贈与税の申告ルールをわかりやすく説明!申告しないとどうなる?
親や祖父母等から贈与を受けた場合に、贈与税の申告は必要なのか、どうやって申告すればよいのか、申告しないとどうなるのか、税金を安くする方法はあるのか等、贈与税の申告に関する様々な疑問が生じることと思います。
この記事では、そのような疑問を解消していただくために、贈与税の申告に関するルールについて、一からわかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年9月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
贈与税の申告は誰がする?
贈与税の申告は誰が行わなければならないのでしょうか?
贈与者でしょうか?それとも、受贈者でしょうか?
贈与税を納付しなければならないのは、贈与者ではなく受贈者です。
したがって、贈与税の申告も贈与者ではなく、受贈者が行います。
なお、税の申告は税理士に依頼することができます。
贈与税の申告が必要な場合と不要な場合
贈与を受けた場合は、必ず贈与税の申告を行わなければならないわけではありません。
まず、贈与税の課税対象となるのは、個人から贈与を受けた場合です。
法人からの贈与は、贈与税ではなく、所得税と住民税の課税対象となります。
そして、贈与税の申告を行わなければならないのは、次の場合です。
- 暦年課税を適用する場合で、贈与の額が110万円を超える場合
- 相続時精算課税を適用する場合
暦年課税方式とは、1月1日から12月31日までの1年間にその者が贈与された財産について課税する方式です。
相続時精算課税を選択した場合以外は、この暦年課税方式によって課税されます。
暦年課税方式の場合は、毎年110万円の基礎控除枠が設定されているため、1年間に贈与を受けた額の合計が110万円以下だった場合は、贈与税はかからず、申告も不要です。
暦年課税について詳しくは、「暦年課税とは?暦年課税と相続時精算課税はどちらが得か?」をご参照ください。
相続時精算課税とは、親や祖父母から贈与を受けた場合に、贈与者1人につき贈与を受けた財産の価額が累計で2500万円に達するまで贈与税を非課税にし、代わりに相続時に相続税の課税対象とする制度のことです。
相続時精算課税を選択した場合は、2500万円までは贈与税は非課税になりますが、暦年課税制度の基礎控除枠が使えなくなってしまうため、贈与を受けた年は毎年申告が必要です。
相続時精算課税について詳しくは、「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。
また、財産の内容によっては、贈与税の課税対象とならないものもあります。
贈与税の課税対象とならない財産については、「贈与税がかからない場合は?」をご参照ください。
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贈与税の申告漏れはバレる?
贈与税の申告漏れは、税務調査で指摘を受ける可能性が高いでしょう。
ひょっとしたら、タンス預金でコツコツ貯めたヘソクリを贈与して、受贈者もタンス預金をした場合は、バレない可能性もあるかもしれませんが、バレないとしても違法行為なので、まったくお勧めできません。
タンス預金は、盗難や火災、自然災害で失ってしまうリスクもあるので、そういった意味でもお勧めできません。
それでは、なぜ、贈与税の申告漏れは発覚するのでしょうか?
不動産の場合は、所有権移転登記(名義変更)を行うことによって、税務署にも贈与があったことが分かります。
金銭の場合は、相続税の調査の際に、生前贈与の申告漏れが発覚することが多いです。
例えば、所得等から想定して相続税の基礎控除額以上の遺産を持っているはずの人が亡くなった後、相続人が相続税の申告をしなかったり、想定されるよりも過少な申告内容だったりした場合に、相続税に対して税務調査が入ります。
税務調査では、過去10年間分程度の銀行口座の履歴が調査されます。
銀行口座の履歴調査によって、過去の出金が洗い出され、生前贈与があったことが発覚することがあるのです。
また、今後、銀行口座とマイナンバーの紐づけが進めば、これまでよりも容易に申告漏れが発覚することになります。
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申告漏れが発覚するとどうなる?
それでは、贈与財産の申告漏れが発覚するとどうなるのでしょうか?
余計に税金をかかってしまったり、刑事罰を受ける可能性があります。
申告漏れが発覚した場合に余計に課せられる税金
余計にかかる税金には、加算税と延滞税があります。
この2つの違いをざっくりと説明すると、加算税とは適切に申告しなかった人に対して加算される罰則的な意味合いの税金で、延滞税とは適切に納付しなかった人に対する利息的な意味合いの税金です。
適切に申告しない場合は、納付も適切に行えていないでしょうから、加算税と延滞税の両方が課せられることになります。
また、申告は適切に行ったものの、納付しなかった場合は、延滞税が課せられることになります。
加算税
加算税には、次の4つの種類があります。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
このうち不納付加算税は、申告ではなく納付に関係する加算税で、源泉所得税に関するものなのですが、贈与税とは関係がないので、ここではそれ以外の3つについて説明します。
無申告加算税
無申告加算税は、申告を行うべきケースであるにもかかわらず、申告期限(贈与を受けた翌年の3月15日)までに申告を行わなかった場合に課せられる加算税です。
税率は、本来納付すべきだった税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
例えば、本来納付すべき税額が100万円だった場合の無申告加算税は次の式で計算することができます。
50万円×15%+(100万円-50万円)×20%=17万5千円
なお、税務調査によらず自主的に期限後申告を行った場合は、税率は一律5%に軽減されます。
過少申告加算税
過少申告加算税は、申告はしたが申告した税額が過少であった場合に課せられる加算税です。
税率は、新たに納めることになった税額に対して、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%です。
なお、税務調査によらず自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税は課されません。
重加算税
重加算税は、事実を仮装隠蔽し申告を行わなかった場合や、仮装に基づいて過少申告を行った場合に課せられる加算税です。
単なる申告漏れではなく、贈与を受けたことを隠して脱税しようとしたような場合が対象です。
税率は、無申告の場合が40%で、過少申告の場合が35%と大変重くなっています。
延滞税
延滞税は、前述の通り、納税が遅れた場合に課せられる利息的な意味合いの税金です。
延滞税は、納付期限の翌日から納付の日まで課せられます。
税率は、納付期限から2か月以内とそれ以降とで異なり、また、世の中の金利とも連動して変動します。
世の中の金利が高い場合は特例基準割合も高く、世の中の金利が低い場合は特例基準割合も低くなります。
上限値でいうと、納付期限から2か月以内が7.3%、それ以降が14.6%です。
しかし、2018年現在は、世の中の金利が低いので、延滞税の税率も上限値よりも低くなっていて、2か月以内が2.6%、それ以降が8.9%となっています。
刑事罰が科せられる可能性もある
贈与税を脱税すると、前述の重加算税や延滞税が課せられるだけでなく、裁判で有罪となった場合には、懲役や罰金が科せられる可能性があります。
法定刑は、故意に税を免れる意思があり申告しなかった場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が、故意に税を免れる意思はなかった場合でも1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
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贈与税を申告しなかった場合に時効で逃げ切れる?
贈与税を申告しなかった場合の時効は次の通りです。
刑事罰 | 5年 | |
---|---|---|
納税義務 | 期限内に申告した場合 | 3年 |
期限内に申告しなかったが、偽りや不正行為はない場合 | 6年 | |
偽りや不正行為がある場合 | 7年 |
表中の年数は、申告期限からの年数です。
最大でも7年経てば、時効ということになりそうですが、現実はそう甘くはありません。
贈与後7年以上経って、贈与者が亡くなり、相続時に税務調査が入ったとします。
この際に、贈与税の無申告が発覚した場合、贈与は成立していないとして、相続税の対象とされてしまうことがあります。
これには、贈与契約書を作成するといった対策が講じえますが、そもそも、時効で逃げ切ろうという考えはリスクが極めて高いです。
時効成立前に発覚してしまえば、刑事罰が科せられ前科がついてしまう可能性もありますし、加算税や延滞税により、非常に重い税が課せられてしまいます。
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贈与税の申告期間と納税期限
贈与税の申告期間は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までです。
納税の期限は、申告期間の最終日である3月15日です。
贈与税の申告方法
贈与税の申告方法には次の3つがあります。
- 税務署に持参して直接申告する
- 郵送で申告する
- 「国税電子申告・納税システム」(e-Tax(イー・タックス))で申告する
- 税理士に依頼して申告する
申告は、受贈者の住所地を所轄する税務署宛に行います。
全国の税務署の所在地と電話番号は、国税庁ウェブサイトの「税務署の所在地などを知りたい方」のページで調べることができます。
また、e-Taxの利用が、2019年申告分(2018年贈与分)から簡単になります。
これまでe-Taxの利用には、マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要でしたが、2019年申告分からこれらが不要になります(従来通りの方式でも利用可能です)。
税務署に行ってIDとパスワードを発行してもらえば、e-Taxを利用できます。
ただし、これはマイナンバーカードとICカードリーダライタが普及までの概ね3年間の暫定的措置なので、暫定的措置実施期間終了後は、再びマイナンバーカードとICカードリーダライタが必要になります。
なお、贈与税の申告書はe-Taxソフトで作成することはできないため、確定申告書等作成コーナーを利用して作成したものをe-Taxで送信します。
確定申告等作成コーナーで作成した申告書は、印刷して、郵送や持参での申告に用いることもできます。
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贈与税申告の必要書類
贈与税申告書
贈与税の申告に必要な書類は、基本的には贈与税申告書と本人確認のみです(申請内容によって別途書類が必要になります。詳しくは後述します)。
本人確認は、郵送の場合、マイナンバー通知カード・免許証等の本人確認書類のコピーの添付が必要ですが、税務署で提出する場合は提示で事足ります。
贈与税申告書には、いくつかの種類があり、申告内容によって使用する申告書が異なります。
詳しくは下表をご参照ください。
申告の内容 | 使用する申告書 |
---|---|
暦年課税のみを申告する人 | 第一表 |
相続時精算課税のみを申告する人 | 第一表と第二表 |
暦年課税と相続時精算課税の両方を申告する人 | 第一表と第二表 |
住宅取得等資金の非課税と暦年課税を申告する人 | 第一表と第一表の二 |
住宅取得等資金の非課税と相続時精算課税を申告する人 | 第一表と第一表の二と第二表 |
「住宅取得等資金の贈与税の非課税」とは、2015年1月1日から2021年12月31日までの間に、自宅の新築、取得、増改築等のための資金を、父母や祖父母などの直系尊属から贈与された場合に、一定の要件を満たせば、一定の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。
詳しくは、「住宅取得資金贈与を非課税にする方法と使わない方が節税になるケース」をご参照ください。
もっとも、前述の確定申告書等作成コーナーで申告書を作成する場合は、申告内容の違いによる申告書の種類の違いを意識することなく、画面の指示に従って申告書を作成すれば、適切な種類の申告書が仕上がるようになっています。
確定申告書等作成コーナーの利用をお勧めしますが、手書きで作成する場合は、上表中のリンクから申告書を開くことができますので、印刷してご利用してください。
確定申告書等作成コーナーを利用した申告書の作成方法について、こちらをご参照ください。
添付書類
上述の通り、申請内容によっては、申告書以外の書類が必要となります。
次の3つのいずれかに当たる場合には、それぞれに掲げる添付書類が必要です。
- 贈与税の配偶者控除の特例の適用を受ける場合
- 相続時精算課税の適用を受ける場合
- 住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合
以下、それぞれの場合に必要になる添付書類について説明します。
贈与税の配偶者控除の特例の適用を受ける場合
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産か居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除できるという特例です。
贈与税の配偶者控除の特例の適用を受ける場合は、主に次の書類の添付が必要です。
- 受贈者の戸籍の謄本又は抄本(居住用不動産等の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
- 受贈者の戸籍の附票の写し(同上)
- 登記事項証明書など(受贈者が控除の対象となった居住用不動産を取得したことを証する書類)
相続時精算課税の適用を受ける場合
相続時精算課税の適用を受ける場合は、主に次の書類の添付が必要です。
- 相続時精算課税選択届出書
- 受贈者の戸籍の謄本か抄本
- 受贈者の戸籍の附票の写し(受贈者が平成7年1月3日以後に生まれた人である場合は不要)
- 贈与者の住民票の写し(戸籍の附票の写しなど)
住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合
住宅取得等資金の非課税とは、2015年1月1日から2021年12月31日までの間に、自宅の新築、取得、増改築等のための資金を、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与された場合に、一定の要件を満たせば、一定の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。
住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合には、主に次の書類の添付が必要です。
- 受贈者の戸籍の謄本
- 源泉徴収票(確定申告した方は不要)
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贈与税申告についての相談先
贈与税申告についての相談先としては、税務署と税理士があります。
申告手続きを税理士に依頼するつもりの人は、相談先も当然、税理士になります。
一口に税理士といっても、それぞれ専門分野があるので、贈与税や相続税を専門とした税理士に相談するとよいでしょう。
なお、自分で申告しようかどうか迷っている人も、一度税理士に相談してから決めるとよいでしょう。
贈与や相続が専門の税理士なら、申告手続きだけでなく、贈与税や相続税の対策についても相談に乗ってもらえます。
自分で申告手続きを行うつもりの方は、税務署に相談するとよいでしょう。
全国の税務署は国税庁ウェブサイトの税についての相談窓口のページから探すことができます。
このページから所轄税務署(受贈者の住所地を所轄する税務署)の電話番号を調べて電話すると、自動音声による案内が流れます。
電話で相談したい場合は電話機の「1」を、税務署を訪問して面談で相談した場合は電話機の「2」を押します。
「1」を押した場合は、さらに、相談内容を選択する案内が流れますので、贈与税申告についての相談は電話機の「3」を押します。
そうすると、電話相談センターの職員に電話がつながります。
初めの案内で「2」を押した場合は、所轄税務署の職員が出るので、面談の予約をしてください。
なお、予約をせずに訪問しても面談はできません。
まとめ
以上、贈与税の申告に関するルールについて説明しました。
記事を読んでもわからないことは、税理士や税務署にご相談ください。
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この記事を書いた人
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