弁護士監修記事
養子縁組を解消する方法と養子縁組の解消で損しないためのお金の話

養子縁組を解消したい場合はどうすればよいのでしょうか?
この記事では、養子縁組を解消する方法と、解消の効果、慰謝料や財産分与などのお金の話、それから、解消後の苗字や戸籍について説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
養子縁組の解消とは?解消とするどうなる?
養子縁組の解消とは、養子縁組による親子関係を解消することを意味します。
親子関係を解消するということは、親子関係に基づく様々な権利義務関係が無くなるということになります。
また、養親子関係が解消されることによって、養方の親族との親族関係も解消されます。
例えば、相続権や扶養を受ける権利、扶養する義務などが無くなります。
しかし、養子縁組の解消は、既に生じている相続には影響しません。
また、養子が未成年者の場合は養親が親権者ですが、養子縁組が解消されると親権は実親に戻ります。
養子の氏も原則として縁組前の氏に戻ります。
養子縁組を解消するには手続きが必要
養子縁組は離縁によって解消されます。
離縁するには、養親と養子(養子が15歳未満の場合は離縁後にその法定代理人となる人)が離縁に同意するか、裁判で離縁の請求が認められるかした後に、養子離縁届を役所に提出して受理されなければなりません。
どのような場合でも、養子縁組が自然と解消されることはないのです。
養親や養子が亡くなった場合でも死後離縁の手続きが必要ですし、実親の配偶者(実親ではない)と養子縁組し、その後、実親と養親が離婚した場合でも養親縁組は離縁によらなければ解消されません。
離縁しなければ離婚しても養育義務がある
例えば、Aの連れ子であるBとAの再婚相手であるCが養子縁組をして、その後、AとCが離婚し、AがBを引き取ったとします。
このような場合でも、CとBとの養親子関係は継続し、CはBの扶養義務を負うため、養子が未成年者であれば、AはCに対して養育費を請求することが可能です。
Cが養育費の支払いを免れるためには、Bとの離縁が必要です。
離縁の流れ
離縁協議
まずは離縁について、養親側と養子側で協議します。
養子が15歳以上の場合は養子自身で協議し、養子が15歳未満の場合は離縁後に法定代理人となるべき人が養子に代わって協議に参加します。
離縁後に法定代理人になるべき人とは、基本的には実の父母です。
実の父母が離婚している場合は、どちらが親権者になるかを父母の間で協議します。
どちらが親権者になるかの協議が調わない場合や協議することができない場合は、どちらが親権者になるか家庭裁判所が審判することができます。
実の父母が両方とも亡くなっている場合等のように法定代理人となるべき人がいない場合は、家庭裁判所が未成年後見人を選任することができます。
養親が夫婦であり、養子が未成年の場合は、離縁の際も行方不明等の特殊な事情がない限り夫婦揃ってでなければなりません。
離縁調停
離縁協議が調わない場合や協議することができない場合は、離縁調停を申立てます。
申立てをすることができる人は、養親か養子(15歳未満の場合は離縁後の法定代理人が代理)です。
申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所です。
全国の家庭裁判所の管轄区域は、裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」のページから調べることができます。
申立てに必要な費用は、1200円分の収入印紙と裁判所からの連絡用の郵便切手です。
申立てに必要な書類は次の通りです。
- 家事調停申立書とそのコピー
- 当事者目録とそのコピー
- 養親の戸籍謄本
- 養子の戸籍謄本
- 養子が未成年者の場合、離縁後に親権者となる人の戸籍謄本
家事調停申立書と当事者目録の用紙は家庭裁判所で取得できますが、以下のリンクからダウンロードし、印刷して利用しても構いません。
記入に当たっては、こちらの記入例をご参照ください。
調停で離縁することが決まれば、調停謄本が作成されるので、交付を申請します。
調停謄本は役場で養子離縁届をする際に必要です。
調停成立から10日以内に届出しなければなりません。
離縁裁判
調停が不成立の場合は、離縁裁判(離縁請求の訴え)を起こすことができます。
裁判で離縁が認められるためには、少なくとも次のいずれかの事由に該当しなければなりません。
- 相手方から悪意で遺棄されたとき
- 相手方の生死が三年以上明らかでないとき
- その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
相手方に悪意で遺棄されていたり、相手方の生死が三年以上不明である場合でも、裁判所は一切の事情を考慮して縁組の継続を相当と認める場合は離縁の請求を棄却することができます。
結審すると、判決が言い渡され、判決書が双方に郵送されます。
離縁を認める判決が得られた場合は、判決省略謄本と確定証明書の交付を受けます。
判決省略謄本と確定証明書は、役場で養子離縁届をする際に必要になります。
判決から10日以内に届出しなければなりません。
死後離縁
養子縁組の当事者である養親と養子の一方が死亡しても、養親子関係が自然と解消されることはなく、離縁するためには家庭裁判所の許可が必要です。
養子縁組の当事者の一方の死亡後にする離縁のことを死後離縁と言います。
死後離縁許可の申立ては、生存している養子縁組の当事者が申し立てることができます。
申立人が15歳未満の場合は、離縁した後にその法定代理人となる実父母等が、代わって手続を行います。
申立先は、申立者の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てに必要な費用は、800円分の収入印紙と、裁判所からの連絡用の郵便切手です。
申立てに必要な書類は、基本的には、次の3点です。
- 家事審判申立書
- 養親の戸籍謄本(死亡している場合は死亡の記載のある除籍謄本または改製原戸籍謄本)
- 養子の戸籍謄本(死亡している場合は死亡の記載のある除籍謄本または改製原戸籍謄本)
家事審判申立書の用紙は家庭裁判所で取得できますが、こちらのリンクからダウンロードし、印刷して利用しても構いません。
記入に当たっては、こちらの記入例をご参照ください。
戸籍謄本類は本籍地の市区町村役場で取得することができます。
郵送で取得することも可能ですので、役場のウェブサイト等で取得方法を確認するとよいでしょう。
死後離縁許可が審判されると、審判書謄本と確定証明書の交付を受けることができます。
審判書謄本と確定証明書は、養子離縁届をする際に必要です。
なお、死後離縁しても、既に生じている相続には影響しません。
養子離縁届
離縁することが決まったら、養子離縁届を市区町村の役場に提出します。
届出は、届出人の住所地か本籍地で行います。
届出人は、協議離縁の場合は、養親と養子(15歳未満の場合は離縁後の法定代理人)、死後離縁や裁判離縁の場合は申立人(原告)です。
届書を持参する人(届出人とは違います)は誰でも構いません。委任状も不要です。
郵送で提出することもできます。
届書は役場の戸籍係で入手できますが、役場がウェブで公開している場合もあり、印刷して利用しても構いません。
札幌市が公開している届書を紹介しておきます(特別養子の場合は、特別養子離縁届をご使用ください)。
用紙は市区町村によって多少の違いはありますが、全国共通で使用できます。
A3で印刷して(またはA4で印刷後A3に拡大コピー)、ご利用ください。
印刷して利用する場合は滲みがあったりすると受理されないことがあるかもしれないので注意しましょう。
養子離縁届の記入に当たっては、以下の東近江市作成の記入例が参考になるでしょう。
まずは、一般的な記入例をご紹介します。
次に、再婚した配偶者の嫡出子と離縁する場合の記入例を紹介します。
次に、母の再婚後の夫と離縁し、同時に母の離婚後の戸籍に入籍する場合の記入例を紹介します。
最後に、母の再婚後の夫と離縁し、母が離婚し、離婚の際に称していた氏を称する届により新戸籍がつくられていて、同時にその戸籍に入籍する場合の記入例を紹介します。
署名欄以外は誰が書いても構いません。
書き方が分からなければ行政書士等に代筆(代書)を依頼することもできます。
届出人が署名することができない場合は、署名も代書することができますが、その場合は、書面にその事由を記載しなければなりません。
なお、届出の方法の詳細については、役場によって異なるケースがあるので、提出先の役場の戸籍係でご確認ください。
勝手に養子離縁届を出された場合の対処法
養子離縁届を提出すると、持参した本人以外の届出人に通知がいきます。
その通知によって勝手に届を出されたことを知ることができます。
通知があっても無視して何も行動を起こさないでいると、追認したものとみなされ、離縁が有効になってしまいます。
勝手に離縁届を出された場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
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離縁に対する慰謝料と離縁時の財産分与
離縁に際しして、一方から他方に慰謝料や財産分与を請求することができるのでしょうか?
当事者の合意があれば、一方から他方に対して、慰謝料を支払ったり、財産を分け与えることは自由です(その場合には税金の納付が必要となる可能性があるのでご注意ください。)。
当事者の合意がない場合は、最終的には裁判で争うことになりますが、慰謝料や財産分与の請求が、裁判で認められることはあるのでしょうか?
また、認められるとすればどのような場合なのでしょうか?
離縁に対する慰謝料
まず、慰謝料については、離縁に至った原因について、一方の責任が大きい場合には、請求が認められる可能性があります。
それでは、離縁に至った責任について、どのように判断されるのでしょうか?
前述の通り、次のいずれかに該当する場合に、裁判離縁が認められる可能性がありますが、これらに該当する場合は、慰謝料についても認められる可能性があります。
- 相手方から悪意で遺棄されたとき
- 相手方の生死が三年以上明らかでないとき
- その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
慰謝料の算定に当たっては、破綻原因、有責割合、縁組(同居)期間、収入、資産、年齢等の諸般の事情が考慮されます。
金額は離婚の慰謝料よりも通常は低くなるでしょう。
慰謝料は個々の事案によって様々な総合的な判断が下されるため、明確な相場を提示することは困難です。
離縁に対する慰謝料請求を検討する場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
無料相談を実施している弁護士もいるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
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離縁時の財産分与
また、財産分与については、財産分与というかたちでは、裁判で請求が認められることは難しいでしょう。
しかし、財産形成に対する養子の寄与が極めて大きく、かつ明確に評価できるような場合には、養親に対する不当利得の返還請求が認められる余地はあります。
また、養親名義の財産が実質的には養親と養子の共有である場合は、持分が認められる余地はありそうです。
離縁後の養子の苗字
養子縁組を解消すると、養子の苗字(氏)は原則として、縁組前の苗字に戻ります。
縁組を7年以上していた場合は、縁組時の苗字を引き続き使用することも可能です。
その場合は、「離縁の際に称していた氏を称する届」を役場に提出します。
この届を出す場合は、離縁成立後、3か月以内でなければなりません。
離縁すると戸籍はどうなる?
養子が養親と同じ戸籍にいる状態であれば、離縁によって養子は縁組前の戸籍に戻ることになります。
戻る戸籍が除かれている場合は新しい戸籍を編製しますが、戻る戸籍が存在していても、新しい戸籍を編製することもできます。また、離縁時の苗字をそのまま使用する場合にも新しい戸籍の編製が必要となります。
まとめ
以上、養子縁組の解消について説明しました。
養子縁組の解消を巡ってトラブルになっている場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
また、役所の手続き方法について不明な点は役所に相談し、書類の作成等の手続きについて依頼したい場合は行政書士に相談しましょう。
裁判所での手続きについては、弁護士に相談しましょう。
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