与不動産の評価は時価で行います。

ですので、税制上不利な点は負担付贈与と変わりません。

また、負担付死因贈与と似たものに負担付遺贈というものもあります。

遺贈とは遺言により財産を渡すことで、負担付遺贈とは、文字通り、負担付の遺贈のことです。

受遺者(遺贈を受ける人)は、一定の債務を負担することを条件に、遺贈を受けることができます。

死因贈与と遺贈は、いずれも財産を渡す人が亡くなってから財産が受け渡される点で共通しています。

また、負担付遺贈の場合も不動産の評価は時価で行います。

つまり、負担付の場合は、生前贈与でも死因贈与でも遺贈でも、不動産の評価は時価で行われるということです。

なお、死因贈与と遺贈の比較について、詳しくは「死因贈与とは?遺贈との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」をご参照ください。

負担付贈与の登記原因

最後に登記に関する注意点をひとつお知らせしておきます。

負担付贈与で不動産の贈与を受けた場合の所有権移転登記の登記原因は「贈与」になります

「負担付贈与」とは書かないのでご注意ください。

まとめ

以上、負担付贈与を使ってよいケースと他の手段を強くおすすめするケースについて説明しました。

税金面での損得については、難しい判断になりますので、贈与税に強い税理士に相談するとよいでしょう。

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