弁護士監修記事

被代襲者が相続放棄したら代襲相続する?相続放棄と代襲相続の全知識

相続制度の中でも、そもそも相続するかどうかを決めるという重要な制度が相続放棄です。

また、自分の父母などが相続をできないときにこれに代わって祖父母などの相続を引き継ぐのが代襲相続であり、こちらも重要な制度です。

では、相続放棄と代襲相続にはどのような関係があるのでしょう?

相続放棄によって代襲相続をする権利が発生するのでしょうか?

逆に相続放棄をすることによって、代襲相続ができなくなる場合はあるのでしょうか?

ここでは、相続放棄と代襲相続について、おさらいをしたうえで、両制度の関係について説明します。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

相続放棄

相続放棄とは

相続は、プラスの遺産ばかりではなく、被相続人のマイナスの負債も承継してしまう制度です。

そこで相続人は相続するかどうかを選択でき、相続しない場合は、相続放をすることが認められています(法915条)。

相続放棄の方法

相続放棄は、家庭裁判所に対する相続放棄の申述という手続きで行います(法938条)。

熟慮期間

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に手続きをしなくてはなりません。

この3ヵ月を熟慮期間といいます(法915条1項)。

なお、相続放棄について詳しくは「相続放棄によって借金を相続しないようにする方法と相続放棄の注意点」をご参照ください。

代襲相続

代襲相続とは

本来は相続人であるはずの者が相続できなくなったとき(亡くなった被相続人よりも先に亡くなった場合等)に、その相続人の子が代わって相続する制度が代襲相続です(法887条、889条)。

代襲相続人

代襲相続する人(代襲相続人)は、次のとおりです。

  • 孫(子が相続人だった場合。法887条2項)
  • 甥姪(兄弟姉妹が相続人だった場合。法889条2項)

再代襲相続人

さらに代襲相続人である孫が一定の原因で相続資格を有しないとき(代襲相続人であるはずの者が被相続人よりも先に亡くなった場合等)には、その直系卑属(※)が代わって相続する制度が再代襲相続です(法887条3項)。

なお、甥姪の子には再代襲相続は認められていません。

※直系卑属とは、出生によって血縁につながる者(血族)のうち、父母と子、祖父母と孫のように、血統が直下する形につながる者(直系)で、子や孫など、自分よりも後の世代に属する者(卑属)を指します。

代襲相続が生じるケース

被相続人をA、Aの子をB、Bの子をCとした場合、Cが代襲相続によってAの遺産を相続できるのは次のケースです(法887条2項、889条2項)。

  • BがAよりも先に死亡している
  • BにAの相続人としての欠格事由がある
  • BがAの推定相続人の廃除を受けている

欠格とは、被相続人や他の相続人を殺害して刑に処せられたり、遺言を偽造したりするなど、相続に関して不正な利益を得るために不正行為を行った者につき、当然にその相続資格を失わせる制度です(法891条)

廃除とは、被相続人を虐待したり、非行行為を行ったりした者について、被相続人の意思で相続資格を失わせる制度です(892条)。

代襲相続の詳細については、「代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識」をご参照ください。

相続放棄しても代襲相続は生じなない

先ほど、代襲相続が生じる3つのケースを紹介しました。

その中に、BがAの相続を放棄したケースは含まれていませんでした。

それでは、このようなケースでは、Cは代襲相続によってAの遺産を相続することはできないのでしょうか?

父が祖父の相続を相続放棄をした場合、子は祖父を代襲相続できるか?

例をあげましょう。

祖父A、父B、子Cという関係で、祖父Aが死亡しました。

資産家の祖父Aは多額の遺産を残していました。

ところが祖父と折り合いが悪く若くして家を出てしまった父Bは「遺産など1円もいらない」と相続放棄をしてしまいました。

事業資金を得たいと思っていた子Cは、父Bがいらないなら孫である自分が相続したいと主張しました。

果たして子Cは、祖父Aを代襲相続できるでしょうか?

回答は、「残念ながら子Cは代襲相続はできない」です。

代襲相続の要件は、代襲される人(被代襲者)であるBが、相続される人(被相続人)であるAの相続開始時点(すなわちAの死亡時点)に既に死亡をしているか、欠格または廃除によって相続資格を失っている場合でなければなりません。

この3種類の代襲相続の原因(代襲原因)は条文で明確に規定されており、被代襲者Bが相続放棄をした場合は含まれていません(民法887条2項及び3項)。

したがって、この場合、Cは代襲相続を出来ません。

相続放棄は代襲原因ではないと法改正で明確に否定された経緯がある

実は、昭和37年以前は、代襲相続の原因は死亡と「相続権を失った場合」と規定されていたため、欠格と廃除の他に相続放棄が代襲原因に含まれるかどうか解釈に争いがあったのです。

昭和37年の法改正によって、代襲原因を死亡、欠格、廃除の3つに限定して明記したことにより、もはや相続放棄は明確に代襲原因ではないという態度が取られたのです。

したがって、相続放棄が代襲の原因と認められることはありません。

相続放棄により代襲相続が生じるケースもある

上のように、相続放棄は代襲相続の原因とはされていません。

しかし、相続放棄によって相続関係が変動した結果、代襲原因が生じるケースがあります。

例えば、次のような場合は、相続放棄がなされた結果として、代襲相続が発生したと言うこともできます。

  • 被相続人:X1
  • 遺族:Y(X1の子ども)、Z(X1の弟であるX2の子ども)なお、X2はX1より前に死亡している

この場合、本来であれば法定相続人は子であるYだけです。

ところが、Yが相続放棄をすると、後順位の相続人である兄弟姉妹が法定相続人となります。

そして、本ケースでは、X1の弟であるX2がすでに故人であるため代襲相続が発生し、X2の子どもであるZがX2を代襲してX1を相続することになります。

この場合、相続放棄が直接の代襲原因となっているわけではありませんが、相続放棄により相続人となるはずの者がYからX2に変わった結果、代襲相続が生じたものと言えるでしょう。

代襲相続人は相続放棄できる?

父の相続をした子は、祖父の代襲相続を相続放棄できるか?

次に、同じく祖父A、父B、子Cという関係で、Bが先に死亡し、その後Aが死亡したという場合を考えてみましょう。

Bが死亡した時点で、Cが相続を承認していたときは、その後Aが死亡した時にCがBを代襲してAを相続します。

この場合に、CがAの代襲相続を相続放棄することは問題ありません。

父の相続を相続放棄した子は、祖父を代襲相続できるか?

それでは、Bが死亡した時点でCが相続放棄をしていたときは、その後Aが死亡した時にAからの代襲相続を承認したり、Aからの相続を放棄したりすることはできるでしょうか?

回答は、この場合「CはAの代襲相続を承認することもできるし、相続放棄することもできる」となります。

CがAの相続を承認したり、放棄したりする権限はBから引き継いだものではなく、代襲相続によって生じたC固有の権限と認められます。

C固有の選択権限である以上は、Bの相続を放棄しているか否かに関わらず、Cは自由に選択できることになります。

相続放棄はいつから3か月以内?

例をあげましょう。

被相続人A遺族 B(Aの子ども)、C(Aの姪)がいたとします。

Aが死亡した後、Bが相続放棄をしました。

これによって、次順位の相続人である姪Cが法定相続人となります。

ではCも相続放棄をしたい場合、熟慮期間である3ヶ月は何時からスタートするのでしょうか?

熟慮期間は、「自己のために相続の開始を知った時」(法915条1項)からスタートします。

Aが死亡した時点ではCは法定相続人ではなく、Bが相続放棄をした時点ではじめてCが法定相続人となりますから、その時点で「自己のために相続」が開始したことになります。

そこで熟慮期間のスタートは、Aの死亡時点からではなく、Bが相続放棄をした事実をCが知ったときからです。

他の相続人の相続放棄によって法定相続人となった者は限定承認ができるか?

上のケースで、姪Cは、相続放棄ではなく限定承認をすることは可能でしょうか。

限定承認は、被相続人がプラスの遺産とマイナスの負債を残していた場合に、プラスの遺産の範囲内で負債を清算する手続きです。

清算の結果、マイナスの負債が残っても、限定承認をした相続人はそれ以上の責任を負わない一方、プラスの遺産が残れば相続できることになります(法922条)。

相続は、被相続人が負っていた負債も引き継ぐという負担があるため、相続人の意思で負担を回避できるようにした制度が相続放棄と限定承認です。

そうであれば、先順位の相続人が相続放棄をしたか否かにかかわらず、法定相続人となった者は、自分の意思で限定承認を選択することが許されます。

したがって、Cは限定承認が可能です。

まとめ

相続放棄と代襲相続の関係について説明しました。

相続は誰でもいつか直面する問題ですが、相続制度は複雑でなかなか理解が容易ではありません。

相続については、ぜひ専門家である弁護士の法律相談で確かな知識を得ることをおすすめします。

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