税理士監修記事

名義預金にかかる相続税と贈与税、名義預金とみなされないための対策

この記事では、相続税対策を検討するうえで避けることのできない、名義預金について説明します。

名義預金についての正しい知識を身に付けて、相続税対策で損しないようにしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

名義預金とは?

名義預金とは、口座名義人と真の預金者が異なる預金のことで、借名預金と呼ばれることもあります。

例えば、口座名義人は子供でも、実際には親が口座を管理していて真の預金者は親である場合、その預金は名義預金です。

名義預金と認定されると、何がまずい?

通常は預金の所有者は口座名義人ですが、名義預金の所有者は口座名義人ではなく真の預金者です。

つまり、親が子供名義の口座に毎年入金しても、親から子供への贈与は成立していないことになります。

贈与の成立が否定されると、次の2つのデメリットがあります。

  • 暦年贈与による相続税対策が無効になる
  • 贈与税の時効の成立が否定される

以下、それぞれについて説明します。

暦年贈与による相続税対策が無効になる

暦年贈与とは、暦年課税の適用を受ける贈与のことです。

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に取得した贈与財産に対して贈与税を課す制度です。

暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。

この暦年課税の基礎控除を活用して、例えば、親が年間110万円ずつ20年間にわたって子供に贈与すると、110万円×20年=2200万円となり、合計2200万円を税負担なく子供に譲り渡すことできます。

しかし、子供名義の口座であっても、親が通帳、届印、キャッシュカードを管理していて、子供が自由に引き出して使用することができない状況であった場合や、入金を子供に伝えていなかった場合は、贈与が成立したと認められずに、親の名義預金となり、相続税の課税対象となってしまいます。

なお、暦年贈与について詳しくは「非課税で暦年贈与する方法と暦年贈与のつもりでも課税されるケース」をご参照ください。

贈与税の時効の成立が否定される

贈与税は、その申告及び納付の期限の日から、長くても7年が経過すると、時効にかかり免税されます。

しかし、やはり、親が通帳、届印、キャッシュカードを管理していて、子供が自由に引き出して使用することができない状況であった場合や、入金を子供に伝えていなかった場合は、贈与が成立したと認められません。

贈与が成立していなければ、贈与税の対象ではなく、贈与税の時効が成立することもありません。

結果、名義預金として、相続税の課税対象となります。

贈与税の時効について詳しくは「贈与税の時効によって免税されるケースと免税されないケース」をご参照ください。

名義預金は相続税の税務調査でばれる

税務署は口座の出入金を把握することはできても、その原因については調査をしない限り把握できません。

贈与でなければ、当然、贈与税の対象とならないので、税務調査をしなければ贈与税の申告漏れを指摘することはできないのです。

税務署もマンパワーに限りがありますから、一つ一つの入金に対して逐一調査を行うことはできません。

税務調査が高確率で行われるのは、相続税の申告後です。

相続税の申告後に行われる税務調査の際に、被相続人(亡くなった人)からかつて受けた贈与の贈与税の申告漏れが発覚するのです。

贈与を受けてから贈与者が亡くなって税務調査が入るまでの間に、既に時効期間が経過していることもありますが、そのような場合でも、そう簡単には税務署が時効の完成を認めてくれることはありません。

受贈者が時効が完成した贈与財産と主張する財産について、税務署は本当は被相続人の名義預金ではないかと疑うのです。

名義預金の認定基準

それでは、どのような場合に名義預金とされてしまうのでしょうか?

この点、このような場合は名義預金となり、このような場合は名義預金とならないというような、一般の人でも判断できるような明確な基準があるわけではなく、次のような点から総合的に判断されることになります。

  • 預金の原資を拠出したのは誰か
    ⇒原資の拠出者が口座名義人でない場合は名義預金とされやすいが、贈与が成立していれば名義預金とはならない
  • 預金の管理者は誰か
    ⇒通帳、届印、キャッシュカードの管理者や登録された住所の居住者が口座名義人でない場合は名義預金とされやすい
  • 生じた利益を受け取って申告しているのは誰か(有価証券等の場合。預金の場合は関係ない)
    ⇒利益の受領者や税の申告者が名義人でない場合は、名義財産とされやい
  • 口座名義人になった経緯
    ⇒口座名義人が自ら口座を開設していない場合は名義預金とされやすい

名義預金と認定されるケース

裁判で名義預金と認定されたケースの一例として、次のものがあります。

  • 夫から受け取った毎月の生活費の残金を少しずつ臍繰り(へそくり)として貯めたケース
  • 子や孫の名義で定期積立預金をしていたケース
  • 夫婦それぞれの口座を持っているが、資金移動がある等、それぞれの口座にある預金がそれぞれの所有財産ではないケース(預金の一部を名義預金と認定)
  • 口座名義人以外の人が所有する賃貸不動産の賃料や有価証券の配当や運用益が入金されているケース
  • 子供が家に入れたお金や親に預けていたお年玉等を親がこっそり子供名義の口座に積み立てていたケース

名義預金と認定されることを回避するための対策

名義預金と認定されることの回避策として、特に重要なポイントは、次の2点です。

  • 口座名義人が自由に預金を引き出して使用することができる状態であること(通帳、届印、キャッシュカードを口座名義人が管理していること)
  • 預金原資の拠出者が口座名義人でない場合は、贈与が成立していること(口座名義人が贈与を受けたことを認識していること)

贈与が成立していることを税務署に認めてもらいやすくするためには、贈与の度に贈与契約書を作成することが重要です。

贈与契約書について詳しくは「贈与契約書の注意点とすぐに使える豊富な種類のひな形一覧(Word、PDF)」をご参照ください。

また、当然ながら、暦年課税の基礎控除額(110万円)を超える額の贈与を受けた場合は、贈与税の申告と納付が必要です。

基礎控除額を超える額の贈与を受けたにもかかわらず贈与税を申告していない場合は、贈与ではなかった(=名義預金)と認定される可能性があります。

名義預金は遺産分割の対象

名義預金かどうかが問題となるのは、税務調査の時ばかりではありません。

遺産分割時にも名義預金かどうかが問題となることがあります。

名義預金ではなければ名義人の財産であり相続財産ではないので遺産分割の対象ではありませんが、被相続人の名義預金は相続財産なので遺産分割の対象となります。

それで、名義人は名義預金でないと主張し、名義人以外の相続人は名義預金であると主張し、互いに譲らずトラブルとなることがあるのです。

当事者間の協議で結論が出ない場合は、遺産分割調停の場で調停委員を介して協議したり、遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)を提起して裁判で争われることになります(遺産分割調停について詳しくは「遺産分割調停前に知っておくべき調停を有利に進める方法と調停の流れ」参照)。

なお、遺産分割審判には、相続財産の範囲については既判力(裁判所の判断の効力)がないとされているので(最高裁判所昭和41年3月2日大法廷判決)、名義預金かどうかを確定するために遺産分割審判を申立てようとしても、遺産確認の訴えを提起するように促されるでしょう。

また、名義預金について遺産分割の対象とした場合は、遺産分割協議書にも記載しておくべきです(遺産分割協議書については「遺産分割協議書のひな形をダウンロードして自分で簡単に作成する方法」をご参照ください)。

遺産分割協議書の記載例としては、次のようなかたちが想定されます(あくまで一例)。

1.甲は、以下の遺産を取得する

(1)預貯金

〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
口座名義人 〇〇〇〇

通常は、口座名義人欄には被相続人の氏名が記載されることになりますが、名義預金の場合は、口座名義人欄に被相続人でない人の氏名が記載されることになります。

なお、遺産分割協議によって口座名義人ではない人が名義口座を取得することも可能です。

名義預金の解約手続きと税金

名義預金の解約手続きや税金の取り扱いは、真の預金者の相続が開始しているかどうかよって異なります。

相続開始前の解約

真の預金者が存命の場合は、口座名義人が金融機関で解約手続きをすることになります。

預金を口座名義人が取得する場合は、預金は贈与税の課税対象となります。

複数年に渡って入金されていたとしても、解約した年に一括贈与を受けたことになり、暦年課税の基礎控除は、解約した年の分(110万円)のみ適用されます。

また、名義預金を解約して真の預金者の元に戻すことも可能です。

その場合、贈与税の課税対象とはなりません。

相続開始後の解約

真の預金者の相続開始後に解約する場合、名義預金であることを金融機関に告げずに口座名義人が解約することもできるとは思いますが、名義預金として遺産分割の対象としたのであれば、遺産分割協議書等の必要書類を金融機関に持参し、相続手続きとして解約手続きを行った方がよいでしょう。

名義預金として取得した財産は、他の遺産と同様に相続税の課税対象となります。

まとめ

以上、名義預金について説明しました。

前述の通り、どういったケースで名義預金になって、どういったケースで名義預金にならないかというのは、一義的に判断できるものではありません。

名義預金を相続財産に算入していないと加算税が課されるので、初めから名義預金は相続財産に算入して申告すべきです。

しかし、名義預金にしなくてもよいのに名義預金としてしまうと、その分、相続税が高くなってしまうことがあり、損してしまいます。

申告後に更正の請求をして、払い過ぎた相続税を取り戻すこともできますが、その場合の立証責任は請求者に移ります。

つまり、相続税の申告時に名義預金として相続財産に組み込んでいない預金について、税務調査の際に税務署が名義預金と認定するためには、税務署が名義預金であることを立証しなければならないのに対し、一度、名義預金として申告したものを、後から名義預金ではなかったとするためには、申告者の方が名義預金ではないことを立証しなければならなくなるのです。

したがって、間違っていても後から訂正すればよいと考えず、相続税の申告前に、どこまでが贈与財産で、どこからが名義預金か慎重に検討すべきです。

この点、名義預金についての知識と経験に乏しい税理士に依頼してしまった場合は、セーフティに行き過ぎて、名義預金としなくてもよいものを名義預金として、相続税が高くなってしまう可能性があります。

当サイト等を活用し、相続税対策に精通した税理士を探して、相談してみることをお勧めします。

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一度、気軽に相談してみるとよいでしょう。

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