相続税評価額の基本的な計算方法と評価額を低く計算して節税する方法
実は相続税評価額は、計算のしかたによって金額が変わってきます。
つまり、あなたの相続したその土地や不動産、もっと評価を下げられるかもしれません。そして相続税の納税額を減らせるかも…(ちなみに高めの金額で納税していても、税務署は教えてくれません)。
この計算は大変難しいですから、土地の評価に精通した税理士に依頼するのがベター。税理士によって得意分野が異なるので、きちんと調べてから依頼しましょう。
今回は相続税評価額の基本的な計算方法と、評価額を低くして節税する方法について説明します。是非、参考にしてください。
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記事は、公開日(2018年10月29日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
相続税評価額とは?
相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するための財産の評価額のことです。相続税は相続財産、贈与税は贈与財産の価額に応じて計算されます。
相続財産や贈与財産の価額がいくらなのかが分からなければ相続税額や贈与税額を計算することはできません。
そこで、一つ一つの財産について評価する必要があります。
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相続税評価額の計算方法
相続税評価額の計算方法について説明します。
基本的な考え方
相続税評価額は、原則としては、相続開始時(多く場合は被相続人が亡くなった時)または贈与時の時価ですが、様々な例外的な規定が「財産評価基本通達」に定められています。
財産評価基本通達に定められている評価方法の多くは、時価よりも低く見積もることができるようになっています。
財産基本通達の評価方法を駆使することによって、時価よりも低く財産を評価することができ、節税につなげることができるのです。
もし、相続財産を高く評価してしまい余計に納税することになってしまったとしても、税務署は「もっと税金を低くできますよ」とは教えてくれません(自分で気づいた場合は相続税の更正の請求を行うことによって払い過ぎた相続税の還付を受けることができます。)。
しかし、専門知識のない人が財産評価基本通達を読んで正しく適用するのは、正直難しいでしょう。
税理士でも相続税申告の経験が浅い場合は、財産評価基本通達の内容を把握せずに過大に申告してしまうケースがあるくらいです。
この記事では、主要な財産に関する基本的な計算方法に絞って説明します。
ただし、財産評価基本通達には、評価額を下げられる細かな規定が、この記事内ではとても紹介しきれないほどたくさんあるので、相続税申告の経験豊富な税理士に相談することが、節税には欠かせないことをご理解ください。
それでは、財産の種類ごとの相続税評価額の計算方法について説明します。
預貯金
預貯金の相続税評価額は分かりやすいです。
普通預金の場合は、相続開始時の残高が相続税評価額になります。
定期預金の場合は、相続開始時の残高に既経過利息を加えた額が相続税評価額です。
既経過利息とは、相続開始時までに発生している未払い利息のことです。
土地
路線価方式と倍率方式がある
土地の相続税評価額は、実際の価額の8割ほどになります。1億円の土地を8000万円ほどで評価することができるのです。
これだけでも現金を土地に換えることは十分相続税対策になるのですが、土地には様々な評価を減額する規定があります。
評価減の規定を駆使することで、土地の評価額は大きく減額できる可能性があるのです。
それでは、土地の相続税評価額の計算方法について説明します。土地の相続税評価額の計算方法には、路線価方式と倍率方式があります。
どちらの方式で計算するかは、地域ごとに決まっています(自由に選ぶことはできません)。
評価倍率表に記載のある地域では倍率方式、記載のない地域では路線価方式によります。
倍率方式
評価倍率表は、市区町村ごとになっていて、次の手順で確認します。
- 国税庁ウェブサイトの財産評価基準書のページにアクセス
- 都道府県名をクリック
- 「評価倍率表」欄の下の「一般の土地等用」、「大規模工場用地用」または「ゴルフ場用地等用」のうち、該当するものをクリック
- 市区町村名をクリック
評価倍率表の中の「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」という欄に倍率が記載されている場合は、固定資産税評価額にこの倍率を乗じた(掛け算した)金額が相続税評価額になります。
例えば、固定資産税評価額が1000万円で、相続税の評価倍率が1.1倍の土地の相続税評価額は、1000万円×1.1倍=1100万円です。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書に記載されています。
固定資産税の納税通知書は、毎年送付されてきますが、納付が済んでも保管しておきましょう。
課税明細書に「価格」か「評価額」という欄がありますが、そこに金額が記載されています。
路線価方式
路線価方式については関連記事をご覧ください。
土地の相続税評価額を下げる方法
相続税評価額を下げる方法には、次のようなものがあります。
- いびつな土地の評価減
- 地積規模の大きな宅地の評価減
- 借地権の評価減
- 貸宅地の評価減
- 貸家建付地の評価減
- 私道、セットバックの評価減
- がけ地等を有する宅地の評価減
以下、それぞれについて説明します。
いびつな土地の評価減
いびつな土地の評価額は減額補正されます。
いびつな土地の評価減には、次の3つがあります。
- 奥行が長大な宅地の評価減
- 間口が狭小な宅地の評価減
- 不整形な宅地の評価減
いびつな土地の評価減は、路線価地域にしか適用されません。
倍率地域には適用されないので、間違えないようにご注意ください。
以下、それぞれについて説明しますが、複雑なものもあるので、すぐに理解するのは難しいかもしれません。
奥行が長大な宅地の評価減
奥行が間口の2倍以上の長さになると、評価減になります。
奥行が長大な宅地の評価は、路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて(掛け算して)求めた価額に、更に、「奥行長大補正率表」に定める補正率及びその宅地の地積を乗じて(掛け算して)計算します。
奥行価格補正率表
地区区分
奥行距離 |
ビル街地区 | 高度商業地区 | 繁華街地区 | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4未満 | 0.80 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.85 | 0.85 |
4以上6未満 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.90 | |
6 〃 8 〃 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
8 〃 10 〃 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
10 〃 12 〃 | 0.90 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.96 | 0.96 |
12 〃 14 〃 | 0.91 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.97 | |
14 〃 16 〃 | 0.92 | 1.00 | 0.98 | 0.98 | |||
16 〃 20 〃 | 0.93 | 0.99 | 0.99 | ||||
20 〃 24 〃 | 0.94 | 1.00 | 1.00 | ||||
24 〃 28 〃 | 0.95 | 0.99 | |||||
28 〃 32 〃 | 0.96 | 0.98 | 0.98 | ||||
32 〃 36 〃 | 0.97 | 0.96 | 0.98 | 0.96 | |||
36 〃 40 〃 | 0.98 | 0.94 | 0.96 | 0.94 | |||
40 〃 44 〃 | 0.99 | 0.92 | 0.94 | 0.92 | |||
44 〃 48 〃 | 1.00 | 0.90 | 0.92 | 0.91 | |||
48 〃 52 〃 | 0.99 | 0.88 | 0.90 | 0.90 | |||
52 〃 56 〃 | 0.98 | 0.87 | 0.88 | 0.88 | |||
56 〃 60 〃 | 0.97 | 0.86 | 0.87 | 0.87 | |||
60 〃 64 〃 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.99 | ||
64 〃 68 〃 | 0.95 | 0.84 | 0.85 | 0.85 | 0.98 | ||
68 〃 72 〃 | 0.94 | 0.83 | 0.84 | 0.84 | 0.97 | ||
72 〃 76 〃 | 0.93 | 0.82 | 0.83 | 0.83 | 0.96 | ||
76 〃 80 〃 | 0.92 | 0.81 | 0.82 | ||||
80 〃 84 〃 | 0.90 | 0.80 | 0.81 | 0.82 | 0.93 | ||
84 〃 88 〃 | 0.88 | 0.80 | |||||
88 〃 92 〃 | 0.86 | 0.81 | 0.90 | ||||
92 〃 96 〃 | 0.99 | 0.84 | |||||
96 〃 100 〃 | 0.97 | 0.82 | |||||
100 〃 | 0.95 | 0.80 | 0.80 |
奥行長大補正率表
地区区分
奥行距離/間口距離 |
ビル街地区 | 高度商業地区 繁華街地区 普通商業・ 併用住宅地区 |
普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|
2以上3未満 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 1.00 |
3 〃 4 〃 | 0.99 | 0.96 | 0.99 | ||
4 〃 5 〃 | 0.98 | 0.94 | 0.98 | ||
5 〃 6 〃 | 0.96 | 0.92 | 0.96 | ||
6 〃 7 〃 | 0.94 | 0.90 | 0.94 | ||
7 〃 8 〃 | 0.92 | 0.92 | |||
8 〃 | 0.90 | 0.90 |
間口が狭小な宅地の評価減
間口が狭小な宅地の評価は、路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて(掛け算して)求めた価額に、更に、「間口狭小補正率表」に定める補正率及びその宅地の地積を乗じて(掛け算して)計算します。
【間口狭小補正率表】
地区区分
|
ビル街地区 | 高度商業地区 | 繁華街地区 | 普通商業・ 併用住宅地区 |
普通住宅 地区 |
中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4未満 | – | 0.85 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.80 | 0.80 |
4以上6未満 | – | 0.94 | 1.00 | 0.97 | 0.94 | 0.85 | 0.85 |
6 〃 8 〃 | – | 0.97 | 1.00 | 0.97 | 0.90 | 0.90 | |
8 〃 10 〃 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 0.95 | 0.95 | ||
10 〃 16 〃 | 0.97 | 1.00 | 0.97 | ||||
16 〃 22 〃 | 0.98 | 0.98 | |||||
22 〃 28 〃 | 0.99 | 0.99 | |||||
28 〃 | 1.00 | 1.00 |
不整形な宅地の評価減
奥行距離が一様でないなど形状が不整形の宅地の評価は、その宅地が不整形でないものとして計算した1平方メートル当たりの価額に、その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ、「不整形地補正率表」に定める補正率を乗じて(掛け算して)評価します。
地積区分
地積区分
地区区分 |
A | B | C |
---|---|---|---|
高度商業地区 | 1,000 未満 | 1,000 以上 1,500 未満 |
1,500 以上 |
繁華街地区 | 450 未満 | 450 以上 700 未満 |
700 以上 |
普通商業・併用住宅地区 | 650 未満 | 650 以上 1,000 未満 |
1,000 以上 |
普通住宅地区 | 500 未満 | 500 以上 750 未満 |
750 以上 |
中小工場地区 | 3,500 未満 | 3,500 以上 5,000 未満 |
5,000 以上 |
不整形地補正率表
地区区分 | 高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区 | 普通住宅地区 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
地積区分 | A | B | C | A | B | C |
かげ地割合 | ||||||
10%以上 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
15% 〃 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
20% 〃 | 0.97 | 0.98 | 0.99 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
25% 〃 | 0.96 | 0.98 | 0.99 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
30% 〃 | 0.94 | 0.97 | 0.98 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
35% 〃 | 0.92 | 0.95 | 0.98 | 0.88 | 0.91 | 0.94 |
40% 〃 | 0.90 | 0.93 | 0.97 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
45% 〃 | 0.87 | 0.91 | 0.95 | 0.82 | 0.85 | 0.90 |
50% 〃 | 0.84 | 0.89 | 0.93 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
55% 〃 | 0.80 | 0.87 | 0.90 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
60% 〃 | 0.76 | 0.84 | 0.86 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
65% 〃 | 0.70 | 0.75 | 0.80 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
かげ地割合は、「(想定整形地地積-不整形地)÷想定整形地の地積」で計算します。
間口狭小補正率の適用がある場合は、この表により求めた不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じて(掛け算して)得た数値を不整形地補正率とします。
ただし、その最小値はこの表に定める不整形地補正率の最小値(0.60)とします。
また、奥行長大補正率の適用がある場合は、選択により、不整形地補正率を適用せず、間口狭小補正率に奥行長大補正率を乗じて(掛け算して)得た数値によって差し支えありません。
大工場地区にある不整形地については、原則として不整形地補正を行ないませんが、地積がおおむね9,000平方メートル程度までのものについては、地積区分表とこの表の中小工場地区の区分により不整形地としての補正を行って差し支えありません。
地積規模の大きな宅地の評価減
地積規模の大きな宅地の評価については、関連記事をご覧ください。
借地権の評価減
借地権(土地を借りて建物を建てる権利)も相続財産であり、相続税の課税対象となります。
借地権の評価額は、所有権の評価額に借地権割合を乗じて(掛け算して)計算します。
各路線の借地権割合は、路線図の記載された記号中のA~Gのアルファベットで確認できます。各アルファベットの借地権割合は次のとおりです。
- A:90%
- B:80%
- C:70%
- D:60%
- E:50%
- F:40%
- G:30%
貸宅地の評価減
人に貸している土地も、当然、相続財産です。
貸宅地(かしたくち)とは、人に土地を貸していて、その土地に借りている人が所有する建物が存在する場合の土地のことです。
貸宅地の価額の評価方法について詳しくは、国税庁ウェブサイトの「貸宅地の評価」のページをご参照ください。
貸家建付地の評価減
貸家建付地(かしやたてつけち)とは、貸家の目的とされている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。
貸家建付地の評価額は、「自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算することができます。
私道、セットバックの評価減
不特性多数の人が通り抜けられる私道の評価額は0円になります。
特定の人しか通行しない行き止まりの私道は、自用地の場合の評価額の30%になります。
セットバック部分の評価も同じく自用地の場合の評価額の30%になります。
がけ地等を有する宅地の評価減
がけ地等で通常の用途に使うことができない部分がある宅地の価額は、がけ地等の部分ががけ地等でないとした場合の価額に、がけ地補正率を乗じて(掛け算して)計算した価額によって評価します。
【がけ地補正率】
がけ地の方位
がけ地地積/そう地積 |
南 | 東 | 西 | 北 |
---|---|---|---|---|
0.10以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.20 〃 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.30 〃 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.40 〃 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.50 〃 | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.60 〃 | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.70 〃 | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.80 〃 | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.90 〃 | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
「がけの方位」は斜面が向いている方位です。
がけの方位が東西南北の4つのどれかに当てはまらない北西や南東などの場合は、2つの方位の平均のがけ地補正率になります。
2方位以上のがけ地がある場合は、それぞれのがけ地地積の比率に応じてがけ地補正率を計算します。
建物
建物の相続税評価額は固定資産税評価額を適用します。
固定資産税評価額は、前述の通り、固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書に記載されています。
納税課税明細書に「価格」か「評価額」という欄がありますが、そこに金額が記載されています。
マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額が記載されています。
自分の所有している部屋の固定資産税評価額は、課税標準額の欄に記載されています。
建物を自分で使用している場合には、固定資産税評価額がそのまま相続税計算時の評価額にもなりますが、建物を賃貸に出している場合は、借家権割合を差し引くことができます。
借家権割合は、都道府県ごとに決められていますが、2018年現在、すべての都道府県で3割となっています。
例えば、固定資産税評価額が1000万円の建物を貸している場合は、3割引いて、700万円が課税価格になります。
なお、無償で貸している場合や、著しく低廉な価格で貸している場合は、借家権割合の適用を受けることはできません。
最低でも固定資産税の2倍~3倍の家賃をもらっていなければ借家権割合の適用を受けることはできないでしょう。
また、借家権割合は、今後、変更になる可能性があります。
借家権割合を調べるには、国税庁ウェブサイトの財務評価基準書のページをご参照ください。
借家権割合を調べたい都道府県(建物が建っている都道府県)のクリックし、次に、「借家権割合」の文言をクリックすると、その都道府県の借家権割合を示したページにたどり着くことができます。
借家権割合は、「100分の30」のようなかたちで表しますが、100分の30は3割のことです。
ちなみに、建築途中の家屋も相続税の課税対象になります。
建築途中の家屋の評価額は、費用原価の額×70%です。
費用原価の額とは、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)までに建物に投下された建築費用の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額のことをいいます。
また、門や塀、庭園設備等も相続税の課税対象となります。
これらの評価方法については、税理士に相談するとよいでしょう。
動産
動産とは不動産以外の物のことです(不動産とは土地や建物のこと)。
動産には、自動車、家具、美術品、骨董品、貴金属類、装飾品、衣類等、様々なものが含まれます。
これを一つずつ評価していては大変なので、5万円以下の財産についてはまとめて評価してよいことになっています。
5万円以下の財産をまとめて評価する場合は、家財一式10万円という形でまとめます。
5万円を超える財産については、個別に評価します。
評価方法は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。
売買実例価額や精通者意見価格等が不明な場合は、「同種・同規格の新品の相続開始時における小売価額 – 減価償却費相当額」によって評価することができます。
例えば、自動車であれば、次のような価格を参考に評価することができます。
- 実際の売却価格
- 査定価格
- 同一車種、同一グレードで、同程度の走行距離の中古車の販売価格
- 同一車種、同一グレードの新車の相続開始時における小売価額から減価償却費相当額を控除した額
実際に売却した場合はその金額が相続税評価額になるので、簡単です。
高値で売れれば売却しようと考えて査定してもらったが、売却しなかった場合は、その査定価格を相続税評価額とすることができます。
売る気がまったくなく査定をしない場合は、中古車販売サイトを参照し、同一車種、同一グレードで、同程度の走行距離の中古車の販売価格を相続税評価額とするとよいでしょう。
類似の車が中古車市場にない場合は、新車の価格から減価償却費相当額が差し引いた金額を相続税評価額とすることができます。
有価証券
相続株式の評価方法(価額の計算方法)は、上場株式か非上場株式かによって異なります。
上場株式の評価方法
上場株式の評価は、終値(おわりね)によって行います。
終値とは、大引け(おおびけ。その日の最後の取引)でついた株価のことです。
次の4つのうち、最も低い株価で評価します。
- 相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値
※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値
前後が同じ近さの場合は、その平均 - 相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均
これらの終値(および終値の平均)は、被相続人が取引を行っていた証券会社の発行する残高証明書で確認することができます。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価方法は、経営権を支配する場合と支配しない場合によって異なります。
経営権を支配する場合は、さらに会社の規模によって異なります。
大会社の場合は、類似業種比準方式といって、類似した上場会社の数値を基準に計算されます。
小会社の場合は、純資産価額方式といって、相続開始日に会社を清算したと仮定して株主一人当たりの分配額で計算されます。
中会社の場合は、併用方式といって、類似業種批准方式と純資産価額方式を一定割合で折衷して計算します。
経営権を支配しない場合は、配当還元方式といって、次の式で計算されます。
(年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円)
実際のケースに当てはめてどの方式を適用すべかといった判断や、各方式による具体的な計算方式については、税理士に相談した方がよいでしょう。
投資信託の評価方法
投資信託の相続税評価額は、次の式で計算することができます。
まとめ ~相続税評価額を低く計算して節税するには?~
前述の通り、特に土地の評価には、様々な評価減の規定があり、それらを駆使することで、相続税評価額は大きく変わってきます。
不動産の評価に精通した税理士に相続税申告を依頼することによって、土地の評価減の規定を最大限に活用することができます。
税理士なら誰でもよいわけではありません。
相続財産の中で、不動産が多くの価値を占める場合は、不動産の評価に精通した税理士に相談するようにしましょう。
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この記事を書いた人
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