弁護士監修記事

公正証書遺言の必要書類と書類の収集にかかる費用をわかりやすく説明

公正証書遺言をする際に、意外に手間がかかるのが、必要書類の収集です。

この記事では、公正証書遺言をするためには、どのような書類が必要か、書類の収集にかかる費用、書類の収集を含めた遺言作成支援を専門家に依頼するメリットと、その費用、また、公正証書遺言の検索に必要な書類や、公正証書遺言による登記に必要な書類についても説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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公正証書遺言とは?

遺言とは、亡くなった人が、主に自分の財産等について残した意思表示のことです。

例えば、「全財産を妻に相続させる」というような意思表示のことです。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです。

普通形式の遺言には、公正証書遺言のほかに、自筆証書遺言と秘密証書遺言があります。

それぞれの特徴については、下表をご参照ください。

秘密証書遺言と自筆証書遺言、公正証書遺言の違いをまとめると、下表のようになります。

自筆証書遺言 秘密証書遺言 公正証書遺言
作成者 自分(専門家に依頼することも可能) 自分(専門家に依頼することも可能) 公証人
作成方法 自筆のみ(専門家に文章を作ってもらっても書くのは自分) 自筆・代筆・ワープロ(署名は自筆のみ) 公証人が作成
公証役場に行く必要 なし あり あり
証明できること なし 遺言者の意思に基づいた遺言であること 遺言者の意思に基づいた遺言であること、遺言内容
証人 不要 必要 必要
秘密性 作成したことすら誰にも知られずに可能 内容は誰にも知られないが、作成したことは公証人と証人には知られる 内容も含めて公証人と証人には知られる
費用 不要 1万1000円 1万6000円~(相続財産額による従量課金)
保管者 自分(誰かに委託してもよい) 自分(誰かに委託してもよい) 公証役場
内容の一部変更 できる できない できない
検認 必要 必要 不要
法務局における遺言書の保管制度(※) 利用できる 利用できない 利用できない(利用する必要がない)

※法務局における遺言書の保管制度は、記事執筆日現在(2018年10月)未施行であり、まだ利用することはできません。施行後から利用できます。施行期日は、公布日(2018年7月13日)から2年以内です。

遺言形式ごとの詳細については次の記事をそれぞれご参照ください。

公正証書遺言に必要な書類と書類の収集にかかる費用

公正証書遺言の作成には、主に次の書類が必要です。

  • 遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書に加え、運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ。)
  • 遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書、及び推定相続人の戸籍謄本(直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍が必要となり、兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍が必要となります。)
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書(法人登記簿謄本又は登記事項証明書))
  • 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書(遺言書の中に個別の不動産を明記しない場合(例えば、「全ての不動産を妻に相続させる。」などとする場合)には、登記事項証明書の提出は不要となります。)
  • 証人予定者のお名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの
  • 証人の本人確認資料(保険証などの顔写真付きでない資料でも構いません)

遺言作成に必要となる書類は遺言内容によって異なり、また、公証役場によっても若干運用が異なるため、事前に公証役場に確認すると良いでしょう。

以上のうち、証明書類については、下表の通りの交付手数料がかかります。

証明書の種類 交付手数料 交付期間
印鑑登録証明書 1通300円

※本人確認を他の証明書によってする場合は不要

市区町村
戸籍謄本・戸籍全部事項証明書 1通450円 市区町村
住民票 1通300円

※相続人以外の受遺者ごとに必要
相続人以外の受遺者がいない場合は不要

市区町村
登記簿謄本・登記事項証明書
  • 書面請求:1通600円
  • オンライン請求・送付:1通500円
  • オンライン請求・窓口交付:1通480円

※遺言書に明記される不動産ごと及び受遺者となる法人ごとに必要
財産に不動産を含まず、受遺者に法人がいない場合は不要

法務局
固定資産評価証明書 1通350円~400円(市区町村ごとに異なる)

※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要

市区町村

必要書類の収集は専門家に依頼できる

弁護士、司法書士、行政書士といった専門家が公正証書遺言の作成支援サービスを提供しており、そのようなサービスを依頼すると、通常は、必要書類の収集も専門家が代行してくれます。

料金は専門家によって異なり、必要書類の収集代行も含めたパッケージ料金になっている場合と、別途料金がかかる場合があるので、依頼する前に確認しましょう。

公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリット

公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリットは、必要書類の収集代行だけではありません。

主に次のようなメリットがあります。

  • 遺言内容についての相談ができる
  • 手間を削減できる
  • 遺言執行者になってもらえる

以下、それぞれについて説明します。

遺言内容についての相談ができる

公正証書遺言では、遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝えて、その内容に沿って、公証人が遺言書を作成します。

公証人は遺言内容をどうするかについての相談には応じてくれません。

遺言内容いかんによっては、相続人や受遺者の間でトラブルになるおそれがあり、また、税金も変わってくるため、遺言内容は重要です。

遺言内容についての相談ができる専門家は、基本的には弁護士です(税金対策のために遺言内容を相談したい場合は税理士が対象)。

司法書士や行政書士は、遺言者が決めた遺言内容に沿って遺言書を作成することはできますが、遺言内容を考えるところから依頼することは、弁護士法に反する可能性があり、基本的にはできません。

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手間を削減できる

それでは、公正証書遺言の場合は、司法書士や行政書士に依頼する意味はまったくないのかというと、そういうわけではありません。

手間が削減できるというメリットがあります。

公正証書遺言をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を探したりする手間が生じますし、また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。

専門家に依頼すると、書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで十分です。

遺言執行者になってもらえる

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。

そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。

遺言執行者は、必ずしも指定しなければならないわけではありません。

遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになります。また、相続開始後に裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。

しかし、相続手続きの知識のない相続人や受遺者自らが、遺言の内容を実現する手続きを進めることや遺言執行者の選任を申し立てることは煩雑で大変です。

遺言執行者がいない場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。

その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。

また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続

人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。

ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。

遺言執行者は、専門家ではなくても、相続人や受遺者であっても構いません。

しかし、通常、相続人や受遺者は、遺言執行に関する知識がないでしょうから、適切な遺言執行ができない可能性もありますし、どうにかできたとしても大きな負担になるでしょう。

遺言作成を依頼した専門家に遺言執行者もまとめて依頼するのがスムーズでしょう。

遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」をご参照ください。

公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼した場合の費用

公正証書遺言の文案の作成を専門家に依頼する場合は報酬が必要です。

主に次の専門家が遺言書作成サービスを提供しています。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士

専門家への報酬は一律で決まっているわけではなく、一人ひとり異なります。

以下、それぞれの専門家の報酬について説明します。

公正証書遺言文案作成の弁護士報酬

2004年3月までは、弁護士報酬は、報酬規程で決められていました。

2004年4月からは報酬規程が廃止され、各弁護士が自由に報酬を決めることができるようになりましたが、現在でも旧規定を参考に報酬を決める弁護士も多いため、参考のため、遺言書作成についての旧規定を紹介します。

旧規定の報酬は、まず、遺言書が定型のものか非定型のものによって異なります。

遺言書にはよく使われる特定の型があり、そのような定型の遺言書であれば、概ね1回の打ち合わせのみで作成することができ、弁護士にとっても比較的手間がかからないため、報酬も比較的低廉で10万~20万円です。

非定型の遺言書は、弁護士にとっても、遺言者と複数回の打ち合わせが必要であったり、調べたりする手間がかかるので、報酬は比較的高額になります。

非定型のものであっても基本的な範疇ものは料金体系を示すことができますが(後掲)、特に複雑又は特殊な事情がある場合は、弁護士と遺言者との協議によって金額を定めます。

また、公正証書にする場合は、3万円が加算されます。

まとめると下表の通りです。

定型 10 万円から20万円の範囲内の額
非定型 基本
※財産の額に応じて右のように変動
300万円以下の場合 20万円
300万円を超え

3000万円以下の場合

1%+17万円
3000万円を超え

3億円以下の場合

0.3%+38万円
3億円を超える場合 0.1%+98万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する。

公正証書遺言文案作成の司法書士報酬

司法書士については、弁護士のような報酬規程が過去にもないため、実際の事務所の料金体系を紹介します。

司法書士事務所Aの報酬体系

業務内容 説明 報酬
  • 公正証書遺言案文作成
  • 親族関係説明図作成
  • 戸籍謄本、登記事項証明書等の必要書類の取寄せ
  • 公証人との打ち合わせ
  • 遺言書の保管
3,000万円以下の部分 35,000円
3,000万円を超え

5,000万円以下の部分

40,000円
5000万円を超え

1億円以下の部分

50,000円
1億円を超え

3億円以下の部分

60,000円
3億円を超える部分 80,000円
証人立会 1名につき 10,000円

※印紙、証紙等の実費は含みません。

※遺言者の自宅へ出張する場合、旅費・日当が別途かかります

司法書士事務所Bの報酬体系

相談 無料
公正証書遺言文案作成 40,000円
遺言証人 20,000円
戸籍収集 1通 1,000円
※実費別途
登記事項証明書
(不動産がある場合)
1通 500円
※実費別途

司法書士事務所Cの報酬体系

基本報酬として、79,800円ですが、証人の立会いや、必要書類の収集についての報酬は含まれていません。

また、遺言の目的である財産が1億円を超える場合または遺言内容が複雑な場合などは別途見積もりになります。

司法書士事務所Dの報酬体系

公正証書遺言案文作成 財産額1億円以内… 50,000円
1億円を超えるもの(1億円ごとに右記金額を加算)…10,000円
証人立会料 1名につき…10,000円
公正証書遺言保管料 1年につき…10,000円

上記費用のほか、書類の授受等を郵送処理等で行う場合、若干の通信費等がかかります。

公正証書遺言文案作成の行政書士報酬

行政書士についても、弁護士のような報酬規程が過去にもないため、実際の事務所の料金体系を紹介します。

行政書士事務所Aの報酬体系

行政書士事務所Aの報酬は、一律84,000円となっていて、次の業務が含まれます。

  • ご相談・出張相談・お見積り
  • 遺言内容のヒアリング
  • 相続人調査
  • 財産調査
  • 公証人との打ち合わせ
  • 遺言書文案の作成
  • 証人2人の手配

ただし、戸籍取り寄せ、財産調査に実費は別途必要です。

行政書士事務所Bの報酬体系

行政書士事務所Bの報酬は、基本料金98,000円となっています。

このほか、遺言の保管を依頼する場合は、1年につき10,000円がかかります。

遺言証人1人の立会い料の追加料金はありませんが、2人ともの証人の手配を依頼する場合は、10,000円の追加料金が必要です。

また、証明書類収集のための実費と、そのための出張が必要な場合の出張費は別途かかります。

相談料は無料です。

また、夫婦(内縁を含む)や親子2名以上で依頼する場合は、2人目以降の基本料金が半額になります。

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公正証書遺言の検索に必要な書類

遺言者が、相続人に公正証書遺言を作成したことを生前に告げておらず、公正証書遺言が存在するかどうかわからない場合、その法定相続人は、公正証書遺言が存在するかどうかを調査(検索)することができます。

具体的には、公証人連合会の遺言検索システムを利用します。

このシステムの検索対象は、1989年以降に作成された公正証書遺言です。

遺言を作成した公証役場でなくても、日本全国のどの公証役場でも照会を受けることが可能です。

なお、このシステムで公正証書遺言書の存在の有無が確認できるのは、既に亡くなった遺言者のものだけであり、遺言者が生きている間に、その相続人が公正証書遺言の有無を調査することはできません。

言検索システムの利用には、次の書類が必要です。

  • 遺言者の死亡を証明する書類(遺言者の戸籍謄本(全部事項証明書)、または、死亡診断書等)
  • 利害関係を証明する書類(請求者が遺言者の法定相続人であることを証明することができる戸籍謄本(全部事項証明書)等)
  • 請求者の身分を証明する書類(顔写真の付いた身分証明書(運転免許証・パスポート等)と認印のセット、または、発行から3か月以内の印鑑登録証明書と実印のセット)

請求者の代理人が公証役場に行く場合は、さらに以下の書類が必要です。

  • 法定相続人の委任状(法定相続人の実印の押印が必要)
  • 代理人の本人確認資料(運転免許証やパスポート)

公正証書遺言による登記に必要な書類

公正証書遺言でも、他の遺言でも、登記に必要な書類に違いはありません。

違いがあるのは、公正証書遺言の場合は検認が不要という点ぐらいです(遺言書の検認について詳しくは「遺言書の検認とは?遺言書が見つかったら知っておくべき検認の全知識」参照)。

登記に必要な書類は、登記する不動産の取得者が、法定相続人なのか、法定相続人以外の人なのかによって異なりますし、後者の場合は、さらに、遺言執行者がいるかどうかによっても異なります。

それぞれのケースで必要な書類について説明します。

遺言により法定相続人が取得した不動産の登記に必要な書類は次の通りです。

  • 遺言書
  • 遺言者の死亡時の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
  • 遺言者の住民票の除票
  • 登記する不動産を取得する人の現在の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
  • 登記する不動産を取得する人の住民票
  • 固定資産評価証明書

遺言執行者が定められている遺言により法定相続人以外の人が取得した不動産の登記に必要な書類は次の通りです。

  • 遺言書
  • 遺言者の死亡時の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
  • 遺言者の住民票の除票
  • 登記する不動産の権利証または登記識別情報
  • 登記する不動産を取得する人の住民票
  • 遺言執行者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
  • 固定資産評価証明書

遺言執行者が定められていない遺言により法定相続人以外の人が取得した不動産の登記に必要な書類は次の通りです。

  • 遺言書
  • 遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)、除籍謄本(または除籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本
  • 遺言者の住民票の除票
  • 登記する不動産の権利証または登記識別情報
  • 登記する不動産を取得する人の住民票
  • 法定相続人全員の戸籍謄本及び印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
  • 固定資産評価証明書

まとめ

以上、公正証書遺言の必要書類について説明しました。

不明な点は、公証役場や専門家に相談するとよいでしょう。

初回相談を無償で行っている専門家も多いので、依頼するしないにかかわらず、気軽に一度相談してみるとよいでしょう。

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