弁護士監修記事

生前契約を検討する全ての人が知っておくべき注意点と代替策

一人暮らしの高齢者では、次のような悩みを抱えている人が少なくありません。

「入院時の付き添いや保証人がいない」

「怪我をして動けなくなった時に頼れる人がいない」

「自分が死んだときに火葬や役所手続きをしてくれる人がいない」

また、家族がいてもなかなか言いにくいこともあるかもしれません。

このような悩みを解決するための手段の一つに生前契約があります。

この記事では、生前契約について説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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生前契約とは?

「生前契約」という言葉は、法律用語ではなく、明確な定義はありませんが、一人暮らしの高齢者等を対象とした、身元保証や日常生活支援、死後事務等に関するサービスの名称として使用されています。

元々は、葬儀等を生前に契約することから生前契約と呼ばれていましたが、2000年に介護保険法が施行され、福祉サービスの契約に身元保証を求められるようになったことを背景として(措置制度から契約制度への移行)、生前契約のサービス内容に身元保証が加わり、さらに、日常生活支援や葬儀以外の死後事務も含めた総合的なサービスへと発展していきました。

生前契約サービスは、一般社団法人やNPO法人、公益法人等の民間団体によって提供されています。

また、生前契約は、「身元保証等高齢者サポートサービス」または「身元保証等高齢者サポート事業」とも呼ばれています。

生前契約のサービス内容

生前契約のサービス内容は、事業者ごとに異なりますが、一般的なものについて説明します。

内容としては、主に、次の3つに分類できます。

  • 生前事務委任業務
  • 任意後見業務
  • 死後事務委任業務

生前事務委任業務は、生前、判断能力が十分あるうちから、日常生活をサポートしてもらったり、入院や施設入居の際に身元保証人になってもらったりするものです。

任意後見業務は、認知症等によって判断能力が衰えてきた場合に、あらかじめ契約によって代理権が与えられた範囲で、本人に代わって法律行為を行います。

死後事務委任業務では、亡くなった後に葬儀の実施等の死後事務をおこなうものです。

各業務の具体的な内容は下表のとおりです。

生前事務委任業務 緊急時の連絡先 賃貸住宅や施設への入居、医療機関への入院、海外旅行などの際に必要です。
債務の保証 施設への入居、医療機関への入院の際には身元保証人(または身元引受人)が、賃貸住宅への入居の際には連帯保証人が求められますが、これらの保証人等は、本人の不払い家賃や損害賠償等の債務の保証をします。
医療行為の同意(手術、延命治療等の同意) 緊急時はほとんどの場合、救急搬送されますが、問題となるのが、手術の同意、あるいは延命などの処置が必要な場合です。生前契約事業者の多くは生前契約の契約時に医療事前指示書を契約者に書いてもらいます。そして、医療行為の同意が必要になった際は、その指示書によって本人の意思を医療機関に伝えます。
入院・入所時の見舞い、同行、状況把握、相談 通院や入院時の同行や見舞い、施設入居者などの場合施設の懇談会などに同席するなど必要に応じて出向くサービスです。必ずしも必要性が高いサービスではないため、基本パッケージの中には含まれていないことも多いです。
生存中の退院・退所の際の身柄引き受け 完治して退院する場合は元の住居に戻れますが、医療依存度の高いままの退院が多くなっています。施設などは状態によっては、受け入れを拒否するケースも見られます。そんな場合はソーシャルワーカーなどの協力を得ながら落ち着き先を決めます。
任意後見業務 利用料の支払い代行 家賃や公共料金、入院費や施設利用料など、本人が支払いできない場合には、本人に代わって支払いを代行し、預託金や月額請求書で支払います。
入院計画書やケアプラン等の同意等 治療方針や計画、あるいは介護保険のサービスプランなど家族の同意が必要な場合、家族の代わりとして立ち会い、本人にとってより良い治療や介護サービスにつなげます。
財産管理 財産管理は、任意後継業務だけでなく、生前事務委任契約にも含まれていることが多いです。生前事務委任としての財産管理は、生前契約事業者が管理するケースと、第三者に再委任(または別途契約)するケースがあります。そして、判断能力が不十分な状態となり後見人が必要になった場合は、所定の手続きに従って、後見人が管理します。
死後事務委任業務 遺体、遺品の引き取り、葬儀等 亡くなった後のことについて契約時に本人の希望を確認し、いざ本人が亡くなったときには、生前契約事業者は本人の希望を実現すべく業務に当たります。生前契約の契約者の多くは身寄りがなく、通夜や葬儀は希望せず、直葬(通常、亡くなった場所から遺体を火葬場に直接搬送して火葬することをいいます)の希望が多いですが、直葬の場合でも、死亡後24時間は火葬できないことに法律で定められており、また、火葬場の予約がいっぱいで火葬まで日数がかかり当面遺体を安置する場所が必要になることもあります(病院の霊安室に長く置いておくことはできません)。火葬(または埋葬)までの手配が、通常、生前契約の中に含まれています。また、死亡届、火葬許可証、埋葬届けなどの事務処理、そして、公共料金などの未払いや処々の契約の解除、要望によっては親族や知人への連絡や知らせなども行っています。
施設入所などの退去時の居室の明け渡し、原状回復義務の履行 施設退去の場合には、居室の原状回復を求められます。荷物の整理はもちろんですが、破損や汚れなどの修復義務もあります。

生前契約の契約形態はどうなっている?

生前契約はパッケージになっているが、その内容は事業者によって異なる

生前契約事業者では、会員制をとり、基本サービス「生前事務委任、任意後見契約、死後事務委任」をパッケージにして契約し、料金を設定しています。

その上でオプションサービスが選択できるようになっています。

しかし、パッケージの中身はさまざまなので、セット料金で単純に比較はできません。

生前事務委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約がセットになった料金、いくつかのメニューから自由にセットできるところなどの違いがあります。

またその契約内容を公正証書にするところもあれば、契約先団体との二者間契約と預託金の管理等は別法人が行う三者間契約もあり、契約内容や契約方法にも違いが見られました。

任意後見はパッケージに含まれているケースとオプションサービスになっているケースがある

扱いが大きく違うのが成年後見契約で、契約時に法人との間で、任意後見人契約を結ぶことを条件としているところと、本人の申し出があったり、法定後見人が必要になった段階で法定後見人を選任するとしたところがあります。

任意後見人の役割としては、本人の判断能力が不十分となった段階で、後見受任者として家裁に後見監督人の選任を申立て、後見監督人が付された以降について、金銭管理や身上監護を担うことになっています。

任意後見がパッケージに含まれるケースでは任意後見契約を契約先法人と結ぶケースもありますが、多くは提携する専門職後見人にお願いしているようです。

セット料金で納まる人は少ない

セット料金の低額パックは、あくまでも最低基準で見積もってあるので、この費用内で納まる人は少ないようです。

別途、家の片付け、特に入退院が多い人や体調を崩しやすい人などは、生活支援サービス(訪問)が多くなり、費用は高くなってきます。

また葬儀の内容によっても費用の見積もりが違ってきます。

したがってどの民間団体も生活支援サービス、家の片付け、基本サービス以外の葬祭にかかる費用はオプションサービスにしているようです。

契約時に支払う費用には、入会金や手数料など払い戻されない金額と実施されたサービスや年会費に充当する預託金があります。

預託金はサービスが実施されない場合には戻ってくる費用です。

その多くが死後事務費用なので、生存中に途中解約をした場合には必要経費を差し引いて払い戻されます。

一般には全ての契約を終えた段階で清算され、預託金をオーバーした場合には、相続費用などから充当されるようです。

生前契約の預託金のしくみ

預託金はあくまで預り金ですが、高額なだけに預託金の管理は重要になってきます。

預託金管理者として、NPO 法人、信託会社や弁護士法人など上部団体と提携して管理しているところが見られる一方で、管理者を立てると管理費用が別途かかることを理由に、二者契約と三者契約を選択できるようにしているところもあります。

また、信託会社と提携して、預託金管理を信託会社が行い、契約法人からの必要経費の請求を公認会計士がチェックして信託会社から支払われるなど、透明性の高い管理方法をとっているところもあります。

預託金から引き落とされる費用が明確であり、管理方法に透明性があることが重要なので、生前契約を検討する際は、この点は必ずチェックしましょう。

生前契約のサービス提供者は誰か?

生前契約のサービス内容は前述のとおり多岐にわたります。

すべてのサービスを生前契約事業者の職員が自ら行っている事業者もありますが、一部のサービスの提供を外部に委託している事業者の方が多いです。

生前契約事業者が直接行うことが多いサービスは、身元保証人、退去時の立会い、緊急時の訪問、死後事務などがあります。

一方、お金の管理や任意後見業務、生活支援サービスなどは提携している外部の法人に委託しているケースもあります。

また定期的な安否確認や家事支援などは他の事業所と提携して行っているところ、入院や施設の身元保証は生前契約事業者が行い、訪問などの生活支援サービスは外部に委託しているところもあります。

生前契約の利用者として、再委託があっても、サービスがきちんと提供されれば特段問題はないとも考えられますが、サービスの質に関わってくることもあるでしょうから、実際には誰がサービスを提供するのかという点についても、生前契約を検討する際は、確認しておくとよいでしょう。

生前契約のメリットと注意点

生前契約のメリットとして、債務保証も含め当人が必要とするサービスを全て提供してくれて便利な点が挙げられます。

かし、すべてサービスには費用が発生し、事前払い(預託制)となっているので、元気な間は確認できても、最後の清算は死後になります。

そのため、時には生前契約事業者と相続人との間でもめることもあるようです。

そうしたトラブルが起きないよう、契約前に内容をしっかり確認し、相続人がいる場合には相続人にも相談の上で申込むべきでしょう。

生前契約の問題点とチェックポイント

生前契約にはいくつかの問題点が報告されています。問題点を把握した上で、以下のチェックポイントを確認して、後述の代替サービスとも比較しつつ検討を進めるとよいでしょう。

各サービスの必要性が契約時に不明

基本パッケージに含まれる各サービスの必要性が契約時に不明であるという問題点もあります。

例えば、契約時には葬儀が必要だと考えて、葬儀を含むサービスを契約したものの、契約から何年も経つうちに、懇意にしていた親戚、友人、知人も他界し、葬儀の必要性が感じなくなることもあります。

必要性が不明なものが基本パッケージに含めないようにしましょう。

高齢者にとって複雑な契約内容で理解が困難

契約内容が生前における身元保証から日常生活支援、万一の場合のサポート及び死後の事務処理まで多岐にわたるため内容が複雑であり、理解力・判断力が低下している高齢者が理解するのは非常に困難です。

事業者の言いなりの条件で契約してしまわないように気を付けましょう。

不明点は理解できるまで質問を繰り返し、何度質問しても不明点が解消されない場合は契約しないようにしましょう。

また、口頭で説明があった内容が、契約書等の書面でも約束されているかという点についても確認するべきでしょう。

支払い能力を見誤りやすい

生前契約のサービスには、利用のたびにお金がかかるサービス、月ごとの手数料がかかるサービスもあります。

使う可能性がある期間(例えば平均余命)を想定して総額を計算し、自分の資産状況と照らし合わせて、支払えるかどうかを検討するとよいでしょう。

また、日常生活支援サービスは、行政が支援しているサービスもあるので(後述)、行政サービスや安価な他の民営サービスとの併用も検討した方がよいでしょう。

前受金(預託金)の保全義務がない

ほとんどの生前契約サービスでは預託金が設定されており、契約を締結する際に預託金を支払うことになります。

こうした預託金については法律の規制がなく、保全措置を講じるかどうかは事業者の方針によることになります。

例えば事業者が信託制度を活用し、当該預託金を信託銀行等に信託すれば一定の保全効果が期待できると考えられます。

預託金がどのように管理されているのか、確認するとよいでしょう。

将来におけるサービス提供の保証がない

契約の多くは履行時期が未確定・不確定であり、将来にわたって継続してサービスが受けられるか、また将来において受けられるサービスの量及び質の確保が図られるかどうかの保証はありません。

このようなリスクがあることを念頭に、事業者が信頼できるかどうかチェックしましょう。

相談時に説明してくれる担当者が信頼できる人であることに越したことはありませんが、その点だけをもって事業者を選定してはいけません。

Google等で検索して、実際に契約した人の感想等も確認するとよいでしょう。

また、そもそも事業者が倒産等をした場合、契約の履行自体ができなくなることがあります。

2016年には、約2600人が契約していた生前契約事業者の日本ライフ協会が倒産しました。

NPO法人や公益法人、一般社団法人は、貸借対照表等の財務諸表を公開することが法令で定められており、一般の人でも閲覧することができますが、契約を検討している高齢者が財務諸表をチェックして経営の健全度を確認することは難しいでしょうし、生前契約は契約期間が長期化することも多く、契約時の経営状況は問題なくても、その後、問題が生じることもあるでしょう。

契約内容の履行を契約者が確認できない

契約内容に死後事務が含まれている場合や、契約当事者が認知症の進行等により判断力が低下している場合、契約に基づくサービスが適正に処理されたかどうか、契約当事者本人は確認することができません。

また、契約当事者に親族や後見人等がいない場合、履行確認する人が誰もいないことになります。

契約について第三者機関によるチェック機能が働かないと履行が何も担保されないこととなります。

生前契約以外の選択肢

生前契約のメリットは、頼れる家族のいない高齢者におよそ必要とされるサービスを一括で契約することできる点ですが、反面、前述のようなデメリットもあります。

生前契約以外の選択肢についても把握した上で、生前契約と比較して検討を進めた方がよいでしょう。

生前契約以外の選択肢について、身元保証とそれ以外のサービスに分けて説明します。

身元保証

身元保証の代行サービスは、生前契約以外にはあまり例をみませんが、身元保証を求められた場合の対策としては、次のようなものがあります。

  • 身元保証が必要のない病院・施設を探す
  • (病院の場合)クレジット決済の場合は身元保証が不要になるケースもあるので確認する
  • 入院保証金や預託金を差し入れることで身元保証が不要になるケースもあるので確認する
  • 後見人がいる場合は身元保証が不要になるケースもあるので確認する
  • 賃貸借方式の老人ホームでは家賃債務保証制度が利用できる(利用権方式の場合は利用できない)
  • 社会福祉協議会の身元保証に準じた支援制度の利用(足立区等の一部の社会福祉協議会でしか実施していない。預託金が必要)

身元保証以外(日常生活支援、死後事務等)

有料老人ホームが行っている預託金サービス

一部の有料老人ホームでも、まとまった額を預託すれば、生前事務と死後事務(または死後事務のみ)を委任できるサービスが提供されています。

ただし、後見人事務については、入居者にて任意後見人を探して、お金の管理については任意後見人が行います。

自治体のサービス

近年自治体でも高齢者が1人でも安心して住み続けられる支援サービスが広がりつつあります。

東京都の外郭団体である東京都防災・建築まちづくりセンターでも「あんしん居住制度」を実施しています。支援内容は、①見守りサービス、②死亡時の死亡診断書の受け取り、火葬、納骨、③残存家具の片付けなどの3つです。

東京都在住者であれば誰でも申し込むことができます。

費用は見守りサービスが1年ごとの更新で年間利用料が約4万8千円強、「葬儀」は5年契約の預託金が約30万8千円、家具の片づけは住居の広さで異なります。

施設などに入居した場合でも契約は継続されます。

家財の確認や貴重品の受け取りに指定連絡先が必要となりますが、遺骨の引取りがない場合には東京福祉会の納骨堂に5年間保管し、その後慰霊堂に合祀されることになっています。

合祀の費用はかかりません。

東京都以外でもこのようなサービスを提供している自治体がありますので、お住いの自治体(都道府県または市区町村)の地域包括支援センターで相談してみるとよいでしょう。

地域包括支援センターは、自治体によって名称が異なることがありますが、すべての市町村および特別区に設置されています。

地域包括支援センターの場所が分からない場合は、役場の介護保険窓口に問い合わせるとよいでしょう。

また、全国の社会福祉協議会で日常生活自立事業を行っています。

日常生活自立支援を必要としている場合は、市町村および特別区の社会福祉協議会に問い合わせるとよいでしょう(地域包括支援センターに相談しても構いません)。

まとめ

以上、生前契約について説明しました。

前契約のメリットとリスクをよく衡量し、自治体サービスや民間の生活支援サービスとも比較した上で検討しましょう。

生前契約のメリットは、一括で契約できる点にありますが、他のサービスの場合は、任意後見については自前で手配することになることが多いでしょう。

任意後見制度について詳しくは「任意後見制度・任意後見契約とは。法定後見との違いを一覧表で解説!」をご参照ください。

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