特例贈与財産は贈与税が安くなる!一般贈与財産との違いや添付書類は?
生前贈与を行うとき、財産は特例贈与財産と一般贈与財産に分けられるのをご存知ですか?
特例贈与財産とは、2015年1月1日以降に直系尊属(父母や祖父母など)から20歳以上の人(子や孫など)贈与された財産のことです。この財産にかかる贈与税率を特例税率と言います。
これに対して、特例贈与財産に該当しないものを一般贈与財産と言います。一般贈与財産の税率は特例税率に比べ高くなります。
気をつけたいのは20歳未満への贈与は税率が高くなる、ということです。つまり、贈与税額が高くなってしまいます。
この記事では、特例贈与財産と一般贈与財産について解説していきます。
土地の生前贈与をお考えの方などは是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年8月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
特例贈与財産とは?
特例贈与財産とは、2015年以降に、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の直系卑属(子や孫等)への贈与された財産のことをいいます。
特例贈与財産にかかる贈与税の額は、特例税率を適用して計算します(暦年課税の場合)。
また、特例贈与財産に該当しない贈与財産のことを一般贈与財産といいます。一般贈与財産にかかる贈与税の額は、一般税率を適用して計算します。
特例税率は、一般税率よりも低く設定されています。
つまり、特例贈与財産に該当する場合は、贈与税が安くなるのです。
特例税率の制度は、2015年からスタートしました。2014年以前の贈与については、20歳以上の直系卑属への贈与であっても、特例税率の適用を受けることはできません。
養子の場合は?
なお、養子も実子と同じく直系卑属ですので、養子が受けた贈与も特例贈与財産となりえます。
そして、養子の子が直系卑属であるかどうかは、養子縁組と養子の子の出生のどちらが早いかによって結論が異なります。
養子縁組後に養子に子が産まれた場合は、養子の子は、養親の直系卑属となります。出生後に親が養子となった場合は、養子の子は、養親の直系卑属とはなりません。
相続問題でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください
特例贈与財産にかかる贈与税の計算方法
特例贈与財産用の税率(特例税率)の速算表
特例贈与財産用にかかる贈与税の計算には、以下の特例税率の速算表を用います。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
この速算表を利用した贈与税の計算方法について、設例を元に説明します。
事例
例えば、30歳のAさんが、ある年の1年間に父母や祖父母といった直系尊属から受けた贈与の総額が1,000万円であったとします。Aさんは、どの贈与者からの贈与についても暦年課税を選択したとします。
1,000万円から暦年課税の基礎控除額110万円を控除すると、「1,000万円-110万円=890万円」となります。
贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の人が直系尊属から贈与された財産は特例贈与財産に該当するので、特例税率の速算表に沿って贈与税額を計算します。
890万円は、「600万円超1,000万以下」に該当するので、税率30%と控除額90万円を適用します。そうすると、「890」が贈与税額となります。
一般贈与財産用の税率(一般税率)の速算表
なお、一般贈与財産用の税率(一般税率)の速算表は次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
200万円超300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与財産が300万円を超える場合は、特例税率が一般税率よりも低くなっています。
事例
特例贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合の贈与税の計算方法についても説明します。
Aさんは、ある年の1年間に、直系尊属から600万円、直系尊属以外の人から400万円、合計1,000万円の贈与を受けたとします。
この場合は、特例贈与財産と一般贈与財産の両方があることになります。
その場合は、次の手順で計算します。
- すべての財産を「一般税率」で計算した税額に占める「一般贈与財産」の割合に応じた税額を計算します。
- すべての財産を「特例税率」で計算した税額に占める「特例贈与財産」割合に応じた税額を計算します。
- 1で算出した税額と、2で算出した税額を合計して、贈与税額を計算します。
※1と2はどちらを先に計算しても構いません。
上記の事例をこの計算手順に当てはめて計算してみましょう。
まず、1の税額を計算します。
最初に、すべての財産を一般税率で計算します。
基礎控除後の課税価格890万円(=1,000万円-110万円)を一般税率の速算表に当てはめると、600万円超1,000万円以下の行を見ればよいので、税率が40%で、控除額が125万円であることが分かります。
そうすると、すべての財産を一般税率で計算した税額は、「890万円×40%-125万円=231万円」となります。そして、この231万円に占める一般贈与財産の割合に応じた税額を計算します。
Aさんがその年に贈与を受けた1,000万円のうち、一般贈与財産は、直系尊属以外の人から受けた400万円なので、1の税額は、「231万円×400万円/1,000万円=92万4千円」となります。
続いて、2の税額も同様に計算すると、「177万円×600万円/1,000万円=106万2千円」となります(177万円は、特例税率の速算表に沿って「890万円×30%-90万円=177万円」と計算できます)。
3に進んで、Aさんがその年に納めるべき贈与税額は、「92万4千円+106万2千円=198万6千円」となります。
特例贈与財産がある場合の贈与税申告時の添付書類
特例税率の適用を受ける場合は、贈与税の申告書等とともに、財産の贈与を受けた人の戸籍の謄本又は抄本その他の書類でその人の氏名、生年月日及びその人が贈与者の直系卑属に該当することを証する書類を提出する必要があります。
親から贈与を受けた場合は、受贈者(贈与を受けた人)の戸籍謄本を添付するとよいでしょう。
祖父母から贈与を受けた場合は、受贈者の戸籍謄本では祖父母の情報が記載されていないので、受贈者の親(=贈与者である祖父母の子)の戸籍謄本を添付するとよいでしょう。
なお、親の戸籍謄本は、委任状がなくても交付を受けることができます。
戸籍謄本は本籍地の役所で交付を受けることができます。郵送で交付を受けることも可能です。
なお、税理士に贈与税の申告を依頼する場合は、戸籍謄本の取得も税理士が代行してくれます。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続