親等とは?誰でもわかる親等の簡単な数え方と一目瞭然の親等一覧図
相続手続きや生前贈与でよく聞く言葉に「親等(しんとう)」があります。
例えば、「公証人の4親等以内の親族は、公正証書遺言や秘密証書遺言の証人になれない」「成年後見の申立てができるのは、4親等以内の親族」などです。
親等とは親戚関係を示す単位であり、1親等は両親や子、2親等は兄弟あるいは孫…というように決まっています。この親等の数え方を知っているだけで、相続を格段に理解しやすくなります。
逆に知らないと損したり、手続きがスムーズに行かないことも。この記事で詳しく解説しますので、覚えておきましょう。
[ご注意]
記事は、公開日(2018年12月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
親等とは?
親等とは、親戚関係の法的な遠近を表す単位のことです。
親等が小さければ法的に近い親戚関係であるということが言え、親等が大きければ法的に遠い親戚関係であるということが言えます。
親等で表すことができる関係
親戚ではない他人同士の関係を親等で表すことは、当然できません。
親等で表すことができるのは、血族と姻族のみです。
配偶者については親等で表すことはありません。
血族とは、血縁関係にある人のことですが、これには、生物学上の血縁だけでなく、養子縁組による法律上の血族も含まれます。
姻族とは、配偶者の血族と、血族の配偶者のことです。配偶者の血族の配偶者は姻族には含まれません。
血族や姻族について詳しくは「親族の法的な範囲(親等)を家系図を元に説明!血族・姻族との違いも」をご参照ください。
親等の数え方
親等の数え方について、説明します。
なお、親等について、日本ではローマ法式という数え方が採用されているので、この記事でも、ローマ法式に則った数え方を説明します。
ちなみに、ローマ法式のほかには、カノン法式という数え方がありますが、カノン法式は現在採用している国はなく、親等制を採用しているすべての国はローマ法式で数えます。
親子関係を経るごとに1親等を加える
簡単に言うと、親子関係を経るごとに1親等を加えます。
これだけで、すべての親戚の親等を数えることができます。
親等の数え方の例
父母や子は1親等です。
祖父母は、親の親なので、2親等です。
孫は、子の子なので、2親等です。
兄弟姉妹は、親の子なので、2親等です。
曽祖父母(「そうそふぼ」。ひい爺さん、ひい婆さんのこと。)は、親の親の親なので、3親等です。
曽孫(「そうそん」または「ひまご」と読みます。)は、子の子の子なので、3親等です。
伯叔父母(伯父(親の兄)、叔父(親の弟)、伯母(親の姉)、叔母(親の妹)の総称。要するに「おじ」「おば」のこと。)は、親の親の子なので、3親等です。
甥・姪(おい・めい)は、親の子の子なので、3親等です。
高祖父母(「こうそふぼ」と読みます。ひいひい爺さん、ひいひい婆さんのこと。)は、親の親の親の親なので、4親等です。
玄孫(「げんそん」または「やしゃご」と読みます。曽孫の子のこと。)は、子の子の子の子なので、4親等です。
伯叔祖父母(大おじ・大おば。祖父母の兄弟姉妹のこと。)は、親の親の親の子なので、4親等です。
大甥・大姪(おおおい・おおめい。兄弟姉妹の孫のこと)は、親の子の子の子なので、4親等です。
従兄弟姉妹(いとこ)は、親の親の子の子なので、4親等です。
兄弟姉妹は2親等と覚えておくと早く数えられる
なお、親等を素早く数えるには、兄弟姉妹は2親等と覚えておくとよいでしょう。
先ほどの例では、伯叔父母(おじ・おば)の親等を数えるときに、親の親の子で3親等と数えましたが、兄弟姉妹は2親等と覚えておくと、親の兄弟姉妹だから1親等+2親等=3親等と計算することもできます。
異母兄弟、異父兄弟も2親等
半血の兄弟姉妹(異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)でも2親等です。
なお、被相続人(亡くなった人)の全血の兄弟姉妹と、半血の兄弟姉妹が共同相続人になった場合、半血の兄弟姉妹の法定相続分は全血の兄弟姉妹の法定相続分の半分になります。
離婚した場合は?
子と離婚した両親の間の親等は、離婚前と変わらず1親等です。親権を持っているかどうかと、親等は無関係なのです。
内縁関係の場合は?
未婚の男女の間に生まれた子であっても母子関係は必ず1親等です。
父子関係は、認知されている場合は1親等ですが、認知されていない場合は親族関係ではないので、親等は付きません。
養子の場合は?
養親と養子の関係であっても実の親子と同じく1親等です。
養親だけでなく、養親の血族や姻族とも規定の親等以内の関係であれば親族になります。
例えば、養親に実子がいれば、その実子と養子は兄弟姉妹となり、親族(2親等の血族)です。
なお、養子縁組後の親族と、養子の実の親族は、親族になりません。
つまり、養親と、養子の実親や実の兄弟姉妹は、親族ではないので、親等を数えることはできません。
養子の子について、養子縁組前に生まれた子は、養子縁組後の養子の親族と親族になりませんが、養子縁組後に生まれた子は、養子縁組後の養子の親族と親族になります(養子の孫も同様)。
養子に出た子と実親の関係については、普通養子縁組の場合はそのまま1親等ですが、特別養子縁組の場合は実の親族とは親族関係がなくなり、親等を数えることはできなくなります。
連れ子は?
再婚相手の連れ子も1親等の親族です。
しかし、血族ではなく姻族です。
養子縁組をすれば血族になります。
なお、互いに連れ子がいた場合、連れ子同士は親族にはなりません(親等は付きません)。
姻族は?
また、姻族の親等の数え方も、血族親等の数え方と同じです。
つまり、配偶者の親も自分の親も同じ1親等、配偶者の兄弟姉妹も自分の兄弟姉妹も同じ2親等、配偶者の連れ子も自分の子と同じ1親等です。
配偶者と死別しても、その血族との姻族関係は自然には終了しません。
姻族関係を終了させるには、姻族関係終了届を役所に提出しなければなりません。
したがって、配偶者と死別した場合、姻族関係終了届を提出するまでは、配偶者の血族との親等は死別前と同じです(例えば、義父や義母は1親等)。
親等一覧図と親等一覧表
文字だけで説明しても分かりにくいでしょうから、図表で説明します。
親等一覧図
親等を家系図のようなかたちで一覧にすると、下図のようになります。
丸で囲ってある数字が親等です。「①」とあれば、1親等のことです。
焦げ茶色の枠で囲ってあるものが血族で、桃色の枠で囲ってあるものが姻族です。
親等一覧表
親等ごとに表にしました。
なお、姻族の名称については記載していませんが、前述の通り、姻族も血族と同様の親等になります。
例えば、下表の「父母」には義父母を、「兄弟姉妹」には配偶者の兄弟姉妹や兄弟姉妹の配偶者を含みます。
関係 | 関係についての説明 | 親等数 |
---|---|---|
本人 | なし | |
配偶者 | 夫、妻 | なし |
父母 | 養親を含む | 1 |
子 | 養子と普通養子縁組で養子に出た実子を含む(特別養子縁組で養子に出た実子を含まない) | 1 |
兄弟姉妹 | 異母兄弟、異父兄弟を含む | 2 |
祖父母 | 2 | |
孫 | 2 | |
伯叔父母 | おじ、おば | 3 |
甥、姪 | おい、めい | 3 |
曽祖父 | ひい爺さん、ひい婆さん | 3 |
曽孫 | ひまご | 3 |
従兄弟姉妹 | いとこ | 4 |
伯叔祖父母 | 大おじ、大おば(祖父母の兄弟姉妹) | 4 |
大甥・大姪 | 兄弟姉妹の孫 | 4 |
高祖父母 | ひいひい爺さん、ひいひい婆さん | 4 |
玄孫 | やしゃご(曽孫の子) | 4 |
従伯叔父母 | 親のいとこ、いとこ違い、いとこ半 | 5 |
従甥姪 | いとこの子、いとこ甥、いとこ姪 | 5 |
曽祖伯叔父母 | 曽祖父母の兄弟姉妹 | 5 |
曽姪孫 | 兄弟姉妹のひまご | 5 |
五世の祖 | 高祖父母の親 | 5 |
来孫 | やしゃごの子 | 5 |
再従兄弟姉妹 | はとこ、またいとこ(親同士がいとこ) | 6 |
従伯叔祖父母 | 祖父母のいとこ | 6 |
従姪孫 | いとこの孫 | 6 |
高祖伯叔祖父母 | 高祖父母の兄弟姉妹 | 6 |
玄姪孫 | 兄弟姉妹のやしゃご | 6 |
六世の祖 | 高祖父母の祖父母 | 6 |
昆孫 | 来孫の子 | 6 |
親等は遺伝的近親度ではない
親等によって示されるのは、法的な親族関係の遠近であって、遺伝的な近親度ではありません。
実際の血縁関係のない養親と養子は、遺伝的には近親ではありませんが、実の親子と同じ1親等ですし、姻族についても遺伝的には近親ではありませんが血族と同じ親等で数えます。
また、半血の兄弟と全血の兄弟では、遺伝的な近親度は半分になりますが、親等は同じです。
そして、遺伝的な近親度でいうと、親子関係と兄弟姉妹の関係は、実は同じ近親度なのですが、親等では、親子が1親等、兄弟姉妹は2親等となり、法的には、兄弟姉妹の関係よりも親子関係の方が重視されていることがわかります。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続