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相続放棄の手続き費用は?弁護士・司法書士の相場と法テラス

相続放棄の手続きをしようというときに、気になるのが、費用のことでしょう。 相続放棄の手続き費用に関して、次のような質問を受けることがあります。
  • 相続放棄の手続きには、いくらかかるのでしょうか?
  • 自分で手続きをした場合と、専門家に依頼した場合とで、費用はどのくらい違うのでしょうか?
  • 相続放棄の手続きは、自分でもできるものなのでしょうか?自分でする場合のデメリットや注意点は何かあるのでしょうか?
  • どのような場合に専門家に依頼すべきで、どのような場合は自分でしても大丈夫なのでしょうか?
  • 弁護士と司法書士にはどのような違いがあるのでしょうか?費用にも違いがあるのでしょうか?それぞれの相場はいくらぐらいなのでしょうか?
  • 複数人で相続放棄の手続きをする場合は、誰が費用を負担すべきなのでしょうか?
  • 法テラスを利用すると安くなるのでしょうか?誰でも利用できるのでしょうか?デメリットや注意点はあるのでしょうか?
この記事では、以上のような疑問点をすっきりと解消し、安く、手間なく、確実に、相続放棄の手続きをする方法について説明します。 是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2021年1月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

相続放棄の手続きは自分ですると安い

相続放棄の手続きは、自分でする方法と、専門家(弁護士又は司法書士)に依頼する方法があります。 自分でする場合は実費のみで済むため、安く済みます。

自分で手続きをした場合の費用(実費)

自分で手続きをした場合の費用は、2千~5千円程度です。 内訳としては、概ね以下のようになります。
  • 収入印紙:800
  • 家庭裁判所からの連絡用の郵便切手代: 376円(東京家庭裁判所本庁の場合)
  • 戸籍謄本等の交付手数料:450円~
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票の交付手数料:300円(役所によって異なる場合がある)
  • 交通費又は郵送費
郵便切手代は手続きをする家庭裁判所によって多少異なります。正確な金額を知りたい場合は手続きをする家庭裁判所にお尋ねください。 戸籍謄本等については、ケースによって必要になる戸籍謄本等が異なり、戸籍謄本は1450円、除籍謄本及び改製原戸籍は1750円の交付手数料がかかります。ケースごとに必要になる戸籍謄本等については「相続放棄の必要書類とその集め方をケースごとにわかりやすく説明」をご参照ください。 手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所の窓口か、郵送で行います。窓口に行って手続きする場合は家庭裁判所までの交通費が、郵送する場合はその費用がかかります。

弁護士・司法書士に依頼した場合の費用の相場

弁護士又は司法書士に依頼した場合の費用について説明します。 弁護士はある程度パッケージされたプランになっているのに対し、司法書士ではプランが3つ程度に分かれていることが多いようです。 司法書士のプラン名は事務所によって異なりますが、ここでは、安い方からライトプラン、ミドルプラン、フルプランと呼ぶことにします。 それぞれのプランのサービス内容は、概ね下の表のようになっているようです(事務所によって多少違いがあります)。
  サービス内容
ライトプラン 相続放棄申述書作成サポート
ミドルプラン  + 必要書類の取得、手続き代行
フルプラン  + 債権者対応
弁護士の場合は司法書士のようにプランを分けていない事務所が多いようですが、基本料金に含まれるサービス内容としては、上の表でいうところミドルプランに該当する事務所が多いようです。 この後に紹介する各事務所の費用を比較すると、弁護士で5万円から、司法書士は4万円(ミドルプラン)からとなっており、弁護士と司法書士の費用の差はあまり大きくないようです。

自分で手続きをするリスク

自分で手続きをすると、費用を節約できますが、次のような失敗例があります。
  • 手続きの方法を調べたり、必要書類を準備したり、書類の不備等によって再提出が必要になったりしているうちに、相続放棄の期限(相続の開始があったことを知った時から3か月)を過ぎてしまい、相続放棄ができなくなった
  • 必要書類を取得するための役所も、裁判所も平日の日中しか開いていないため、仕事に支障をきたしてしまった
  • 平日の日中も対応できるので自分でやろうと思ったが、想像していたよりも書類の収集方法や書き方が難しく分からないことだらけで、ストレスで体調を崩し、結局、専門家に依頼することになった
  • 法定単純承認の知識がなかったため、手続き前に遺産の一部をうっかり処分してしまい、相続放棄ができなくなった
  • 亡くなった人の借金の取り立てがしつこく、相続放棄が受理されるまでの間に気が滅入ってしまった。また、あまりにしつこいため、遺産から支払ったら、相続を承認したことになって相続放棄できなくなってしまった
このようなことにならないように、次のいずれかに該当する方は、専門家に依頼することをお勧めします。
  • 仕事で忙しい方
  • 裁判所の手続きに慣れていない方
  • 債権者から督促状が届いたり、取り立てがあった方
  • 法定単純承認の制度を十分に理解できていない方
  • 相続開始から2か月以上経ってしまっている方

相続放棄の手続きを依頼するなら、弁護士?司法書士?

それでは、相続放棄の手続きを依頼するなら、弁護士と司法書士のどちらがよいのでしょうか? それぞれのメリットについて説明します。 司法書士ではなく弁護士に依頼するメリット 相続放棄の手続きを、司法書士ではなく、弁護士に依頼するメリットとして、次のような点が挙げられます。
  • 相続放棄をすべきかどうかについても相談できる
  • 受理の可能性が高まる
  • 手間がかからない
  • 相続債権者が相続放棄の無効を主張してきた場合にも対応できる
以下、それぞれについて説明します。

相続放棄をすべきかどうかについても相談できる

相続債務に法外な金利が設定されていて過払い金が生じていたとか、交渉などで借金額を減額できる場合、結果として相続放棄をする必要がない場合もありますが、弁護士には、相続放棄をすべきかどうかということも含めて相談できます。 また、弁護士は、亡くなった人の財産について、弁護士会を通じて金融機関や行政機関等に対して情報開示を求める「弁護士会照会」(23条照会)が可能なので、相続放棄をするかどうかの判断材料となる相続財産調査を精度高く行うことができます。

受理の可能性が高まる

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。 家庭裁判所が問題ないと判断すれば受理されますが、亡くなってから3か月以上が経っていたり、相続財産を処分してしまっていたりなど、相続を承認したとみなされる可能性のある事情が存在する場合は、受理されないこともあります。 家庭裁判所に提出する書類の記載内容などによって受理するかどうかを判断されるため、受理されないかもしれないような事情がある場合は、弁護士が記載内容を工夫することによって、受理の可能性を高めることができます。

手間がかからない

相続放棄の手続きは、まず、家庭裁判所に申述書と添付書類等を提出します。 そうすると、家庭裁判所から照会書が郵送されてくるので、照会書に記入して返送します。 稀に、家庭裁判所から出頭要請があることもあります。 弁護士に依頼すると、申述書の作成や添付書類を収集する手間が省けますし、照会書も弁護士の方に送られてくるので(本人に送られてくる場合もあるので、その場合は弁護士に転送します)、弁護士が記入して返送してくれます。 また、出頭要請がある場合も、家庭裁判所から弁護士に直接連絡がいき、弁護士が出頭してくれるので、取り次ぐ手間すらかかりません。 司法書士の場合は、相続放棄照会書・回答書は、必ず本人に届きます(司法書士に届くことはありません)。 また、相続放棄照会書・回答書は、弁護士なら本人を代理して記入することができますが、司法書士は本人を代理して記入することはできません(相続放棄申述書は司法書士が作成を代行することができますが、照会書・回答書については司法書士が作成を代行することはできないことにご注意ください。)。 司法書士に相続放棄申述受理申立の代行を委任した場合は、照会書・回答書については、司法書士に文案を作成してもらい、それを本人が自書することになるでしょう。 つまり、相続放棄の手続きは、司法書士よりも弁護士に頼んだ方が、手間がかからないということになります。

相続債権者が相続放棄の無効を主張してきた場合にも対応できる

相続放棄が受理された後、相続債権者(亡くなった人の債権者)が、相続放棄の無効を主張して、相続債務の弁済を求めてくることがあります。 そのような場合にも、弁護士に対応を依頼することができます(費用は別途必要)。

弁護士でなく司法書士に依頼するメリット

前述の事務所ごとの料金からわかるとおり、弁護士でなく司法書士に依頼するメリットは、費用が安いことが多い点です。 費用を重視したい場合は、司法書士に分がありますが、弁護士でも安く対応してくれる事務所はあります。 しかし、亡くなってから3か月以上が経っていたり、相続財産を処分してしまっていたりなど、相続を承認したとみなされる可能性のある事情が存在する場合は、相続放棄が受理されなかったり、受理されたとしても債権者等から無効主張されることもあるため、慎重に対応する必要があり、このような事情のある場合は特に、費用だけで専門家を選ぶべきではありません。

弁護士・司法書士の費用は誰が払う?

複数の相続人が相続放棄をする場合は、まとめて同じ専門家に依頼した方が、一人当たりの費用が安くなることが多いです。 複数人で依頼した場合、弁護士・司法書士の費用は誰が払うべきでしょうか? この点、決まりは特になく、誰かが他の人の分を負担しても構いませんが、割り勘が平等でよいのではないかと思います。

法テラスの相続放棄の手続き費用

法テラスでは、収入と資産の額が基準以下の方を対象に、弁護士・司法書士の費用の立替えをしています。 弁護士・司法書士の費用を一括で支払うことが難しい方は、法テラスを利用するとよいでしょう(なお、法テラスを利用しなくても分割払いができる事務所もあるので、そういった事務所を探してもよいでしょう)。 なお、法テラスを利用した場合の相続放棄手続きの費用・料金は決まっているわけではありませんが、目安としては、実費として10,000円、着手金として33,000円、合計43,000円程度が必要となり、複数名が同時に相続放棄をする場合には、追加の費用がかかります。 ただし、収入や資産が多い方は法テラスを利用できません。 利用基準については、法テラスのウェブサイトのこちらのページでご確認ください。 なお、利用基準を満たす場合は、法テラスを利用できますが、以下のような注意点を考慮のうえ、利用するかどうかを決めるとよいでしょう。
  • 審査が通るまでに時間がかかる
  • 専門家を自由に選べない
  • 経験の浅い専門家が多い
それぞれの点について説明します。

審査が通るまでに時間がかかる

法テラスを通じて弁護士や司法書士に依頼する場合、必要書類を取り揃え、審査を経て、契約を締結して、ようやく手続きを進めてもらうというながれになります。 審査には、2週間以上かかることもあります。 相続放棄の期限(相続の開始を知った時から3か月)が迫っている場合は、間に合わなくなるおそれがあります。

専門家を自由に選べない

すべての弁護士・司法書士が法テラスと契約をしているわけでなく、むしろ法テラスと契約している弁護士・司法書士は少数派ですので、専門家を自由に選ぶことはできません。 法テラス経由の依頼は料金が安くなるため、法テラス経由でなくても十分な数の依頼がある専門家は、法テラスと契約していないことが多いのです。

経験の浅い専門家が多い

法テラス経由で依頼できる専門家は、法テラスのスタッフとして働いている専門家と、法テラスと契約している外部の専門家がいます。 法テラスのスタッフとして働いている専門家は、経験の比較的浅い若手が多いです。

まとめ

以上、相続放棄の手続き費用について説明しました。 自分で手続きをすると費用は安くなりますが、相続放棄ができなくなってしまったり、手続きが負担になって仕事や生活に支障をきたしてしまったり、ストレスで体調を崩してしまったり、債権者からの取り立てに負担になるケースもあります。 最終的に自分でやることを諦めて、結局、専門家に依頼することになるケースも少なくありません。 二度手間にならないように、まずは、専門家に相談してみて、自分でできそうかどうかを考えてみるとよいでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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