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遺産相続に強い弁護士の選び方や費用の相場など相談前に知るべきこと

来るべき相続に備えたいときや相続開始後に困ったとき等のように、相続に関して専門家である弁護士に相談すべき場合があります。 この記事では、相続に強い弁護士の選び方や、費用の相場など、相談前に知っておくべきことについて、わかりやすく網羅的に説明します。 是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年5月1日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

弁護士に相談できる内容

弁護士に相談できる内容の例を、被相続人(亡くなった時に財産を遺す人)に関連する事項と、相続人に関連する事項に分けて、それぞれ紹介します。

被相続人に関連する事項

  • 生前贈与(相続税対策については税理士に相談)
  • 遺言の方式
  • 遺言の内容
  • 特別受益の持戻し免除
  • 遺言執行者の選任
  • 遺留分対策
  • 遺言書の書き方
  • 遺言書の保管(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合のみ。公正証書遺言の場合は公証役場で保管。なお、自筆証書遺言についても2020710日から法務局における遺言書の保管制度が始まる。)
  • 推定相続人の廃除
  • 事業承継
  • 家族信託
  • 成年後見
上記以外の事項についても、法律や公的な制度について不明な点は気軽に弁護士に相談して構いません。

相続人に関連する事項

  • 相続人の範囲の確定
  • 遺言書の検認(自筆証書遺言の場合)
  • 遺言執行(遺言執行者が選任されていない場合)
  • 遺産の範囲の確定
  • 遺産の評価
  • 相続放棄、限定承認または単純承認の選択
  • 特別受益と寄与分の算定
  • 遺留分減殺請求
  • 遺産分割協議の進め方
  • 遺産分割の方法
  • 遺産分割協議書の作成
  • 遺産分割調停、遺産分割審判
  • 遺産の名義変更(不動産の登記については司法書士が専門)
上記以外の事項についても、法律や公的な制度について不明な点は気軽に弁護士に相談して構いません。

弁護士と司法書士の違い

相続の専門家には、弁護士以外にも税理士や司法書士がいます。 税理士が税に関する専門家であることは多くの方がご存知でしょうが、司法書士の専門分野については、あまり知られていませんので、説明します。

司法書士の専門分野

司法書士は、弁護士のように法律に関すること全般を行えるのではなく、専門分野に限って業務をすることができます。 司法書士の主な専門分野は次のとおりです。
  • 登記の代理
  • 供託の代理
  • 裁判所や法務局等に提出する書類の作成
  • 簡易裁判所における民事訴訟等の代理(法務大臣から認定を受けた司法書士のみ)
また、専門分野というわけではありませんが、各種の相続手続きに必要となる戸籍謄本等の収集についても、司法書士に依頼することができます。 これらの業務については、司法書士だけでなく、弁護士も行うことができます。 しかし、登記については、ケースごとに申請書の書き方が異なり煩雑なので、多くの弁護士は、登記申請の代理業務はせずに、司法書士に依頼しています。 他の司法書士の業務については、弁護士に依頼しても構いませんが、弁護士よりも司法書士の方が、費用の相場が安い傾向にあるので、弁護士でも司法書士でもどちらでもよいものについては、司法書士に依頼した方が費用が抑えられる可能性が高いでしょう。 もっとも、弁護士に他に依頼することがある場合は、一人の弁護士にまとめて依頼した方が、合計の費用が抑えられるでしょう。

相続問題を弁護士に依頼するメリット・デメリット

手続きの代行についてのみ依頼する場合は、前述のとおり、司法書士でも代行することができ、また、その方が費用が安く済むケースも多いため、弁護士に依頼するメリットはそれほど大きくはないでしょう。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼する最大のメリットは、弁護士の法的な知識や相手方(他の相続人等)との交渉力を活用して、依頼者にとって望ましい結果を実現させることができるという点にあると言えます。 また、相手方との交渉を弁護士が代理することによって、精神的な負担や手間を削減できることもメリットと言えるでしょう。

弁護士に依頼するデメリット

対して、弁護士に依頼するデメリットは、基本的には、費用がかかるという1点のみです。こちらについては後述します。

無料相談と無料電話相談

弁護士による法律相談には、通常、初回の相談で30分当たり5,000円~1万円の費用がかかりますが、最近では、初回に限り無料で法律相談に応じている弁護士も増えています。 法律相談は、通常、事務所を訪問して面会して行われます。 しかし、1点確認したいだけなので、電話で相談したいという場合もあるでしょう。あまり多くはありませんが、電話での無料相談に応じている弁護士もいます。 もっとも、電話相談に応じている場合でも、電話で回答できる簡単なものに内容を限定しているケースがほとんどです。

弁護士費用

弁護士費用について説明します。

誰が払う?相続人全員で分担する?

そもそも、弁護士費用は誰が払うのでしょうか?結論からいうと、「弁護士費用は弁護士に依頼した人が払う」ということになります。 弁護士は、裁判所のような中立な機関ではなく、基本的には、依頼者の利益のなるように業務を遂行します(法令遵守は当然ながら)。 当事者間に利害の対立がある場合、弁護士は、依頼者の利益になるように主張を組み立て、相手方と交渉するのです。 相続人全員で一人の弁護士に依頼して妥当な遺産分割方法を決めてもらうというような利用方法は、本来、予定されている弁護士の利用方法ではありませんが、このような依頼にも応じてくれる弁護士はいるでしょう。 しかし、当事者の利害が対立する中、弁護士が提案する遺産分割方法に、相続人全員が納得できないことも多いでしょう。 弁護士の提案を受け入れるかどうかは、結局は、各相続人に委ねられるのです。 したがって、弁護士にこのような依頼をする場合は、弁護士の出す結論を受け入れることを予め当事者間で合意をしておくといったように、争いが終局的に解決するような工夫が必要でしょう。 なお、このような依頼をした場合に誰が弁護士費用を負担するかは、当事者である相続人で話し合って決めることになります(均等になるように負担するのが無難かと思われます)。 もっとも、このような利用方法であれば、家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判の手続きを利用する方が一般的でしょう。

相場

弁護士費用には、次のようなものがあります。
  • 法律相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 手数料
  • 日当
  • 実費
弁護士費用は、以前(20083月まで)は、日本弁護士連合会(日弁連)が作成した報酬規程に沿って決まっていましたが、現在は、統一された基準はなく、各事務所が自由に報酬を決めることができるようになっています。 しかし、現在でも、日弁連の旧規定を参考に報酬を決める事務所が多いため、旧規定が実質的に弁護士費用の相場となっています。 ついては、以下、上記の各項目について、旧規定に基づいて弁護士費用を説明します。

法律相談料

法律相談料の相場は次の表のとおりです。
初回市民法律相談料 30分ごとに5,000円から1万円の範囲内の一定額
一般法律相談料 30分ごとに5,000円以上2万5,000円以下
初回市民法律相談とは、事業以外に関し個人から受ける初回の法律相談のことで、一般法律相談とは初回市民法律相談以外の法律相談のことです しかし、現在では、初回の法律相談を無料としている事務所も多く見られるようになっています。

着手金、報酬金

着手金や報酬金の対象となるのは、主に、利害の対立する相手方との交渉、調停、裁判等が必要な場合です。 例えば、遺産分割協議や遺留分減殺請求等が該当します。 着手金や報酬金の対象とならないのは、遺言書の作成、遺言執行、相続放棄等のように当事者間に実質的に争いのないケースでの事務的な手続を依頼する場合です。 これらは、後述する「手数料」の対象となります。 着手金は、弁護士に事件を依頼した段階で支払うもので、事件の結果に関係なく、つまり不成功に終わっても返還されません。 報酬金は、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で支払うものです。 成功というのは一部成功の場合も含まれ、その度合いに応じて支払いますが、まったく不成功(裁判でいえば全面敗訴)の場合は支払う必要はありません。 着手金と報酬金は、経済的な利益の額に応じて変動するのが一般的で、裁判になった場合の相場は次の表のとおりです。 表中の「%」は、経済的利益の額に対する割合です。
経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下 8% ※ただし最低10万円 16%
300万円超3,000万円以下 5%+9万円 10%+18万円
3,000万円超3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
3億円超 2%+369万円 4%+738万円
裁判にならずに、交渉や調停で決着した場合は、依頼する弁護士によっては、上表によって算定された額の3分の2程度になる場合があります。

手数料

手数料は、当事者間に実質的に争いのないケースでの事務的な手続を依頼する場合に支払います。 手数料を支払う場合としては書類(遺言、遺産分割協議書など)作成、遺言執行、登記などがあります。 手数料の相場は次のようになっています。
内容 手数料の相場
遺言書作成 定型 10万~20万円
非定型 遺産が300万円以下 20万円
遺産が300万円超3,000万円以下 1%+17万円
遺産が3,000万円超3億円以下 0.3%+38万円
遺産が3億円超 0.1%+98万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算
遺言執行 基本 遺産が300万円以下 30万円
遺産が300万円超3,000万円以下 2%+24万円
遺産が3,000万円超3億円以下 1%+54万円
遺産が3億円超 0.5%+204万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める
遺言執行に裁判手続を要する場合 遺言執行手数料とは別に、裁判手続きに要する弁護士報酬が必要
遺産分割協議書・契約書等の作成 ※書類作成のみ依頼した場合の手数料(遺産分割協議の代理を依頼した場合は、通常、着手金・報酬金に含まれているため不要) 定型 遺産が1,000万円未満 5万~10万円
遺産が1,000万円以上1億円未満 10万~30万円
遺産が1億円以上 30万円以上
非定型 遺産が300万円以下 10万円
遺産が300万円超3,000万円以下 1%+7万円
遺産が3,000万円超3億円以下 0.3%+28万円
遺産が3億円超 0.1%+88万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算

日当

日当は、弁護士が、裁判所に出廷する等、事務所以外の場所で執務する必要が生じた場合に生じる費用です。 日当を設定していない事務所もあります。 日当が設定されている場合は、どのような場合に日当が必要になるのか、依頼前に確認しておくとよいでしょう。 日当が設定されている場合の相場は下の表のとおりです。
半日(2時間超4時間以内) 3万~5万円
一日(4時間超) 5万~10万円

実費

実費は文字どおり事件処理のため実際に出費されるもので、裁判を起こす場合でいえば、裁判所に納める印紙代と切手代、記録謄写費用、場合によっては保証金、鑑定料などがかかり、また、出張する場合は、交通費、宿泊費がかかります。

払えない場合の対処法

弁護士費用は、前述のとおり、着手金と成功報酬に分かれていることが多いです。 成功報酬は、後払いなので、相続して遺産をもらい受けてから、もらい受けた遺産を原資に支払うことができます。 着手金は前払いなので、手持ちがないと支払うことができません。 しかし、事情を伝えれば、着手金の分割払いや後払いに応じてくれる弁護士はいるので、初回の相談時に併せて相談してみるとよいでしょう。 また、収入額や資産額等の一定の要件を満たす場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を受けられる可能性があります。 民事法律扶助を受けると、費用面で次のようなメリットがあります。
  • 無料法律相談を3回まで受けられる
  • 立て替え払いを利用できる
  • 弁護士費用を通常よりも安く抑えられる可能性が高い
ただし、民事法律扶助を受ける場合は、自分で自由に弁護士を選ぶことはできず、法テラスに所属している弁護士か、法テラスと契約している弁護士に依頼しなければなりません。 また、審査に、通常、2週間ほどかかるため、急いでいる場合はおすすめできません。 このようなデメリットがあることも念頭に民事法律扶助を受けるかどうかを検討するとよいでしょう。 扶助を受けたい場合は、法テラスに詳細を確認するとよいでしょう。

相続に強い弁護士の選び方

相続に強い弁護士の選び方について説明します。

ランキング

弁護士を探す際に「相続 弁護士 ランキング」といったキーワードで探す人が多いようです。 しかし、「相続弁護士ランキング」なるランキングは、公的なものはありませんし、民間の格付け機関によるものも存在しないようです。 企業法務の分野では、日本経済新聞社が毎年、企業や弁護士にアンケート調査をおこなって集計しているランキングがありますが、相続分野では、そのようなランキング付けは行われていないようです。 また、事務所の所属弁護士数によるランキングは存在していますが、所属弁護士の多い大手事務所は、相続分野を取り扱っていなかったり、基本費用が高額であったりという事情があり、一般の人が、相続の弁護士を、所属弁護士数ランキングを元に選ぶというのは得策ではないでしょう。

口コミ

弁護士については、口コミサイトは現状ほとんどありません。 現状、弁護士の口コミを掲載しているほぼ唯一のサイトは、Googleマップです。Googleマップでは拠点ごとに口コミが掲載される仕組みになっています。 したがって、同じ事務所でも東京のオフィスと大阪オフィスでは異なる口コミが掲載されています。このような口コミを閲覧できる機能は、一見、弁護士選びに有用に思われますが、注意点もあります。 一つ目の注意点としては、口コミの掲載数があまり多くないということです。まだ口コミが一つも掲載されていない事務所も多いです。 二つ目の注意点としては、口コミは誰でも投稿でき、その口コミが事実に基づくものか検証されていないという点です。Googleマップの口コミは、Googleアカウントさえあれば、誰でも投稿することができます。 その口コミが事実に基づく正当なものかどうかは分からないので、あくまで参考程度に留めておくことが賢明でしょう。

おすすめの選び方

相続に強い弁護士を探す

最もおすすめの選び方は、相続問題に精通した弁護士を探して問い合わせることです。弁護士は、法律全般の専門家であり、基本的には、どの弁護士でも対応することができます。 しかし、医者に専門分野があるように、弁護士にも得意分野をもっている人がいます。 相続問題に特化して経験を積み、あらゆる相続問題に精通している弁護士がいるのです。 やはり、相続問題に精通した弁護士に依頼した方が、より良い結果が得られる可能性が高いでしょう。 弁護士を選ぶ際は、依頼したい問題に精通しているかどうか以外に、事務所の立地、自分(依頼者)との相性(相談しやすさ)、信頼できるか等の指標も重要です。 依頼内容によっては、何度も事務所を訪問することになりますので、あまり遠方だと交通費や移動時間が嵩んでしまいます。 遠方の弁護士に依頼してはいけないわけではありませんが、遠方の弁護士に依頼する場合は、遠方であることのデメリット以上のメリットがあるかどうかを判断した方がよいでしょう。

弁護士との相性

弁護士との相性も重要です。弁護士との間に心理的な垣根を感じてしまう場合、訊きたいのに訊けないとか、伝えた方がよいかもしれないが伝えにくいとかということが生じてしまいます。 弁護士のコミュニケーションがうまくいかないと、ストレスになってしまいますし、よりよい結果を得られない可能性が生じてしまいます。 そして、いくら気さくで話しやすくても、信頼できない弁護士は避けた方がよいでしょう。 例えば、連絡するといったのに連絡がないとか、費用についてしっかりと説明してくれないというような弁護士は避けるべきです。 初回の面談時に、気になる点は遠慮なく質問し、疑念が残る場合は、依頼せずに、他の弁護士にも相談してみた方がよいでしょう。

相談前に事前準備は必要?

相談前に事前準備が必要かどうかは、相談内容によります。 まずは、電話やメール等で弁護士に問い合わせましょう。問い合わせる際には事前準備は不要です。 弁護士や事務員が、必要な情報を質問して引き出してくれます。 相談時に用意した方がよい資料等がある場合は、弁護士や事務員から指示があるでしょうから、あれこれと気を揉むよりも、まずは問い合わせた方がよいでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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