配偶者居住権の登記。登記申請書の書き方や登録免許税について。

「夫(または妻)が亡くなって、自宅を相続することができなかったら、家を出ていくしかない!?」

そんな心配、もうしなくて良いんです!

なぜなら、自宅を相続できなくても一生涯住み続けることができる「配偶者居住権」の制度が創設されたから。

ただし、安心して住み続けるためには条件が…。配偶者居住権は、登記しなければ家を追い出されてしまう恐れがあるのです。

この記事では、配偶者居住権の登記について説明しますので、是非参考にしてください。

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公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった人)の配偶者が相続開始時に被相続人の持ち家に住んでいた場合、相続開始後にその家を他の相続人等が取得しても、被相続人の配偶者が引き続き無償で使用(居住)したり、人に貸して家賃収入を得たりすること(ただし、人に貸す場合には居住建物を取得した相続人の承諾が必要です。)ができるとする権利のことです。

後述する配偶者短期居住権と区別するために、配偶者居住権のことを配偶者長期居住権とよぶこともあります。

配偶者居住権は相続開始により当然に生じる権利ではなく、配偶者居住権を取得するためには、遺産分割遺贈(遺言によって財産や権利を与えられること)死因贈与(贈与者の死亡を原因とする贈与)によって権利が与えられなければなりません。

配偶者居住権の期間を定めていない場合は、権利者が亡くなるまで、その権利は存続します。

10年間とか20年間とか任意の期間を定めることもできます。期間を定める場合は、遺言書や遺産分割協議書等に期間を記載します。

期間満了前に権利者である配偶者が亡くなった場合は権利は消滅します。なお、配偶者居住権を譲渡することはできません。

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配偶者居住権はいつから?施行日は?

配偶者居住権は、民法の改正によって新設された権利で、その施行日は202041日です。

施行日より前に開始した相続については、たとえ遺言や遺産分割協議書に配偶者居住権の記載があったとしても、配偶者居住権を設定することはできません。

なお、相続の開始が施行日後であっても、配偶者居住権を設定する遺言の作成日や死因贈与契約の締結日が施行日以前である場合は、その遺言や死因贈与契約の配偶者居住権についての記載部分は無効となります(改めて遺産分割で配偶者居住権を設定することは問題ありません)。

また、相続開始後に施行日が到来し、施行日に遺産分割をして配偶者居住権を設定した場合はどうでしょうか?このケースも配偶者居住権を設定することはできません。

配偶者居住権は登記しなければ善意の第三者に対抗できない

配偶者所有権は登記することができます。

不動産の登記制度は、不動産の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかるためのものです。

所有権の登記とは別に、配偶者居住権の登記を設定することができるのです。しかし、配偶者居住権は、前述の要件を満たしてさえいれば、登記をしていなくても、発生します。

したがって、配偶者居住権の目的となっている居住建物の相続人は、配偶者居住権の権利者が登記を備えていないからといって、その人を追い出したりすることはできません。しかし、登記を備えていない配偶者居住権は、善意の(事情を知らない)第三者に対抗することはできません。

つまり、配偶者居住権を登記していないと、所有者が、配偶者居住権の存在について善意の(把握していない)第三者に居住建物を譲渡した場合、譲受人に対抗することができず、譲受人から立ち退きを求められた場合は住み続けることができなくなってしまいます。

したがって、配偶者居住権は、登記した方が安心です。

配偶者居住権が設定できるのは建物だけ。敷地の利用権は登記できない

配偶者居住権は建物に設定します。配偶者居住権が設定された建物の敷地について、配偶者居住権者は、その利用権を持ちます。

配偶者居住権は登記できますが、配偶者居住権の設定された建物の敷地の利用権は登記できません。

配偶者居住権の登記の申請方法

配偶者居住権の設定登記の申請方法について説明します。

配偶者居住権の登記には相続登記が必要

配偶者居住権の設定登記には、前提となる相続登記(被相続人から相続人への所有権移転登記)が必要です。

相続登記をせずに配偶者居住権のみを登記することはできませんが、相続登記と配偶者居住権の設定登記は同時に申請することはできます。

共同申請

配偶者居住権の設定登記は、登記権利者である配偶者居住権者と登記義務者である建物所有者が共同で申請します。

登記義務者が登記申請に協力しない場合は、登記権利者は、登記義務者の登記申請の意思表示に代わる判決を得て、単独で登記の申請をすることができます。

しかし、判決が得られるまでの間に、配偶者居住権の目的となっている建物が善意の第三者に譲渡されるおそれがあるため、取り急ぎ、配偶者居住権の仮登記を申請したり、処分禁止の仮処分を求めることを検討した方がよいでしょう。

このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。

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登記申請書の書き方

登記申請書の各欄は、下の表のように記入するとよいでしょう。

登記の目的 配偶者居住権設定
原因 令和○年○月〇日設定
※配偶者居住権の設定日。遺産分割協議の成立日、遺贈の効力発生日(被相続人の死亡日)等
存続期間 配偶者居住権者の死亡時まで
※期間を設定する場合はその期間
権利者 配偶者居住権者の住所及び氏名
義務者 建物の所有権登記名義人の住所及び氏名
登録免許税 ※後述
登記原因情報 遺産分割協議書、遺産分割調停調書謄本、遺産分割審判書正本、遺言書等
登記識別情報 印鑑証明書

配偶者居住権の登記費用(登録免許税)

登記をする際には、登録免許税を納付しなければなりません。

配偶者居住権の設定登記の登録免許税の金額は、以下の金額で求めることができます。

建物の固定資産税評価額 × 0.2%

例えば、建物の固定資産税評価額が1,000万円だとすると、登録免許税の金額は「1,000万円 × 0.2% = 2万円」となります。

固定資産税評価額は、次のいずれかの書類で確認することができます。

  • 固定資産評価証明書
    ※固定資産課税台帳登録事項証明書または固定資産課税台帳記載事項証明書という名称になっている自治体もあります
  • 固定資産税・都市計画税の課税明細書

固定資産評価証明書を取得するには交付手数料が必要ですが、証明書で確認する方が確実ですし、相続税の申告や登記の際には固定資産評価証明書が必要なので取得しても無駄にはなりません。

登記申請を司法書士に依頼する場合は、固定資産評価証明書は司法書士が取得してくれることが多いでしょう。

取り急ぎ、評価額だけ知りたいということであれば、評価証明書を取得しなくても、固定資産税・都市計画税の課税明細書で確認することができます。

課税明細書は、毎年4月~6月頃(市町村によって異なります)に納税義務者に届く「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されています(別送の場合もあります)。

課税明細書の「価格」または「評価額」の欄に記載されている金額が、固定資産税評価額です。

なお、マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額になっており、自分の所有している部屋の固定資産税評価額は課税標準額の欄に記載されています。

配偶者短期居住権は登記できない

配偶者短期居住権とは、相続開始時に被相続人の持ち家に無償で住んでいた配偶者は、一定期間、その家を無償で使用することができるとする権利のことです。

配偶者短期居住権は、相続開始時に発生します。長期居住権のように、遺言や遺産分割によって権利を取得させる必要はありません。

配偶者短期居住権の終了期間は、その建物が遺産分割の対象となるかどうかで異なります。

遺産分割の対象となる場合の期間は、相続開始から6か月か、遺産分割によりその建物を取得する人が決まった日のどちらか遅い方です。

遺産分割の対象とならない場合(遺言で当該建物の取得者が指定された場合など)は、居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申入れをした日から6か月後が期限になります。

配偶者短期居住権は、長期居住権と違って、登記を設定することはできません。

したがって、居住建物取得者が事情を知らない第三者に譲渡した場合は、その第三者に権利を主張することは難しいと考えられます。

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