借金を知らなかったら期限後でも相続放棄できる?注意点を解説
相続放棄の申述期間(「熟慮期間」ともいいます)を過ぎていても、被相続人(亡くなった人)に借金があったことを知らなかった等の一定の要件を満たす場合は、申述が受理されると解されています。
この記事では、熟慮期間経過後の相続放棄が認められるための要件と注意点について、弁護士がわかりやすく丁寧に説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2021年1月13日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
借金を知らなかったら期限後でも相続放棄できる?
相続の開始があったことを知った時から3か月(「熟慮期間」といいます)が経過すると、原則として、相続を承認したものとみなされ、申述は受理されなくなります。
ただし、自己が取得すべき相続財産がなく、通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろう相続債務が存在しないと信じており、かつ、そのように信じたことについて相当の理由があると認められる場合には、熟慮期間は、相続債務の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきものと解されています。
もう少しわかりやすく言うと、次のすべての要件を満たす場合は、熟慮期間が、「相続の開始があったことを知った時」ではなく、「相続債務の存在を認識した時(又は認識できた時)」から3か月になるということです。
- 被相続人に相続財産が全くないと信じていた
- そのように信じていたことについてちゃんとした理由がある
なお、被相続人に財産があることを知ってはいたが、相続債務の存在を知らなかったという場合については、裁判所の判断は分かれています。
この要件を満たしていても、そのことが家庭裁判所に伝わるように、相続放棄申述書及び相続放棄照会書・回答書に事情を記載しなければ、却下されるおそれがあります。
相続の開始から3か月以上を経ってから申立てをする場合は、弁護士に相談のうえ、慎重に対応することをお勧めします。
受理後に無効となることもある
相続放棄の申述が受理されても、被相続人の債権者等から訴訟を起こされて、訴訟の結果によっては相続放棄が無効となることがあります。
家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきと考えられているためです。
相続放棄の無効を主張された場合は、相続放棄に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
また、相続放棄の無効を主張したい債権者も同様に弁護士に相談するとよいでしょう。
まとめ
以上、借金があることを知らなった場合の相続放棄について説明しました。
相続の開始があったことを知って時から3か月が経っていても、(1)被相続人に相続財産が全くないと信じていて(2)そのように信じていたことについてちゃんとした理由がある場合は、相続放棄の申述が受理されると解されています。
このようなケースで相続放棄の申述を受理してもらうためには、書類の書き方が重要です。
相続放棄に精通した弁護士に相談して、慎重に準備することをお勧めします。
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