遺言執行者と相続人は同じ人でもOK!?弁護士に頼んだときの費用は?
遺言執行者は相続人と同一人物でもよいのでしょうか?
遺言執行者に相続人をする場合は、どのような点に注意すべきでしょうか?
遺言執行者を相続人以外の人(専門家)に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
費用(報酬)はいくらかかるのでしょうか?
この記事では、以上のような疑問に対して、わかりやすく丁寧に説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2021年5月14日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
遺言執行者と相続人が同一人物でも法的には問題ない
遺言執行者と相続人が同一人物でも法的には問題ありません。
例えば、長男と二男が相続人である場合に、長男又は二男のどちらかが遺言執行者になっても構いません。
相続人を遺言執行者にする場合の注意点
法的に問題がなくても、実務上、問題が生じることがあります。
相続人が遺言執行者になると、次のようなトラブル等になることがあります。
- 遺言執行者に指定されなかった相続人が、そのことを不満に感じトラブルに
- 他の相続人から遺言執行者が遺産の一部をこっそり自分のものにしたのではないかと疑われトラブルに
- 遺言執行者は精一杯取り組んでいるものの不慣れなため長期間を要し、他の相続人から手続きが遅いとトラブルに
- 遺言執行者が自分で手続きができず、結局、自腹で弁護士に依頼することになり、こんなことなら始めから弁護士を遺言執行者に指定していればと後悔
遺言執行を専門家に依頼するメリット
前掲のようなトラブルは、遺言執行を弁護士等の専門家に依頼することで回避することができます。
遺言執行者に弁護士を指定するメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 相続人が相続手続きの手間から解放される。
- 相続手続きがスムーズに進むため、相続人が遺産を早期に取得できる。
- 相続人が精神的な負担から解放される。
- 遺言執行の障害に対して法的手段等を用いて解決できる。
- 遺言書作成と併せて依頼する場合は、より一層スムーズ。
遺言執行の弁護士費用・報酬
遺言執行者の報酬は、遺言書に記載がある場合はその金額に、遺言書に記載がない場合は相続人と協議して決めたり、家庭裁判所に決めてもらうことができます。
低廉な金額を勝手に遺言書に記載しても辞任されてしまうでしょうから、遺言執行者に指定する弁護士に報酬額を確認したうえで、遺言書に記載しましょう。
なお、遺言執行の弁護士費用は、遺言の内容にもよりますが、遺言書作成時ではなく、遺言執行完了時に、遺言執行者が遺産から取得する場合が多いでしょう。
報酬の相場を知る上で次の2つが参考になるので、紹介します。
- アンケート結果にもとづく弁護士費用の目安
- 日弁連の旧報酬等基準規程
アンケート結果にもとづく弁護士費用の目安
2008年11月に日本弁護士連合会(日弁連)が全国の弁護士に実施した以下の設例における報酬についてのアンケートの結果が参考になると思われるので、紹介します。
設例:資産は、不動産、預金と株券で、評価額の総額は5000万円 |
アンケート結果は下の表のとおりです。
報酬額 | 回答数 | 割合 |
---|---|---|
20万円前後 | 173 | 18.3% |
40万円前後 | 256 | 27.1% |
60万円前後 | 175 | 18.6% |
80万円前後 | 77 | 8.2% |
100万円前後 | 185 | 19.6% |
120万円前後 | 20 | 2.1% |
その他 | 57 | 6.0% |
合計 | 943 | 100.0% |
円グラフにすると以下のようになります。
この設例では、40万円前後が4分の1を超えていますが、100万円前後、60万円前後と20万円前後がいずれも20%近くになっており、ばらつきがあることが分かります。
なお、上の報酬額はあくまで、この設例におけるものです。遺言執行者の仕事の中味は遺言内容によって異なるため、自ずと弁護士報酬も遺言内容によって異なります。
日弁連の旧報酬等基準規程
現在は弁護士が料金表を自由に設定することができますが、2004年3月までは、日弁連の報酬等基準規程(旧規程)に則って報酬額を計算しなければなりませんでした。
現在でも、この旧規程を参考に報酬を決める事務所が多いため、旧規程について説明します。
旧規程では、遺言執行の弁護士報酬額は下の表のとおり定められていました。
内容 | 報酬額 | ||
---|---|---|---|
遺言執行 | 基本 | 遺産が300万円以下 | 30万円 |
遺産が300万円超3000万円以下 | 2%+24万円 | ||
遺産が3000万円超3億円以下 | 1%+54万円 | ||
遺産が3億円超 | 0.5%+204万円 | ||
特に複雑又は特殊な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議により定める額 | ||
遺言執行に裁判手続を要する場合 | 遺言執行手数料とは別に、裁判手続きに要する弁護士報酬が必要となる |
「報酬額」欄の「%」は、遺産額に対する割合です。
先ほどのアンケートの設例を、旧規程に当てはめて報酬額を計算してみます。
遺産額は5000万円ですから、上の表の「3000万円超3億円以下」に該当し、報酬額は104万円になります。
先ほどのアンケートの結果は、旧規程よりも大分良心的な料金設定をしていることが分かります。
遺言執行者の報酬や相場は以下の記事で詳しくご紹介しています。
遺言執行の弁護士の選び方
遺言執行者に指定する弁護士はどのように選べばよいでしょうか?
遺言文案作成と併せて依頼する場合、依頼してから遺言執行が行われる(遺言者が亡くなる)までに長い年月が経過していることも少なくありません。弁護士の方が先に亡くなることや、弁護士を引退していることもあるでしょう。
そのような場合は、結局、相続人が共同で遺言執行したり、遺言執行者選任申立を行うことになります。
このようなことにならないように、若い弁護士か弁護士法人に依頼すると比較的安心でしょう。
若い弁護士なら遺言者が亡くなった時に現役で弁護士をやっている可能性が高いですし、弁護士法人なら遺言文案作成に当たった弁護士が亡くなったり引退していたとしても法人が存続していれば遺言執行については別の弁護士が対応してくれます。
まとめ
以上、「遺言執行者は相続人と同一自分でもよいか」という点などについて説明しました。
当サイトでも遺言執行に対応している弁護士を掲載しています。ご参照ください。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続