弁護士監修記事
養子縁組をすると誰の戸籍に入る?戸籍の記載や苗字はどうなる?

養子縁組をすると、誰の戸籍に入るのでしょうか?
また、戸籍の記載や苗字はどうなるのでしょうか?
この記事では、養子縁組の戸籍や苗字に関する点を説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
養子縁組をすると戸籍はどうなる?
養子縁組をすると戸籍はどうなるのでしょうか?
養子縁組届には、「入籍する戸籍または新しい本籍」という欄があり、その中には、次の4つの選択があります。
- 養親の現在の戸籍に入る
- 養子夫婦で新しい戸籍をつくる
- 養親の新しい戸籍に入る
- 養子の戸籍に変動がない
養子縁組届に自分でチェックを入れる形式になっているので、どれにするか自分で選べるような気になるかもしれませんが、実は、自分で選ぶことはできません。
養子縁組前の養親と養子の戸籍の状況に応じて、縁組後の戸籍がどうなるのかは決まっているのです。
上記の4つのそれぞれのケースに当たる場合について説明します。
養親の現在の戸籍に入る
養親が筆頭者かその配偶者(または、その両方)で、養子が独身で養親と戸籍が別の場合は、養親の現在の戸籍に入ります。
筆頭者とは、戸籍の先頭に記載されている人のことです。
夫婦の場合は婚姻によって氏を改めなかった人が筆頭者になります。
養親が筆頭者かその配偶者ということは、つまり、養親が親と同じ戸籍に入っていないということです。
具体的に次のような経験がある場合は、親と戸籍が別になります。
- 婚姻(離婚して復籍している場合を除く)
- 未婚で出産し出生を届出
- 分籍
通常、結婚している人が養子を迎えるので、このパターンが最も多くなります。
なお、養子の氏(苗字)は、養親と同じ氏に代わります。
養子夫婦で新しい戸籍をつくる
養子が結婚していて、かつ、戸籍の筆頭者の場合は、養子夫婦で養親の氏の新しい戸籍をつくることになります(夫婦一緒に養子になる場合も同様)。
その場合は、養子の配偶者は、新しい戸籍に随従入籍します。
しかし、この夫婦の子は随従入籍しません。
子を同じ戸籍に入れるためには入籍届を出さなければなりません。
養親の新しい戸籍に入る
養親が親と同じ戸籍(つまり、筆頭者でもその配偶者でもない)で、養子が独身の場合は、養子縁組をすることで、養親を筆頭者とする新戸籍が自動的に編製され、養子もその戸籍に入ることになります。
養子の氏は養親の氏と同じになります。
養子の戸籍に変動がない
次の2つのいずれかに当たる場合は、養子の戸籍に変動がありません。
- 養親と養子が元々同じ戸籍にいる場合
- 養子が結婚していて筆頭者ではない場合
以下、それぞれについて説明します。
養親と養子が元々同じ戸籍にいる場合
身分事項に養子縁組をしたことが記載されます。
氏も元々同じなので変更はありません。
なぜ、養親と養子が元々同じ戸籍にいるのでしょうか?
順を追って説明します。
夫婦が離婚した場合、婚姻によって氏を改めた人(筆頭者ではない方)が、夫婦の戸籍から抜けます。
婚姻によって氏を改めなかった人(筆頭者。父とします。)と子供は戸籍を移動しません。
父が再婚し、再び氏を改めない場合は、後妻となる人が氏を改めて、その父子の戸籍に入籍します。
このようなかたちで後妻と連れ子が養子縁組をする場合、この2人は養子縁組前から同じ戸籍にいるので、縁組をしても戸籍を移動しないことになります。
養子が結婚していて筆頭者ではない場合
養子となる人が結婚していて筆頭者ではない、つまり、婚姻によって氏を改めた人である場合は、養子の戸籍に変動はありません。
身分事項欄に養子縁組をしたことが記載されます。
戸籍に変動がないので、氏も当然そのままです。
つまり、養親と養子の氏が異なることになります。
特別養子縁組をすると戸籍はどうなる?
特別養子縁組をすると、特別養子になる子だけの単独の戸籍が作られ、そこに一旦入ります。
そして、次に、養親の戸籍に入ります。
一旦、単独の戸籍を挟んでいるので、実親の戸籍を見ても、特別養子で除籍になったことは分かっても、どこに出て行ったかまでは分からなくなっているのです。
養子縁組すると戸籍にはどのように記載される
養子縁組をした場合の戸籍の記載は、普通養子縁組と特別養子縁組とで異なります。
電子化された戸籍(全部事項証明書)での記載について説明します。
普通養子縁組の戸籍の記載
普通養子縁組の場合は、続柄の項目に、養子が男性であれば「養子」と、養子が女性であれば「養女」と記載されます。
また、身分事項の欄に「養子縁組」と記載され、その右に【縁組日】【養父氏名】【養母氏名】【代諾者】【従前戸籍】が記載されます。
養親の身分事項の欄にも「養子縁組」と記載され、その右に【縁組日】【共同縁組者】【養子氏名】が記載されます。
特別養子縁組の戸籍の記載
特別養子縁組の場合は、続柄の項目は実子と同じで「長男」「長女」という記載です。
また、身分事項の欄には、「民法817条の2」と記載され、その右に【民法817条の2による裁判確定日】【届出日】【届出人】【従前戸籍】が記載されます。
実親の戸籍には、特別養子の子の【名】や【生年月日】等の欄の左に「除籍」と記載され、そして、身分事項の欄に「特別養子縁組」と記載されて、その右に【特別養子縁組の裁判確定日】【届出日】【届出人】【送付を受けた日】【受理者】【新本籍】【縁組後の氏】が記載されます。
【新本籍】には、縁組先の本籍ではなく、 追跡を難しくするためのいわばダミーのような戸籍(養子単独の戸籍)の本籍が記載されます。
縁組先の戸籍の【従前戸籍】にも、このダミーの戸籍が記載されるので、そちらからも追跡が難しくなっています。
離縁すると戸籍はどうなる?
養子が養親と同じ戸籍にいる状態であれば、離縁によって養子は縁組前の戸籍に戻ることになります。
戻る戸籍が除かれている場合は新しい戸籍を編製しますが、戻る戸籍が存在していても、新しい戸籍を編製することもできます。
離縁について詳しくは「養子縁組を解消する方法と養子縁組の解消で損しないためのお金の話」をご参照ください。
まとめ
以上、養子縁組の戸籍と苗字について説明しました。
分からないことは役場の戸籍の窓口で質問するとよいでしょう。