祭祀承継者とは。知っておくべき祭祀承継者のルールを丁寧に説明
親や夫が亡くなったとき等に、祭祀承継者に誰がなるか、ということが問題になることがあります。
この記事では、祭祀承継者について知っておくべきことを丁寧にわかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年10月17日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
祭祀承継者とは?
祭祀承継者とは、系譜、祭具及び墳墓といった祭祀財産や遺骨を管理し、祖先の祭祀を主宰すべき人のことです。
読み方は、「さいししょうけいしゃ」です。
系譜(けいふ)とは、先祖代々の家系が記されている家系図のようなもののことです。
祭具(さいぐ)とは、仏壇・神棚・位牌・霊位・十字架などをいいます。
墳墓(ふんぼ)とは、墓石・墓碑などの墓標や土葬の場合の埋棺などをいいます。
祭祀とは、神様や祖先を祭ることをいいます。
簡単に言うと、祭祀承継者とは、一族のお墓等を引き継いで管理する人のことだと考えればわかりやすいかもしれません。
具体的には、次のような事柄を行います。
- お墓の管理
- 仏壇の管理
- 檀家としてのお寺との付き合い、管理費の支払い、お布施、寄付
- 法要の主宰
相続問題でお悩みの方は
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祭祀承継者はどうやって決まる?
祭祀承継者が亡くなると、次の祭祀承継者を決めます。
祭祀承継者は、必ずしも相続人でなくても構いませんが、通常は、相続人のうちの誰かがなることがほとんどです。
祭祀承継者は、次の優先順位で決めます。
- 前の祭祀承継者の指定
- 慣習
- 家庭裁判所
以下、それぞれについて説明します。
前の祭祀承継者の指定
前の祭祀承継者の指定の方法は、遺言でも口頭でも、どのような方法でも構いません。
遺言の場合は、例えば、以下のようなかたちで記載します。
遺言書
遺言者〇〇〇〇は、次の通り遺言する。
第★条 遺言者は遺言者及び祖先の祭祀を主宰すべき者として長男〇〇○○(昭和○○年○月○日生)を指定する。 |
遺言書の作成については、弁護士又は司法書士に相談することをお勧めします。
慣習
前の祭祀承継者の指定がない場合は、慣習によって、祭祀承継者が決まることになっています。
しかし、かつては、日本全国のほとんどの地域で、先祖代々の土地等の家督を相続する長男が祭祀承継者となる慣習がありましたが、現代では、長男だけが家督を相続する制度もありませんし、多くの地域では、祭祀承継者に関する慣習は残っていないでしょう。
そのため、慣習によって祭祀承継者が決まることは稀で、代わって、親族会議等によって決まることが多くなっています。
家庭裁判所
前の祭祀承継者の指定もなく、慣習や親族間の合意もない場合は、家庭裁判所に祭祀承継者指定の申立てをすることで、家庭裁判所の審判によって祭祀承継者を指定することができます。
この申立ては、調停と審判があり、必ずしも調停を先に申し立てなければならないわけではなく、始めから審判を申し立てても構いません。
調停の場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てをします。
審判の場合は、相続が開始した地(被相続人の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てをします。
家庭裁判所は、承継者と相続人との身分関係のほか、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見等諸般の事情を総合して判断するものと解されています。
祭祀承継者は原則として一人
祭祀承継者は、原則として一人で務めることになっていますが、特段の事情がある場合は、複数でも構いません。
祭祀財産は相続財産に含まれない
祭祀財産は相続財産に含まれません。
したがって、相続放棄をしても祭祀承継者になれますし、祭祀承継者になったからといって、祭祀財産の価額分、相続分が減らされるわけでもありません。なお、反対に相続分が多くなるということもありませんが、遺産分割協議において、他の相続人の合意に基づいて、祭祀承継者の相続分を多くすることは問題ありません。
また、祭祀財産には相続税もかかりません。
祭祀承継者は拒否できない
祭祀承継者に指定されると、拒否することはできません。
祭祀承継者が祭祀の方針を決めることできる
祭祀承継者は、祭祀の方針を決めることができます。
したがって、祭祀承継者が祭祀を何もしないという方針をとることもでき、何もしなくても罰則はありません。
また、祭祀承継者は、祭祀財産を処分することもできます。
祭祀承継者は生前に変更することもできる
通常は、一度、祭祀承継者になると、亡くなるまで祭祀承継者であり続けます。
しかし、生前に祭祀承継者を変更することもできます。
変更する方法としては、当事者間の合意による方法と、家庭裁判所に祭祀承継者指定の申立てをする方法があります。
申立ては、祭祀承継者からしても構いませんし、他の親族からしても構いません。
祭祀承継者を生前に変更する際の注意点としては、祭祀財産に贈与税がかかる可能性がある点です。
贈与税は、年間110万円を超えて受けた贈与に対して課税されます(暦年課税)。
祭祀財産の価額が110万円を超える場合は、贈与税がかかる可能性もあるため、事前に税理士に相談することをお勧めします。
祭祀承継者がいない場合
祭祀承継者がおらず、管理料が3年間未納の状態が続くなどした場合は、お墓は撤去されてしまいます。
このような事態を避けるためには、最後の祭祀承継者は、永代供養墓に改装することが考えられます。
まとめ
以上、祭祀承継者について説明しました。
祭祀承継者に関する法律問題は、弁護士に相談するとよいでしょう。
この記事を書いた人
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