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遺留分が高くなるように計算する方法と低くなるように計算する方法

遺留分が高くなるように計算する方法

遺言書によって財産を多めにもらうにしても、遺留分の存在を忘れてはいけません。一定の相続人は、最低限の取り分の割合が法律で定められています。

例えば、配偶者と子がいれば1/4ずつ、子のみだと1/2が遺留分となります。つまり、遺留分の返還を求める申立てをされると(遺留分減殺請求)、せっかく遺贈を受けていても返還しないといけません。

このとき、遺留分が決まっていたとしても場合によっては払う金額を少なくできる可能性があります。例えば不動産や非上場株式の評価額を低く見積もることによって支払う金額が少なくなります。

この記事では、遺留分の計算について詳しく解説します。是非、参考にしてください。

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[ご注意]
記事は、公開日(2018年11月6日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

遺留分とは?

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人(亡くなった人)の贈与や遺贈によっても奪われることのないものです。

例えば、被相続人が亡くなって妻と子が相続人だったとします。

その場合に、全財産を妻に相続させる旨の遺言が残されていたり全財産が妻に生前贈与されている場合は、子は一切の財産を相続できないことになりかねません。

しかし、まったく相続できないとかわいそうなので、被相続人と近しい間柄の一定の相続人には、相続財産の一定の割合を取得することが保障されているのです。

なお、遺留分を侵害された人が、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害の限度で贈与や遺贈された財産の返還を請求することを遺留分減殺請求といいます。

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遺留分の計算方法

遺留分の割合は、誰が相続人であるかによって異なります。

直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分の3分の1で、それ以外の場合は2分の1です。

法定相続分に対する割合を示されても分かりにくいでしょうから、相続財産に対する割合を示すと下表のようになります。

法定相続人の組み合わせそれぞれの遺留分
配偶者と子
  • 配偶者:1/4
  • 子:1/4(複数いる場合は均等割り)
子のみ子:1/2(複数いる場合は均等割り)
配偶者と直系尊属
  • 配偶者:1/3
  • 直系尊属:1/6(複数いる場合は均等割り)
直系尊属のみ直系尊属:1/3(複数いる場合は均等割り)
配偶者と兄弟姉妹
  • 配偶者:1/2
  • 兄弟姉妹:なし
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹:なし
配偶者のみ配偶者:1/2

例えば、法定相続人が配偶者と子2人であった場合の遺留分は、配偶者が1/4子がそれぞれ1/8ずつになります。

この場合に、例えば相続財産(および、贈与財産)が8000万円であれば、少なくとも、配偶者は2000万円、子はそれぞれ1000万円の遺留分を取得することが保障されています。

なお、他の相続人の相続放棄によって、法定相続分が増えた場合は、それに伴い遺留分も増えます。

例えば、上の例で、配偶者が相続放棄をした場合の子2人の各遺留分は、8000万円×1/2×1/2=2000万円になります。

なお、他の相続人が相続分や遺留分を放棄しても、遺留分が増えることはありません。

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遺留分減殺請求すると財産はどうやって返還される?

遺留分権利者が減殺請求すると、請求された人は、遺贈や贈与で取得した財産の遺留分に相当する分の財産を返還しなければなりません。

ただし、遺留分権利者は、返還される財産を選択することはでません。

例えば、減殺対象の財産に現金と不動産があった場合に、遺留分権利者の方から、現金での返還を指定したり、不動産での返還を指定することはできません。

基本的には、それぞれの財産に対して、遺留分に応じた持分を取得することになります。

例えば、遺留分が4分の1で、減殺されるべき財産が現金1000万円と不動産であった場合は、現金250万円と不動産の4分の1の共有持分を取得することになります。

ただし、請求された人には価額弁償の抗弁権があり、上記のように現物を返還するのではなく、お金で清算することを提案することができます。

例えば、先ほどの例で、不動産の価格が7000万円であったとすると、現金1000万円と併せて、遺留分算定の基礎となる財産の価額は8000万円になり、遺留分が4分の1であれば、2000万円を弁償することで、現物の返還に代えることができます。

価額弁償の抗弁がなされていないのに、遺留分権利者の方から価額弁償を求めることはできません。

なお、価額弁償の抗弁があったにもかかわらず、弁償されない場合は、遺留分権利者は、価額弁償の請求前であれば現物の返還を求めることができます。

一度でも価額弁償を請求したら、翻意して現物の返還を求めることはできません(請求された人が同意すれば可能)。

価額弁償の抗弁があったが弁償されないという場合に、弁償を請求するかどうか、慎重に判断しましょう。

なかなか弁償されない場合、相手方に弁償を行うだけの資力がない可能性が高いので、現物の返還を求めたほうが取りっぱぐれるリスクが比較的低いと考えられます。

また、請求された人は、一部の財産についてのみ価額弁償を選択することもできます。

なお、当事者同士の合意があれば、どのようなかたちで分割しても構いません。

例えば、減殺対象の不動産が複数あり、その内の一つを遺留分権利者が取得するかたちや、分割払いで支払うかたちでも、当事者の合意があれば構いません。

ただし、その場合には、当事者で合意した分割方法によって税金面で不利な取り扱いを受けないかに注意が必要です。

財産評価方法

価額弁償による場合、不動産や非上場株式、動産などの財産評価をどのように行うかという問題が生じます。

遺留分権利者にとっては評価額を高く見積もった方が有利ですし、反対に減殺請求される人にとっては低く見積もった方が有利になるため、遺留分減殺請求を巡っては、財産評価で揉めやすいのです。

不動産の財産評価方法

この点、不動産については、通常は実勢価格(実際に取り引きされる価格)で評価されます。

不動産を売却して価額弁償を行う場合は、売却価格を評価額とすればよいのですが、売却しない場合は、どのように実勢価格を見積もるかという問題になります。

この点、固定資産税評価額や相続税評価額から実勢価格を見積もる方法が手軽です。

固定資産税評価額は実勢価格の7割程度、相続税評価額は実勢価格の8割程度になっているので、固定資産税評価額に7分の10を掛け算するか、相続税評価額に8分の10を掛け算することで、およその実勢価格を見積もることができます。

なお、土地の場合は固定資産税評価額と相続税評価額がありますが、建物の場合は固定資産税評価額しかありません。

建物の固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載さ入れている課税明細書の「価格」(または「評価額」)欄に記載されています。

マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額になっており、自分の所有している部屋の固定資産税評価額は課税標準額の欄に記載されています。

この方法で算定した評価額で双方納得できればそれでよいのですが、この方法では実勢価格との乖離が生じることもあります。

相続税評価額や固定資産税評価額から算定した評価額に納得がいかない場合は、不動産鑑定士に鑑定してもらうとより正確な算定が期待できます。

ただし、鑑定料が数十万円かかります。

非上場株式の財産評価方法

非上場株式の評価方法には様々ものがありますが、経営権を支配する場合と支配しない場合によっても評価方法が異なります。

経営権を支配する場合は、さらに会社の規模によって異なります。

大会社の場合は、類似業種比準方式といって、類似した上場会社の数値を基準に計算されます。

小会社の場合は、純資産価額方式といって、相続開始日に会社を清算したと仮定して株主一人当たりの分配額で計算されます。

中会社の場合は、併用方式といって、類似業種批准方式と純資産価額方式を一定割合で折衷して計算します。

経営権を支配しない場合は、配当還元方式といって、次の式で計算されます。

(年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円)

実際のケースに当てはめてどの方式を適用すべかといった判断や、各方式による具体的な計算方式については、公認会計士か税理士に相談した方がよいでしょう。

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果実や利息も請求できる

遺留分減殺請求を行った後は、利息や果実に対する持分を請求することもできます。

減殺の対象となる財産が金銭である場合には、減殺請求の翌日から、財産が返還されるまでの法定利息(年利5%)を請求することができます。

なお、価額弁償による場合は、利息の発生は、減殺請求の翌日ではなく、価額弁償の抗弁を行った翌日からになります。

また、果実とは、賃貸不動産の家賃収入などのことです。

減殺すべき財産の中に賃貸不動産等の収益を生む財産が含まれている場合は、減殺請求後の翌日以降の収益についても遺留分に応じた割合を請求することができます。

なお、果実に対する遅延利息も請求することができます。

遺留分を自分に有利に計算する方法

遺留分権利者にとっては遺留分が高く計算できた方がよいでしょうし、遺留分減殺を請求される受遺者・受贈者にとっては、低く計算できた方がよいでしょう。

遺留分を自分に有利に計算するためのポイントには次のものがあります。

  • 相続欠格事由
  • 遺産隠しや、遺産の使い込み
  • 減殺すべき贈与
  • 寄与分
  • 財産の評価

以下、それぞれについて説明します。

相続欠格事由

相続欠格事由に当たる場合は、欠格者として相続人となることはできず、遺留分減殺請求もできません。

ですから、遺留分減殺を請求された人は、請求者が相続欠格事由に当たる場合は、減殺を免れることができます。

相続欠格者になるのは次のいずれかに当たる場合です。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続欠格事由に当たることを本人が認めている場合は、争いが再燃することがないように、欠格者であることの証明書を作成すると良いでしょう。

反対の立場からいうと、欠格者であることの証明書に署名、押印すると、欠格者として相続人であると主張することが難しくなるので、応じるかどうかは慎重に判断すべきです。

本人が認めていなくても、欠格事由に当たることが訴訟で認定され、その判決が確定した場合は、減殺に応じる必要はありません。

遺産隠しや、遺産の使い込み

法定相続人が複数いるにもかかわらず、遺言により遺産のすべてを一人が取得することは珍しいことでありません。

その場合に遺言執行者が選任されていなければ、受遺者が遺産の管理をすることになります。

受遺者は遺留分減殺を請求されることがありますが、受遺者にとっては、遺産が少ない方が遺留分も少なくなり、有利です。

したがって、受遺者が遺産を隠したり、遺産の調査に協力しないことがあります。

ひどいケースでは使い込んでいる場合もあります。

そのような場合でも、遺留分権利者は法定相続人としての立場で、相続財産の調査を行うことができます。

また、遺産隠しや使い込みを知らずに、遺留分減殺の合意書を取り交わしてしまった場合は、合意の意思表示の錯誤無効や詐欺取消しを主張することができると考えられます。

なお、遺産隠しや使い込みをすると罪に問われる可能性もあるため、請求される側の人は、素直に遺産についての情報を開示した方がよいでしょう。

減殺すべき贈与

前述の通り、遺留分は、「遺留分減殺請求の対象となる財産の価額×遺留分の割合」で計算されるため、遺留分減殺請求の対象となる財産の価額が高額になれば遺留分も高くなります。

生前贈与があった場合に、その贈与が遺留分減殺請求の対象となるかどうかによって、遺留分の価額も変わってくるのです。

遺留分権利者は減殺すべき贈与に当たることを主張し、他方、受贈者は減殺すべき贈与に当たらないことを主張し、協議が調わないことがよくあります。

減殺すべき贈与があったことを認めさせるには、生前贈与があり、かつ、その贈与が減殺すべき贈与に当たることを証明しなければなりません。

生前贈与があったことを証明するためには、次のようなものを調べるとよいでしょう。

  • 被相続人の預貯金の取引推移の一覧表
  • 被相続人の家計簿や手帳
  • 被相続人がお金を貸した借用書や念書

預貯金の取引推移の一覧表は、被相続人の口座がある金融機関に申請します。

また、被相続人がお金を貸していた場合、債務を免除してもらっていたら、贈与とみなして遺留分算定の基礎とすることができる場合もあります。

また、被相続人がお金を貸したまま亡くなった場合は、金銭債権が遺産に含まれることになり、これも遺留分算定の基礎とすることができます。

寄与分

寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の生前に、相続人が、被相続人の財産の増加や維持に寄与した程度のことです。

寄与分がある相続人は、その分多くの財産を相続することができます。

遺留分と寄与分の関係を巡っては、次の2つの点について理解をしておくと、不必要に不利な条件を飲まされることを避けることができ、有利に交渉を進めることにもつながります。

  • 遺留分減殺請求に対して寄与分を主張して請求を退けることができるか?
  • 遺産分割審判で遺留分を侵害する寄与分を主張することできるか?

以下、それぞれについて説明します。

遺留分減殺請求に対して寄与分を主張して請求を退けることができるか?

遺留分減殺請求に対して寄与分を主張することはできません。

例えば、長男と二男が法定相続人で、全財産1000万円が長男に遺贈されたケースで、二男が長男に遺留分250万円による減殺を請求したとします。

このようなケースで、もし寄与分を主張することが許されるのであれば、例えば、寄与分が1000万円なら遺留分は無くなり、寄与分が500万円なら遺留分は125万円になります。

しかし、このような寄与分の主張は許されていません。

遺産分割審判で遺留分を侵害する寄与分を主張することできるか?

遺産分割審判で遺留分を侵害する寄与分は、基本的には認められにくく、特段の事情がある場合に限り、認められる余地があります。

なお、遺産分割協議や遺産分割調停では、相手方の合意があれば、このような寄与分でも認められます。

例えば、長男と二男が法定相続人、相続財産が1000万円で、遺言はなかったとします。

この場合は、基本的には、法定相続分どおりに、500万円ずつ相続することになります。

しかし、もし、長男に600万円の寄与分が認められたとしたら、長男が800万円、二男が200万円をそれぞれ相続することになります。

二男の遺留分は250万円なので、このような寄与分が認めるとしたら、二男の遺留分が侵害されることになります。

このような遺留分を侵害する寄与分は、基本的には認められにくく、特段の事情がある場合に限り、認められる余地があります。

特段の事情とは、相続財産のほとんどを、寄与分を主張する相続人が提供していたような場合など、寄与の割合が特別大きい場合です。

例えば、相続人の一人が、被相続人の生前に、体の不自由な被相続人のためにバリアフリーのマンションを贈与したとします。

被相続人が亡くなったときに、その相続人はそのマンション分の寄与分を主張することが考えられます。

そのマンション以外に目ぼしい財産がない場合には、Aの寄与分と他の相続人の遺留分が競合しますが、このように、元々Aが贈与した財産にまで遺留分を優先することは必ずしも妥当な結論といえないでしょう。

このような特段の事情がある場合に備えて、遺留分に寄与分を優先する余地が残されているのです。

財産の評価

相続財産の評価で揉めることもよくあることです。

不動産は不動産鑑定士に、非上場株式は公認会計士か税理士に鑑定を依頼するとよいでしょう。

双方が別々に鑑定を依頼すると、鑑定料も倍かかりますし、鑑定結果に開きが生じた場合に、せっかく鑑定したのに、争いが収束しないこともありえます。

合意形成のためには、鑑定を依頼する専門家を双方の合意の下で選び、鑑定結果に従うことを合意のうえで、鑑定を依頼するとよいでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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