弁護士監修記事

相続人が音信不通の場合に不在者財産管理人を選任し遺産分割する方法

親が亡くなって相続人となったものの、共同相続人である兄弟が音信不通で、遺産分割が進められないというケースがあります。

このような場合には、不在者財産管理人を選任して遺産分割を行うことができます。

また、不在者財産管理人は、遺産分割のケース以外にも、不在者の財産について管理の必要がある場合に、その選任が必要になります。

この記事では、不在者財産管理人が必要となるケースや、不財産者財産管理人の役割、不在者財産管理人選任の申立て方法等、不在者財産管理人に関する知識について網羅的に分かりやすく説明します。

是非参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

不在者財産管理人とは?

不在者財産管理人とは、家庭裁判所によって選任され、不在者本人や債権者のために、不在者の財産を管理する人のことです。

不在者とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人のことをいいます。

電話しても出ないとか、数日家に帰っていないとか、その程度の場合は不在者には当たらず、不在者財産管理人は選任されません。

不在者財産管理人が必要なケース

不在者財産管理人の選任は、次のようなケースで必要になります。

  • 不在者が共同相続人で遺産分割したい場合
  • 建物の老朽化等で不在者の財産を管理する必要がある場合
  • 土地収用等で不在者の財産を売却する必要がある場合
  • 不在者の財産を時効取得し、それについて確定判決を得たい場合
  • 不在者の所有する土地の隣地の所有者が不在者の所有する土地との隣地境界線を確定させたい場合
  • 不在者の所有する不動産に設定した担保権を実行したい場合

このように不在者財産管理人の選任が必要なケースは多々ありますが、ほとんどのケースは遺産分割したい場合です。

不在者財産管理人の役割

不在者財産管理人の主な役割は、不在者の財産の管理と保存です。

不在者財産管理人に選任されると、財産目録や管理報告書を作成し、家庭裁判所に提出します。

その後も、家庭裁判所から求められれば、不在者の財産状況を報告します。

また、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割、不動産の売却等を行うこともあります。

誰が不在者財産管理人になれる?

不在者財産管理人の選任を申し立てる際に、申立書に候補者を記述しても構いません。

候補者として挙げられた人がそのまま選任されることが多いです。

候補者は、弁護士や司法書士等の専門家でも構いませんし、不在者の親戚や友人でも構いません。

候補者について家庭裁判所が不適格だと判断した場合は、弁護士や司法書士等の専門家が選任されます。

候補者の適格性は、職務を適切に行えるそうかといった点や、候補者と不在者との関係、利害関係の有無などを考慮して判断されます。

後見開始の審判を受けた人や、不在者と利害が対立する共同相続人等は、不適格と判断される可能性があるでしょう。

不在者財産管理人の報酬

財産管理人から請求があった場合、家庭裁判所の判断により、不在者の財産から支払われることになります。

不在者の親戚や友人が管理人になった場合は、報酬を請求しないことも多いです。

弁護士や司法書士等の専門家が管理人になった場合は、報酬は必要です。

報酬額は管理の煩雑さ等の事情によって異なりますが、目安としては月額1万円~5万円くらいです。

不在者の財産が乏しく、不在者の財産から財産管理人への報酬等の管理費用を捻出することが難しいと家庭裁判所が判断した場合は、家庭裁判所は申立人に対して30万~100万円程度の予納金の納付を求めます。

管理費用に充当された予納金は返還されません。

不在者財産管理人選任の申立て方法

不在者財産管理人が必要な場合は、家庭裁判所にその選任を申し立てます。

不在者財産管理人選任の申立て方法について、以下、説明します。

申立先

申立ては、不在者の従来の住所地または居住地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、こちらから調べられます。

申立てができる人

申立てができるのは、次の人です。

  • 利害関係人
  • 検察官

利害関係人には、次のような人が該当する可能性があります。

  • 不在者の共同相続人
  • 不在者の所有不動産の使用者
  • 不在者の所有財産の時効取得者
  • 不在者の所有する土地の隣地所有者
  • 不在者の所有する土地の担保権者

また、検察官が申立てる場合は、例えば、不在者の所有する土地を収用(公益事業に使用する目的で国や地方公共団体が強制的に買取ること)する必要がある場合に、不在者財産管理人の選任を申し立てる利害関係人がいないような場合です。

申立てに必要な書類

申立てには次の書類が必要です。

家事審判申立書の用紙は家庭裁判所で入手可能ですが、上のリンクから印刷し利用しても構いません。

各種目録も同様に上のリンクからダウンロード可能です。

記入に当たっては、こちらの記入例を参考にしてください。

不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)と戸籍附票は、不在者の本籍地の市区町村役場で取得することができます。

利害関係人が不在者財産管理人選任の申立てのために取得する場合は、本人の委任状がなくても取得することができます。

候補者の住民票は候補者の住所地、候補者の戸籍附票は候補者の本籍地の市区町村役場で取得することができます。

候補者と申立人との関係によっては委任状が必要になる場合もあるので、候補者自身に取得してもらった方がよいでしょう。

不在の事実を証する資料とは、警察署長の発行する家出人届出受理証明書や返戻された不在者宛の手紙等が該当します。

不在者の財産に関する資料とは、不動産登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高が分かる通帳写しや残高証明書等があります。

利害関係を証する資料は、親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書)ですが、契約関係であれば契約書の写し等が該当します。

申立ての費用

申立ての費用は、収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手代です。

申立ての費用としては以上ですが、申立て後に、前述の通り、裁判所から予納金の納付を求められる場合があります。

また、戸籍謄本、戸籍附票、住民票等の添付書類の交付を受けるための手数料が役場で必要になります。

戸籍謄本は1通450円、戸籍附票と住民票は1通300円です。

なお、申立手続を弁護士や司法書士等の専門家に依頼することもできますが、その場合は、その費用がかかります。

オープン価格なので料金はそれぞれですが、相場としては10万円~20万円くらいだと思われます。

不在者財産管理人選定の審理と審判

申立てが受理されると、家庭裁判所による審理に移ります。

裁判所は、申立書や所在不明となった事実を裏付ける資料を確認した上で、申立人から事情を聴いたり、不在者の親族に照会したりします。

さらに、不在者の犯罪歴や運転免許証の更新の有無を確認したりします。

不在者が逮捕、送検されていたり、運転免許証を更新していたりした場合は、不在者の所在が分かることがあります。

不在者の所在が分かった場合は、申立を取り下げなければなりません。

審理の結果、不在であることの確認がとれば場合は、家庭裁判所は不在者財産管理人の選任の審判を行い、財産管理人を選任します。

遺産分割等の権限外行為を行う方法

不在者財産管理人の権限は、基本的には、不在者財産の管理と保存です。

遺産分割に同意したり、財産の処分を行うことは権限外行為に当たります。

ただし、権限外行為も事前に家庭裁判所に申し立てをし、認められれば行うことができます。

権限外行為の申立てには、選任申立てと同様に、申立書や目録が必要です。

以下のリンクからダウンロードしてご利用ください(再掲)。

記入に当たっては、こちらの記入例を参考にしてください。

なお、権限外行為許可の申立を、弁護士や司法書士等の専門家に代行してもらうこともできます。

その場合の費用は、オープン価格ですが、相場としては10万円~20万円くらいだと思われます。

不在者財産管理人の使い込みが発覚すると、どうなる?

不在者財産管理人が不在者の財産を不正に使い込んだ場合は、財産管理人を改任(なお、「解任」の変換ミスではなく「改任」と書きます。)されるほか、損害賠償請求を受けるなど民事上の責任を問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を問われたりすることもあります。

不在者財産管理人の職務はいつ終わる?

不在者財産管理人の職務は次のような場合に終了します。

不在者財産管理人は、不在者が現れたときは不在者に、不在者について失踪宣告がされたときや不在者の死亡が確認されたときは不在者の相続人に、それぞれ不在者の財産を引き継いで職務を終了します。

なお、不在者財産管理人の選任を申し立てた目的の職務(例えば、遺産分割)が終わっても、不在者財産管理人の職務が終わるわけではありません。

まとめ

以上、不在者財産管理人について説明しました。

不在者財産管理人選任の申立について分からないことは、管轄の家庭裁判所に問い合わせるとよいでしょう。

弁護士や司法書士等の専門家に申立の手続を依頼することもできます。

また、不在者の親戚などで不在者財産管理人の適任者がいない場合は、不在者財産管理人の就任についても、弁護士や司法書士等の専門家に依頼することができます。

不在者がいて法的手続きが進まない場合は、一度、弁護士や司法書士に相談してみるとよいでしょう。

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