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遺言書で遺言執行者を指定することは、よいアイディアです。
遺言執行者は、司法書士等の専門家と推定相続人(相続開始後に相続人となる人)のどちらを指定すべきでしょうか?
この記事では、遺言執行者に司法書士を指定するメリットと費用・報酬の相場について説明します。
また、遺言で執行者が指定されていない場合において家庭裁判所に遺言執行者選任申立を行う場合に、申立人は遺言執行者の候補者を立てることができますが、この候補者は、司法書士等の専門家と相続人のどちらがよいでしょうか?
この点についても併せて説明します。是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2021年5月7日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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遺言執行者に司法書士を指定するメリット
遺言執行者に司法書士を指定するメリットとして、次の
4つが挙げられます。
- 相続人が相続手続きの手間から解放される。
- 相続手続きがスムーズに進むため、相続人が遺産を早期に取得できる。
- 相続人が精神的な負担から解放される。
- 遺言書作成と併せて依頼する場合は、より一層スムーズ。
以下、それぞれの点について説明します。
相続人が相続手続きの手間から解放される
遺言執行者がいない場合は、相続人が協力して相続手続きを進めなければなりません。また、相続人を遺言執行者にすることもできますが、いずれにせよ、一般の方が司法書士等の専門家に依頼せずに相続手続きを完了させることは、多大なる労力と膨大な時間を要します。
遺言執行者は、
就任してから業務の完了までに概ね次のような業務を行わなければなりません。
- 戸籍等の証明書を収集し、相続人を調査します
- 遺言執行者に就任したことを相続人と受遺者全員に通知します
- 相続財産を調査します
- 財産目録を作成します
- 預貯金の解約の手続きを行います
- 売却して分配する財産については換価手続きを行います
- 有価証券等の財産の名義変更手続きを行います
- 不動産の所有権移転登記を行います
- 遺言執行の妨害をしている者がいる場合においてはこれを排除します(訴訟が必要になることも)
- 相続人と受遺者全員に完了報告を行います
このように、遺言執行者の業務は多岐に渡ります。
金融機関や法務局の窓口は平日の日中しか空いていないため、仕事を休んで対応しなければならないことも生じえます。
司法書士に遺言執行を依頼すれば、相続人は、このような手間から解放されます。
相続手続きがスムーズに完了でき、相続人が遺産を早期に取得できる
前述のとおり、遺言執行者がいない場合は相続人が協力して相続手続きを進めなければなりませんが、相続人の中に協力しない人や忙しくて協力したくてもできない人がいると、いつまで経っても相続手続きが終わりません。
相続人を遺言執行者にした場合も、一般の方では、要領を得ず、手続き完了までに長い期間を要してしまうことも少なくありません。
遺言執行の経験が豊富な司法書士であれば、相続手続きをスムーズに完了させることができ、結果として、相続人が遺産を早期に取得できることにつながります。
早期に遺産を取得したい場合は、司法書士を遺言執行者に指定した方がよいでしょう。
相続人が精神的な負担から解放される
相続人が遺言執行者となった場合は、
次のようなトラブルが生じることがあります。
- 遺言執行者に指定されなかった相続人が、そのことを不満に感じトラブルに
- 他の相続人から遺言執行者が遺産の一部をこっそり自分のものにしたのではないかと疑われトラブルに
- 遺言執行者は精一杯取り組んでいるものの不慣れなため長期間を要し、他の相続人から手続きが遅いとトラブルに
- 遺言執行者が自分で手続きができず、結局、自腹で司法書士に依頼することになり、こんなことなら始めから司法書士を遺言執行者に指定していればと後悔
このようなトラブルに見舞われると、遺言執行者となった相続人には多大な精神的負担がかかりますが、司法書士を遺言執行者にすると、相続人はこのような負担から解放されます。
遺言書作成と併せて依頼する場合は、より一層スムーズ
司法書士は、遺言書文案作成についても最適な専門家です。
遺言者が遺言書文案作成を司法書士に依頼する際に、
遺言執行者についても併せて依頼するとスムーズでしょう。
近親者が亡くなると遺族は様々な手続きに追われて多忙になりますから、自分たちで遺言執行をするのは勿論のこと、遺言執行者を依頼する司法書士を探すことさえも手間に感じるかもしれません。
この点、遺言書文案作成を依頼した司法書士を遺言執行者に指定しておけば、遺族の負担を減らすことができます。
また、司法書士は遺言書文案を作成する際に、財産目録等の資料を作成しますから、同じ司法書士が遺言執行を担当すれば、よりスムーズに進めることができるでしょう。
遺言執行の司法書士費用・報酬
遺言執行者の報酬は、遺言書に記載がある場合はその金額に、遺言書に記載がない場合は相続人と協議して決めたり、家庭裁判所に決めてもらうことができます。
低廉な金額を勝手に遺言書に記載しても辞任されてしまうでしょうから、
遺言執行者に指定する司法書士に報酬額を確認したうえで、遺言書に記載しましょう。
なお、遺言執行の司法書士費用は、遺言の内容にもよりますが、遺言書作成時ではなく、遺言執行完了時に、遺言執行者が遺産から取得する場合が多いでしょう。
以下では、相場を知るために、ウェブサイトで遺言執行の報酬・費用を公開している
2つの司法書士事務所の報酬体系について説明します。
司法書士Aの遺言執行報酬
司法書士
A(仮名)の遺言執行の報酬体系は以下のようになっています。
執行対象財産が 300万以下 |
30万円 |
執行対象財産が 300万超~3,000万以下 |
遺贈財産の1% + 30万円 |
執行対象財産が 3,000万超~3億以下 |
遺贈財産の0.5% + 54万円 |
執行対象財産が 3億超~ |
遺贈財産の0.25% + 204万円 |
※1 不動産の価額については、遺言執行報酬算定の価額から除外いたします。
※2 相続登記を要する場合は、相続登記の報酬が別途発生いたします。
※3 裁判手続きを要する場合は、遺言執行報酬とは別に司法書士報酬や弁護士報酬などの裁判費用が発生いたします。
※4 清算型遺贈(不動産を換価して分配する遺贈)により、遺言執行者として不動産を売却した場合は、売買価格の1%が特別執行報酬として加算されます。
※5 複雑または特殊な事案の場合は、受遺者との協議により定める額が加算されます。
※6 実費:郵便代、交通費などが別途発生いたします。
相続登記
(不動産の名義変更) |
88,000円
下記に該当する場合は料金が加算されます。
- 複数の相続人がそれぞれ単独で不動産を相続する場合
- 亡くなった方の兄弟姉妹や甥姪が相続人の場合
- 早急な対応が必要な場合や複雑困難な場合
- 管轄法務局が2か所以上になる場合
- 固定資産税評価額が1億超えの場合
- 不動産の数が10個を超える場合
|
以下の設例に基づいて、A司法書士事務所の遺言執行報酬を計算してみます。
設例:資産は、不動産、預金と株券で、評価額の総額は5000万円(内、不動産の評価額は1000万円) |
「※1 不動産の価額については、遺言執行報酬算定の価額から除外いたします。」とあるので、まず、不動産価額を除いた遺産額を計算します。
「5000万円-1000万円=4000万円」
4000万円は料金表の「
3,000万超~
3億以下」に該当するので、「4000万円×
0.5% + 54万円=
74万円」。
「※2 相続登記を要する場合は、相続登記の報酬が別途発生いたします。」とあるので、相続登記の8万8000円を加算し、遺言執行報酬は「74万円+8万8000円=82万8,000円」となります。
司法書士Bの遺言執行報酬
司法書士
B(仮名)の遺言執行の報酬は、「
50万円~」となっています。
最低
50万円はかかることは分かりますが、どのような場合にこの最低料金で済んで、どのような場合にどのような計算に基づいて加算されるのかについては記載がありませんでした。
このように最低料金のみ記載している事務所も多いので、そのような場合は、
電話等で問い合わせをして確認するとよいでしょう。
遺言執行における弁護士と司法書士の違い
遺言執行における弁護士と司法書士の違いについて説明します。
弁護士は法的な対応がとれる
遺言執行に何らかの障害が生じた場合、障害となっている相手方と交渉したり、裁判等の法的手段を用いて障害を取り除き遺言執行を実現する必要がありますが、
そのような交渉や裁判等の法的手段を行うにあたっては弁護士の方が適しているでしょう。
登記は司法書士の方が慣れているが、弁護士でも問題ない
一方、登記については、一般に、司法書士の方が弁護士のよりも慣れているという違いもあります。
登記手続きに慣れている弁護士も中にはいるでしょうが、
登記手続きについては司法書士に依頼した方がスムーズに進められる場合が多いでしょう。
もっとも、弁護士が遺言執行者となった場合、登記だけ提携する司法書士に依頼するということも出来るため、遺産の中に不動産が含まれる場合であっても、弁護士を遺言執行者に選任することに問題はありません。
弁護士は高い?
弁護士は司法書士よりも費用も敷居も高いと思いこんでいる方も多いようです。
実際は、どうなのでしょうか?
2008年
11月に日本弁護士連合会(日弁連)が全国の弁護士に実施した以下の設例における報酬についてのアンケートの結果が参考になると思われるので、紹介します。
設例:資産は、不動産、預金と株券で、評価額の総額は5000万円 |
アンケート結果は下の表のとおりです。
報酬額 |
回答数 |
割合 |
20万円前後 |
173 |
18.3% |
40万円前後 |
256 |
27.1% |
60万円前後 |
175 |
18.6% |
80万円前後 |
77 |
8.2% |
100万円前後 |
185 |
19.6% |
120万円前後 |
20 |
2.1% |
その他 |
57 |
6.0% |
合計 |
943 |
100.0% |
円グラフにすると以下のようになります。
この設例では、
40万円前後が
4分の
1を超えていますが、
100万円前後、
60万円前後と
20万円前後がいずれも
20%近くになっており、ばらつきがあることが分かります。
同じ条件で、前掲の司法書士
Aは
74万円、司法書士
Bは
50万円~となっていました。
司法書士
Bは最低料金が示されているだけで実際の料金は分からないので、司法書士
Aと弁護士を比較すると、むしろ、
司法書士Aよりも報酬が安い弁護士が多数派であることが分かります。
遺言執行の専門家の選び方
遺言執行者に指定する専門家はどのように選べばよいでしょうか?
遺言文案作成と併せて依頼する場合、依頼してから遺言執行が行われる(遺言者が亡くなる)までに長い年月が経過していることも少なくありません。
専門家の方が先に亡くなることや、引退していることもあるでしょう。
そのような場合は、結局、相続人が共同で遺言執行したり、遺言執行者選任申立を行うことになります。
このようなことにならないように、
若い専門家か法人(弁護士法人・司法書士法人)に依頼すると比較的安心でしょう。
若い専門家なら遺言者が亡くなった時に現役でやっている可能性が高いですし、法人なら遺言文案作成に当たった専門家が亡くなったり引退していたとしても
法人が存続していれば遺言執行については別の専門家が対応してくれます。