連帯保証人の死亡後に相続人、主債務者、債権者がとるべき対応
連帯保証人となっている人が亡くなった場合、その人の相続人、主債務者、債権者は、それぞれどのように対応すべきでしょうか?
相続財産は、金銭等のプラスの財産だけでなく、債務や借金などマイナス財産も含みますが、
連帯保証していた契約は相続財産になるのでしょうか。
その契約の債務が発生したらどうなるのでしょうか。
是非、参考にしてください。
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目次
[ご注意]
記事は、公開日(2021年1月12日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
連帯保証人が死亡すると保証債務も相続財産となる
連帯保証人が死亡すると、保証債務も相続財産となります。
相続人が相続を単純承認すると、相続した保証債務は相続人が引き継ぐことになります。
なお、相続人が複数いる場合は、原則として、法定相続分に応じて分担します。
相続人間で協議して、誰か一人が全額負担することにする等、負担割合を変更することもできますが、これに債権者が同意しなければ、債権者は相続人間の決定に拘束されません。相続人の一人が自分が負担すべき金額を超えて弁済した場合は、その超えた金額を他の相続人に求償することができます。
相続人は、相続を単純承認する以外に、放棄することや限定承認することも可能です。
相続を放棄すると、相続人は被相続人(亡くなった人)の権利や義務を一切承継しません。そうすると、被相続人の連帯保証債務も相続しないことになります。相続財産について積極財産よりも債務の額が大きい場合は、相続放棄をした方がよいでしょう。
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また、積極財産額と債務額のどちらが大きいか判断がつかない場合は、限定承認という制度を利用する手もあります。限定承認は、相続人が相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈(遺言によって遺産を取得させること)を弁済すべきことを留保して、相続を承認する制度です。
簡単に言うと積極財産から負債と特定遺贈(対象となる財産を特定した遺贈)される財産を差引いて余りが出た分だけ相続し、マイナスになったとしても相続人はマイナス分を負担しなくてよいとわけです。一見、相続人にとって都合のよい制度に見えますが、債務の清算が必要だったり、相続人全員でしなければならなかったりと、使い勝手が悪く、あまり利用されていません。
相続放棄や限定承認をしたい場合は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。この期間が過ぎると、単純承認をしたものとみなされます。
死亡後に生じる債務は対象外
一定範囲に属する不特定の債務について保証する「根保証」の相続については、2020年4月1日に改正法が施行され、ルールが変更されました。
改正前は相続開始後に生じた債務についても保証の対象でしたが、改正後は相続開始後に生じた債務については保証の対象外となりました(なお、貸金等債務についての根保証では、改正前から相続開始後に生じた債務は保証の対象外とされています。)。
改正法施行後に締結された契約は、改正法の適用を受けることになります。
相続開始が改正後であっても、契約締結が改正前であれば、改正法の適用を受けません。
なお、建物賃貸借契約では、契約期間を2年間と定めているケースが多いですが、改正法施行後に賃貸借契約が更新された場合に、この賃貸借契約に付随して締結された保証契約に改正法が適用になるかどうかは、ケースによります。
連帯保証人が死亡した際に相続人がとるべき対応
相続人となったら、まず、相続財産の調査をするとよいでしょう。
この調査によって、積極財産や保証債務も含めた債務の全容を明らかにし、相続放棄をするか、承認するかを決めます。
調査には日数を要しますし、前述のとおり、相続放棄には期限があるため、なるべく早期に取り掛かかりましょう。
調査方法がよくわからない場合や、自分で調査する時間がない場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
相続を承認することにした場合は、どうすればよいでしょうか?
根保証の場合と、根保証でない場合に分けて説明します。
根保証の場合、前述のとおり、2020年4月1日以降に締結した契約については、相続開始後に生じた債務は保証の対象外です(つまり、根保証ではなくなります)が、改正法が適用されないケースでは、相続開始後に生じた債務についても保証の対象となり、保証債務の金額が増え続けるおそれがあります。
ところで、保証を伴う契約の多くは、保証人が死亡した場合には、債権者が主債務者に対して新たな保証人を立てることを請求できるよう定められています。
そうすると、債権者が、保証人の相続人について、保証人として不適当と判断すれば、主債務者に対して、新たな保証人を立てるように求めるでしょうから、相続人としては、債権者に対して、資力が乏しいこと等を説明し、保証人から外すように掛け合ってみるとよいでしょう。
また、改正法が適用になるケースでは、根保証は外れますが、やはり、保証人から外してもらえた方が得であることには違いありません。そして、元々根保証でない場合は、法改正は関係ありませんが、やはり保証人から外してもらえた方が都合がよいので、債権者に掛け合ってみるとよいでしょう。
連帯保証人が死亡した際に主債務者がとるべき対応
保証を伴う契約の多くには、保証人が死亡した場合において、主債務者は保証人の死亡を債権者に通知する義務があることや、債権者は主債務者に対して新たな保証人を立てることを請求ができることが定められています。
このような約定に反して、保証人の死亡を債権者に通知しなかった場合や、新たな保証人を立てなかった場合に、債権者が解約や契約更新をしないことができるかといった点が問題となります。
この点、通知することをうっかり忘れたからといって、それだけを理由とした解約は直ちには認められにくいと思われますが、意図的に通知しないと解約が認められる可能性が上がる要因となりえるため、意図的に通知しないことはお勧めできません。
また、通知はしたとして、債権者の求めに応じて新たな保証人を立てることできなかった場合はどうでしょうか?この点についても、やはり、それだけで直ちに解約できるとは考えにくいですが、新たな保証人を立てられない場合は、保証人の相続人が保証人となるため、保証人の相続人との関係が薄い等、迷惑を掛けたくない場合は、保証会社の利用等も含めて検討するとよいでしょう。
連帯保証人が死亡した際に債権者がとるべき対応
ここでは、特に賃貸物件の貸主を念頭において説明します。
建物賃貸借契約では、契約書に保証人が死亡した場合の通知義務や債権者の求めに応じて新たな保証人を立てる義務を主債務者に課す条項を設けているケースが多いでしょう。
前述のとおり、2020年4月1日に改正法が施行され、その後に締結した契約では、保証人が死亡すると、根保証が外れ、相続人には相続開始前に生じた債務しか請求できません。
改正法が適用になるケースでは、新たな保証人が立てられなければ、相続開始後に生じる債務については無保証になってしまいます。
これを避けるために、約定に基づき、借主に新たな保証人を求めたとしても、保証人が死亡したことの通知がないことや、借主が新たな保証人を立てないことを理由に直ちに解約することは認められにくいと思われますが、求めに応じて借主が新たな保証人を立ててくれることも十分にあり得るので、まずは、借主に新たな保証人を立てるように求めてみるべきでしょう。
また、改正法の適用がないケースにおいては、相続人が根保証人の地位を相続するので、根保証人は確保できますが、相続人の資力が乏しい場合は、やはり、借主に新たな保証人を立てるように求めるとよいでしょう。
また、これは保証人が死亡する前の対策ですが、貸主にとっては、改正法が適用されない方が有利になります。
その理由は2つあって、一つは、前述のとおり、改正法が適用されると、相続人の保証範囲は相続開始前の債務に限られるためですが、もう一つ、改正法には、極度額が設定されていない根保証契約は無効になるという貸主にとってのデメリットもあります。極度額とは、「根保証により担保することができる債権の合計額の限度」のことです。
前述のとおり、改正法の施行前に締結した根保証契約であっても、施行後に新たに契約を締結したり、契約を合意により更新したりすると、改正法が適用になるケースがあるため、その場合に、保証人について相続が発生したことによりそれ以後の債権が無保証になってしまうことや、極度額の定めをしなかったことにより根保証契約自体が無効となることなどがないよう注意が必要です。
この記事を書いた人
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