血族とは。血族の範囲と親族や姻族との違いについてわかりやすく説明
相続手続きについて調べていると聞き慣れない言葉が出てくると思いますが、「血族」もそのひとつでしょう。
例えば、公正証書遺言(遺言書の方式)を作成するときは「推定相続人及び受遺者の直系血族等は証人にはなれない」という規定があります。
ほかにも、「被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人は、相続税額にその2割に相当する金額が加算される」(相続税の2割加算)とあり、正しく血族の範囲を理解していないと、予想外の税金が発生する恐れがあります。
この記事では、血族の範囲や、姻族・親族などとの違いについて詳しく解説していきます。
血族、親族について知りたい人は是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年3月28日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
血族とは?
血族(けつぞく)とは、血縁関係にある人のことですが、これには、生物学上の血縁(自然血族)だけでなく、養子縁組による法律上の血族(法定血族)も含まれます。
実の親子は、勿論、血族ですが、血のつながっていない養親と養子も血族です。
なお、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
普通養子縁組では、実の親子関係を残したまま養親との親子関係が生じますが、特別養子縁組では、実の親子関係が法律上解消され、法律上の親子関係は養親との間だけになります。
つまり、普通養子縁組による養子は、実親や実の兄弟姉妹等の実家側と、養親や養家の兄弟姉妹などの養家側の両方が血族であり、特別養子縁組による養子は、養家側のみ血族となります。
また、血族というと、親子や兄弟姉妹等のような近親者を想像するかもしれませんが、近親者だけでなく、親子関係と兄弟関係でつながる人は、どれほど離れていても血族に当たります。
従兄弟姉妹(いとこ)は勿論、再従兄弟姉妹(はとこ)も、三従兄弟姉妹(みいとこ)も血族です。
従兄弟姉妹(いとこ)とは親の兄弟姉妹の子のことで、再従兄弟姉妹(はとこ)は親同士が従兄弟姉妹(いとこ)の関係、三従兄弟姉妹(みいとこ)は親同士が再従兄弟姉妹(はとこ)の関係のことです。
また、次の関係の人も血族に当たります。
- 父母のいずれか一方のみを同じくする兄弟姉妹
- 離婚して疎遠になった親子
- 認知された非嫡出子
非嫡出子とは、夫婦でない男女の間に生まれた子のことです。
非嫡出子は、母とは必ず血族になりますが、父とは認知されると血族になります。
一方、次のような関係の人は血族には当たりません。
- 配偶者
- 配偶者の血族
- 血族の配偶者
- 再婚相手の連れ子
- 未認知の子
配偶者の血族と、血族の配偶者は、「姻族」(いんぞく)といいます。
再婚相手の連れ子も、血族ではなく、姻族です。
なお、再婚相手の連れ子と養子縁組をしたら、血族になります。
相続問題でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください
親族とは?血族との違い
血族と似た言葉で、「親族」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
親族と血族は、どう違うのでしょうか。
親族について、民法では、次のように定められています。
第725条
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
「親等」という言葉が出てきたので、親等についてまず説明します。
親等(しんとう)とは、親族関係の法的な遠近を表す単位のことです。
親等が小さければ法的に近い親族関係であるということが言え、親等が大きければ法的に遠い親族関係であるということが言えます。
親等は、親子関係を経るごとに1親等を加えて数えます。
例えば、父母や子は1親等です。
祖父母は、親の親なので、2親等です。
孫は、子の子なので、2親等です。
兄弟姉妹は、親の子なので、2親等です。
伯叔父母(伯父(親の兄)、叔父(親の弟)、伯母(親の姉)、叔母(親の妹)の総称。要するに「おじ」「おば」のこと。)は、親の親の子なので、3親等です。
なお、親等を素早く数えるには、兄弟姉妹は2親等と覚えておくとよいでしょう。
先ほどの例では、伯叔父母(おじ・おば)の親等を数えるときに、親の親の子で3親等と数えましたが、兄弟姉妹は2親等と覚えておくと、親の兄弟姉妹だから1親等+2親等=3親等と計算することもできます。
親族に話を戻すと、親族には六親等内の血族が含まれますから、六親等以内の血族は、血族であり、親族であることになります。
七親等以上の血族は、血族には違いありませんが、親族ではないということになります。
また、配偶者や三親等以内の姻族は、血族ではありませんが、親族には該当します。
親族の範囲を家系図で示すと下図のようになります。
枠で囲ってあるのが親族です。
丸囲いの数字が親等です。
焦げ茶色の枠が6親等以内の血族で、桃色の枠が3親等以内の姻族です。
枠で囲っていない人は親族ではありません。
例えば、従兄弟姉妹(いとこ)の配偶者は4親等の姻族ですが、親族に含まれる姻族は3親等までなので、従兄弟姉妹の配偶者は親族ではありません。
また、配偶者の兄弟姉妹の配偶者は、姻族ではないので、当然、親族でもありません。
血族の分類
血族は、直系と傍系、尊属と卑属に分類することができます。
以下、それぞれについて説明します。
直系と傍系
直系とは、世代の上下方向に真っ直ぐつながる系統のことです。
例えば、父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母、子、孫、曽孫、玄孫などが直系に当たります。
一方、傍系とは、直系ではなく、兄弟姉妹によって枝分かれした系統のことです。
例えば、兄弟姉妹、伯叔父母(おじ・おば)、甥・姪、従兄弟姉妹(いとこ)、伯叔祖父母(大おじ・大おば)、大甥・大姪などが傍系に当たります。
傍系血族とは、自分の傍系、つまり、前述のとおり、兄弟姉妹、伯叔父母(おじ・おば)、甥・姪、従兄弟姉妹(いとこ)、伯叔祖父母(大おじ・大おば)、大甥・大姪などのことです。
なお、直系と傍系という分類は、姻族にも使用することができます。
尊属と卑属
尊属とは自分よりも上の世代の血族のことで、卑属とは自分よりも下の世代の血族のことです。
ここでいう世代とは、年齢のことではなく、親子関係による区分のことです。
例えば、自分と同じ世代の血族には、兄弟姉妹、従兄弟姉妹(いとこ)、再従兄弟姉妹(はとこ。親同士がいとこの関係)などがいます。
父母と同じ世代の血族には、父母、伯叔父母(おじ・おば)、従伯叔父母(いとこおじ・いとこおば。親のいとこ)などがいます。
子と同じ世代の血族には、子、甥・姪、従甥姪(いとこおい・いとこめい。いとこの子)などがいます。
尊属は、自分よりも上の世代の血族なので、前述の父母世代の父母、伯叔父母、従伯叔父母などに加えて、祖父母世代の祖父母、伯叔祖父母(大おじ・大おば)など、さらには、曽祖父母世代、高祖父母世代、そのさらに上の世代も尊属です。
卑属は、自分よりも下の世代の血族なので、前述の子世代の子、甥・姪、従甥姪などに加えて、孫世代の孫、大甥・大姪など、さらには、曽孫世代、玄孫世代、そのさらに下の世代も卑属です。
なお、自分と同じ世代は、尊属でも卑属でもありません。
また、尊属・卑属に当たるのは、血族のみです。姻族は尊属・卑属に含まれません。
尊属・卑属は、直系・傍系と組み合わせて、直系尊属、傍系尊属、直系卑属、傍系卑属と分類することができます。
直系尊属には、父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母などが該当します。
傍系尊属には、伯叔父母、従伯叔父母、伯叔祖父母などが該当します。
直系卑属には、子、孫、曽孫、玄孫などが該当します。
傍系卑属には、甥・姪、従甥姪、大甥・大姪などが該当します。
まとめ
以上、血族について説明しました。
遺産相続について不明な点は、気軽に専門家に相談しましょう。
この記事を書いた人
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