相続税の申告が不要なケースは?自分で申告する方法と申告期限

法定相続情報証明制度

「うちは相続財産が少ないから相続税の申告が必要ない」と思われている方もおられると思いますが、平成27年の相続税に関する大幅改正で、相続税の申告が必要な方の範囲は一気に広がりました。

相続税の申告が必要なケースと不要なケースの違いはなんでしょうか。

申告が必要な場合に自分で申告できるものなのでしょうか。

万一、申告が遅れてしまうと、延滞税などペナルティがありますので、そのようなことが起こらないように、是非この記事を参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2018年7月30日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

相続税の申告が必要な場合と不要な場合

相続税の申告が「不要」

相続税の申告が必要なのは相続財産が基礎控除額を上回る場合

相続税の申告は、亡くなった人(被相続人)の財産が、一定額以上の場合に必要となります。

その一定額は、下記の計算式によって算定されます。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

これを基礎控除といい、相続財産が基礎控除額未満の方の場合は、相続税がかからず、申告も必要ないことになります

例えば、法定相続人が配偶者と子供二人の場合、基礎控除額は、4,800万円(3,000万円+600万円×3)となり、相続財産が4,800万円以下であれば、相続税はかかりませんし、相続税の申告も必要ないことになります。

相続財産は亡くなった時点の財産だけではない

前述のとおり、相続税の申告が必要かどうかは、相続財産が基礎控除額を上回るかどうかで判断されます。

この場合の相続財産とは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産だけを指すわけではありません

被相続人が亡くなった時点で保有していた財産に、生命保険金や死亡退職金、被相続人が亡くなる前3年以内に相続人に対して行った生前贈与の額をプラスし、さらに、被相続人が負っていた借金や被相続人の死亡時にかかった葬式費用等を引いた額が相続財産の額となります(なお、生命保険金や死亡退職金は、相続人が受け取った金額から、一定の非課税限度額を引いた額を足せばよいことになっています)。

相続税の申告が「必要」

特例措置等を適用した結果、相続税がかからない場合も申告は必要

前述のとおり、相続税の申告が必要かどうかは、相続財産が基礎控除額を上回るかどうかで判断されます。

そのため、配偶者の税額軽減の制度(配偶者控除)や小規模宅地等の特例といった様々な軽減措置を利用した結果、相続税がゼロになるような場合であっても、相続財産が基礎控除の額を超えている場合は、申告が必要となることに注意が必要です

相続税の申告を行うのは誰か

相続税の申告を行う必要があるのは、被相続人の死亡によって財産を譲り受けた相続人や受遺者です。

法定相続人だけでなく、遺言によって財産を受け取った者や、被相続人が加入していた生命保険の受取人になっている者など、「被相続人の死亡」を原因として財産を譲り受けた者はすべて申告義務者になるので注意が必要です。

なお、相続を放棄したことで、財産を一切相続しなくなった者は、原則として申告義務者には該当しませんが、生命保険金等を受け取っている場合には申告義務者になるので注意が必要です。

相続税の申告はいつまでにする必要があるか

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」とされています。

「死亡したことを知った日」というのは、通常は、被相続人が亡くなった日であることが多いと思いますが、遠方に住んでいたり、疎遠だったりした場合は、何らかの形で、被相続人が亡くなったことの連絡を受け取った日ということになります。

遺産分割協議がまとまっていなくても申告する!?

仮に、この申告期限までに、相続人の間で遺産分割がまとまらない場合でも、申告は行わなければなりません

その場合、いったん、法定相続分で相続した前提で申告を行い、申告後、実際に分割した割合が法定相続分と異なることで相続税に変更が生じた場合は、修正申告(または更正の請求)を行う必要があります。

申告だけでなく納付も!

なお、相続税は、この申告期限内に申告を行えばよいだけでなく、申告期限内に則として現金で納付もしなければならないことに注意が必要です。

申告期限を過ぎた場合の罰則

延滞税

申告期限内に申告をしても、期限内に相続税を支払わなかった場合、延滞税が加算されます

延滞税は、本来支払うべき税額に対し、納付期限から納付した日までの日数について、平成30年1月1日から平成30年12月31日対応分については年8.9%(納付期限から2ヶ月以内は年2.6%)の割合で計算されます。

無申告加算税

また、そもそも、申告期限内に相続税の申告を行わなかった場合は無申告加算税が加算されます

無申告加算税は、自主的に申告書を提出した場合は、納付すべき税額の5%税務調査により発覚した場合は、納付すべき税額の15%となります。

さらに、申告期限内に申告を行わなかった場合、法律上、「1年以内の懲役または50万円以下の罰金」という罰則も規定されています。

必ず罰せられるわけではありませんが、申告しなかったことが悪質である場合は、この罰則を科される可能性もあるので注意が必要です。

申告期限の延長

相続税の期限は、「特別な事情」がある場合には、申告期限の延長を申請することができるとされています。

延長が認められれば最大2か月間、申告期限を延ばすことができます

ただ、延長の申請自体は、申告期限に行う必要があります。

また、「特別な事情」とは、認知等によって相続人に異動があった場合や、遺留分減殺請求があった場合等に限られており、一般的には余り認められないことが多いので、注意が必要です。

相続税の申告を自分で行う方法

以下のような流れですすめます。

  1. 相続人の確定
  2. 相続財産の確定
  3. 財産目録の作成
  4. 必要書類の収集
  5. 相続税申告書の作成
  6. 相続税申告書の提出

1から6までを、詳しく説明していきます。

1.相続人の確定

相続税の申告を行うには、まず、誰がどれだけの財産を相続するかを決める必要があります

遺言があり、これに、全ての遺産について、誰に相続させるか記載がある場合は、その遺言によって財産を相続する者が相続税の申告を行えばよいのですが、遺言がない場合や、遺言があってもすべての遺産について記載がない場合は、相続人全員による遺産分割協議を行う必要があります。

そのため、相続人を確定させる必要があります。

相続人の確定は被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を確認して行います

被相続人が、過去に離婚した相手との間に子供がいることや、不倫相手との間の子供を認知していることを、今の家族に伝えていない場合等があるので、必ず戸籍謄本で確認することが大切です(後で他に相続人がいることが判明したら、遺産分割をやり直さなければならなくなります)。

2.相続財産の確定

相続人が確定出来たら、次に、相続財産がどれだけあるかを確認します

相続人は戸籍謄本を取り寄せることで確認できますが、相続財産がどこにどれだけあるかを一度に確認する方法はありません。

そのため、財産の種類によって次のような方法で調査を行います

不動産

家にある権利証や固定資産税課税通知書(納付書)、市町村役場で発行してもらう名寄帳などから、被相続人がどこにどのような不動産を所有しているか調査します。

預貯金、有価証券、金融商品

通帳やキャッシュカード、銀行や証券会社からの郵便物などから、預貯金や有価証券を預けている金融機関を調査します。

また、近年ではネット上の銀行に口座等を保有している場合もあり、通帳やキャッシュカードが発行されていない場合もあるので、被相続人のメール等を確認することも大切です

また、銀行や証券会社で金融商品を保有している場合は、運用報告書等が届いている場合もあるので、確認してみられるとよいでしょう。

その他の動産

動産も相続の対象となります。

動産にはほとんど価値のないものも多いことから忘れがちですが、車や宝石、貴金属、美術品等、一定の価値を有するものもあるので、きちんと調査する必要があります。

借金等

借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。

被相続人が借金をしていた場合は、相続財産の総額から引くことができるので、借金の有無や金額についても調査を行う必要があります。

借用書や金銭消費貸借契約書等の書類の有無や金融業者からの郵便物などをチェックするほか、信用情報機関において、被相続人の信用情報の開示を受けて確認をするという方法もあります。

3.財産目録の作成

相続財産の調査が完了したらその一覧表を作成します。

これを財産目録といいます。

財産目録には、相続財産として何があるかということと、その評価額を記載します。

相続財産の評価は、国税庁の作成した「財産評価基本通達」に従って行います。

この財産目録は、相続税の申告の際に添付する場合があります。

4.必要書類の収集

相続税の申告の際には、様々な書類を添付する必要があります

例えば、遺言書遺産分割協議書等の遺産の分割に関するもの戸籍謄本住民票印鑑登録証明書など相続人に関するもの、さらに不動産登記簿謄本(登記事項証明書)や銀行の通帳の写しなど相続財産に関するものなど多岐にわたります。

これらの必要書類の収集には、一定の時間がかかりますので、申告期限に遅れないよう、早めに準備をしておくことが大切です。

5.相続税申告書の作成

相続税申告書には第1表から第15表まで、全部で15の様式があります

そのうちの第1表が相続税申告書で、残りは計算書や明細書等です

第2表以下の書類については、全てを作成する必要はなく、相続人全員について該当がないものは作成する必要はありません。

6.相続税申告書の提出

相続税申告書を提出するのは、被相続人が亡くなった時点で住んでいた居住地を管轄する税務署となります。

相続人が住んでいる居住地では提出できない点に注意が必要です。

なお、提出先の税務署が遠方になる場合には、郵送で提出することも可能です。なお、郵便物または信書便物として送付する場合には、通信日付印で表示された日が提出日とみなされます

念のため、申告期限ぎりぎりに提出する場合は、特定記録郵便など、投函日(通信日付)が確定する郵送方法を選択するとより立証のためにはよいでしょう。

相続税の税務調査とは

相続税の税務調査とは申告後に、税務署の職員が、相続税の金額が正しいかどうかを調査することです。

全ての人が対象になるわけではなく、相続税の申告をした方のうち、2~3割くらいの割合で調査が行われます。

国税庁は国税総合管理システム(KSK)を利用して、全国の納税者情報を一元的に管理しており、申告された相続税の金額が正しいか、申告漏れはないかなどを常にチェックしており、それに基づいて調査が行われると言われています。

そして、調査の結果、かなりの割合で、申告の誤りを指摘されるようです。

税務調査で8割以上を指摘

実際に、平成28事務年度に行われた相続税の税務調査(平成26年に発生した相続を中心に調査したもの)では、12,116件に対して調査が行われ、そのうち9,930件で申告漏れ等が指摘されており、実に8割以上が申告の誤りの指摘を受けているのです(件数は国税庁のHPより)。これは、相続税の計算方法や、財産の評価方法が複雑であることに理由があると考えられます。

相続税は専門的な知識が必要なため申告に不備が出やすいのです。

無申告・過少申告の可能性が考えられる場合は税務調査が入りますが、税金を払いすぎていた場合はその旨が連絡されることはなく、自ら還付の請求をしなければならない点にも注意が必要です。

相続税の申告を自分で行うメリットとデメリット

相続税の申告を自分で行うメリット

相続税の申告は、必ずしも税理士に依頼しなくても、自分で行うことは可能です。

ただ、相続税の申告を自分で行うメリットとしては、税理士への費用が発生しないという点くらいでしょう。

相続税の申告を自分で行うデメリット

相続税の申告を自分で行うデメリットとしては、以下のような点があげられます。

必要書類の収集が困難

相続税の申告書には、かなりの数の種類の必要書類を添付する必要があります。

これらの必要書類を不足なく収集するのはかなりの手間がかかります。

また、手間がかかるだけでなく、収集に時間がかかってしまうと、申告期限に間に合わなくなる懸念もあるので注意が必要です。

相続税額を間違って納税

相続税の計算は、税理士でも苦手な方がいるくらい、ただでさえややこしい上に、様々な税額軽減措置や優遇措置などの特例があります。

そのため、専門家に相談しないまま申告してしまうと、これらの特例を上手に活用することで相続税の金額を減らすことができたのに、それに気が付かないまま申告してしまい、本来の相続税よりも高い金額を支払ってしまう可能性があります

しかも、本来の相続税額よりも高い金額を納付したとしても、税務署から指摘をしてくれるわけではないので、気が付かないままということも多いのです。

また、申告内容に誤りがある場合は、追徴課税というペナルティを受けることがあります

この追徴課税の内容次第では、税理士への報酬の方が安かったということにもなりかねません。

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税務調査が入る可能性が高くなる

相続税の申告を税理士に依頼した場合、申告書の第1表の右下欄に、税理士の署名がなされますが、本人で申告した場合は、この欄は空欄になります

税理士の押印がないということは、専門家に依頼していないということになり、税務署が、申告内容に誤りがある可能性が高いと判断して、税務調査に入る可能性が高くなってしまうため、この点も自分で申告を行うデメリットといえるでしょう。

相続税の申告を専門家に相談したいときには

前述のように、相続税の申告には専門知識が欠かせません。

そのため、相続税の申告で少しでも迷ったときには、税法の専門家である税理士に相談されるとよいでしょう。

ただ、税理士の中でも、相続税の申告を得意にしている税理士とそうでない税理士とがいるので、ホームページ等で相続税の申告を専門としているかどうか、相続税に関する情報を積極的に発信しているか等を確認されるとよいでしょう。

なお、当サイトに掲載されている税理士は、基本的に相続税に強い税理士なので、税理士探しには当サイトのご活用をおすすめします。

また、もし、被相続人が生前に親しくしている税理士がいる場合には、被相続人の財産状況等を詳しく把握している可能性もあるので、その税理士に相談してみられるのもよいと思います。

まとめ

相続税の申告は、普通は、一生のうちに何度も経験するものではないので、ほとんどの方が初めての経験になると思います。

現在では、インターネット上で、相続税に関する様々な情報を得ることができるので、以前よりも、自分で相続税の申告をしようと思われる方が増えていると思います。

ただ、相続税の計算はちょっとした誤りや勘違いで、相続税の金額に大きな影響を与える可能性がありますし、ネット上の情報も必ずしも正確とは言い切れないようなものもあります。

申告期限内に、正しく、かつ、損をしないように申告するためにも、少しでもわからない点があるときには、専門家に相談されることをおすすめします。

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この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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