弁護士監修記事

特別代理人とは?未成年の我が子と共同相続の場合の遺産分割協議書案

夫(または妻)が亡くなり、未成年の我が子と共同相続人になった場合、遺産分割の場面で、自分と我が子の利益が相反することになります。

そのような場合には、我が子に対して特別代理人を選任しなければ、相続手続を進めることはできません。

特別代理人の選任を申し立てる際には、遺産分割協議書案が必要ですが、我が子に不利な内容であると認めてもらえないことがあります。

この記事では、特別代理人の制度についてわかりやすく説明するとともに、遺産分割協議書案を裁判所に認めてもらうための注意点についても説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

特別代理人とは?

特別代理人とは、本来の代理人が代理権を行使することが不適切な場合や代理人が不明な場合等に、本来の代理人に代わって代理行為を行う特別な代理人のことをいいます。

特別代理人が必要な場合

特別代理人は次のような場合に必要になります。

  1. 親権を行う父母とその子との利益が相反する場合
  2. 成年後見人と成年被後見人との利益が相反する場合で後見監督人がいない場合
  3. 法人の代表者が不明な場合

特別代理人が必要となるケースはこのほかにもありますが、この記事では最も主要なケースである1について主に説明していきます。

1に関連する具体的なケースには、次のようなものがあります。

  • 未成年者の親の一方が死亡し、もう一方の親と未成年者で遺産分割協議をする場合
  • 複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする場合
  • 親権者の債務の担保のため未成年者の所有する不動産に抵当権を設定する場合
  • 相続人である母や父が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする場合
  • 同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の申述をする場合
  • 後見人が15歳未満の被後見人と養子縁組する場合

各ケースについて例を挙げて説明します。

未成年者の親の一方が死亡し、もう一方の親と未成年者で遺産分割協議をする場合

夫(または妻)が亡くなり、未成年の我が子と共同相続人になった場合のことです。

親の相続分を増やすと子の相続分が減り、利益が相反します。

複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする場合

夫(または妻)が亡くなり、子供たちに財産を残すため自分は相続放棄をしたけども、複数いる子供同士の遺産分割協議について、すべての子供を自分が代理すると、子供同士の利益相反が生じてしまいます。

親権者の債務の担保のため未成年者の所有する不動産に抵当権を設定する場合

これは相続とは離れますが、親の借金の担保のために、子供が所有する不動産に抵当権を設定する場合は、特別代理人の選任が必要です。

相続人である母や父が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする場合

我が子のみ相続放棄をさせて、自分が相続財産を独り占めするということが勝手に行われないように、我が子だけ相続放棄させる場合は、特別代理人の選任が必要です。

同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の申述をする場合

長女には相続放棄をさせて、長男に遺産を独り占めさせるということを親が勝手に行わないように、そのようなことをしたい場合は、それが妥当であるかを判断するため、特別代理人の選任が必です。

後見人が15歳未満の被後見人と養子縁組する場合

これも相続とは関係ありませんが、親権者がいない場合、未成年者を守るために後見人が選任されます。

その後見人が判断能力の未熟な被後見人を勝手に養子にしないように、15歳未満の被後見人と養子縁組する際は、特別代理人の選任が必要です。

特別代理人選任の流れ

一般的な手続の流れは次のとおりです。

  1. 申立て
  2. 審理
  3. 書面審査
  4. 参与員の聴き取り
  5. 審問
  6. 審判(裁判官の判断)
  7. 審判結果の通知

申立てから審判結果が通知されるまで、約1か月程度かかります。

特別代理人の選任の申立て

申立てができる人

特別代理人選任の申立てができるのは、親権者利害関係人です。

未成年者自身はできません。

申立先

特別代理人の選任は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

裁判所の管轄地域は、裁判所ウェブサイトのこちらページから確認できます。

申立てに必要な費用

申立てに必要な費用には、次のものがあります。

  • 申立費用:1人につき800円(収入印紙で納付)
  • 郵便切手代:82円切手を数枚程度(裁判所からの連絡用)、詳しくは裁判所に確認
  • 予納金:数万円~十数万円(事案や財産の額によって異なる)
  • (司法書士等に依頼する場合)申立代行報酬:3万円~5万円位が多い+消費税

申立代行報酬には、通常、申立書類の収集、作成および提出等が含まれています。

申立ての必要書類

申立てには次の書類が必要です。

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)等)
  • (利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)等)

以下、それぞれについて説明します。

特別代理人選任申立書

申立書の用紙は裁判所で入手できるほか、こちらからダウンロードすることもできます。

印刷して手書きで記入してご利用ください。

なお、Word(ワード)やExcel(エクセル)の書式は公式にはないようです。

申立書の書き方については、次の記入例を参考にしてください。

未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

戸籍謄本は市区町村の役所で取得することができます。

子の戸籍謄本を取得するのに委任状は不要です。

親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本(全部事項証明書)

未成年者の親権者(多くの場合は申立人自身)の戸籍謄本も必要です。

特別代理人候補者の住民票または戸籍附票

申立書に記載した特別代理人候補者の住民票または戸籍附票が必要です。

なお、特別代理人になるのに資格は不要です。

特別代理人としての職務を適切に行えることが必要で、未成年者との関係や利害関係の有無等を考慮して適格性が判断されます。

とはいっても、多くの場合では、候補者がそのまま選任されます。

未成年者のおじ・おば(申立人の兄弟姉妹)が候補者にすることが多いようですが、血縁者でなくても構いません。

また、司法書士、行政書士等の専門家を探して候補者になってくれるように依頼しても構いません。

利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)等)

利益相反に関する資料は、事案によって必要なものが異なります。

遺産分割協議の場合

例えば、遺産分割協議の場合は、次のような資料が必要になります。

  • 遺産分割協議書案
  • 不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書
  • 預貯金等残高証明書又は通帳写し

遺産分割協議書案のひな形は以下のリンクからダウンロードしてご利用ください。

特別代理人選任申立書に添付する遺産分割協議書案のひな形(長女が未成年者のケース)

なお、特別代理人が選定され、遺産分割協議書を作成する際は、基本的には、添付した遺産分割協議書案どおりに作成しなければなりません。

ですので、実質的には、特別代理人の選定を申し立てる時には既に遺産分割協議を終えておく必要があります。

また、遺産分割協議書案の内容が未成年者に不利な(法定相続分を下回る)内容である場合には、特別代理人の選任が認められないことがあります。

しかし、親権者が未成年者の生活の面倒をすべて見ているような場合で、未成年者のためにも親権者が多くの財産を相続した方がよいと考えられる場合(例えば、遺産のほとんどが不動産で、子が幼く親が相続した方が合理的な場合等)には、未成年者の相続分が法定相続分を下回る遺産分割協議書案でも認められることもあります。

遺産分割協議書案の内容が未成年者に不利なものであった場合は、その理由について、裁判所から照会がある場合がありますが、この照会に対して、合理的な理由を示せるかどうかによって、遺産分割協議書案が認められるかどうか左右されます。

裁判所からの照会は、電話である場合もあれば、文書である場合もあります。

文書の場合はゆっくりと回答を練ることができますが、電話の場合はその場で回答しなければならないので、あらかじめ回答を整理しておくべきでしょう。

以下に、文書で照会があったときの質問文を紹介します。

電話で確認があった場合に備えて、あらかじめ回答を整理しておくとよいでしょう。

  • 遺産分割協議書(案)によると、未成年者は、遺産分割等により何も取得しないようですが、その理由を具体的に記載してください。
  • 遺産分割協議書(案)に記載された不動産の用途を記載してください。(例:自宅、賃貸物件等)
  • 遺産分割協議書(案)に記載されている申立人が取得する遺産(預貯金についてもすべて)について、それぞれの評価額を記載してください。
  • 遺産分割協議書(案)に記載された遺産以外に遺産はありますか。判明しているものだけで結構ですから、その内容を簡単にお書きください。(債務についても記載してください)
  • 上記4に記載した遺産等がある場合、どのように分割する予定ですか。各遺産ごとに具体的にお書きください。
  • 特別代理人候補者の方は遺産分割協議書(案)の内容を知っていますか。また、特別代理人候補者は、未成年者が何も遺産を取得をしないことについて、どのように言っていますか。
  • その他参考になることがあれば、ご記入ください。

なお、遺産分割協議書の書き方については、「遺産分割協議書のひな型をダウンロードして自分で簡単に作成する方法」も併せてご参照ください。

抵当権設定の場合

未成年者の所有不動産に抵当権を設定する場合は、次のような資料が必要になります。

  • 金銭消費貸借契約書
  • 金融機関との基本契約書や保証委託契約書
  • (根)抵当権設定契約書等の案
  • (根)抵当権を設定する不動産の登記簿謄本

審判結果の通知

選任が認められると、裁判所から、申立人と特別代理人に特別代理人選任審判書が送付されます。

この審判書が、代理人の資格を証する書面として、今後の手続で必要になります。

なお、選任が認められなかった場合に不服申立てはできません。

不服申立てができる審判の場合は、審判の確定証明書をもって、確定した決定であることを証明しますが、特別代理人の選任は、不服申立てができないので、審判書で十分なのです。

特別代理人の権限

特別代理人の権限は、家庭裁判所の審判で決められ、書面に記載されます。

書面に記載のない行為を代理する権限ありません。

特別代理人の任期

家庭裁判所で決められた行為が終了すると、特別代理人の任務も終了します。

まとめ

以上、特別代理人について説明しました。

特別代理人を選任してもらい、相続手続を進めるためには、遺産分割協議書案を裁判所に認めてもらわなければなりませんが、実際に遺産分割協議を作成する際にも、提出した遺産分割協議書案から内容を変更することは基本的にできません。

この時点で提出する遺産分割協議書案はとても重要で変更することが極めて難しいものになるので、なるべく弁護士や司法書士等の専門家に相談したうえで作成するとよいでしょう。

SNSで記事をシェアする