代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識
祖父母が親よりも先に亡くなることが多いですが、その場合は「祖父母の遺産を親が相続し、親が亡くなると自分と兄弟が相続する」というように、財産は下の世代に脈々と引き継がれていきます。
では、祖父母よりも先に親が亡くなった場合はどうなるの?祖父母の財産を自分が相続することもできる?
このように、亡くなる順番が異なるだけで他の孫との間に不公平が生じる可能性があるのですが、そのような不公平が生じないように「代襲相続」という仕組みが備わっています。
ただし、この仕組みはちょっと複雑。同様のケースでお悩みの方は、行政書士など相続の専門家に相談するのが、悩み解決の一番の近道かもしれません。
この記事では、大切な遺産を引き継ぐべき人が引き継ぐことができるように、代襲相続の仕組みをわかりやすく説明しますが、専門士業に相談することも検討してみてください。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年6月17日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
代襲相続とは?読み方は?
代襲相続とは、簡単に言うと、前述の通り、祖父母よりも先に親が亡くなったような場合に、祖父母の遺産を孫が相続できるようにするための制度で、「だいしゅうそうぞく」と読みます。
代襲相続人とは?被代襲者とは?
始めに4つの用語を説明しておきます。
相続人とは、財産を相続する人のことです。
被相続人とは、相続される人(財産を残す人)のことです。
被代襲者とは、本来相続人になるはずでしたが、被相続人よりも先に亡くなり、相続人になれなかった人、代襲された人のことです(前述の例でいうと親)。
代襲相続人とは、代襲相続によって、相続人になった人のことです(前述の例でいうと孫)。代襲相続人は、基本的には、被代襲者の子に当たります。
兄弟姉妹の代襲相続はできる?甥姪に代襲相続する権利はある?
代襲相続には基本的に2つしかありません。
ひとつは、先ほどから登場している、被代襲者が被相続人の子(代襲相続人は被相続人の孫)というパターンで、もうひとつは、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹(代襲相続人が被相続人の甥・姪(おい・めい)というパターンです。
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再代襲相続とは?
代襲相続人は、基本的には、被代襲者の子に当たりますが、被代襲者の孫が代襲相続する場合もあります。
それは、被代襲者の子も亡くなっていて、その子の子(被代襲者の孫、被相続人の曾孫(ひまご))がいる場合です。
なお、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合は、現在、再代襲相続はできません。
1980年以前は被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合の再代襲相続も認められていましたが、1981年から民法が改正され、認められなくなったのです。
ですので、1980年以前に生じた相続については、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合の再代襲相続も原則として認められます。
養子でも代襲相続できる?養子の子は?
養子関係が絡んできた場合の代襲相続の可否について説明します。
次のようなケースでは、それぞれ代襲相続は認められるのでしょうか?
- 被代襲者が被相続人の養子である場合
- 代襲相続人が被代襲者の養子である場合
- 被相続人の子が被代襲者の養子である場合、被代襲者の子が被相続人の養子である場合
- 被相続人の子が養子に出た場合
以下、それぞれについて説明します。
被代襲者が被相続人の養子である場合
被代襲者が被相続人の養子の場合は、被代襲者の子は代襲相続できるのでしょうか?
実は、代襲相続ができるケースとできないケースがあります。
代襲相続ができる場合は、子の出生前に養子となった場合です。
代襲相続できない場合は、子の出生後に養子となった場合です。
なお、被代襲者の養子縁組によって兄弟姉妹になった人が被相続人の場合でも、被代襲者が相続人となるケースであれば、被代襲者の子は、代襲相続人になることができます。
しかし、被代襲者が片親とのみ養子縁組を結んでいた場合は、一般の兄弟姉妹に比べて相続分は半分になります。
代襲相続人が被代襲者の養子である場合
このケースは問題なく代襲相続が可能です。
ただし、被代襲者Aが亡くなった後に、Aと死別したAの生前の配偶者がBを養子にした場合は、Bの子は代襲相続することはできません。
被相続人の子が被代襲者の養子である場合
少し複雑なケースですが、長男に子供がいない場合、末の弟を長男の養子にすることがあります(最近は稀になったケースでしょうが)。
そうすると、兄の養子になった弟は、養親である実の兄が亡くなった後に、養子縁組後の祖父である実の親が亡くなった場合に、実子としての相続人の地位と、被代襲者の子としての代襲相続人の地位の両方をもつことになります。
そのような場合に、両方の立場で相続財産の二重取りができるのでしょうか?
答えは、二重取りができます。
他の兄弟姉妹の倍の財産を受け取ることができます。
なお、相続税の基礎控除を算出する際の法定相続人の数にはダブルカウントせずに一人として数えます(詳しくは後述)。
また、反対に、被代襲者の子が被相続人の養子である場合(つまり、孫を養子にした場合)も、同様に二重取りが可能です。
被相続人の子を養子に出していた場合
被相続人Aの子Bを養子に出し、BがAよりも先に亡くなり、次にAが亡くなったケースで、Bに子Cがいた場合、CはAの遺産を代襲相続できるのでしょうか?
答えは、普通の養子縁組によるものか、特別養子縁組によるものかによって異なります。
普通の養子縁組によるものであれば、代襲相続ができます。
特別養子縁組によるものであれば、代襲相続できません。
特別養子縁組で養子に出した子に実親の遺産の相続権がないためです。
また、先ほどの例で、AにBの他に子供D(Bの実の兄弟姉妹に当たる)がいて、Dが亡くなった場合、Bが生きていれば相続人となるケースであれば、CはDの遺産を代襲することもできます(Bが普通養子縁組の場合のみ)。
また、反対にDがBよりも先に亡くなっていた場合は、Dの子はBの遺産を代襲相続することができます(同様にBが普通養子縁組の場合のみ)。
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配偶者の死亡後に配偶者の親が死亡した場合に代襲相続できる?
代襲相続できるのは子のみです(再代襲の場合は孫)。
被代襲者の配偶者は代襲相続人になれないので、このケースでは代襲相続できません。
代襲相続と数次相続との違い
代襲相続と似たものに数次相続があります。
数次相続とは、遺産分割協議や移転登記が終わらないうちに、相続人の一人が死亡して、次の新たな相続が生じるケースのことです。
初めの被相続人の死亡による相続を一次相続、一次相続の相続完了前に相続人が死亡することによってさらに生じる相続を二次相続、同様に二次相続の完了前に次の相続が生じれば三次相続といい、以降、四次相続、五次相続と数字が増えていきます。
代襲相続との違いは、代襲相続は、被代襲者が被相続人よりも先に亡くなった場合ですが、数次相続は被相続人の方が先に亡くなった場合です。
代襲相続では被代襲者の子のみ(再代襲の場合は孫)が代襲相続人ですが、数次相続の場合は、通常通り法定相続人が相続できます。
つまり、代襲相続の場合は、被代襲者の配偶者、直系尊属(親、祖父母等)、兄弟姉妹は代襲相続人になれませんが、数次相続の場合は、二次相続の被相続人の配偶者、直系尊属、兄弟姉妹も相続人となって、一次相続の相続財産を相続することができます。
親が欠格や廃除で相続権を失っている場合に代襲相続できる?
これまで説明してきたように、被代襲者Aが被相続人よりも先に亡くなった場合は、Aの子Bは代襲相続できます。
それでは、Aが亡くなっておらず、欠格や廃除によって相続権を失っている場合にBは代襲相続できるのでしょうか?
まず、欠格と廃除について説明します。
相続欠格とは、相続人に不正な事由が認められる場合に相続権を失わせる制度で、原則として、次に該当する場合に相続欠格となります。
- 故意に被相続人、先順位・同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者
- 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
- 詐欺・強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
- 詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者
相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿した者※故意に隠匿・破棄しただけではなく、隠匿・破棄により相続に関して不当な利益を得る目的を有していたことが必要であると解されています。
相続廃除とは、相続人に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に「推定相続人廃除審判申立て」を行うことによって相続権を失わせる制度です。
被相続人を虐待した場合や、被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合等に相続廃除が認められる場合があります。
上述の事例の答えは、Bは代襲相続できるが正解です。
ちなみに、B自身が相続欠格や相続廃除に該当する場合は、相続できません。
相続放棄によって代襲相続は生じる?
プラスの財産よりも、借金等のマイナスの財産の方が多い場合、相続放棄をすることによって、すべての財産の相続を放棄することができます。
この相続放棄と代襲相続の関係について、次の点が問題になることがあります。
- 親が相続放棄すると代襲相続が生じるか?
- 被相続人の子や親が相続放棄し、兄弟姉妹に相続順位が回ってきたが、既に亡くなっている場合、代襲相続が生じるか?
- 親の財産を相続放棄しても、その親の親の財産を相続できるか?
以下、それぞれについて説明します。
親が相続放棄すると代襲相続が生じるか?
例えば祖父が亡くなり、親が相続放棄をしても、自分が代襲相続人になることはありません。
相続放棄すると次の相続順位の人に相続権が移ります。
例えば、被相続人の子の全員が相続放棄をすると被相続人の親に、被相続人の親の全員が亡くなっていたり相続放棄をすると被相続人の兄弟姉妹に、それぞれ相続権が移ります。
被相続人の子や親が相続放棄し、兄弟姉妹に相続権が回ってきたが、既に亡くなっている場合、代襲相続が生じるか?
それでは、被相続人の子や親が相続放棄したことによって、被相続人の兄弟姉妹Aに相続権が回ってきた場合に、Aが既に亡くなっていたら、Aの子Bは代襲相続できるのでしょうか?
その答えはイエスです。
なお、代襲相続者であるBも相続放棄することができます。
親の財産を相続放棄しても、その親の親の財産を代襲相続できるか?
親が亡くなった時に相続放棄していても、その親の親(祖父母)が亡くなった時に代襲相続することができるのでしょうか?
その答えはイエスです。
何ら問題ありません。
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代襲相続の場合、相続割合はどうなる?
代襲相続人、被代襲者の相続割合を引き継ぎます。
被代襲者の相続割合が1/2であれば、代襲相続人も1/2になります。
代襲相続人が複数いる場合は、代襲相続人間で被代襲者の相続分を分け合うことになります。
例えば、被代襲者の相続割合が1/2で、代襲相続人が3人いる場合は、各代襲相続人の相続割合は1/6になります。
代襲相続の場合、遺留分はどうなる?
被相続人とどのような関係の人がどの割合で相続するかという相続割合は明確に法律で定められていますが、有効な遺言書がある場合は、基本的には遺言書の内容に沿って遺産分割が行われます。
しかし、被相続人と近い間柄の人が遺言によってまったく遺産をもらえなくなってしまうのはかわいそうなので、遺言がある場合でも最低限もらえる相続割合が法律で定められています。
これを遺留分と言います。
遺留分は、すべての法定相続人にあるわけではありません。
配偶者、子、親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。
そして、代襲相続人に遺留分があるかどうかは、被代襲者に遺留分があるかどうかによります。
ですので、被代襲者が被相続人の子である場合は、その代襲相続人にも遺留分があり、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合は、その代襲相続人には遺留分がないというわけです。
なお、子の遺留分は法定相続分の半分です。
ですので、例えば、法定相続人が配偶者と子1人であった場合は、子の法定相続分は1/2のであるので、遺留分はそのさらに1/2で、相続財産の1/4というわけです。
これに代襲相続人が3人いるとすれば、各代襲相続人の遺留分は1/12になります。
代襲相続人がいる場合の遺産分割協議書の書き方
代襲相続人も当然ながら遺産分割協議に参加することができます。
遺産分割協議がまとまったら、後々もめないように、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書の末尾には、すべての相続人の住所、氏名を記して、それぞれ実印で捺印を行います。
(例)
東京都○○区○○町〇丁目〇番〇号
甲山 一郎 (実印)
このときに、代襲相続の場合は、被代襲者の氏名も併記します。
(例)
東京都○○区○○町〇丁目〇番〇号
(被代襲者 甲山 花子)
甲山 一郎 (実印)
遺産分割協議書をご自身で作成するのは骨の折れる作業かもしれません。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
代襲相続人がいる場合、相続税の基礎控除額はどのように計算する?
相続税の基礎控除額は、法定相続人の人数によって異なります。
そこで、代襲相続人は税法上の法定相続人としてカウントすべきかどうかが問題となります。
結論としては、代襲相続人もカウントします。
代襲相続人が複数いる場合も、その人数分をカウントします。
なお、被代襲者はカウントしません。
代襲相続人は相続税の2割加算の対象となる?
相続などによって遺産を取得した人が、被相続人の配偶者、子、子の代襲相続人である孫以外の場合は、相続税が2割加算されます。
ですので、被代襲者が被相続人の子の場合は、代襲相続人に対して、相続税の加算は発生しません。
被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合は、2割加算の対象となります。
代襲相続で必要となる書類
代襲相続で必要となる書類は次の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
- 被代襲者の出生から死亡までの戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
- 代襲相続人全員の戸籍(戸籍謄本、戸籍全部事項証明書)
これらの書類は、本籍地の役所で交付を受けることができます。
役所に行って交付を受けることもできますし、郵送で取り寄せることも可能です。
この記事を書いた人
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