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遺産分割の方法のひとつに「現物分割」があります。これは遺産を現物のまま、その形状や性質を変更せずに分割する方法です。
遺産分割にはその他にも、「代償分割」「換価分割」などがありますが、実際には現物分割がほとんどです。
かといって、
現物分割だと不公平になってしまうことも。そのときは、
状況に応じて適切な分割方法を選択しましょう。
この記事では、遺産分割のそれぞれの方法について、利用できる場面やメリット・デメリットを紹介します。
遺産の分割方法について詳しく知りたい…とお考えの方などは是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年10月27日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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現物分割とは?
現物分割とは、
遺産を現物のまま、その形状や性質を変更することなく分割する方法のことです。
要するに一般の人が通常想像するような一般的な分割方法が現物分割で、実際にほとんどのケースでは現物分割によって遺産分割がなされています。
例えば、相続人が
Aと
Bの
2人で、遺産は、現金
1,000万円と、土地
1筆(時価
1,000万円)、自動車
1台(時価
100万円)であるとします。
この場合に、
次のような分割方法は現物分割に当たります。
Aが取得する財産 |
Bが取得する財産 |
• 現金50万円
•土地(時価1,000万円) |
• 現金950万円
•自動車(時価100万円) |
また、土地は分筆(
1筆の土地を分けること。土地は
1筆、
2筆と数えます。)することができますが、
以下のような分筆による遺産分割も現物分割に当たります。
Aが取得する財産 |
Bが取得する財産 |
• 現金450万円
• 分筆後の土地(時価500万円)
• 自動車(時価100万円) |
• 現金550万円
• 分筆後の土地(時価500万円) |
もっとも、土地を分筆すると価値が下がることがあるので、分筆しないと現物分割が難しい場合は、後述の代償分割や換価分割も併せて検討すべきでしょう。
なお、例えば、間口が広く奥行の浅い形状と土地であれば、分筆しても価値が下がらないこともありますので、分筆して現物分割すべきか、代償分割や換価分割によるべきかについては慎重に判断すべきです。
このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
現物分割以外の遺産分割の方法
現物分割以外の遺産分割の方法には、代償分割と換価分割があります。
それぞれについて、以下で説明します。
代償分割
代償分割とは?
代償分割とは、
現物分割によると、法定相続分どおりにうまく分割できない場合等に、法定相続分よりも多く相続する人から、少なく相続する人に対して、法定相続分との差額分を代償する分割方式のことです。
なお、法定相続分とは、民法に規定による各相続人の相続分のこといいます。実際の相続分が法定相続分と異なっていても、すべての相続人の同意があれば問題ありませんが、通常は法定相続分通りの割合で分割されます。
先ほどの設例に基づくと、
以下のように分割するのが代償分割です。
|
取得する財産 |
代償金 |
合計 |
A |
• 土地(時価1,000万円)
• 自動車(時価100万円) |
-50万円 |
1,050万円 |
B |
現金1,000万円 |
+50万円 |
1,050万円 |
このケースでは、
Aが土地と自動車を希望して、
Bが現金の取得を希望しました。
遺産総額は
2,100万円なので、
Aと
Bの法定相続分が
2分の
1ずつとすれば、それぞれ
1,050万円ずつ取得できるはずです。
土地と自動車の時価は合計
1,100万円で、現金は
1,000万円なので、このままでは、
Aが法定相続分よりも
50万円多く取得し、
Bが
50万円少なく取得することになってしまいます。
それで、
Bが納得すれば問題はありせんが、法定相続分通りに相続したいと言う場合は、
Aの自己資産から
Bに対して
50万円を代償することで、不公平を解消することができます。
このような分割方法を代償分割といいます。
代償分割が利用されるケース
代償分割は、例えば、次のようなケースで利用されます。
- 唯一の遺産が自宅しかなく、相続人が複数いるために分割しにくい。
- →解決法:自宅を相続する相続人が他の相続人に代償金を支払う。
- 遺産が預金(2,000万円)と賃貸用不動産(時価1億円相当)で相続人が3人いるため、賃貸用不動産を分割するのが難しい。
- →解決法:相続人の1人が賃貸用不動産を相続し、他の2人に代償金を支払う。
- 被相続人が事業を営んでいたため遺産の大部分が事業用の不動産であり、相続人が複数人いるところ、事業用の不動産は事業を引き継ぐ相続人が単独で相続したい。
- →解決法:事業を引き継ぐ相続人が事業用不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う。
- 遺産が預金(3,000万円)と自社株(1億円相当)で、相続人が2人いるが、自社株は経営を引き継ぐ相続人が単独で相続したい。
- →解決法:自社の経営を承継する相続人が自社株を、もう1人の相続人が預金を相続し、自社株を相続した相続人がもう1人の相続人に代償金を支払う。
このように、
代償分割は、遺産において、分割しやすい財産である現金や預金の割合が少なく、分割しにくい財産の割合が大きいときに利用されるケースが多いと言えます。
代償分割の注意点
代償分割の注意点としては、次のような点が挙げられます。
- 代償金を支払う資力のある相続人がいないか、又は、資力のある相続人はいるものの、その人が代償分割の対象となる財産の取得を望んでいない場合は、基本的には利用できない
- 代償分割の対象財産を取得した人に代償金を支払う資力がない場合でも、将来に代償金を支払うことを約束して代償分割を利用することはできるが、結局支払われずにトラブルになることがある
- 代償分割の対象財産の評価について意見が割れて揉めることがある
なお、代償分割については、以下の記事をご参照ください。
換価分割
換価分割とは?
換価分割とは、
遺産分割において、分割対象である遺産を売却して金銭に換えてから共同相続人間で分割するという方法です。
例えば、先ほどの例でいうと、土地と自動車とをそれぞれ
1,000万円と
100万円で売ると、元からあった現金
1,000万円と併せて、現金
2,100万円になります。
これを
Aと
Bとで
1,050万円ずつ相続します。これが換価分割です。
土地だけを換価分割して、自動車は現物分割するということも可能です。
換価分割が利用されるケース
換価分割は、例えば、次のようなケースで利用されます。
- 現金や預金の割合が少なく現物分割によることが困難であり、かつ、代償金を支払う資力のある相続人がいないか、又は、資力のある相続人はいるものの、その人が代償分割の対象となる財産の取得を望んでいない場合
- 取得したい人が誰もいない財産がある場合
- 納税資金が不足している相続人が複数いる場合
- 財産評価で意見が割れて評価額が決まらない場合
現金や預金の割合が少なく現物分割によることが困難であり、かつ、代償金を支払う資力のある相続人がいないか、又は、資力のある相続人はいるものの、その人が代償分割の対象となる財産の取得を望んでいない場合
換価分割には後述のようなデメリットがあるため、現物分割によることが難しい場合は、換価分割よりも先に代償分割を検討してみるべきですが、
代償分割は、代償金を支払う資力のある人がいない場合や、資力のある人が代償分割の対象財産の取得を希望しない場合は利用できません。したがって、このようなケースでは、換価分割が利用されることが多くなります。
取得したい人が誰もいない財産がある場合
2について、取得したい人が誰もいない財産は、換価して分割した方がよいので、換価分割が利用されます。もっとも、誰も取得を希望しないような財産は、買い手がつかず、換価が難しいことが多いでしょう。この点については、以下の記事を必要に応じてご参照ください。
納税資金が不足している相続人が複数いる場合
相続税は、自己資産のほか、相続した現金や預貯金から支払うこともできますが、自己資産が少なく、現金や預貯金の割合が小さい場合は、納税資金が不足することがあります。資金不足の人が一人なら、分割後に換価すればよいのですが、
複数いる場合は換価分割によって資金を確保した方がそれぞれ換価するよりも効率がよいでしょう。
財産評価で意見が割れて評価額が決まらない場合
現物分割や代償分割では、財産を評価する必要が生じますが、換価分割ではその必要がありません。財産評価を巡って意見が割れ、どうしても決着しようがない場合は、換価分割を検討するケースもあるでしょう。しかし、換価分割には後述のデメリットがあるため、なるべく現物分割や代償分割で解決できるように、専門の士業に相談する等するとよいでしょう。
換価分割の注意点
換価分割の注意点としては、次のような点が挙げられます。
- 換価できないと利用できない
- 換価するのに手間や費用がかかる場合がある
- 譲渡所得税がかかる可能性がある(亡くなった人が財産を取得した時よりも価額が値上がりしている場合)
換価分割については、こちらも参考にしてください。