低額譲渡にかかる税金の種類をケースごとにわかりやすく説明
節税対策のひとつに生前贈与が挙げられますが、生前贈与には贈与税がかかります。
贈与税は相続税よりも税率が高いため、やり方によっては余計に税金がかかってしまうことがあります。
そこで、贈与ではなく安く財産を売ってあげた場合はどうでしょう?これを低額譲渡と言います。
低額譲渡にも税金はかかりますが、個人間か法人間などで税金の種類が変わってきます。こちらの記事でその種類や税率、注意したいポイントなど詳しく見ていきましょう。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年6月7日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
相続問題でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください
個人から個人への低額譲渡には贈与税がかかる
個人から贈与を受けた財産には贈与税がかかりますが、個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合も、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされ、贈与税がかかります。
例えば、時価4,000万円の土地を1,500万円で購入した場合、その差額の2,500万円は贈与されたものとみなされるため、その2,500万円に対して贈与税が課税されるのです。
ここで、時価よりもどのくらい低ければ、みなし贈与になってしまうかという疑問が生じます。
みなし譲渡かどうかの判断
その判定基準については、現行の相続税法の法文上定められていません。よって、「著しく低い価額の対価」に該当するかどうかについては、個々の具体的事案につき社会通念に従い、課税の趣旨・目的に沿って合理的に判定すべきであると考えられています。
この判断は、相続税・贈与税に精通した税理士でなければ難しいので、時価よりも低い価額で財産を譲渡すること(または譲渡を受けること)を検討している方は、事前に相続税・贈与税に精通した税理士に相談することを強くお勧めします。
参考までに、土地を時価の約80%で譲渡した事例において低額譲渡に当たらないとした裁判例があります(東京地方裁判所平成19年8月23日判決)。しかし、時価の80%であれば必ずしも低額譲渡に当たらないとも限りませんので、ご注意ください。
なお、時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。
免除制度
また、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合であっても、譲り受けた人が資力を喪失して債務を弁済することが困難であることから、その弁済に充てるためにその人の扶養義務者から譲り受けたものであるときは、その債務を弁済することが困難である部分の金額については、贈与により取得したものとはみなされません。
この免除制度の適用を受けるためには、次の3つの要件のすべてに該当しなければならないと解されます。
- 譲受人が資力を喪失していること
- 譲受人に債務があり、この債務の弁済が困難であること
- 債務の弁済が困難な額が確定できていること
したがって、単に借金の返済が苦しいというだけでは、免除既定の適用を受けられない可能性があります。
素人判断で免除既定が適用されるだろうと考えて贈与税の申告をしないでいると、税務調査によって無資力が認められず、加算税や延滞税が余計にかかってしまうおそれがあります。
法人との間の低額譲渡にかかる税金
譲渡人(売主)と譲受人(買主)が、それぞれ個人なのか法人なのかによって、低額譲渡の際にかかる税金は異なります。
それぞれにケースにかかる可能性のある主な税金を表にまとめると、次のようになります。
売主にかかる可能性のある主な税金 | 買主にかかる可能性のある主な税金 | |
---|---|---|
売主:個人、
買主:個人 | 所得税(および住民税) | 贈与税 |
売主:個人、
買主:法人 | 所得税(および住民税) | 法人税 ※同族会社で、かつ、低額譲渡によって株価が増加した場合は、株主に贈与税 |
売主:法人、
買主:個人 | 法人税 | 所得税(および住民税) |
売主:法人、
買主:法人 | 法人税 | 法人税 |
以下、それぞれについて説明します。
個人間の低額譲渡
個人間の低額譲渡において買主に贈与税がかかる場合があることは前述のとおりですが、売主には所得税がかかる可能性があります。
譲渡所得税は、譲渡の対価が低額であったかどうかにかかわらず、以下の金額に対して課税されます。
特別控除額としては、例えば、自分の住んでいる家屋と土地を売ったときは、最高3千万円が控除されます。
譲渡所得税の税率
不動産に対する譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得とで異なります。
長期譲渡所得の場合は20%(内訳:所得税15%、住民税5%)、短期譲渡所得の場合は39%(内訳:所得税30%、住民税9%)です。
不動産を売った年の1月1日現在で、その不動産の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。
例えば、30年前に1,000万円で取得した不動産を3,000万円で譲渡しその譲渡費用が100万円だった場合は、長期譲渡所得なので税率は20%となり、譲渡所得税額は、「3,000万円-(1,000万円+100万円)×20%=380万円」となります(特別控除がない場合)。
なお、仮にこの不動産の時価が1億円のところ低額譲渡により3,000万円で譲渡した場合であっても、譲渡所得税の算定に当たっては、時価の1億円ではなく譲渡価額である3,000万円を基にして算定されます。
低額譲渡での注意
また、低額譲渡の場合は、譲渡損失を控除できないことに注意が必要です。
「譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)」がマイナスの場合は譲渡損失が生じていますが、通常、譲渡損失は譲渡所得から控除することができます。
例えば、AとBの2つの不動産を譲渡して、Aの譲渡所得が1,000万あって、Bの譲渡損失が1,000万円あった場合は、譲渡所得から譲渡損失を控除できるため、譲渡所得税は掛からないことになります。
しかし、Bの譲渡損失が低額譲渡によるものであった場合は、譲渡損失を控除することはできないのです。
なお、この場合の低額譲渡は、時価の2分の1未満の金額で譲渡することです。
贈与税の場合はどのような場合に低額譲渡に当たるかは一概には言えませんが、所得税の場合は明確に決まっているという違いがあります。
個人から法人への低額譲渡
売主である個人には所得税がかかる可能性がある
個人から法人への低額譲渡の場合、売主である個人には、所得税(および住民税)がかかる可能性があります。
個人間の低額譲渡の場合の所得税額は譲渡価額に基づいて算定されましたが、個人から法人への低額譲渡の場合は譲渡価額ではなく時価に基づいて算定されます。
つまり、「時価 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額」で計算される金額に対して、所得税がかかるのです。
買主である法人には法人税がかかる
低額譲渡の買主である法人には法人税がかかります。法人税は、時価と取得費との差額に対してかかります。
同族会社で低額譲渡によって株価が増加した場合は株主にも贈与税がかかる
低額譲渡を受けた会社が同族会社で、かつ、低額譲渡によって株価が増加した場合は、株価が増加した部分に相当した金額について、株主に贈与税がかかります。
同族会社とは、簡単にいうと家族経営の会社のことです。同族会社に当たるかどうかについては、税理士にご確認ください。
法人から個人への低額譲渡
売主である法人には法人税がかかる可能性がある
法人からの低額譲渡の場合、譲渡した財産の時価が、取得費(正確には簿価)と譲渡費用の合計額よりも大きければ、その差額に対して、法人税がかかります。
なお、個人が売主の場合にかかる譲渡所得税は、長期譲渡所得の場合は税率が低くなりますが、法人税には、そのような所有期間に応じた税額の減免措置はありません。
買主である個人には所得税がかかる
一方、買主である個人には、譲り受けた財産の時価と取得費との差額に対して、所得税(および住民税)がかかります。
売主である法人と買主である個人との間に雇用関係があれば給与所得となり、なければ一時所得となります。
法人間の低額譲渡
売主である法人には法人税がかかる可能性がある
法人からの低額譲渡の場合、譲渡した財産の時価が、取得費(正確には簿価)と譲渡費用の合計額よりも大きければ、その差額に対して、法人税がかかります。
これは、買主が個人であっても法人であっても同じです。
買主である法人にも法人税がかかる
買主である法人については、譲り受けた財産の時価と取得費との差額に対して、法人税がかかります。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続